2011年08月10日
海の道(仮題)20
「おまえたち。何をしている。敵を見つけることさえ出来んのか」
一番大きな船に乗った大津の皇子が金きり声を上げた。麻績の王は村国に合図した。村国が島影から出て大津の皇子の船に近づいた。大津の皇子の手下の船もいる乱れているので誰も気づかない。荒瀬が大津の皇子の船に火薬の玉を投げた。大きな水柱が上がり、何人か海に落ちた。大津の皇子は船上でふらふらしている。
「今こそ、父の仇」
イサミが弓を引いた。大津の皇子にねらいを定めて矢を放った。矢はまっすぐ飛んで大津の皇子の額をつらぬいた。大きく揺れながら海に落ちていく。同じ船に乗っていた村国の弟村雄が、なにか叫びながら矢を打った。麻績の王に届きそうになるのを村国が近くにあった竹の棒で振り落とすと、矢を拾いイサミの弓を借りて打ち返した。矢は村雄の胸にあたった。村雄の巨体も海に落ちた。
敵方の船は、指揮者を失い右往左往しながら逃げていく。海には二つの遺体が残った。村国は船を寄せた。
「その二人を船にお乗せしなさい」
麻績の王が言った。村国は信じられないという顔をした。麻績の王は村国の肩に手を置いた。
「弟のことは気の毒だったのう。大津の皇子様も立派な方だった。鯛の島に葬って、神として祀ろうではないか」
麻績の王の言葉に、シロヒトと荒瀬はうなずいたが、村国は目を閉じて黙っていた。
「でも、私は許せません」
香姫はじっと、麻績の王を見た。イサミもじっと見あげた。
「気持ちは分かるが、もう亡くなってしまえば、神仏と同じだ」
麻績の王が言って、二人の遺体を鯛島に運んだ。小さな古墳を作り鳥居を作った。
一番大きな船に乗った大津の皇子が金きり声を上げた。麻績の王は村国に合図した。村国が島影から出て大津の皇子の船に近づいた。大津の皇子の手下の船もいる乱れているので誰も気づかない。荒瀬が大津の皇子の船に火薬の玉を投げた。大きな水柱が上がり、何人か海に落ちた。大津の皇子は船上でふらふらしている。
「今こそ、父の仇」
イサミが弓を引いた。大津の皇子にねらいを定めて矢を放った。矢はまっすぐ飛んで大津の皇子の額をつらぬいた。大きく揺れながら海に落ちていく。同じ船に乗っていた村国の弟村雄が、なにか叫びながら矢を打った。麻績の王に届きそうになるのを村国が近くにあった竹の棒で振り落とすと、矢を拾いイサミの弓を借りて打ち返した。矢は村雄の胸にあたった。村雄の巨体も海に落ちた。
敵方の船は、指揮者を失い右往左往しながら逃げていく。海には二つの遺体が残った。村国は船を寄せた。
「その二人を船にお乗せしなさい」
麻績の王が言った。村国は信じられないという顔をした。麻績の王は村国の肩に手を置いた。
「弟のことは気の毒だったのう。大津の皇子様も立派な方だった。鯛の島に葬って、神として祀ろうではないか」
麻績の王の言葉に、シロヒトと荒瀬はうなずいたが、村国は目を閉じて黙っていた。
「でも、私は許せません」
香姫はじっと、麻績の王を見た。イサミもじっと見あげた。
「気持ちは分かるが、もう亡くなってしまえば、神仏と同じだ」
麻績の王が言って、二人の遺体を鯛島に運んだ。小さな古墳を作り鳥居を作った。
Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:42│Comments(0)