2011年07月10日

友引ツーリングくらぶ(完結)

「ばか。なんであやまるのよ」
 梨花にもどった草砥鹿姫は康平をにらんだ。康平はなにも憶えていない。つり橋の上で梨花が青い石を振り上げて叫んだあとの記憶がないのだ。自分がクロヒトなる古代人になっていたことは残っていない。
「若いの。いろいろ難しく考えるな。好きな人といっしょにいられれば、それでいい」
 村鬼が言った。鬼塚がしらみやを見てにやりとした。
「あっそうだ。もうすぐ日が昇るよ。マンションをなんとかしないと」
 梨花が康平を指さした。他の4人はオープンカー、バイクに分乗してマンション照山に向かった。
「そう言えば、あの悪社長。おれに相談したとき、扉に目玉が映ったって言ってたな。あれ、朝日だったのか」
 マンションの前でしらみやが苦笑いした。鬼塚が前に出て、ポケットから鍵を出した。荷札がついている。「捜査資料」と書いてある。
「ここなあ。詐欺事件の捜査で押さえてあるんだ」
 鬼塚は鍵をあけた。エレベーターは止まっているので、非常階段を上っていく。だんだん、東の空が赤くなってくる。5人は急いで最上階のエントランスへ出た。部屋の前につくとちょうど日が出るところだった。鬼塚がドアを開けると石巻山側の窓から差し込んだ朝日が、ドアを通ってエントランス側の大きな窓にぬけた。
 5人からため息がもれた。光ははるか本宮山にあたり、屈折して北に向かった。まもなく、石巻山へ光の帯がのびてきた。
「きれいな三角形ができたな」
 しらみやがつぶやいた。
「1300年前から続いている、夏の三角形だな」
 康平がつぶやいた。
「あの、真ん中に桜淵があるんだね」
 梨花が言った。
「あのさあ。よく分からないけど、ぼくもう、君と離れない。ぜったい」
 豊川を見下ろしながら康平が言った。梨花が頬を赤くした。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:38│Comments(2)
この記事へのコメント
しらみやなんきん さま

「完結」とありますが、終了なんですねぇ。

もっともっと読みたいんですが、続編はありませんか?(笑)

また、新しい小説を書いて下さい。期待してます。

ありがとうございました。
Posted by なおさんなおさん at 2011年07月11日 18:11
 なおさんさま
 
 応援いただいてありがとうございました。なんとか修正して本にできるようにがんばります。

 もちろん新作も書いていきます。今度は神島で活躍したグループの話にしようと思っています。そこへ三河三山をからめていきたいです。

 よろしくお願います。
Posted by siramiya at 2011年07月12日 06:50
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