2011年02月23日

友引ツーリングクラブ6(二見の道)

「ねえ、私たち、この三明寺の夢を見ていたのね」
 梨花が石仏を眺めながら、視線を康平に向けた。
「都から天皇と来た男かあ、地元の巫女さんと恋に落ちたか」
 康平は独り言を言った。
「この先が二見の道で別れの分岐点だったら、二人はこのヘンで切ない顔で見つめあったのかもね」
 梨花が言って一人先に歩いていった。石仏はなくなって、先に見える姫街道に向かって草原が広がっている。康平は姫街道の姫ってもしかしたら、伝説の巫女かなとちらりと思った。
「ねえ、梨花ちゃん。姫街道って、その巫女がいた街道ってことだったりしてね」
 康平のことばに振向いた梨花は目に涙をためていた。
「分かんない。なんだか分かんないんだけど、康平にもらった青い石から何か、波みたいなものが広がってきて、悲しくないに涙がでてくる」
 それを見ている康平の目からも大粒の涙がこぼれだした。
「なんだか、ぼくまで泣けてきた。いいよ。いっしょに泣こう」
 梨花と康平は肩を並べて姫街道を見ながら泣いた。
「私ねえ、1300年まえのこと調べてみる」
 梨花は帰り際に言った。
「夢の中の話が、現実に出てきちゃったな。あと、梨花ちゃん。ヘンなこと言ってたな。水之江のサルがサムライになる? なんだそれ? サルがサムライになるって言えば、豊臣秀吉のことか?」
 康平がつぶやいたところへ友引ツーリングクラブの若い坊さんがバイクで走ってきた。
「おう。この前の兄ちゃんだな。しらみやさんいる? たいへんなことが起こった。メンバーがどんどん交通事故にあってる。もう、3人入院した」
 男は三明寺のまえにバイクを止めて、本堂にかけこんで行った。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 21:43│Comments(0)
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