2011年09月21日

現代へと続く海の道(仮題)25

 それから、白宮と荒川はノートと筆記用具を持って学校へ行くようになった。6年2組の教室の後ろにある黒板に小さな紙がはってある。白宮と荒川の「出校表」である。どちらかが学校にいるためだが、会社の勤務表みたいだと白宮がわらった。休み時間には勇人を連れて海賊船をつくりに行った。何日かするうちに、クラスの他の子も付いてくるようになった。
「勇人くん。トンカチ使ってみるか」
 荒川が言うと、勇人はうなずいて釘を打った。他の子もノコギリを使ったりして参加した。
 木の棒でチャンバラごっこをしだした子がいた。荒川と目があうと一瞬やめた。何か言われるかと思ったらしい。ところが、荒川は笑った。
「おれも入れてくれよ」
 そう言って、自分も棒を取った。一番背の大きい子と戦いだした。二人ともなかなか強い。勇人はぼんやりと見ていた。白宮が心配してよっていくと、ポツリと言った。
「白宮さん。ぼく、弓をやってみたい」
 白宮は自分の耳を疑った。
「弓? 弓道か」
 白宮のことばに勇人がうなずいた。
「分かった。ぼくの知り合いで弓道の先生がいるから頼んでやる」
 白宮が言った。コピーのメンテナンスに行く会社の社長で、弓をやっている人がいるのを思い出したのである。
 その日の帰り、勇人のアパートにメモを残してその会社へ行った。
「ほう。小学生で弓道ですか。うれしいですな」
 社長が微笑むと勇人が頭を下げた。そこで社長は背筋をのばした。
「私が教えましょう。勇人君でしたな。今日から、私の弟子だ。師匠と呼びなさい。ここに連れてきてくださった白宮さんも師匠です。いいですね」
 勇人がうなずいて、この日から白宮は師匠と呼ばれるようになった。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:06│Comments(0)
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