2011年06月24日

友引ツーリングくらぶ(対決の時2)

 康平は三明寺の本堂の中をふらふらと歩いた。力寿姫の木像の前に来ると引き寄せられるように立ち止まった。あらためて梨花に似ていると思った。
「夏休みには会えるよね。それまでに、この町をなんとかする」
 力寿姫に向かって小声で言うと、かすかに揺れた気がした。さっきよりまして梨花に会いたくなった。
「誰か来たかな?」
 しらみやが本堂の外に目を向けた。はーくしょん。遠くからクシャミが聞こえた。だんだん近づいてくる。
「お~い。わしだ。村鬼だ。康平くんもどったんだってな」
 村鬼が本堂に現れた。鼻を押さえている。
「ふしぎだなあ。この子に会うとクシャミがおさまる」
 村鬼はしらみやを見て笑ってから康平を見た。
「康平君だったな。やっぱり君は中心で働く役目だ。すごい発見じゃないか。三河三山。石巻山、本宮山、鳳来寺と回って来たぞ。石巻山のダイダラボッチの岩はやはり鏡になっておった。本宮山はばっちり鏡岩だった。鳳来寺山も本堂の上の鐘突堂に油を塗ったように光った岩があった。間違いない。三つの岩で光を反射して三角形をつくっておる」
 村鬼はそこまで言ってポケットから地図を出した。石巻山、本宮山、鳳来寺山と赤ペンで丸が打ってある。山と山の間はマーカーペンで結んである。本宮山を底辺にした直角三角形になっていた。
「すごい。でもこれなんですか」
 しらみやが聞いた。康平が大和三山のこと、鏡岩で大和の国を護っていること、三河の国も同じように守れていることを説明した。しらみやはおおげさにうなずいた。
「ありがたいことだなあ。わしらは知らず知らずに守られていたんだ。それにしても、守られていながら今の状況じゃなあ」
 村鬼の言葉に、康平は父親と母親を思いだした。その時、力寿姫の木像ががたりとゆれた。康平と村鬼は身がまえた。なぜかしらみやだけは平然としていた。
「ごめん。来ちゃった」
 梨花が立っていた。
「ごめん。おれが知らせたんだ」
 しらみやが言った。
 




Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:09│Comments(0)
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