2012年12月06日

ひらひら村の夕陽13

「ええ? しめちゃうの」
「あたりまえじゃない。私一人しかいないんだから、お客さん来られてもこまるもん。それにあなただって、人に聞かれたくないでしょ」
 裕子は女をテーブル席に座らせて、紫の布をしいた。両手でカードをシャッフルしてからまとめると、三つの山に分けた。それを女に一つに重ねさせると、受け取って扇状に広げて顔をあげた。
「どんなことを見てほしい?」
 ゆっくりと顔を見ると、女は目をかがやかせて裕子を見た。
「裕子さん。いつもと違う人みたい。本物の占い師って感じ。あのねえ、今付き合っている彼のこと見てほしいんです。もう長い付き合いなんだけど、なかなか結婚とかの話にならなくて」
 女の言葉の切れ目に裕子が口をはさむ。
「あなたとしては、どうなの? 彼と結婚したいの?」
 女はうなずいてから、首をかしげた。
「なんだか。よく分からない。友達がみんな結婚するから、なんかしないといけないみたいな気もするし、でも、もっと自由でいたいし……」
 裕子は軽く笑って、扇状のカードを指でしめした。
「じゃあねえ、今のあなたの奥の気持ちをカードで見てみましょう」
 そういって一枚カードを引かせた。裕子が裏返すと、一面に黄色い花が咲いている絵が描いてあった。花の向こうに連なった山が見える。しばらくカードを見てから口を開いた。
「これはねえ、あいまいさを表すの。あなたの中で、もっといい相手がいるかも知れないって気持ちと、今の彼を失うのは怖いって気持ちがせめぎあって、動きが取れない状態ね」
 裕子がカードを見ながら一人ごとのように言うと、女は目を見開いて笑顔になった。
「すごい、当たってる。それも、自分でははっきり意識していなかった。言われてみるとしっくりする。
 感じ。すごいなあ。ねえ、彼との相性うらなって」
 女が言って裕子がうなずいた。説明して4枚のカードを引かせた。
「じゃあ、じゅんに見ていくわね。これが今のあなたを表すの」
 裕子は1枚のカードをめくった。月に照らされて男と女が座っている。
「これは何?」
 女がのぞきこむ。
「これはねえ、新しい始まりを表すの。あなた最近なにか始めてない?」
 裕子が聞くと、女はのけぞって手を打った。
「すごい。よく分かりますね。ちょっと前に、ベリーダンス始めたんです」
「楽しそうじゃない」
 裕子の言葉に女は笑顔でうなずいた。そして続ける。
「それが、楽しいのはいいんですけど、始まってから時間が足りなくなって、なかなか彼と会えないんです。それで、彼が不機嫌になることが多くて」
 裕子はうなずいた。それからカードに目をうつした。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:34│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。