2011年08月19日

現代へつづく海の道(仮題)3

「すみません。午前中立て込んじゃってて。そいで、お昼時はご迷惑かなと思って」
 白宮は言いわけしながら靴を脱いだ。占い師はふり向きもせずに奥に入っていく。いつものことだが、窓は閉めきりで明かりは小さく昼間でもうす暗い。白宮は足下に気を配りながら部屋に入った。
「占い師さんが、カラーコピーなんてめずらしいですね」
 コピーの修理をしながら声をかけると占い師はだるそうに顔を上げた。
「お客さんにね、お札を作ってあげるのよ。一枚はお客さんに持って行ってもらってもう一枚は私が祈るの」
 そこまで言ってから、占い師は水晶玉を見始めた。
「あのう。早くしてくれないかな。もうすぐ、大事なお客が来るの」
「あっ、すいません。予約が入っていましたか」
 白宮は一瞬手を止めた。故障は簡単な紙詰まりで大方作業は終わっている。
「予約なんかじゃないの。水晶玉にうつるのよ。大きな男の人」
 占い師はニヤリとした。白宮は少し呆れながら作業報告書を出した。占い師は「香坂」とサインした。「香坂の「香」を取って「香姫の館」と名付けたんだな」と思った。
 白宮が帰って行こうとするとインターホンが鳴った。香坂が出る。
「すみません。こちらは男でも見てもらえますか」
 太い男の声だった。香坂と白宮の目があった。香坂が軽くうなずいた。





Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:22│Comments(0)
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