2012年02月11日

青い炎を灯せ25

「光明子さま。どうか。されましたか」
 長屋王が明江をのぞきこんだ。明江は一度目をそらした。そして、小さな声で話し出した。
「思い出してしましました。未来を」
「未来? 昔のことではなくて?」
 長屋王は目を見ひらいた。明江はなんだか悪いことをしている気がしてきた。こんなことを言って誰が信じるだろう。長屋王はとくにまじめそうに見える。明江は思いを決した。
「信じてもらえないかも知れませんが、私、一三〇〇年後の時代から来たんです」
 長屋王をじっと見ながら言うと、空気がかたまった気がした。長屋王は視線さえ動かそうとしない。その瞳に明江の不安そうな顔が映っている。
「そういうことも、あるのかも知れません。千年前の炎が伝わっているんです。逆に遠い未来から人が迷い込むこともあるのかも知れません」
 長屋王はやわらかくわらった。
「私の言ったこと、信じてくれるの?」
 今度は明江が目をみはった。長屋王は静かにうなずいた。
「私はどんな相手とも、言葉だけでなく、魂で話します。あなたはウソなんか言っていません。どんな不思議さより私はあなたを信じます」
 長屋王の言葉に明江は涙が出てきた。うつむいても涙がこぼれてくる。うつむいている肩を長屋王がそっと抱いた。明江の胸の青い炎が灯った気がした。
「光明子。帰るぞ」
 宇合の大声が外から聞こえて、明江は長屋王から離れた。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 10:11│Comments(0)
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