2011年06月13日

友引ツーリングくらぶ(飛鳥へ)

「康平。梨花さんって、すごいな」
 藤原がため息をついた。画面の向こうで梨花が照れている。そこへ康平の携帯がなった。カメラに向かったままで電話に出た。しらみやだった。
「康平君か。今話していい?」
「いいですよ。しらみやさん。今大津の皇子の話してるんです」
 康平は梨花に分かるように言った。
「しらみやさん。元気ですか?」
 パソコンのスピーカーから出る声を携帯に拾う。
「あれっ。梨花ちゃんもいるの?」
 しらみやがひっくりかえった声を出した。康平がスカイプの説明をした。しらみやはあまり驚きもせずに話をはじめた。
「今、こっち、たいへんなことになってるんだ。交通事故がとにかく多い、ちょっと出かけると、必ず事故を見るし、友引ツーリングクラブのメンバーも3人事故にあった。あと、あちこちから水が噴き出して、低い所には水がたまっている」
「事故って言えば、ぼくたちがこっちに来る前にもありましたよね」
「ああ。あれ入れると4件だ。おまけに変な病気まではやっている」
 しらみやは声をおとした。
「病気って言えば、梨花ちゃんのお父さんも調子わるいみたい。ねえ、梨花ちゃん。お父さんなにか言ってた?」
 康平はカメラを見た。梨花は首をふった。
「しらみやさん。夏休みには帰ります。なんとかがんばってください」
 康平は言って携帯を切った。藤原はだまって腕を組んでいたが、やっと口をあけた。
「康平。明日、講義終わったら、飛鳥へ行くか」
「飛鳥ですか」
 康平が藤原を見た。梨花もびっくりしたように見た。
「なんかさあ、急に思い出したんだけど、昔の天皇がさあ、国が荒れると古い都へ出かけているんだ。もちろん、それとは違うけど何かヒントがありそうな気がする」
 藤原の言葉に、パソコン上の梨花もうなずいた。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:37│Comments(0)
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