2011年11月22日

現代へと続く海の道(仮題)73

 白宮と荒川それに、勇人の担任が駐車場に行くと二つの人影が見えた。
「白宮さん。今、ここに子どもが来ました」
 遠くから弓の師匠の声が聞こえた。勇人と二人で駆け寄ってくる。白宮と荒川が近づくと勇人が口を開いた。
「直人です。髪の長い女の人といっしょでした」
「たぶん。香坂だ」
 白宮は荒川に言った。勇人の担任と弓の師匠が不思議そうな顔ををした。
「学校の近くにある占い館の女です。子ども達にゲームを渡した大男の仲間で、大男は警察につかまりましたが女だけ逃げています」
 荒川がかいつまんで説明した。
「それで、早川くんはどこへ行ったんだ」
「たぶん、白宮さんたちが作った船だと思います。直人、ゲームを取り返しに来たんです。白宮さんに渡したって言ったら、船の方に向かって行きました。女の人といっしょに」
 勇人は校庭のすみを指さした。明かりもなく暗さが重なり合ってたまっているように見えた。荒川が車から懐中電灯を出して来て五人かたまって歩いた。五人のまわりだけ、明かりがつつんでゆっくり動いていく。ぼんやりと船が見え出すと深い海から浮かび上がってくるように見えた。
「早川くん。いるんだったら明かりをつけて」
 担任が声を張り上げた。どこからも返事はない。五人はかたまったままで船の中に足を踏み入れた。自分の足音さえ不気味に聞こえた。ゆっくりと進み甲板に出た。どこにも人の気配はない。
「ほーほっほっほー。みなさんおそろいになったようね」
 船のすぐ前の暗闇から女の声が上がった。明かりを向けると香坂がいやな笑いを浮かべて立っていた。片手で早川を抱えるようにして、もう片方の手でその首にナイフをつきつけている。風もないのに長い髪は空間に広がってゆらゆら揺れている。
「早川くん」
 飛び出そうとする担任を白宮が止めた。
「この子の命が欲しかったら、水晶玉を出して? あなた方持っているんでしょ」
 香坂が笑いを浮かべた。白宮のポケットで水晶玉が熱くなった。
 




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:27│Comments(0)
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