2013年09月16日

ひらひら村の夕陽68

 元夫の表情が少しゆるんだ。
「じつは、息子のこと、ずっと思っていたんだ。あいつが背負っているもの少しでも軽くしたかった」
 元夫はぽつりぽつりと話し出した。裕子のいなくなってからのことを。
 裕子がいなくなったあと、姑が世話をし子どもたちは表面上問題なく成長しているように見えたという。上の子は大学を出るとそのまま東京で就職したという。弟は高校をでて専門学校へすすみ卒業して務め始めたという。
 このタイミングで、元夫は再婚し数年たったところで姑が病死したという。
「結婚を意識し始めたところで、私とあなたのことがひっかかったってこと?」
 裕子は思い切って聞いた。もと夫は小さくうなずいた。裕子はなんだか家を飛び出す前に夫を見ているような気がした。
「もちろん、責任は感じるけど、だけど、そんなのあの子の言い訳なんじゃない? 親が離婚してもちゃんと幸せになっている人いっぱいいるじゃない」
 元夫は切なそうに顔を上げた。
「たぶん。それだけじゃないんだと思う。俺なんだよ。きっと」
 元夫は顔を振った。
「それ、どういうこと?」
 裕子がのぞきこんだ。
「俺が幸せそうじゃないと、希望が見えないんだと思う」
 元夫はしぼりだすような声を出した。
「あなた。幸せじゃないの?」
 裕子の言葉に元夫はうなずいた。



Posted by ひらひらヒーラーズ at 11:24│Comments(0)
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