2011年09月30日
現代へと続く海の道(仮題)32
白宮は急に背筋が寒くなった。心臓が速い脈を打った。首筋のあたりでドクンドクンと血の流れを感じる。空気が重くなって何か生臭いような気がしてきた。廊下をバタバタと足音近づいてくる。そして勢いよく病室の引き戸が開いて大柄な女が入ってきた。両手でナイフをにぎっている。
「勇人に父親がいないからって、バカにしないで。あの子をいじめる子はゆるさない。あの子を守らなければならないの。悪く思わないで。こうするしかないの。あなたを殺さなければ、勇人が死ぬの。そんなのいやなの。勇人が死んだら私ひとりぼっち。そんなのいやなの」
女は呪文のようにつぶやきながら、白宮のベッドに近づいてきた。目元がちょっと勇人に似ている。
「あのね。違うんです。ぼくと荒川さんは、勇人くんをいじめてなんかいないです」
白宮は大声で言った。それでも女は視線をゆらしもしなかった。じっと白宮を見すえてナイフを突きだしてきた。白宮は起きあがることもできない。上半身を左右にずらすのがやっとだった。
「やめてください」
白宮は叫びながら、二度ナイフをよけた。女は無表情のまま体勢を立て直し、白宮の胸に向かってナイフを突きだした。まるでスローモーションのように見えた。ゆっくりと刃物の銀色が迫ってくる。恐怖のあまり目を閉じそうになったそのときだった。いつもジンジン熱くなる魚のアザが盛りあがって、光のようなものが飛びだした。まっすぐ白い線を引いて女の顔にぶつかっていく。乾いた音がして、女が床に倒れた。透き通った石がころがるのが見えた。
女は白目をむいて倒れている。白宮は口を開けたままで女を見ていた。
「どうしました?」
物音を聞きつけて、看護師が来た。床に倒れている女を抱え起こした。女が意識を取り戻したところで荒川がやってきた。
「なにをしたんだ」
荒川は女に叫んだ。女は荒川と白宮の顔を見たところで両手で顔をおおって泣き始めた。
「すみません。私、**小学校へ行ったのはおぼえています。荒川さんでしたね。あなたに失礼なことを言ったのもおぼえています。でも、信じてください。あれ、私が言ったんじゃないんです。勝手に声が出てたんです。それでどうしようと思っていたら……。そこからおぼえてないんです」
女は荒川にすがりつくように言った。
「ふざけるな。そんなことが信じられるか」
荒川は手をふりほどいて叫んだ。
「荒川さん。待ってください。この人、ほんとにおぼえてないんだと思います。だって、さっきと目つきがぜんぜん違うもの」
白宮が言って、やっと荒川も落ちついた。
「勇人に父親がいないからって、バカにしないで。あの子をいじめる子はゆるさない。あの子を守らなければならないの。悪く思わないで。こうするしかないの。あなたを殺さなければ、勇人が死ぬの。そんなのいやなの。勇人が死んだら私ひとりぼっち。そんなのいやなの」
女は呪文のようにつぶやきながら、白宮のベッドに近づいてきた。目元がちょっと勇人に似ている。
「あのね。違うんです。ぼくと荒川さんは、勇人くんをいじめてなんかいないです」
白宮は大声で言った。それでも女は視線をゆらしもしなかった。じっと白宮を見すえてナイフを突きだしてきた。白宮は起きあがることもできない。上半身を左右にずらすのがやっとだった。
「やめてください」
白宮は叫びながら、二度ナイフをよけた。女は無表情のまま体勢を立て直し、白宮の胸に向かってナイフを突きだした。まるでスローモーションのように見えた。ゆっくりと刃物の銀色が迫ってくる。恐怖のあまり目を閉じそうになったそのときだった。いつもジンジン熱くなる魚のアザが盛りあがって、光のようなものが飛びだした。まっすぐ白い線を引いて女の顔にぶつかっていく。乾いた音がして、女が床に倒れた。透き通った石がころがるのが見えた。
女は白目をむいて倒れている。白宮は口を開けたままで女を見ていた。
「どうしました?」
物音を聞きつけて、看護師が来た。床に倒れている女を抱え起こした。女が意識を取り戻したところで荒川がやってきた。
「なにをしたんだ」
荒川は女に叫んだ。女は荒川と白宮の顔を見たところで両手で顔をおおって泣き始めた。
「すみません。私、**小学校へ行ったのはおぼえています。荒川さんでしたね。あなたに失礼なことを言ったのもおぼえています。でも、信じてください。あれ、私が言ったんじゃないんです。勝手に声が出てたんです。それでどうしようと思っていたら……。そこからおぼえてないんです」
女は荒川にすがりつくように言った。
「ふざけるな。そんなことが信じられるか」
荒川は手をふりほどいて叫んだ。
「荒川さん。待ってください。この人、ほんとにおぼえてないんだと思います。だって、さっきと目つきがぜんぜん違うもの」
白宮が言って、やっと荒川も落ちついた。
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22:44
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2011年09月30日
現代へと続く海の道(仮題)31
次の日の夕方、いつもの時間になっても荒川は現れなかった。手だけは動くようになった白宮は前に荒川に持ってきてもらった本を読んだ。伊勢の海の歴史の本を読み終えて、次は万葉集の本だった。伊勢の海に関係する歌の解説本で素人でも分かりやすい。意外にも神島を詠んだ歌が三首ある。一首は柿ノ本人麻呂の歌で、伊勢行幸の祭に歌われたらしい。残りの二首が変わっている。
麻績の王というナゾの皇族に、名前も知られていない人物が問いかけている。
「うちそを麻績の王 海士なれや 伊良湖の島の 玉藻かりおす」
(麻績の王は 漁師だろうか そうではないのに 伊良湖の島の 海藻を採って食べておられる)
それに対して、麻績の王が答える。
「うつせみの命を惜しみ 波に濡れ 伊良湖の島の玉藻かります」
(この世の命が惜しいので、波にぬれながら 伊良湖の島の海藻を食べているのです)
なんだか不思議な歌だったが、白宮の心にしみた。魚のアザがジンジンとしてきた。そして、前に蒲郡の社長にもらった古い新聞を思い出した。あそこにのっていた銅鏡はこの人のものだったかも知れない。そんなことを思った。
少し眠った。目をさますと、窓の外はうす暗くなっていた。ドアがノックされて看護師が入ってきた。
「白宮さん。荒川さんて方から、急ぎの連絡です」
看護師からメモを受け取った。
「白宮さん。電話ほしい。急いでいる」
白宮は看護師に院内専用のPHS電話を借りて荒川に電話した。
「白宮さん。大変なんだ。今日、勇人くんの母親が学校に乗り込んできた。なんだか知らないけど、すごい目をしておれたちのこと怒っているんだ。あんたにも話があるって言って、そっちに向かった。勇人くんは、担任の先生に頼んだ。おれはこれからそっちに向かう。すまん、今、運転中だ」
そこまで言って、電話は切れた。看護師に電話を返すと看護師は出ていった。
麻績の王というナゾの皇族に、名前も知られていない人物が問いかけている。
「うちそを麻績の王 海士なれや 伊良湖の島の 玉藻かりおす」
(麻績の王は 漁師だろうか そうではないのに 伊良湖の島の 海藻を採って食べておられる)
