2011年09月28日

現代へと続く海の道(仮題)29 白宮の恐怖

 白宮は夕方、**小学校を出た。ナゾの女性占い師香坂に頼まれて、いっしょにコピー機のショールームへ行く。車で迎えに行くと言ったら、別の用があるからと駅前での現地待ち合わせになった。
 走りなれた国道は、いつになく車が少なかった。いい気持ちで走っていくと、一台の車が急に後ろに迫ってきた。ライトを点滅させて車間距離はほとんどおかない。白宮は後ろにきをとられながらスピードを上げた。前には大型のトラックが走っている。グングン近づいていたが、後ろに気を取られすぎていた。
「ああ~」
 白宮は思わず叫んで、ハンドルに顔をふせながらブレーキをふんだ。目の前に真っ赤な光が飛び込んできた。ブレーキライトだった。トラックが急ブレーキを踏んだのである。
 大きな音とともに体が前に押しつけられる。足元で鈍い音がした。車からおりようとして、全身から力がぬけていった。消えていく意識の中で、大きな黒い影が迫ってくるのが見えた。香坂がニヤニヤしながら顔をのぞきこんでいる気がした。白宮は夢を見ているのかと思った。

「だいじょうぶですかな。話を聞いても」
 暗闇の中から声がして、きりが晴れてくると、目の前に男の顔が二つあった。一人は白衣を着ている。もう一人は背広を着ていた。白宮と目があうと二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「よかった。意識がもどったようです」
 白衣の男が言った。白宮はわけも分からず体を起こそうとした。全然動かない。どうもベッドの上にいるらしい。
「ああ。まだ無理しないでください」
 白衣の男は、ここが病室であること、白宮が事故で重傷を負って運ばれたことを告げて出ていった。
「あのう。事故のこと、おぼえていますか?」
 背広の男に言われて、白宮は説明した。この時はまだ、自分が追突したと思っていた。背広の男はニヤリとして白宮を見た。
「あなたは、事故の加害者じゃないですよ。ねらわれたんです」
 白宮はわけが分からず、声を出そうとすると背中に激痛が走った。
「ああ。また来ます。無理しないで」
 背広の男は「村松」と名乗って名刺を置いた。部屋を出ていくときに、首筋に魚の形のアザが見えた。白宮は自分のアザを思い出した。荒川は心配しているだろうなと思って、また眠った。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 07:39│Comments(0)
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