2011年09月25日

現代へと続く海の道(仮題)27

 白宮は勇人のアパートの前に車を止めた。
「一度、お母さんにあいさつしておこうか」
 白宮の申し出に勇人は首をふった。
「母さん。遅いんです。二年前、離婚してから、昼間はスーパーでパートやって、夜はファミレスで働いています。帰るのはいつも夜中です」
 勇人はまっすぐに白宮を見た。
「じゃあ、勇人くん。お母さんに会えるのは朝だけか」
「朝は、いますけど寝てます。だから、学校へ持っていくお金がいるときは、テーブルにメモしておくと置いてあります」
 勇人は軽くわらった。白宮はなんだかたまらない気持ちになった。この子は、いろんなことを一人で背負っているんだと思ったら、アザが熱くなってきた。そして、なぜだか頭の中に映像がうかんだ。
 海に浮かんだ小さな島に何人かといる。その中に勇人もいて、手には水晶の玉と勾玉を持っている。一人ずつが順に白い鳥に姿を変えた。
 白宮は頭をふってわれに帰った。
「勇人くん。君のことは、おれや荒川さんや、先生や大人みんなでしっかり守るからな。あと、君のお母さんだって君のために忙しいんだ。心配するなよ。それからな、今度、荒川さんと神島へ行こうと思うんだけど、いっしょにいくか?」
 白宮が言うと勇人はうれしそうにうなずいた。部屋に入って行くまで白宮は車から見守った。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:10│Comments(0)
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