2013年02月07日

ひらひら村の夕陽35

 あくる朝、目がさめると裕子はショッピングモールで買ってきた服を広げてみた。どれも今までの自分では考えられないデザインだった。派手さだけでなく、誰かをそれも男をイメージして服を選んだことがなかった。
 その一式を身につけて鏡の前に立ってみる。鏡の中の裕子に強く見つめられた気がしてどきりとした。
「私って、自分でも気づいていない私がいるんだ」
 鏡に向かってにやりとしてから店に出た。

 その日最初の客が入ってきた。いつもくる女子大生だった。
「あれ? 裕子さん変わったね。なんか、肉食獣みたい」
 女子大生はまぶしそうに裕子を見た。裕子も悪い気はしない。ゆったりと笑いを浮かべる。
「私ねえ、恋をしちゃった」
 裕子がイタズラッぽく言うと、女子大生は身を乗り出してくる。
「ねえ。面白そう。相手は誰? もしかして不倫?」
 女子大生はうれしそうに笑う。裕子は顔をしかめて手のひらをゆらした。
「それが、分からないのよ。奥さんがいるどうか、どこに住んでいるかも」
 裕子は、昨日のショッピングモールでのことを話した。女子大生は、目を輝かせて言った。
「裕子さん。どんどん突き進んで! 応援するから」

 女子大生が帰って行くと、裕子は一人でカードを引いてみた。浜辺に立ったカップルと三日月がついたカードだった。



Posted by ひらひらヒーラーズ at 19:21│Comments(0)
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