それに対して、麻績の王が答える。
「うつせみの命を惜しみ 波に濡れ 伊良湖の島の玉藻かります」
(この世の命が惜しいので、波にぬれながら 伊良湖の島の海藻を食べているのです)
なんだか不思議な歌だったが、白宮の心にしみた。魚のアザがジンジンとしてきた。そして、前に蒲郡の社長にもらった古い新聞を思い出した。あそこにのっていた銅鏡はこの人のものだったかも知れない。そんなことを思った。
少し眠った。目をさますと、窓の外はうす暗くなっていた。ドアがノックされて看護師が入ってきた。
「白宮さん。荒川さんて方から、急ぎの連絡です」
看護師からメモを受け取った。
「白宮さん。電話ほしい。急いでいる」
白宮は看護師に院内専用のPHS電話を借りて荒川に電話した。
「白宮さん。大変なんだ。今日、勇人くんの母親が学校に乗り込んできた。なんだか知らないけど、すごい目をしておれたちのこと怒っているんだ。あんたにも話があるって言って、そっちに向かった。勇人くんは、担任の先生に頼んだ。おれはこれからそっちに向かう。すまん、今、運転中だ」
そこまで言って、電話は切れた。看護師に電話を返すと看護師は出ていった。
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2011年09月29日
現代へと続く海の道(仮題)30
白宮は病室で退屈していた。仕事の元請けには連絡して休みをもらった。荒川に頼んで、勇人の弓道への送迎をしてもらった。帰りには勇人と二人でよっていく。**小学校の船はゆっくりとながら進めているらしい。
「この前来た刑事さん、へんなこと言ってたな」
一人の午後、ひとりごとを言った。事故ではなく狙われたと言われたことを思い出した。後ろの車は大して混んでいるわけでもないのにあおってきた。もしかして…と思っているところへ荒川と勇人がやってきた。
「どんな様子だ? まだ痛いか」
荒川が顔をのぞきこんだ。白宮は首をふった。勇人がちょっと安心した顔になった。
「白宮さん。弓道の先生に筋がいいって言われました」
勇人がちょっとはにかんで報告すると、白宮も明るい顔をした。
「この子、性格がまっすぐで、それがいいらしい。近いうちに大会に出すようなこと言ってたぞ」
荒川が口をはさんだ。白宮はさっき思ったことを思い出した。
「あのう。荒川さん。ちょっと気になるんだけど、この警察が来て『今回のことは、事故じゃなく狙われた』って言われたんだけですけど」
白宮は警察に話したように事故をくわしく説明した。荒川は聞いてから一つうなずいた。
「それはねえ、典型的な当たり屋だね。後ろから来た車と前のトラックはグルなんだよ。後ろからあおっておいて、前の車が急ブレーキをかけるんだ。だけど、へんだなあ。普通、前の車はへこみやすい小さい車だし、だいいち、相手から修理代と治療費の請求はないんだろ」
荒川が首をかしげると、勇人が口を開いた。
「白宮さんを殺すつもりだったんじゃないですか」
勇人のことばに白宮と荒川は軽くわらった。
「そんな、人に殺されるようなことはしてないよ。ところで、勇人くん。例のゲームはあいかわらずはやっているの」
「はい。みんな学校ではやらなくなりましたが、家ではやっているみたいです。ただ、ステージが上がるとソフトを買わなくちゃいけなくなるんですけど、買えない子が多くなってきました。そう言う子は、同じステージでやってます」
勇人が言って、白宮はうなずいた。
「この前来た刑事さん、へんなこと言ってたな」
一人の午後、ひとりごとを言った。事故ではなく狙われたと言われたことを思い出した。後ろの車は大して混んでいるわけでもないのにあおってきた。もしかして…と思っているところへ荒川と勇人がやってきた。
「どんな様子だ? まだ痛いか」
荒川が顔をのぞきこんだ。白宮は首をふった。勇人がちょっと安心した顔になった。
「白宮さん。弓道の先生に筋がいいって言われました」
勇人がちょっとはにかんで報告すると、白宮も明るい顔をした。
「この子、性格がまっすぐで、それがいいらしい。近いうちに大会に出すようなこと言ってたぞ」
荒川が口をはさんだ。白宮はさっき思ったことを思い出した。
「あのう。荒川さん。ちょっと気になるんだけど、この警察が来て『今回のことは、事故じゃなく狙われた』って言われたんだけですけど」
白宮は警察に話したように事故をくわしく説明した。荒川は聞いてから一つうなずいた。
「それはねえ、典型的な当たり屋だね。後ろから来た車と前のトラックはグルなんだよ。後ろからあおっておいて、前の車が急ブレーキをかけるんだ。だけど、へんだなあ。普通、前の車はへこみやすい小さい車だし、だいいち、相手から修理代と治療費の請求はないんだろ」
荒川が首をかしげると、勇人が口を開いた。
「白宮さんを殺すつもりだったんじゃないですか」
勇人のことばに白宮と荒川は軽くわらった。
「そんな、人に殺されるようなことはしてないよ。ところで、勇人くん。例のゲームはあいかわらずはやっているの」
「はい。みんな学校ではやらなくなりましたが、家ではやっているみたいです。ただ、ステージが上がるとソフトを買わなくちゃいけなくなるんですけど、買えない子が多くなってきました。そう言う子は、同じステージでやってます」
勇人が言って、白宮はうなずいた。
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2011年09月28日
現代へと続く海の道(仮題)29 白宮の恐怖
白宮は夕方、**小学校を出た。ナゾの女性占い師香坂に頼まれて、いっしょにコピー機のショールームへ行く。車で迎えに行くと言ったら、別の用があるからと駅前での現地待ち合わせになった。
走りなれた国道は、いつになく車が少なかった。いい気持ちで走っていくと、一台の車が急に後ろに迫ってきた。ライトを点滅させて車間距離はほとんどおかない。白宮は後ろにきをとられながらスピードを上げた。前には大型のトラックが走っている。グングン近づいていたが、後ろに気を取られすぎていた。
「ああ~」
白宮は思わず叫んで、ハンドルに顔をふせながらブレーキをふんだ。目の前に真っ赤な光が飛び込んできた。ブレーキライトだった。トラックが急ブレーキを踏んだのである。
大きな音とともに体が前に押しつけられる。足元で鈍い音がした。車からおりようとして、全身から力がぬけていった。消えていく意識の中で、大きな黒い影が迫ってくるのが見えた。香坂がニヤニヤしながら顔をのぞきこんでいる気がした。白宮は夢を見ているのかと思った。
「だいじょうぶですかな。話を聞いても」
暗闇の中から声がして、きりが晴れてくると、目の前に男の顔が二つあった。一人は白衣を着ている。もう一人は背広を着ていた。白宮と目があうと二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「よかった。意識がもどったようです」
白衣の男が言った。白宮はわけも分からず体を起こそうとした。全然動かない。どうもベッドの上にいるらしい。
「ああ。まだ無理しないでください」
白衣の男は、ここが病室であること、白宮が事故で重傷を負って運ばれたことを告げて出ていった。
