2012年07月14日
青い炎を灯せ97
宇合は逃げるように離れていった。呆然とする明江に舎人の親王が話しかける。
「私も気がつかないうちに、邸をかこんだようです」
明江はじっと舎人の親王を見た。それから思い切って口を開いた。
「すぐに火の手が上がったんですか?」
「朱雀大路を兵が馬の足音を響かせて来たそうですので、右大臣が邸の前に着いたときには運命を悟られたでしょう」
舎人の親王はつらそうに答えた。明江がなにか聞き返そうとしたその時、若い官人が走り寄ってきた。
「皇后さま。法華寺から預かってきました」
そう言って、明江に手紙をわたした。巻紙のようなものにくずし字がならんでいる。明江が読めずにいると、舎人の親王が横からのぞきこんで声をだして読み始めた。
「法華寺へ帝の財宝を運びこみました。古くから帝に伝わるものです。安全な場所で大切にしてください」
それを読んで明江と親王の顔色が変わった。
「長屋王はこうなることを知っていたのか」
舎人の親王は小さな声で言った。明江は髪を振り乱して叫んだ。
「誰か、邸から生き残った者はいないの?」
明江の呼びかけに一人の少年が声をあげた。
「私は、右大臣に連れて行かれた二人といっしょに働いていました」
色の黒い少年が人混みから出てきた。
「私も気がつかないうちに、邸をかこんだようです」
明江はじっと舎人の親王を見た。それから思い切って口を開いた。
「すぐに火の手が上がったんですか?」
「朱雀大路を兵が馬の足音を響かせて来たそうですので、右大臣が邸の前に着いたときには運命を悟られたでしょう」
舎人の親王はつらそうに答えた。明江がなにか聞き返そうとしたその時、若い官人が走り寄ってきた。
「皇后さま。法華寺から預かってきました」
そう言って、明江に手紙をわたした。巻紙のようなものにくずし字がならんでいる。明江が読めずにいると、舎人の親王が横からのぞきこんで声をだして読み始めた。
「法華寺へ帝の財宝を運びこみました。古くから帝に伝わるものです。安全な場所で大切にしてください」
それを読んで明江と親王の顔色が変わった。
「長屋王はこうなることを知っていたのか」
舎人の親王は小さな声で言った。明江は髪を振り乱して叫んだ。
「誰か、邸から生き残った者はいないの?」
明江の呼びかけに一人の少年が声をあげた。
「私は、右大臣に連れて行かれた二人といっしょに働いていました」
色の黒い少年が人混みから出てきた。
Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:34│Comments(0)