2012年01月11日

青い炎を灯せ2

 椿のあとについてエスカレーターを上がると、小さな家ぐらいある平城京の模型が目に入った。赤い門の向こうに広場があり、奥にもう一つ仁王門のような門がある。その奥に立派な宮殿が建っていた。
 門と宮殿の間にミニチュアの電車が走っている。
「あそこが、清涼殿、聖武天皇のいらしたところです」
 椿が宮殿を指差した。明江は身を乗り出した。細かいところまで再現してある模型で役人の人形までおいてある。目の錯覚だろうか、宮殿からきれいな着物を着た女の人が出て行く気がした。
「あのう。清涼殿の右側にはなにがあったんでしょう」
 明江は女の人が見えた側を指差した。小さな池にはりだした東屋がある。
「ああ、そこは東院です。今で言う迎賓館、外国から来た使節をもてなすところです。そこを越えると法華寺です」
 椿が指差した先はなにもない。模型は東院までで終わっている。なのになぜか、明江の胸がおどった。頭の奥のほうで、透き通った声がする。
「あのう。法華寺ってどういうところなんですか?」
 明江はすがる気持ちになっていた。椿が驚いた顔になった。
「光明皇后が建てられたお寺で、もともとは藤原不比等の屋敷があったところです」
 椿がゆったりと答えると、明江も少し落ち着いた。それとともに、心の中に入道雲のようなものが湧き上がって拡がっていった。
「光明皇后のことを中心にして、平城京を紹介したい。決めました」
 明江は言いながら歩いて模型の右はしに立った。そして、頭の中で高校でならった歴史を思い出した。確か光明皇后は聖武天皇の皇后で皇族の血筋でないことから、皇后になることを反対されていた。反対したのは、確か長屋王とかいう人だった。国があれはじめたために、家を失う人が増え、その人達を救うために療養所を作った人だった。
「あのう。よかったら、当時の衣装着ませんか」
 椿の声で我に返った。椿は手に衣装を持っていた。
 




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:25│Comments(0)
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