「あのう。事故のこと、おぼえていますか?」
背広の男に言われて、白宮は説明した。この時はまだ、自分が追突したと思っていた。背広の男はニヤリとして白宮を見た。
「あなたは、事故の加害者じゃないですよ。ねらわれたんです」
白宮はわけが分からず、声を出そうとすると背中に激痛が走った。
「ああ。また来ます。無理しないで」
背広の男は「村松」と名乗って名刺を置いた。部屋を出ていくときに、首筋に魚の形のアザが見えた。白宮は自分のアザを思い出した。荒川は心配しているだろうなと思って、また眠った。
走りなれた国道は、いつになく車が少なかった。いい気持ちで走っていくと、一台の車が急に後ろに迫ってきた。ライトを点滅させて車間距離はほとんどおかない。白宮は後ろにきをとられながらスピードを上げた。前には大型のトラックが走っている。グングン近づいていたが、後ろに気を取られすぎていた。
「ああ~」
白宮は思わず叫んで、ハンドルに顔をふせながらブレーキをふんだ。目の前に真っ赤な光が飛び込んできた。ブレーキライトだった。トラックが急ブレーキを踏んだのである。
大きな音とともに体が前に押しつけられる。足元で鈍い音がした。車からおりようとして、全身から力がぬけていった。消えていく意識の中で、大きな黒い影が迫ってくるのが見えた。香坂がニヤニヤしながら顔をのぞきこんでいる気がした。白宮は夢を見ているのかと思った。
「だいじょうぶですかな。話を聞いても」
暗闇の中から声がして、きりが晴れてくると、目の前に男の顔が二つあった。一人は白衣を着ている。もう一人は背広を着ていた。白宮と目があうと二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「よかった。意識がもどったようです」
白衣の男が言った。白宮はわけも分からず体を起こそうとした。全然動かない。どうもベッドの上にいるらしい。
「ああ。まだ無理しないでください」
白衣の男は、ここが病室であること、白宮が事故で重傷を負って運ばれたことを告げて出ていった。
「あのう。事故のこと、おぼえていますか?」
背広の男に言われて、白宮は説明した。この時はまだ、自分が追突したと思っていた。背広の男はニヤリとして白宮を見た。
「あなたは、事故の加害者じゃないですよ。ねらわれたんです」
白宮はわけが分からず、声を出そうとすると背中に激痛が走った。
「ああ。また来ます。無理しないで」
背広の男は「村松」と名乗って名刺を置いた。部屋を出ていくときに、首筋に魚の形のアザが見えた。白宮は自分のアザを思い出した。荒川は心配しているだろうなと思って、また眠った。
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2011年09月28日
現代へと続く海の道(仮題)28 香姫の部屋
香姫の部屋である。小さなテーブルをはさんで、大男と香姫が向かい合っている。
「このごろ、ゲームが売れなくなったな」
大男が重い口を開いた。香姫がうなずいて髪をかきあげた。
「子どもたち、もうお金がないよね。悪いことしてでもやりたい子って、思ったより少なかった」
「でも、神様は、なんて言ったかな。大津の皇子。その神様はまだゲームを売れって言うんだろ」
大男は香坂をのぞきこんだ。香坂は首をふった。
「それが、このごろ、呼び出そうとしても出てこないことが多いの。たまにこっちが忙しいときにメッセージが届くんだけど、『箱の中でおれの恨みをめぐらせろ』って言うばかりよ」
香坂は水晶玉をのぞきこんだ。
「この前、二人で鳳来寺山のふもとへ行ったよなあ。あの時、大木が切られていたよなあ。その大木に封じこめられていたんだろ。大津の皇子」
大男はぼんやりと水晶玉を眺めた。そして、大声をあげた。
「ここ。**小学校だ」
水晶玉を指差して固まってしまった。
「そういえば、この前、ゲームを買いに来た子どもがうわさしていた。山の学校から木をもらって船を作っているって」
香坂はじっと大男を見た。瞬きさえしない。
「ねえ、少なくなったとは言っても子どもたちがくれば情報が入ってくるわ」
香坂はいやらしく笑って大男を送り出した。
次に日にやって来た子どもたちから、学校の様子を聞きだし、海賊船のことと白宮たちのことを知った。子どもが帰って行くと大男に電話した。
「あのねえ、うちにコピー機の修理にくる男がからんでいるみたい。毎日学校へ行ってるみたい。ちょっと脅かしてやらない? どうせ気の小さい男だから」
電話を切ると香坂はレンタカーを予約してから白宮に電話した。明日の夕方コピー機が見たいからショールームで会いたいと言った。夕方は**小学校によっていることが多いから、駅に近いショールームへ行くには北側の国道を通るだろうと予想した。そしてもう一度大男に電話した。
「いい? 明日の夕方。学校の北の国道を走って、細かい指示は明日携帯でするから」
こうして、香坂の二つ目のたくらみがはじまった。
「このごろ、ゲームが売れなくなったな」
大男が重い口を開いた。香姫がうなずいて髪をかきあげた。
「子どもたち、もうお金がないよね。悪いことしてでもやりたい子って、思ったより少なかった」
「でも、神様は、なんて言ったかな。大津の皇子。その神様はまだゲームを売れって言うんだろ」
大男は香坂をのぞきこんだ。香坂は首をふった。
「それが、このごろ、呼び出そうとしても出てこないことが多いの。たまにこっちが忙しいときにメッセージが届くんだけど、『箱の中でおれの恨みをめぐらせろ』って言うばかりよ」
香坂は水晶玉をのぞきこんだ。
「この前、二人で鳳来寺山のふもとへ行ったよなあ。あの時、大木が切られていたよなあ。その大木に封じこめられていたんだろ。大津の皇子」
大男はぼんやりと水晶玉を眺めた。そして、大声をあげた。
「ここ。**小学校だ」
水晶玉を指差して固まってしまった。
「そういえば、この前、ゲームを買いに来た子どもがうわさしていた。山の学校から木をもらって船を作っているって」
香坂はじっと大男を見た。瞬きさえしない。
「ねえ、少なくなったとは言っても子どもたちがくれば情報が入ってくるわ」
香坂はいやらしく笑って大男を送り出した。
次に日にやって来た子どもたちから、学校の様子を聞きだし、海賊船のことと白宮たちのことを知った。子どもが帰って行くと大男に電話した。
「あのねえ、うちにコピー機の修理にくる男がからんでいるみたい。毎日学校へ行ってるみたい。ちょっと脅かしてやらない? どうせ気の小さい男だから」
電話を切ると香坂はレンタカーを予約してから白宮に電話した。明日の夕方コピー機が見たいからショールームで会いたいと言った。夕方は**小学校によっていることが多いから、駅に近いショールームへ行くには北側の国道を通るだろうと予想した。そしてもう一度大男に電話した。
「いい? 明日の夕方。学校の北の国道を走って、細かい指示は明日携帯でするから」
こうして、香坂の二つ目のたくらみがはじまった。
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2011年09月25日
飛騨高山へ行きました!
