2011年10月24日

現代へと続く海の道(仮題)50

 白宮たちは、海沿いの道を歩いて行った。二〇〇mほどの砂浜が切れるとまた切り立った岩が出てきた。今度は石灰岩の白ではなく、普通に海の磯で見る岩場だった。島の側は学校が見え始めた。海から舞い上がった砂がグランドに積もっている。
「ここの石に何か書いてある」
 一番最後を歩いていた勇人が草の中に入っていった。膝ぐらいある草をかき分けている。どうやら石碑らしい。白宮達が行ってみると、掛け軸で見るような昔の字が書いてあった。
「鬼村さんなら読めますか?」
 鬼村に言われて、鬼村は草の中に座りこんだ。
「香姫、ここに眠る。と書いてあるな。大きい字は、横に小さい字が書いてあるがなあ、はっきり読めないが、『鯛島』という字と『白鳥』という字は見えるな」
 鬼村は石碑を文字を指でなぞって読んだ。
「香姫? どこかで聞いたな」
 白宮は小声で言ったが、この時は気にもとめなかった。港についた四人は漁船で神島の南をとおった。
「たぶん、このへんだと思う」
 鬼村は神島を見ながら速度を落とした。時は夕暮れ。海にはオレンジ色の帯が横たわり、海鳥が海面すれすれに飛んでいく。
「お母さん。もう苦しまないで。お母さん」
 急に勇人が泣き出した。船から身をのりだして海面をじっと見ている。それを見ていた白宮も胸がきゅーんとなった。アザが熱くなってポケットから水晶玉を出すと、小さな光が中でグルグル回っていた。
「勇人。君はきっと、遠い昔、ここにいたんだ。俺たちといっしょに」
 白宮は荒川を見た。荒川もアザを押さえてうなずいた。
 




Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:04│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。