2011年06月21日

友引ツーリングくらぶ(青い石はどこから?)

「1992年ねえ。ネットで見たら、ソ連が崩壊した次の年で、日本はバブルの時代かあ。ぼくらが生まれるまえだもんね」
 康平はスカイプの画面を小さくして、インターネットのページを見た。
「しらみやさんに電話したら」
 梨花が言って、康平は携帯を手にした。
「しらみやさん。1992年ってなにがありました?」
「1992年か。おれが小学校に上がった年だ。よくおぼえてるよ。あの年はびっくりした」
 しらみやは電話の向こうで笑っているらしい。
「なにがあったんですか?」
 画面の中の梨花が乗りだしてくる。
「あの春ねえ。おれが入学式で親と学校へ出かけようとしたら池の水がなくなっていたんだ」
 しらみやの声はなつかしそうだった。
「池って、境内の石橋のある池ですよね。あそこ昔は水があったんですか?」
 康平の質問にしらみやが笑った。」
「康平くんたちは知らないよね。水が枯れる前はね、わき水が川になって流れていたんだ。おまけにもっと古くは、豊川が寺の前まで来ていて、そこへ流れ込んでいたんだ」
「それって、草砥鹿姫がいたころもそうでしょうか」
 梨花が聞いて、しらみやが「そうだ」と言った。
「そうそう。そのころの地形を子どもたちに知ってほしいってことで、お寺のまえの土を運んで小学校にミニ豊川をつくったんだ。おれも石をならべるの手伝った」
「ミニ豊川って、ぼくたちが小学校のころもありました。たぶん。今もあると思います。雨が降ると土が校庭に流れちゃうから夏休みにみんなで直しました」
 康平は言ってから、梨花に渡した青い石を思い出した。そう言えば、運動会前に大雨が降ったような気がする。もう10年以上前のことだが、なんとなく印象に残っていた。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 07:55│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。