1泊2日で飛騨高山へ行ってきました。位山へ登り、カラクリ人形ライブラリで人形の持ってきたお茶をよばれ、人形が書いた書をもらってきました。朝市で飛騨牛コロッケもおいしかったし最高でした。
そいでもって、宿泊先がおもしろかったです。Jhoppersという、バックパッカー向けのゲストハウスですがこれがよかったです。安くて、自由で!
一人が宿泊料¥3900。食事は当然つきませんが、キャンペーン中で子どもは無料なんです。共同キッチンは電子レンジから電磁調理器、電子ポットまであって、鍋、オタマ、食器もあります。極め付きは、10月いっぱいまで米使い放題でした。(震災被災地応援キャンペーン)、コーヒーも無料でした。
あと、おもしろいのがロビーにあるインターネット端末です。自由に使っていいけど、ブログかツイッターで紹介すること。両方できない場合は、デスクトップ上に思い出写真を貼っていくことでした。
なんだか、若い頃に行ったタイとかインドのゲストハウスを思い出した白宮でした。ゲストハウスとは言っても、もちろん清潔で快適ですよ。念のために…。
そいでもって、宿泊先がおもしろかったです。Jhoppersという、バックパッカー向けのゲストハウスですがこれがよかったです。安くて、自由で!
一人が宿泊料¥3900。食事は当然つきませんが、キャンペーン中で子どもは無料なんです。共同キッチンは電子レンジから電磁調理器、電子ポットまであって、鍋、オタマ、食器もあります。極め付きは、10月いっぱいまで米使い放題でした。(震災被災地応援キャンペーン)、コーヒーも無料でした。
あと、おもしろいのがロビーにあるインターネット端末です。自由に使っていいけど、ブログかツイッターで紹介すること。両方できない場合は、デスクトップ上に思い出写真を貼っていくことでした。
なんだか、若い頃に行ったタイとかインドのゲストハウスを思い出した白宮でした。ゲストハウスとは言っても、もちろん清潔で快適ですよ。念のために…。

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2011年09月25日
現代へと続く海の道(仮題)27
白宮は勇人のアパートの前に車を止めた。
「一度、お母さんにあいさつしておこうか」
白宮の申し出に勇人は首をふった。
「母さん。遅いんです。二年前、離婚してから、昼間はスーパーでパートやって、夜はファミレスで働いています。帰るのはいつも夜中です」
勇人はまっすぐに白宮を見た。
「じゃあ、勇人くん。お母さんに会えるのは朝だけか」
「朝は、いますけど寝てます。だから、学校へ持っていくお金がいるときは、テーブルにメモしておくと置いてあります」
勇人は軽くわらった。白宮はなんだかたまらない気持ちになった。この子は、いろんなことを一人で背負っているんだと思ったら、アザが熱くなってきた。そして、なぜだか頭の中に映像がうかんだ。
海に浮かんだ小さな島に何人かといる。その中に勇人もいて、手には水晶の玉と勾玉を持っている。一人ずつが順に白い鳥に姿を変えた。
白宮は頭をふってわれに帰った。
「勇人くん。君のことは、おれや荒川さんや、先生や大人みんなでしっかり守るからな。あと、君のお母さんだって君のために忙しいんだ。心配するなよ。それからな、今度、荒川さんと神島へ行こうと思うんだけど、いっしょにいくか?」
白宮が言うと勇人はうれしそうにうなずいた。部屋に入って行くまで白宮は車から見守った。
「一度、お母さんにあいさつしておこうか」
白宮の申し出に勇人は首をふった。
「母さん。遅いんです。二年前、離婚してから、昼間はスーパーでパートやって、夜はファミレスで働いています。帰るのはいつも夜中です」
勇人はまっすぐに白宮を見た。
「じゃあ、勇人くん。お母さんに会えるのは朝だけか」
「朝は、いますけど寝てます。だから、学校へ持っていくお金がいるときは、テーブルにメモしておくと置いてあります」
勇人は軽くわらった。白宮はなんだかたまらない気持ちになった。この子は、いろんなことを一人で背負っているんだと思ったら、アザが熱くなってきた。そして、なぜだか頭の中に映像がうかんだ。
海に浮かんだ小さな島に何人かといる。その中に勇人もいて、手には水晶の玉と勾玉を持っている。一人ずつが順に白い鳥に姿を変えた。
白宮は頭をふってわれに帰った。
「勇人くん。君のことは、おれや荒川さんや、先生や大人みんなでしっかり守るからな。あと、君のお母さんだって君のために忙しいんだ。心配するなよ。それからな、今度、荒川さんと神島へ行こうと思うんだけど、いっしょにいくか?」
白宮が言うと勇人はうれしそうにうなずいた。部屋に入って行くまで白宮は車から見守った。
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2011年09月22日
現代へと続く海の道(26)仮題
勇人は、週に1回、弓道をならいに行くようになった。師匠の社長の都合を聞いて次の予定を決めていく。白宮と荒川で都合のつく方が送っていった。
「どうだ。最近、いじめられることはないか」
白宮は送っていく途中で聞いた。勇人はちょっとつまってから答える。
「時々、筆入れなくなったり、机の中に『死ね』ってメモがあったりします」
言いながらかるく笑った。
「まだ、そんなことがあるのか」
白宮は、ハンドルを握りながら目を向けた。
「でも、あいつも、追いつめられているから。ああやってつながっていたいんだと思います」
勇人は遠くを見た。
「一人だけなのか?」
「いえ。あいつがやりだすと、みんなもいっしょにやってきます」
勇人のことばに、白宮がまたひっかかった。
「なんにも変わってないじゃないか」
白宮が言うと、勇人がうなずいた。それから続けた。
「でも、前みたいにつらくないです。弓をやるようになってから夢を見るんです。どこかの島だと思うんですが、白宮さんや荒川さんと船に乗っていて、弓をいるんです。で、目がさめるとお腹に力が入るんです。この前、師匠に話したら『丹田』に魂が鎮まったって言ってました」
「そうか。まあ、自分で解決できそうならいいけど」
中途半端に返事をしながら、勇人の夢の景色をどこかで見たような気がして、白宮はちょっと不思議に思った。
「どうだ。最近、いじめられることはないか」
