2012年01月20日

青い炎を燃やせ8

「あの青い炎さえあれば」
 明江は自分の口から出た言葉の意味が分からなくて、思わず喉を押さえた。
「光明子さまは、まだあの話を信じていらっしゃるんですね」
 椿がマユを寄せてのぞきこんだ。横からさっきの男が口をはさむ。
「青い炎ってなんですか? おれ、そう言うの大好きなんです」
 これには、椿、今は舎人の親王がいやな顔をした。上から下まで見つめて一つ咳払いをした。男は顔を下に向けた。明江は少し気の毒になった。この男に救い出されなければ、明江も椿(舎人の親王)もまだ土の中なのだ。
「ねえ。舎人の親王。私は女で腕力では男にかなわないし、あなたはいろんなことを知ってはいるけど、もう、お歳でしょ。だったら、この人仲間に入れましょうよ。頼もしいし、ちょっとかわいいじゃない」
 明江は舎人の親王と男を順に見た。男は顔をあげた。舎人の親王はあいかわらず渋い顔をしている。
「あのう。おれ、けっして怪しいものじゃありません。東国から租(税の米)を運んできました。三河丸といいます」
 三河丸は笑顔になった。舎人の親王は困った顔を2.3度ふって口を開いた。
「そうか。それはご苦労であった。これから国へ帰るのか。まあ、2.3日ゆっくりしていくがいい。そのかわり、光明子様に無礼をはたらくでないぞ」
 舎人の親王が言うと、三河丸は目をかがやかせた。
「分かりました。さっき言ってた。青い炎ってなんですか」
 三河丸が舎人の親王に歩み寄った。明江もさっきから聞きたいと思っていた。舎人の親王は一つ咳払いをしてから話し出した。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:20│Comments(0)
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