2012年01月30日

青い炎を灯せ13

 法華寺の前には長い行列ができた。お粥を配る尼さんの前には人だかりができて、若い尼さん達がその後ろに人々をならばせた。
「ありがたい。ありがたい。生き仏じゃ」
 やせて骨が飛びだした者たちが尼さんに手を合わせる。明江は一人の少年に声をかけた。
「あなたは、都で生まれたの?」
「いえ。ぼくは東の国から、租(税の米)を運んで来ました。こちらについたところで、干飯がつきました」
 明江は言ったことの意味が分からない。横から舎人の親王が口をはさむ。
「この者たちは、米を運んで都まで来るのに、食べ物は自分で用意して来るのです。今年などは不作ですから、都へ納める米で精いっぱい。とても、帰りの米まで持って来てはいません」
「たいへんじゃない。余分に食べていきなさいよ」
 明江が言ったところで、三河丸がもどってきた。あちこち歩き回ったせいか体中土ホコリだらけだった。
「お疲れさま。大勢、集まってきたよ。だけど、ホコリだらけになったわね」
 そこまで言って、明江はまわりの尼さんを見た。
「ねえ、このお寺って、お風呂はないの? ええ? お風呂知らないの? しっかりしてよ。お湯に入って体を洗って、暖めるのよ」
 明江の勢いに尼さんはちょっとたじろいだ。
「あのう。こちらはもともと不比等様のお屋敷でしたから、湯はわかせますし、蒸し風呂ならありますが」
「それ。それ。用意して」
 明江は湯を用意させて、三河丸に入らせた。まだたっぷりと湯は残っている。
「あなたたちも、体洗いなさいよ」
 明江は、飢えた者たちを呼んで洗わせた。舎人の親王は苦虫をかみつぶしていた。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:57│Comments(0)
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