2011年07月09日
友引ツーリングくらぶ(自分へ)
まわりは薄明るくなってきた。クロヒトは人をかき分けて吊り橋を渡って草砥鹿姫の方へ行った。空からはエメラルドグリーンのウロコが降り、動きの止まった上に積もった。そして雪が溶けるように人々の体にしみこむと人々がゆっくり動き出した。みんな首筋に手をやっている。キズは消えているらしい。目つきはおだやかでおそいかかって来る雰囲気はない。
「よかった。みんなもどったみたいだ」
クロヒトがつぶやいた。人々は不思議そうな顔で手にしている、ナイフや包丁を見ている。たがいに顔を見合わせながら帰っていく。豊川は元どおり「川」になっていた。なにもかもがいつも通りにもどっていた。
「大津の皇子はわしが、天界に連れていく。おまえたちはよく戦った。でも、まだヌエは祠に封じてある。頼んだぞ」
空からしわがれた声が聞こえた。3人の鬼達は首をすくめて手でおおった。草砥姫とクロヒトは顔を見あわせて笑った。
「草砥鹿姫。かっこよかったよ」
クロヒトが言うと、草砥鹿姫はじっと見てから目に涙をうかべた。
「1300年前のこと思い出した。私ねえ、ずーっと待ってたんだよ。毎日毎日、三明寺から街道を西に向かって祈っていたんだよ。70年間だよ。私ねえ、おばあさんになって、髪が真っ白になって、しわがいっぱいになって、こんなでクロヒトに会っても嫌われるかもって心配しながら待ってたんだよ」
草砥鹿姫はクロヒトをじっと見ながら涙をいくつもこぼした。
「ごめんね」
つぶやきながら、クロヒトは草砥鹿姫の肩を抱いた。
「今。きれいだよ」
そう言って唇を重ねた。やわらかい風がふいて、海王丸が村鬼にもどった。白宮住職がしらみやにもどった。風王丸は鬼村になった。最後に水王丸が鬼塚にもどった。
最後に草砥鹿姫とクロヒトが梨花と康平にもどった。康平はあわてて体を離した。
「あれっ。ぼく、なにしてたんだ」
康平はあわてて自分の体を見た。梨花は一歩下がって目をきょろきょろさせた。
「お帰り。お二人さん」
しらみやが笑った。
「よかった。みんなもどったみたいだ」
クロヒトがつぶやいた。人々は不思議そうな顔で手にしている、ナイフや包丁を見ている。たがいに顔を見合わせながら帰っていく。豊川は元どおり「川」になっていた。なにもかもがいつも通りにもどっていた。
「大津の皇子はわしが、天界に連れていく。おまえたちはよく戦った。でも、まだヌエは祠に封じてある。頼んだぞ」
空からしわがれた声が聞こえた。3人の鬼達は首をすくめて手でおおった。草砥姫とクロヒトは顔を見あわせて笑った。
「草砥鹿姫。かっこよかったよ」
クロヒトが言うと、草砥鹿姫はじっと見てから目に涙をうかべた。
「1300年前のこと思い出した。私ねえ、ずーっと待ってたんだよ。毎日毎日、三明寺から街道を西に向かって祈っていたんだよ。70年間だよ。私ねえ、おばあさんになって、髪が真っ白になって、しわがいっぱいになって、こんなでクロヒトに会っても嫌われるかもって心配しながら待ってたんだよ」
草砥鹿姫はクロヒトをじっと見ながら涙をいくつもこぼした。
「ごめんね」
つぶやきながら、クロヒトは草砥鹿姫の肩を抱いた。
「今。きれいだよ」
そう言って唇を重ねた。やわらかい風がふいて、海王丸が村鬼にもどった。白宮住職がしらみやにもどった。風王丸は鬼村になった。最後に水王丸が鬼塚にもどった。
最後に草砥鹿姫とクロヒトが梨花と康平にもどった。康平はあわてて体を離した。
「あれっ。ぼく、なにしてたんだ」
康平はあわてて自分の体を見た。梨花は一歩下がって目をきょろきょろさせた。
「お帰り。お二人さん」
しらみやが笑った。
Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:28│Comments(0)