2013年09月28日

ひらひら村に夕陽70

 あくる日、裕子の店に元夫から電話がきた。
「さっそく、電話くれたね。なんだかちょっと複雑」
 裕子は電話に向かって苦笑いした。受話器から小さな声がもれた。
「ごめん」といった。それから、午後から店にくることを伝えて場所を聞いた。
 元夫は店に着くと、中を見回した。
「やっぱり、裕子は強いよなあ」言いかけて、裕子の視線に気づき言葉をとめた。
 裕子はテーブル席をすすめて布を敷いた。カードをシャッフルしていく。
「まずは、今の状況を話して。整理していくから」
 元夫に向けて、扇状にカードを広げた裕子はまっすぐに目を向けた。
「裕子が出て行ってから、母さんが子どもたちの面倒をみて、去年、二人とも独立した。その前から付き合っていたんだけど、母さんもいなくなったところで、結婚したんだ」
 元夫が言いかけたところで、裕子が止めた。
「あなたって、なんか、いつも状況で動くのよね」
 元夫はしたを向いてうなずいた。頭をかく。
「それで、相手に連れ子がいて、小さかったんだけど。この子がかわいくないんだ。結婚してから」
 裕子は苦笑いした。  
タグ :元夫連れ子


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2013年09月21日

ひらひら村の夕陽69

「そんなのいや。私、あのあとどんな思いしたと思う?」
 裕子は半泣きになった。元夫はなにも答えない。
「あなたってさあ、自分で何もしてないんじゃない? 私と別れる時だって、お母さんのいいなりで、けんかしたのは私とお母さんだったじゃない」
 裕子の言葉に、元夫は黙ったうなずいた。それから、ゆっくり顔をあげた。
「裕子ってさあ、強いよな」
 これを言われて、裕子が切れた。
「いい加減にしてよ。私だって弱い女でいたかったわよ。誰のせいよ」
 大声に店中の視線が集まった。元夫はじっと裕子を見ている。裕子は少し落ち着いて声を落とした。
「まずは、あなた幸せになってよ。それしかない」
 そういってから、名刺を出した。
「今、私カフェやりながら、カード占いやってるの。あなたのこと、夫としては終わったけど、お客さんとして面倒みようか」
 そういって、先に店を出た。  

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2013年09月16日

ひらひら村の夕陽68

 元夫の表情が少しゆるんだ。
「じつは、息子のこと、ずっと思っていたんだ。あいつが背負っているもの少しでも軽くしたかった」
 元夫はぽつりぽつりと話し出した。裕子のいなくなってからのことを。
 裕子がいなくなったあと、姑が世話をし子どもたちは表面上問題なく成長しているように見えたという。上の子は大学を出るとそのまま東京で就職したという。弟は高校をでて専門学校へすすみ卒業して務め始めたという。
 このタイミングで、元夫は再婚し数年たったところで姑が病死したという。
「結婚を意識し始めたところで、私とあなたのことがひっかかったってこと?」
 裕子は思い切って聞いた。もと夫は小さくうなずいた。裕子はなんだか家を飛び出す前に夫を見ているような気がした。
「もちろん、責任は感じるけど、だけど、そんなのあの子の言い訳なんじゃない? 親が離婚してもちゃんと幸せになっている人いっぱいいるじゃない」
 元夫は切なそうに顔を上げた。
「たぶん。それだけじゃないんだと思う。俺なんだよ。きっと」
 元夫は顔を振った。
「それ、どういうこと?」
 裕子がのぞきこんだ。
「俺が幸せそうじゃないと、希望が見えないんだと思う」
 元夫はしぼりだすような声を出した。
「あなた。幸せじゃないの?」
 裕子の言葉に元夫はうなずいた。  

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2013年09月15日

ひらひら村の夕陽67

 裕子は元夫に無理やり約束させて、次の日曜日会うことになった。名古屋の駅前にある喫茶店で待ち合わせした。

 その日曜日。休みの朝、駅前の喫茶店は静かだった。通りを歩く人も少ない。
 元夫は少し肩が小さくなって見えたが、そんなに老けた感じはしなかった。
「20年ぶりだよね。この前、**にあった」
 裕子は前の自宅で、息子に会ったことを話した。元夫は顔を上げなかったが、首が動いたので聞いていることは分かった。それでも何も言わない。
「あのさあ、今、幸せ?」
 裕子が小さな声で言うと、元夫はゆっくり顔をあげて切なそうにうなずいた。裕子の中でこみ上げてくるものがある。
「いいのよ。幸せで。私だって、それなりにやってるんだもの。それにあなたを責めたかったんじゃないんだ。そうじゃなくて謝りたかったのかもしれない」
 裕子の言葉に元夫は目を見開いてみた。裕子は続けた。
「私。もう、いい加減に、あなたも私も許して。そいでまじめに生きたいの」
 裕子の言ったことに、元夫は中途半端な笑いを浮かべた。それから柔らかい目で裕子を見た。
「あの時、私、どろんこになればよかった。あなたが好き、子どもたちが好き、それだけで生きればよかった」
 元夫の目が潤んできた。なにかいいたそうに口をもごもごする。
「ぼくも、ちゃんと生きればよかった」
 元夫が小声で言った。
「ねえ。この前、**に会ったとき、結婚のこと聞いたんだけど。いっしょに応援しない?」
 裕子が言って、元夫がうなずいた。  

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