2012年04月25日

青い炎を灯せ62

 清涼殿にもどると、宇合が待っていた。難しい顔で明江によってくる。
「光明子。長屋王が昨日信楽まで来たんだ。それでへんなことをいうんだよ。なんでも、行基という坊主がこのごろ、民をまどわせているらしい。これまで水が足りなかったところに水を引いて畑を作ったりしていると言うんだ。人々は行基に心をよせているんだが、役人達はだれも顔を見たことがないんだ」
 宇合の言葉を聞きながら、明江は心の中で笑いを浮かべた。まさか、行基の正体が天皇自身だなんて誰も想像ができまいと思った。それでも顔は平静をよそおう。
「でも、兄さん。その行基さんて人、水を引いて畑を増やしているんでしょう。立派な人じゃない」
 明江はとぼけて答えた。
「まあ、立派かどうかはともかくとして、おれは行基を仲間に入れたいのだ。藤原の養子にしてもいいと思っている。さっきも言ったが、これまで作物の取れなかった畑に水がいく。おまえも知ってのとおり、開墾した土地は三代先まで税金がかからない」
 宇合は明江の近くによってニヤリと笑った。明江はあきれた顔をした。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 07:02│Comments(0)
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