2011年11月16日

現代へと続く海の道(仮題)68

 荒川は勇人を送っていった。白宮は一度、家にもどった。早川の携帯ゲーム機を村尾に渡してしまいたかった。画面を見て気分が悪くなったこともあるし、大男がなにか細工していると聞くとなおさら気味が悪い。
 車に乗ってエンジンをかけると電話が鳴った。**小学校からだった。エンジンを切って電話に出た。勇人の担任だった。職員室かららしく声をひそめて話しているのが分かった。
「白宮さん。勇人くんは、いっしょじゃないですか?」
 担任の声は震えている。
「どうしたんですか?」
「さっき、早川くんが、そう、学級委員の早川くんが私のところへ来ました。それで、私の目を見て言うんです。『これから、勇人くんを殺しにいきます』って、怖い目でした。瞬きもしないんです。私、なにも言えないままで、かたまってしまいました。ほんとに動くことも出来なくて……」
 電話の向こうで担任が泣いているのが分かった。白宮も心臓がバクバクしてきた。なんとか自分を落ちつかせる。昨日、勇人が子どもたちに取り囲まれていたのを思い出した。
「先生。あなた、早川くんや勇人くんといっしょに死ねますか?」
 なぜかそんな言葉が口から出た。電話の向こうが静かになった。
「本気で戦わなければならない時が来たんですよ。今、勇人は弓道の先生のところにいます。ぼくはこれからそちらに向かいます。先生は早川君をさがしてください」
 白宮はそこまで言うと電話を切って村尾に電話した。早川のことを話してから車を出した。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:01│Comments(0)
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