白宮は送っていく途中で聞いた。勇人はちょっとつまってから答える。
「時々、筆入れなくなったり、机の中に『死ね』ってメモがあったりします」
言いながらかるく笑った。
「まだ、そんなことがあるのか」
白宮は、ハンドルを握りながら目を向けた。
「でも、あいつも、追いつめられているから。ああやってつながっていたいんだと思います」
勇人は遠くを見た。
「一人だけなのか?」
「いえ。あいつがやりだすと、みんなもいっしょにやってきます」
勇人のことばに、白宮がまたひっかかった。
「なんにも変わってないじゃないか」
白宮が言うと、勇人がうなずいた。それから続けた。
「でも、前みたいにつらくないです。弓をやるようになってから夢を見るんです。どこかの島だと思うんですが、白宮さんや荒川さんと船に乗っていて、弓をいるんです。で、目がさめるとお腹に力が入るんです。この前、師匠に話したら『丹田』に魂が鎮まったって言ってました」
「そうか。まあ、自分で解決できそうならいいけど」
中途半端に返事をしながら、勇人の夢の景色をどこかで見たような気がして、白宮はちょっと不思議に思った。
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2011年09月21日
現代へと続く海の道(仮題)25
それから、白宮と荒川はノートと筆記用具を持って学校へ行くようになった。6年2組の教室の後ろにある黒板に小さな紙がはってある。白宮と荒川の「出校表」である。どちらかが学校にいるためだが、会社の勤務表みたいだと白宮がわらった。休み時間には勇人を連れて海賊船をつくりに行った。何日かするうちに、クラスの他の子も付いてくるようになった。
「勇人くん。トンカチ使ってみるか」
荒川が言うと、勇人はうなずいて釘を打った。他の子もノコギリを使ったりして参加した。
木の棒でチャンバラごっこをしだした子がいた。荒川と目があうと一瞬やめた。何か言われるかと思ったらしい。ところが、荒川は笑った。
「おれも入れてくれよ」
そう言って、自分も棒を取った。一番背の大きい子と戦いだした。二人ともなかなか強い。勇人はぼんやりと見ていた。白宮が心配してよっていくと、ポツリと言った。
「白宮さん。ぼく、弓をやってみたい」
白宮は自分の耳を疑った。
「弓? 弓道か」
白宮のことばに勇人がうなずいた。
「分かった。ぼくの知り合いで弓道の先生がいるから頼んでやる」
白宮が言った。コピーのメンテナンスに行く会社の社長で、弓をやっている人がいるのを思い出したのである。
その日の帰り、勇人のアパートにメモを残してその会社へ行った。
「ほう。小学生で弓道ですか。うれしいですな」
社長が微笑むと勇人が頭を下げた。そこで社長は背筋をのばした。
「私が教えましょう。勇人君でしたな。今日から、私の弟子だ。師匠と呼びなさい。ここに連れてきてくださった白宮さんも師匠です。いいですね」
勇人がうなずいて、この日から白宮は師匠と呼ばれるようになった。
「勇人くん。トンカチ使ってみるか」
荒川が言うと、勇人はうなずいて釘を打った。他の子もノコギリを使ったりして参加した。
木の棒でチャンバラごっこをしだした子がいた。荒川と目があうと一瞬やめた。何か言われるかと思ったらしい。ところが、荒川は笑った。
「おれも入れてくれよ」
そう言って、自分も棒を取った。一番背の大きい子と戦いだした。二人ともなかなか強い。勇人はぼんやりと見ていた。白宮が心配してよっていくと、ポツリと言った。
「白宮さん。ぼく、弓をやってみたい」
白宮は自分の耳を疑った。
「弓? 弓道か」
白宮のことばに勇人がうなずいた。
「分かった。ぼくの知り合いで弓道の先生がいるから頼んでやる」
白宮が言った。コピーのメンテナンスに行く会社の社長で、弓をやっている人がいるのを思い出したのである。
その日の帰り、勇人のアパートにメモを残してその会社へ行った。
「ほう。小学生で弓道ですか。うれしいですな」
社長が微笑むと勇人が頭を下げた。そこで社長は背筋をのばした。
「私が教えましょう。勇人君でしたな。今日から、私の弟子だ。師匠と呼びなさい。ここに連れてきてくださった白宮さんも師匠です。いいですね」
勇人がうなずいて、この日から白宮は師匠と呼ばれるようになった。
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2011年09月20日
現代へと続く海の道(仮題)24
白宮は、二時間目が終わるまで授業に出て仕事に行った。授業が終わる頃に荒川と交代して勇人を家まで送った。先生たちは「そこまですることはない」と言ったが、荒川が言ったのである。
「イジメ問題は、大人が口をはさんだら、トコトンつき合わねばならないと思います」
誰も逆らえないいい方だった。そこで、白宮と荒川、が交代で家まで送ることになった。
「勇人くんだけ、ゲームをしないからイジメが始まったって言ってたけど、みんなやってるゲームって、どんなゲームなんだ」
車の運転をしながら白宮が聞いた。
「あのう。ぼくも、最初の方で、頭がいたくなったので、最初に方しか知りませんが、都から逃げ出してきた王子が主人公で、伊勢の海で、漁師をだまして入れかわるんです。うまく入れ替わって、東の海に出ていけば第一ステージクリアなんです」
勇人は小さな声で言った。
「都から逃げてきた王子か。名前はなんていうの?」
白宮は特に興味を持ったわけではない。
「大津の皇子っていいます。伊勢湾の神島の漁師をだますんです」
勇人はあいかわらず、小さな声だった。
「神島!?」
白宮が急に大きな声を出した。勇人が驚いた顔で見た。
「あのさあ、ぼく、最近ねえ、古い新聞を手に入れたんだ。一〇年前だから、勇人くんが二才のころのだね。そこにね、神島から財宝が出てきたって記事が載ってたんだ」
白宮は興奮して、道路の端に車を止めた。勇人はじっと白宮を見た。
「ゲームに出てきた大津の皇子が、持ってきたってこと?」
勇人が白宮を見た。
「ああ。そうかも知れない。もしよかったら、いっしょに調べるか」
白宮が言って、勇人がうなずいた。
勇人の家につくと、白宮は車をおりた。二階建てのアパートの一番おくの部屋だった。親にあいさつしようかと言うと、勇人が首を振った。お母さんはパートから帰るのが遅いらしい。白宮はそのままアパートをあとにした。
