2011年05月02日

友引ツーリングくらぶ(鬼の首)

 車は医王寺についた。駐車場から小さな池づたいに登って行くと、苔むした本堂が見えてきた。急な坂ではないが、松葉杖をついている梨花の父親は康平と梨花の肩につかまってゆっくり歩いた。
「ようこそおいで下さいました。お待ちしておりました。ここの住職です」
 洗いざらしの作務衣を着た男が迎えた。鬼村は軽く手をあげて歩いていく。案内に従って本堂にはいると、座敷用のテーブルが出してあって、桐の木で出来た箱があった。4人が見守る中で住職が箱を開けていく。古びた掛け軸が出てきた。
「これだ。室町時代の物らしい。長篠の合戦では武田方の武将が命がけで守ったらしい」
 鬼村が言っている間に住職が掛け軸を広げていった。長いヒゲを生やした男が手に刀を持っている。やせていて目は鋭い。その下に青、赤、黒の3匹の鬼がひざまづいている。康平、梨花、梨花の父は息をのんだ。鬼村は遠くを見るようにため息をついた。
「なにか、分からないけど、泣けてくる」
 梨花は目を閉じて胸に手を置いた。いつから手にしたか康平が渡した青い石を持っている。
 康平がのぞきこむと胸の前で広げた。青い石が半分透き通って中から光を放っている。そしてブルブル震えていた。
「石が何か言っているみたい」
 梨花が言った。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 07:45│Comments(0)
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