2011年11月29日

現代へと続く海の道(仮題)78

 白宮達は、**小学校への出入りが出来なくなった。一日に二.三回は学校の近くを通って船を見ていくだけだった。勇人は朝と帰り母親が送迎し帰りには弓道の練習に行っている。白宮と荒川は夕方、弓道の師匠の会社によって勇人と話した。
 三日たったが、学校ではとくに変わったことはないらしい。ただ、早川直人はあれから学校に来ていないらしく、勇人が聞いても担任は答えてくれないとのことだった。
 そんな四日目の夕方、勇人の師匠の会社にいるときだった。刑事の村尾から電話がかかった。
「白宮さん。今いいですか? 例の早川とかいう子どものゲーム機をこちらで色々調べたんですが、おもしろいことが二つ分かりました。まず、一つはあのゲームには人間には見えない光で、絵がかいてあります。それを使って、早川とかいう子にイジメをさせていたんです。それと、もう一つ、あのゲームには「大津の皇子」「麻績の王」という主人公と六人の主な人物が出て来るんですが、この五人がどうも、われわれに対応しているんです。『常陸の国の荒瀬』という人物は、荒川さんの『荒』でしょうし、『因幡のシロヒト』は白宮さんの『白』でしょう。そのあとに『瀬戸内の村尾と村国』という双子の海賊が出てくるんですが、これがどうも私と弟らしい」
 村尾はそこで一度言葉を切った。白宮が我慢できずにつづきを聞く。
「あとの二人は?」
「それが、鯛島の『イサミ』これは少年です。『勇』という字を使えば『勇人くん』になります。そこまではいいんですが、もう一人女が出てきます。これが『神島の香姫』というんです」
 村尾はここでまた黙った。
「香姫って、あの悪い占い師ですか?」
 白宮の声がひっくりかえった。電話の向こうでため息が聞こえた。白宮がもう一言言おうとしたとき、駐車場のすみの暗がりから小さなかげが現れた。白宮は村尾に告げて電話を切った。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 11:05│Comments(0)
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