「イジメ問題は、大人が口をはさんだら、トコトンつき合わねばならないと思います」
誰も逆らえないいい方だった。そこで、白宮と荒川、が交代で家まで送ることになった。
「勇人くんだけ、ゲームをしないからイジメが始まったって言ってたけど、みんなやってるゲームって、どんなゲームなんだ」
車の運転をしながら白宮が聞いた。
「あのう。ぼくも、最初の方で、頭がいたくなったので、最初に方しか知りませんが、都から逃げ出してきた王子が主人公で、伊勢の海で、漁師をだまして入れかわるんです。うまく入れ替わって、東の海に出ていけば第一ステージクリアなんです」
勇人は小さな声で言った。
「都から逃げてきた王子か。名前はなんていうの?」
白宮は特に興味を持ったわけではない。
「大津の皇子っていいます。伊勢湾の神島の漁師をだますんです」
勇人はあいかわらず、小さな声だった。
「神島!?」
白宮が急に大きな声を出した。勇人が驚いた顔で見た。
「あのさあ、ぼく、最近ねえ、古い新聞を手に入れたんだ。一〇年前だから、勇人くんが二才のころのだね。そこにね、神島から財宝が出てきたって記事が載ってたんだ」
白宮は興奮して、道路の端に車を止めた。勇人はじっと白宮を見た。
「ゲームに出てきた大津の皇子が、持ってきたってこと?」
勇人が白宮を見た。
「ああ。そうかも知れない。もしよかったら、いっしょに調べるか」
白宮が言って、勇人がうなずいた。
勇人の家につくと、白宮は車をおりた。二階建てのアパートの一番おくの部屋だった。親にあいさつしようかと言うと、勇人が首を振った。お母さんはパートから帰るのが遅いらしい。白宮はそのままアパートをあとにした。
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2011年09月17日
現代へと続く海の道(仮題)23
つぎの授業になった。白宮と荒川は後ろに立っている。子ども達はさわぎこそしないが、気になるのか時々後ろをふりかえった。白宮は苦笑いし、荒川は手で鉄砲の形にして打つまねをする。算数の時間である。分数の足し算を復習していた。黒板には五分の三+四分の三と書いてある。
「白宮さん。分数の足し算って、おれ苦手だったな」
荒川は小声で言った。白宮にほおを上げてうなずいた。そのとき、ちょうど一番後ろの男の子がふりむいて目があった。「ぼくも」とでも言うようにうなずいた。荒川はニヤリとして手をあげた。先生は迷惑そうな顔をしながら、荒川を手でさした。
「先生。あのう。おれも、子どものころ、分数苦手でした。分母をそろえるために、数字をかけるのって、通分って言うんですよね」
荒川の言ったことに何人か子どもがうなずいた。先生は教科書を読みあげながら説明をはじめた。そこを荒川がさえぎる。
「ごめん。先生。その説明で分かるような子は、教科書読んだだけで分かるんだ。で、おれの考え言っていいかなあ。五分の三と四分の三だったら、ビルの五階に三つあるお菓子と、四階にあるお菓子をいっしょにするのに、どこかで会うしかないだろ。で、エレベーターがないからかけて行くんだよ」
荒川は調子にのって前に出て黒板を使って説明した。子ども達何人かはうなずきながらノートに書いた。先生は笑いながら頭をさげた。
休み時間になると、神崎勇人をつれて「海賊船」に行った。貼ってあるベニヤに木の皮をつけていく。
「荒川さんてすごいです」
ゆうとが遠慮がちに言った。荒川はうなずいてから小さな声で言った。
「もう、だいじょうぶか」
ゆうとがうなずいた。
「なんで、いじめられたんだよ」
白宮がきいた。荒川はいやな顔をした。
「ぼくだけ、ゲームをしなかったから」
「ゲームって、門の前で配ってたやつか」
白宮が聞いた。
「そう。あれやると、頭が痛くなるんです」
ゆうとはじっと白宮を見た。
「白宮さん。分数の足し算って、おれ苦手だったな」
荒川は小声で言った。白宮にほおを上げてうなずいた。そのとき、ちょうど一番後ろの男の子がふりむいて目があった。「ぼくも」とでも言うようにうなずいた。荒川はニヤリとして手をあげた。先生は迷惑そうな顔をしながら、荒川を手でさした。
「先生。あのう。おれも、子どものころ、分数苦手でした。分母をそろえるために、数字をかけるのって、通分って言うんですよね」
荒川の言ったことに何人か子どもがうなずいた。先生は教科書を読みあげながら説明をはじめた。そこを荒川がさえぎる。
「ごめん。先生。その説明で分かるような子は、教科書読んだだけで分かるんだ。で、おれの考え言っていいかなあ。五分の三と四分の三だったら、ビルの五階に三つあるお菓子と、四階にあるお菓子をいっしょにするのに、どこかで会うしかないだろ。で、エレベーターがないからかけて行くんだよ」
荒川は調子にのって前に出て黒板を使って説明した。子ども達何人かはうなずきながらノートに書いた。先生は笑いながら頭をさげた。
休み時間になると、神崎勇人をつれて「海賊船」に行った。貼ってあるベニヤに木の皮をつけていく。
「荒川さんてすごいです」
ゆうとが遠慮がちに言った。荒川はうなずいてから小さな声で言った。
「もう、だいじょうぶか」
ゆうとがうなずいた。
「なんで、いじめられたんだよ」
白宮がきいた。荒川はいやな顔をした。
「ぼくだけ、ゲームをしなかったから」
「ゲームって、門の前で配ってたやつか」
白宮が聞いた。
「そう。あれやると、頭が痛くなるんです」
ゆうとはじっと白宮を見た。
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2011年09月16日
現代へと続く海の道(仮題)22
白宮は午前中で仕事にきりをつけると、**小学校へ向かった。廊下で荒川が先生と話していた。
「あのねえ、先生。それはおかしいでしょう」
荒川の声はあいかわらず大きい。先生は困った顔をしている。
「どうかしたんですか?」
白宮が声をかけると荒川は、うれしそうに白宮に話し出す。
「いいところへ来てくれた。今ねえ、ゲームの話してたんだよ。あのさあ、白宮さんも思っただろう。授業中に堂々とゲームはまずいって」
白宮は、荒川に対してうなずきながら先生を見た。先生は泣きそうな顔をしている。
