2012年02月08日

青い炎を灯せ22

 長屋の王は先にたって歩き出す。小さな森の奥に小屋が建っていた。戸を開けると体半分中に入れて明江を呼んで先に中に入らせる。小屋には窓がなくうす暗い。長屋王がロウソクに火を灯した。板敷きの床に細長いものが何本も積んである。目を凝らすと掛け軸のような巻紙であるのが分かった。長屋王がその一本を手にとり明江の前にのばして見せた。
「これは、薬師寺の縁起を書いた物です。絵物語になっています」
 長屋王が指さしたところには若者が二人描いてあった。一人は背が高く体格がいい。もう一人は小柄でやせていた。
「こちらが大津の皇子」
 長屋の王は体格のいい若者を指さした。
「じゃあ、こっちのやせた人は?」
 明江が長屋王を見た。
「その方は、草壁の皇子。天子様のおじいさまになりますが、この方は体が弱くよくご病気をされていました」
 長屋王は明江を見てから、次の巻物をのばした。何人かの男達にかこまれて二人がつかみあっている。
「けんかしているの?」
 明江が聞くと、長屋王はうなずいた。
「天武帝が崩御されて喪に服しているあいだに争いが起こりました。ささいなことから口論になり、危うく豪族達を巻き込んで乱が起こりそうになりました」
 長屋王はそこまで言うと、次の巻物をのばした。馬に乗った大津の皇子が大きな鳥居の前に立っている絵だった。
「ある方がとりなして、草壁様は都に大津の皇子は伊勢にやられました」
 長屋の王は言った。
 




Posted by ひらひらヒーラーズ at 10:54│Comments(0)
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