2012年01月02日

居直り天女9

 ぼくは振り落とされないように、天女にしがみついていた。地上に近づいてくるにしたがって、今度は勇一になんて説明していいか考え出した。さっき天女に言われたことを勇一に言ったら彼はなんて言うだろう。考えるうちに地上についた。
「天女さん。おもしろかった。ナスカ平原を歩けるなんてすごいです」
 勇一はぼくたちを見つけると、満面の笑顔で走ってきた。天女の顔には企みがかたまって笑顔になっている。声も甘くやさしくなる。
「ねえ、勇一君。こうやってさあ、ハワイへ行ったり、ペルーまですぐこれるってことはさあ、なつかしい豊川へ行くこともできるのよ。和夫君には会えたけど、他の友だちにも会えたらいいよね」
 天女は勇一の顔をのぞきこみながらぐるりと回った。勇一は目を輝かせた。
「行きたいです。豊川に」
 勇一の答えを聞いて、天女は満足そうにうなずいた。
「裕子って女の子でしょ。いいの。いいの。私ねえ、こう見えても時々、縁結びのバイトするんだ。縁結びってわかる? 男の人と女の人が愛し合えるようにすすろことね。私うまいんだから」
 天女はぼくと勇一を順に見た。
「縁結びって、そんな、ぼくたち3人ただの友だちだって……」
 ぼくが言いかけたのを、勇一が止めた。勇一も同じことを言うと思った。ところが……。
「天女さん。ほんとにお願いできますか?」
 勇一が言った。真剣な目だった。ぼくはびっくりして思わず勇一を見た。
「ぼく、北海道へ来て、なにか心に穴があいた感じで苦しかった。和夫に会えてちょっと元気になったけど、楽しいけどやっぱり裕子に会いたくて、なんかそれが和夫に対する思いと違って、なんかこうもやもやするんです」
 勇一は一気にしゃべった。天女は大きくうなずいた。
「それが恋なのよ。サイコーよ。いいじゃない。じゃあ乗って! 私が恋のレクチャーしながら豊川へ向かうから」
 天女は急かしてぼくたちを背中に乗せて舞い上がった。





Posted by ひらひらヒーラーズ at 11:48│Comments(0)
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