2011年03月22日
友引ツーリングクラブ10(アザ)
康平は自転車を走らせた。大きな寺の門前の手前に古い書店がある。小学生のころはここでノートや鉛筆を買った。ちょっとなつかしい思いで目をやると、いつくつか貼ってあるポスターの一つに目がとまった。南総里見八犬伝の劇画版だった。
「ふうん。里見八犬伝か」
康平は口の中でぽつりと言った。小学校の頃の担任が好きで、好きで勧められて読んだことがある。わくわくして読んだことを思い出した。
「待てよ。八犬士は、玉を持っているだけじゃなくて、ボタンのアザがあったな」
康平はひとりごとを言った。そして、自転車を止めて梨花に電話した。
「あのさあ、お父さんの首にミミズみたいなアザがあったよね。今、白宮さんの友だちの所へ寄ったんだけど、その人の首にもアザがあった。そいで、お父さんのところへ来ていたお巡りさんがいた」
康平が早口で言うと、電話のむこうで少し黙ってから、梨花が小さな声を出した。
「もしかして、康平、八犬伝のこと思い出したの?」
梨花の声は最近ではめずらしく鋭かった。
「うん。それで、昨日、図書館でへんな男にあったんだけど、その人にも首にアザがあった」
「そんな人?」
「なんか、汚いおじさんだったんだけど、利修仙人が首をはねた鬼の生まれ変わりとか言ってた」
「リシュウセンニン? 聞いたことんないね」
「うん。また、調べてみる。お父さんどんな様子?」
「落ちついている。来週には退院できそう」
梨花が言って電話が切れた。
「利修仙人か」
康平はひとりごとを言った。
「ふうん。里見八犬伝か」
康平は口の中でぽつりと言った。小学校の頃の担任が好きで、好きで勧められて読んだことがある。わくわくして読んだことを思い出した。
「待てよ。八犬士は、玉を持っているだけじゃなくて、ボタンのアザがあったな」
康平はひとりごとを言った。そして、自転車を止めて梨花に電話した。
「あのさあ、お父さんの首にミミズみたいなアザがあったよね。今、白宮さんの友だちの所へ寄ったんだけど、その人の首にもアザがあった。そいで、お父さんのところへ来ていたお巡りさんがいた」
康平が早口で言うと、電話のむこうで少し黙ってから、梨花が小さな声を出した。
「もしかして、康平、八犬伝のこと思い出したの?」
梨花の声は最近ではめずらしく鋭かった。
「うん。それで、昨日、図書館でへんな男にあったんだけど、その人にも首にアザがあった」
「そんな人?」
「なんか、汚いおじさんだったんだけど、利修仙人が首をはねた鬼の生まれ変わりとか言ってた」
「リシュウセンニン? 聞いたことんないね」
「うん。また、調べてみる。お父さんどんな様子?」
「落ちついている。来週には退院できそう」
梨花が言って電話が切れた。
「利修仙人か」
康平はひとりごとを言った。
Posted by ひらひらヒーラーズ at 10:15│Comments(0)