2011年11月05日

現代へと続く海の道(仮題)61

 荒川はゲーム機を手にとった。メモリーカードを引き出してみている。
「あれ。このゲームって、市販のSDカードメモリに入れてある。デジカメとかのデータ用のやつだ」
 荒川は首をかしげた。白宮が学校の前で配っていたゲームだと説明してやっとうなずいた。
「へえ。ゲームの開発ができるソフトがあるとは聞いたけど、出来る人がこのへんにもいるんだ。それにしても、ただで配って続きのソフトを売ろうとはたくましいなあ」
 荒川はゲーム機を開いた。その瞬間目を細くした。
「これ。すごい光だなあ。こんなに強い光だと子どもは目を痛めるぞ」
 荒川は瞬きしながら、ゲーム機を操作して始まりのページを出した。白宮よりゲームにくわしいらしい。登場人物の説明がフラッシュしながら始まった。一番最初に出てきたのは「イサミ」という少年だった。ここは気を失う前に白宮も見た。白宮も時々目をそらしながら見ていた。
「荒川さん。この『イサミ』って勇人に似ていないですか」
 白宮が言ったところで画面がフェードして行った。無精ヒゲを生やした男で「常陸の国の荒瀬」という名前だった。
「これは、荒川さんみたいだ」
 白宮は明るく言ったのに、荒川は軽くうなった。
「常陸の国ってか? 常陸って茨城だよな。おれ父方の親戚が茨城の南のほうにいるんだ」
 荒川がポツリと言ったところで画面が切り替わった。「因幡のシロヒト」と言う男で、これは白宮にそっくりだった。白宮もびっくりした顔になり、そこで荒川がスイッチを切った。
「あんまり見続けると、俺たち二人とも倒れかねないな。頭がじんじんしてくる」
「それに、水晶玉が熱くなってくるんです」
 白宮も言った。
「なあ。勇人くん。の勇って言う字は「イサミ」と読めるよなあ。常陸の国の荒瀬は荒川の「荒」だし、「因幡のシロヒト」は白宮さんの「白」じゃないのか」
 荒川はちょっと目を見ひらいて、もう一度ゲームを開いた。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:11│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。