2012年11月28日

ひらひら村の夕陽8

「姑が、私のことを言っているんですか? だったら、子どもたちがちゃんと話してくれます。親子の仲は大丈夫です。問題なのは姑と私なんです。子どもたちを巻き込みたくないんです」
 最後の方は涙声になってしまった。それでも男は申し訳なさそうに頭を下げるだけだった。
「子どもさんからもうかがいました。やっぱりあなたから、言葉で暴力を受けていたと、傷ついていたと証言しました」
 男はそこまで言うと、手元にあったファイルに何か書き込んだ。それからゆっくり顔を上げた。
「今、書類を出しますので、必要事項を書き込んでください。今はご主人と別居されているとのこ、とでよろしいですかな。子どもさんはご主人とおばあさまが引き取られます。まあ落ち着かれてからよくお話されてください」
 男は一方的に言って席を立った。裕子が後を追って廊下に出ると、姑と子どもたちがいた。
「勇一郎、大樹帰りましょう」
 裕子の言葉を姑がさえぎった。
「裕子さん。前にも言ったでしょう。子どもたちのことを第一に考えてもらえなければ困ります。あなたが一人の女性として幸せになるのをどうこう言うつもりはありませんが、子どもたちは私が守ります。」
 姑は子どもたちの手を引いて帰ろうとする。裕子が後を追いかけようとすると、事務室から出てきた男たちに止められた。裕子は大声を上げて叫んだが、姑は二人の手を引いてタクシーに乗り込んでいった。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 12:27│Comments(0)
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