2011年10月20日

現代へと続く海の道(仮題)47

 白宮たち三人は、声のする方へ登っていく。道は左に折れて上がり急な石段の手前で急に視界が開けた。海を越えてはるかに鈴鹿の山脈が見えた。右に目をやると、知多半島の師崎が浮かび上がって見える。手前にある海は島のまわりで白い波をたてている。
 白宮と荒川はまた顔を見合わせた。鬼村が呆れた声を出す。
「また、前世の記憶か? そう言えば、そんな話があったなあ」
 鬼村はポツリと言った。荒川が鬼村を見た。
「いや、なに、ばからしい話だよ。荒川くんも、伊良湖岬で東大寺の瓦を焼いていたことは知っているね。今日、船を出した港の近くに窯があったんだけど、その破片が発掘されてね。まあ、使い物にならない瓦を捨てたんだろうが、そこに落書きがしてあったんだ。「五人の勇なる者、玉を持って鳥となり 四方へ 蓬莱へと飛ぶ 生まれ変わりて 島をまもらん」ってな」
 鬼村が言い終わったころ、勇人が石段を下りてきた。
「白宮さん。荒川さん。早く来てください。神社の神主さんが宝物を見せてくれるって言ってます」
 勇人は顔を赤くして、息を切らしている。よほどあわてて降りて来たのだろう。三人が上っていくと、恵比寿の天井絵がある門のある神社に出た。玉砂利も引いてあり、小さいながらもきれいに手が入った神社だった。社殿の前には茅の輪が作ってある。
「ようこそ、お詣りです」
 白装束の神官が三人を迎えた。
「いい神社ですね。あの、十年以上前になると思いますが、この神島から銅鏡が出たと聞きました」
 白宮のことばに、神主はゆったり笑ってうなずいた。
「先ほど、そのお子さんから聞きました。特別にお見せしましょう」
「あの、特別って、私たちなにも許可証とか持ってないですよ」
 白宮はうれしいながら、ちょっとあわてた。神主は立ち止まってまたゆったりと笑った。
「人間の許可証なぞいりません。神様が、お見せするように望んでおられます」
 神主は言ってお社の裏にある小屋へと入って行った。



Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:27│Comments(0)
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