2011年04月08日

友引ツーリングクラブ17

「なんかよく分からないけど、あのう、1300年前、3匹の鬼たちは何か悪いことをしたんですか? それで罰として首を切られた?」
 康平は中途半端な言い方になった。男はうでを組んで首を振った。
「悪いことなんかしておらんて。最後の瞬間まで利修仙人に従ったぞ。山にこもれと言われれば1年でも山奥から出てこなかったし、海へ行けと言われれば豊川を下って海で修行した」
 男は遠い目をして空を見た。
「じゃあ、なんでその利修仙人に首を切られたんですか?」
 康平はさらに分からなくなってちょっと大声をだした。
「まあよい。おまえといると、不思議に花粉症がおさまってくる。この分なら山へ行っても平気だろ。ちょっとつきあいな」
 男はは康平の返事も聞かずに先に歩き出した。康平は仕方なくあとを追った。姫街道に近い三明寺の駐車場に赤いスポーツカーがおいてあった。ピカピカに光っている。男は運転席に乗り込み、車内から顔を低くして手招きした。
「あのう。これが、あなたの、村鬼さんの車ですか?」
「そうよ。わしには似合わんか? 正直でいいや。おぼえておきな。人は見かけによらん」
 村鬼はちらりと康平を見てから車を出した。体に響くようなエンジン音で、シートは黒の革張り、運転席には丸い計器類がならんでいる。車は姫街道を東に向かってバイパスに入り新城へ進んだ。
「おまえ。三河三山って聞いたことあるか?」
 砥鹿神社をすぎるあたりで村鬼が口を開いた。康平は首をふった。左の肩越しに首のアザが見える。
「鳳来寺山や知恵、石巻山が愛、本宮山が力の山で三つで豊川を護っている。そこから三河と言うんだ」
 村鬼は康平を見て、鼻をひくひくさせた。康平はティッシュを渡した。
「いやあ。すまんすまん。山に近づくとやはりくるわ」
 村鬼は鼻をかんだ。
「力の山だから、砥鹿神社が三河の国一の宮なんですか?」
 康平が言うと、村鬼はフェフェっと笑って一度康平を見た。
「おまえさん。なかなか分かりが早い。やはり、中心で動く男だな」
 村鬼はまっすぐ前を見ながら重い声で言った。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:38│Comments(0)
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