2012年02月06日

青い炎を灯せ20

「光明子。いったい、何をやっておるんだ。食いつめ者に粥などふるまって。今、この国は、唐とつき合って行かねばならんのに、無駄な金を使うな」
 宇合のいい方は冷たかった。それに明江は我慢ができなかった。
「ちょっと、ひどいいい方じゃありませんか? 立派なお寺がいくつ建っても大きな建物が出来ても、そこで暮らす人たちが幸せじゃなければなんにもならないでしょう」
 明江が強く言うと、宇合はちょっとひるんだ。一歩下がりながら小声で言う。
「光明子。おまえ、天子様と同じようなこというなあ。まさか、おまえが天子様にへんなこと吹き込んだんじゃないだろうな」
 宇合はたじろぎながら言った。明江はちょっとうれしくなって、山門にいる僧形の天皇をふりかえった。そして、天皇が恐れていた大津の皇子の怨霊の話を思い出した。
「もちろん。なにも吹き込んでなんかいませんよ。そんなことより、大津の皇子の怨霊のことなにかご存じじゃありません?」
 明江が一歩踏み込んで言った。宇合が明江をじっと見て声をひそめる。
「おまえ、その話どこで聞いた? 舎人の親王か? まあ聞いてしまったものは仕方がない。今から時間あるか? ついてこい」
 宇合は馬を引きながら歩いた。明江が後から続く。
「どこへ行くんですか?」
 明江が聞くと、宇合は
「おまえも、子どものころにお会いしているはずだ。長屋の王さまのお屋敷だ」
 




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:24│Comments(0)
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