2012年09月29日

さらわれたって屁の河童5

 駅前のトイレに向かって歩きながら、ぼくたちはいろんな想像をした。洗面鏡の前までくると、ゆうとの携帯が鳴った。
「ゴボゴボ ジュクノパンフレット モッテキタカ ソコニオイテ メヲツブレ」
 電話の声に従って、パンフレットを置いて目を閉じた。生臭いにおいと、紙を手にとる音がする。目を開けると、洗面台に緑色の手袋が落ちていた。
「ゴボゴボ サラニ ミズヲ ヤッテモラウ オレイニ ミズカキ カシテヤル」
 電話はそこで切れた。ぼくは緑色の手袋を手にしてみた。ちょっとぶよぶよしているが、ゴムみたいな感じだった。はめてみると、指の間に透明な水かきがついている。ゆうとはカエルみたいだと笑った。
 家に帰ると母さんが先に帰っていた。
「幸之助。今、塾の帰り? ちょっと遅いんじゃない? 携帯、せっかく買ったのにちゃんと持ってる? さっき鳴らしたのよ」
 ぼくはちょっとひやっとしたけど、母さんに視線を合わせずに答えた。
「授業の間は、切ってあるんだ。そいで終わってから、先生に聞きたいことがあってちょっと遅れただけ」
 そこまで言って、自分の部屋に入った。机の上に皿をおいて水をいれた。昨日よりちょっと皿が大きくなった気がした。右手に水かきをつけて、皿を頭の上においてみる。なんか本物のカッパになったような気がした。
「幸之助。早くお風呂入っちゃいなさいよ」
 階段のしたから母さんの声がした。あわてて皿と水かきを机の下に隠して、風呂へ行った。



Posted by ひらひらヒーラーズ at 07:59│Comments(0)
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