「私だって、いいとは思いませんよ。でも、しょうがないじゃありませんか。体罰は禁止だし、ああでもしないと、私では押さえられないんです」
荒川はここで口をはさむ。
「だったら、騒がせておけばいいじゃないですか」
「だから、何度も言うように、しっかり勉強させてほしい親から、クレームがついたんです。私どうしたらいいんですか」
先生はしゃがみこんで泣き始めた。廊下の角からは神崎勇人が顔だけのぞかせて心配そうに見ている。
「先生。一人でかかえこまないでください。ぼくに考えがあります」
白宮が言うと、先生は赤い目をして立ち上がった。荒川に教室に行ってもらい、白宮は先生と職員室へ向かった。他の先生達が心配してよって来る中、白宮は保健室へ先生をつれて行った。養護の先生が目を丸くした。
「養護の先生ですか? じつはちょっと頼みがあります。急いでいるんです。どうしてもやって欲しいんです。今から6年2組で特別授業をやってください。テレビゲームが目に与える影響です。1時間以上、小さい画面で動画を見ると、脳や目にたいへんなダメージがあること。そこだけでいいです。お願いします。あとは、ぼくがなんとかします」
白宮は勇人の担任の先生をベッドで休ませて、養護の先生と6年2組に向かった。妙な静かさだった。あいかわらず、ほとんどの子どもがゲームをやっている。
「ちょっと聞いてくれるかな。君たちの体のことなんだ」
白宮は静かに語り出した。ゲームをしていた子が何人か顔をあげた。
「ゲームは楽しいねえ。ずっとやっていたい。だけどねえ、30分以上やりつづけると、脳の中や目はたいへんなことになっている。で、それは何年後かに出てくる。気づいたら遅いんだ」
そう前置きして、養護の先生にかわった。養護の先生はいろいろな事例を出した。話が終わると白宮が続けた。
「だからねえ、もし、家に帰って、すこしでもゲームしたいんだったら、学校でやるのはどうかな」
白宮は机の間を回った。荒川は腕を組んだまま、ニコリともせずに後ろで立っている。背も高いのでけっこう威圧感がある。子どもたちがゲームを閉じたところへ担任の先生がもどってきた。養護の先生は保健室へ帰り、白宮たちは後ろへ回った。
「あのねえ、先生。それはおかしいでしょう」
荒川の声はあいかわらず大きい。先生は困った顔をしている。
「どうかしたんですか?」
白宮が声をかけると荒川は、うれしそうに白宮に話し出す。
「いいところへ来てくれた。今ねえ、ゲームの話してたんだよ。あのさあ、白宮さんも思っただろう。授業中に堂々とゲームはまずいって」
白宮は、荒川に対してうなずきながら先生を見た。先生は泣きそうな顔をしている。
「私だって、いいとは思いませんよ。でも、しょうがないじゃありませんか。体罰は禁止だし、ああでもしないと、私では押さえられないんです」
荒川はここで口をはさむ。
「だったら、騒がせておけばいいじゃないですか」
「だから、何度も言うように、しっかり勉強させてほしい親から、クレームがついたんです。私どうしたらいいんですか」
先生はしゃがみこんで泣き始めた。廊下の角からは神崎勇人が顔だけのぞかせて心配そうに見ている。
「先生。一人でかかえこまないでください。ぼくに考えがあります」
白宮が言うと、先生は赤い目をして立ち上がった。荒川に教室に行ってもらい、白宮は先生と職員室へ向かった。他の先生達が心配してよって来る中、白宮は保健室へ先生をつれて行った。養護の先生が目を丸くした。
「養護の先生ですか? じつはちょっと頼みがあります。急いでいるんです。どうしてもやって欲しいんです。今から6年2組で特別授業をやってください。テレビゲームが目に与える影響です。1時間以上、小さい画面で動画を見ると、脳や目にたいへんなダメージがあること。そこだけでいいです。お願いします。あとは、ぼくがなんとかします」
白宮は勇人の担任の先生をベッドで休ませて、養護の先生と6年2組に向かった。妙な静かさだった。あいかわらず、ほとんどの子どもがゲームをやっている。
「ちょっと聞いてくれるかな。君たちの体のことなんだ」
白宮は静かに語り出した。ゲームをしていた子が何人か顔をあげた。
「ゲームは楽しいねえ。ずっとやっていたい。だけどねえ、30分以上やりつづけると、脳の中や目はたいへんなことになっている。で、それは何年後かに出てくる。気づいたら遅いんだ」
そう前置きして、養護の先生にかわった。養護の先生はいろいろな事例を出した。話が終わると白宮が続けた。
「だからねえ、もし、家に帰って、すこしでもゲームしたいんだったら、学校でやるのはどうかな」
白宮は机の間を回った。荒川は腕を組んだまま、ニコリともせずに後ろで立っている。背も高いのでけっこう威圧感がある。子どもたちがゲームを閉じたところへ担任の先生がもどってきた。養護の先生は保健室へ帰り、白宮たちは後ろへ回った。
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2011年09月14日
現代へと続く海の道(仮題)21
白宮と荒川は顔を見合わせた。教室の半分以上が堂々と携帯型ゲームをやっているのである。二人は階段の踊り場に行った。
「先生。なにも言えないんでしょうか」
白宮が言っても荒川はだまったままだった。そのまま、授業が終わるまで待った。担任の女の先生が出てくる。後ろから神崎勇人がついてきた。
「あのう。6年2組の先生ですね。あとでちょっといいですか?」
荒川が声をかけると、先生はちょっと困った顔をした。勇人の方をふりかえる。
「先生。この人達なら、だいじょうぶです」
勇人が小さな声で言った。先生が白宮と荒川を見てうなずいた。4人はそのまま校長室へいくと、校長先生もやってきて5人で話すことになった。
「じつは、今朝、勇人くんが、イジメのことを告白してくれました」
先生は一度勇人を見てから校長に言った。校長先生は微笑んでうなずいた。
「昨日。教頭から聞きました。こちらのお二人が、イタズラ書きを見つけてくださったとか。いろいろ外部の方までご心配をかけますな。申し訳ありません」
校長は白宮たちに頭をさげた。先生は白宮たちを心配そうに見た。
「あのう。私、子どものころ、イジメにあいました。だから分かるんですけど、教室から先生がいなくなると、イジメって始まるんです。でも、先生だってずっと教室にいるわけにもいかないでしょ。だから、明日から毎日交代で教室にきます。許可をください」
