2011年10月19日

現代へと続く海の道(仮題)46

 白宮たちを乗せた漁船は神島港に入った。
「なんか、なつかしい感じがする」
 上陸して最初に言ったのは勇人だった。吸いこまれるように路地に入っていった。白宮と荒川はキョロキョロと見まわしながらあとについていく。船を止めた鬼村は不思議そうに歩いた。
「この上に神社がある気がします」
 勇人は上り坂になった路地の途中で立ち止まった。白宮と荒川は顔を見合わせた。白宮もなんだかそこで神に祈っている映像が浮かんだ気がする。胸の奥で潮の音が聞こえる。荒川は白宮をじっと見た。
「白宮さん。勇人と、白宮さんとおれって、うーんと昔会ってたんじゃないか」
 荒川の言葉に白宮はうなずいてポケットから水晶玉を出した。中から朝日のような光が出ている。正鵠を射抜く矢のそうな鋭いそれでいてやさしい光だった。そして、アザがジンジンと痛み始めた。
「あれっ。肩のアザが痛みはじめたぞ」
 荒川は肩を押さえた。でもなんだかうれしそうだ。
「荒川さんからも出るかも知れませんね。水晶玉」
 白宮が言った。荒川がうなずいた。ちょっと遅れてきた鬼村が不思議そうにのぞきこむ。
「これ。白宮さんのアザから飛びだしたんです」
 荒川が説明すると、鬼村は笑った。
「南総里見八犬伝みたいですな」
 村鬼が言ったところで勇人の声が坂の上から聞こえた。
「白宮さん。荒川さん。やっぱりこの景色、はじめて見たんじゃありません」
 その声ははじめて聞くはずんだものだった。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:24│Comments(0)
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