2012年07月12日
青い炎を灯せ96
「皇后様。お呼びですか?」
人混みの中から宇合が出てきた。舎人の親王が頭を下げて下がっていった。
「兄さん。やはり長屋王が呪っていたのですか」
明江の言葉に宇合はにやりとした。明江の横に来て小声になる。
「光明子。おまえのおかげで、やっかい払いができた。なにか言いがかりをつけることがないかと探していたんだ」
そう言った宇合の目はヘビのようだった。明江の背中に冷たいものが走った。
「兄さん。ちゃんと調べたんでしょうね」
明江はちょっと不安になった。宇合は一瞬目をそらした。口の中でなにか言っている。明江はその目の前に行きじっと宇合を見た。
「証人はいるんだ。邸で木の手入れをしていた男が二人、呪いの木札を見たと言っている」
宇合の言い方は、語尾があいまいだった。明江が宇合の肩をつかんだ。
「それで、長屋王はなんと言ったの?」
明江の強い言い方に、宇合はちょっとたじろぎながら口を開いた。
「それがな、左大臣本人に事情を聞こうとして、おれが邸に出向いたら、いきなり火の手があがったんだ」
宇合が言い終わらないうちに、まわりにいた群衆からひそひそ声がいくつも聞こえた。
「いきなり、大勢の兵に囲まれて、罪人あつかいされたら、長屋王様のように、気位の高い方なら自害を考えるだろう」
明江は目を見ひらいた。
「宇合兄さん。兵を連れて邸を囲んだの?」
「しかたないだろ。長屋王がおれを呪ってきたらこまる」
宇合は叱られた子どもののような顔をした。
人混みの中から宇合が出てきた。舎人の親王が頭を下げて下がっていった。
「兄さん。やはり長屋王が呪っていたのですか」
明江の言葉に宇合はにやりとした。明江の横に来て小声になる。
「光明子。おまえのおかげで、やっかい払いができた。なにか言いがかりをつけることがないかと探していたんだ」
そう言った宇合の目はヘビのようだった。明江の背中に冷たいものが走った。
「兄さん。ちゃんと調べたんでしょうね」
明江はちょっと不安になった。宇合は一瞬目をそらした。口の中でなにか言っている。明江はその目の前に行きじっと宇合を見た。
「証人はいるんだ。邸で木の手入れをしていた男が二人、呪いの木札を見たと言っている」
宇合の言い方は、語尾があいまいだった。明江が宇合の肩をつかんだ。
「それで、長屋王はなんと言ったの?」
明江の強い言い方に、宇合はちょっとたじろぎながら口を開いた。
「それがな、左大臣本人に事情を聞こうとして、おれが邸に出向いたら、いきなり火の手があがったんだ」
宇合が言い終わらないうちに、まわりにいた群衆からひそひそ声がいくつも聞こえた。
「いきなり、大勢の兵に囲まれて、罪人あつかいされたら、長屋王様のように、気位の高い方なら自害を考えるだろう」
明江は目を見ひらいた。
「宇合兄さん。兵を連れて邸を囲んだの?」
「しかたないだろ。長屋王がおれを呪ってきたらこまる」
宇合は叱られた子どもののような顔をした。
Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:08│Comments(0)