荒川は深く頭を下げた。白宮がびっくりした顔をしているのを気づくと両手で押さえて頭を下げさせた。
校長先生は答えない。女の先生が泣きそうな声でつぶやいた。
「校長先生。私からもお願いします。なんとかしたいんです」
校長先生はしぶしぶうなずいた。こうして、白宮と荒川が学校へ行くことになった。
「先生。なにも言えないんでしょうか」
白宮が言っても荒川はだまったままだった。そのまま、授業が終わるまで待った。担任の女の先生が出てくる。後ろから神崎勇人がついてきた。
「あのう。6年2組の先生ですね。あとでちょっといいですか?」
荒川が声をかけると、先生はちょっと困った顔をした。勇人の方をふりかえる。
「先生。この人達なら、だいじょうぶです」
勇人が小さな声で言った。先生が白宮と荒川を見てうなずいた。4人はそのまま校長室へいくと、校長先生もやってきて5人で話すことになった。
「じつは、今朝、勇人くんが、イジメのことを告白してくれました」
先生は一度勇人を見てから校長に言った。校長先生は微笑んでうなずいた。
「昨日。教頭から聞きました。こちらのお二人が、イタズラ書きを見つけてくださったとか。いろいろ外部の方までご心配をかけますな。申し訳ありません」
校長は白宮たちに頭をさげた。先生は白宮たちを心配そうに見た。
「あのう。私、子どものころ、イジメにあいました。だから分かるんですけど、教室から先生がいなくなると、イジメって始まるんです。でも、先生だってずっと教室にいるわけにもいかないでしょ。だから、明日から毎日交代で教室にきます。許可をください」
荒川は深く頭を下げた。白宮がびっくりした顔をしているのを気づくと両手で押さえて頭を下げさせた。
校長先生は答えない。女の先生が泣きそうな声でつぶやいた。
「校長先生。私からもお願いします。なんとかしたいんです」
校長先生はしぶしぶうなずいた。こうして、白宮と荒川が学校へ行くことになった。
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2011年09月13日
現代へと続く海の道(仮題)20
「あの子大丈夫なんでしょうか」
白宮が言っても荒川は教室を見ているだけで、しばらく口を開かなかった。
「大丈夫なわけがないだろ。だけどまあ、あの子はあの子なりに戦っているんだ。それにな、教室って案外安全なんだよ。急に先生がくることをあるから、机に落書きされたり、筆入れ隠されたりといったメンタル的なイジメはあっても、暴力まではいかない」
「メンタルなイジメだって傷つくでしょう」
「あの子は、俺たちが思うより強いよ。そんなのには負けない」
荒川が一生懸命自分を押さえているのが白宮にも分かった。なんだか切なくなってくる。白宮は少し考えてから荒川をじっと見た。
「教室に行きましょう。許可なんか取らなくて大丈夫です。ぼく、コピー機のサービスマンですよ。3階の一番南にコンピュータ室があります。プリンタの点検ってことで廊下から見ていきましょう。6年2組」
白宮が言って荒川の背中を押した。職員室で事務員にあいさつして渡り廊下を歩いていく。低学年の教室からは動物園のような大声がひびいてきた。荒川と白宮は苦笑いしながら顔を見合わせた。上の階に上がっていくとさらに騒ぎが大きくなった。ところが2クラスある6年生は気味が悪いほど静かだった。先生の声がしっかりと届いている。
二人は開いている廊下の窓から中を見て驚いた。クラスのほとんどが机の下で携帯型ゲームをやっている。女の子数人と神崎勇人だけが先生の方を見てノートをとっていた。
白宮が言っても荒川は教室を見ているだけで、しばらく口を開かなかった。
「大丈夫なわけがないだろ。だけどまあ、あの子はあの子なりに戦っているんだ。それにな、教室って案外安全なんだよ。急に先生がくることをあるから、机に落書きされたり、筆入れ隠されたりといったメンタル的なイジメはあっても、暴力まではいかない」
「メンタルなイジメだって傷つくでしょう」
「あの子は、俺たちが思うより強いよ。そんなのには負けない」
荒川が一生懸命自分を押さえているのが白宮にも分かった。なんだか切なくなってくる。白宮は少し考えてから荒川をじっと見た。
「教室に行きましょう。許可なんか取らなくて大丈夫です。ぼく、コピー機のサービスマンですよ。3階の一番南にコンピュータ室があります。プリンタの点検ってことで廊下から見ていきましょう。6年2組」
白宮が言って荒川の背中を押した。職員室で事務員にあいさつして渡り廊下を歩いていく。低学年の教室からは動物園のような大声がひびいてきた。荒川と白宮は苦笑いしながら顔を見合わせた。上の階に上がっていくとさらに騒ぎが大きくなった。ところが2クラスある6年生は気味が悪いほど静かだった。先生の声がしっかりと届いている。
二人は開いている廊下の窓から中を見て驚いた。クラスのほとんどが机の下で携帯型ゲームをやっている。女の子数人と神崎勇人だけが先生の方を見てノートをとっていた。
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2011年09月12日
現代へと続く海の道(仮題)19
次の日、仕事に行こうとする白宮の携帯がなった。荒川からだった。
「おはよう。朝からすまん。これから仕事だよね。忙しいことは分かっているんだ」
荒川は言いにくそうだった。
「あのう。午前中は仕事入ってますけど、夕方からなら時間あります。昨日の夢の話でしょう。ぼくも話したいです」
「そんなのんきなことじゃないんだ。できたら、今から学校へ来てくれないかな」
荒川の声はいつになく強い調子だった。白宮は、朝一の仕事だけ済ませて学校へ向かった。職員室へ顔を出すと荒川は入り口に近いソファに座っていた。グチャグチャの紙が置いてある。
「白宮さん。おれたちの船に貼ってあったんだ。これ」
荒川は泣きそうになりながら指さした。白宮が広げていくと幅2mくらいのプレゼン用の模造紙だった。マジックで乱暴な字がいっぱいの大きさに書いてある。子どもが書いたのだろうか。
「死ね! 神崎勇人」
と書いてあった。白宮も荒川があわてているわけが分かった。そして、神崎勇人という名前も思い出した。この前学校の駐車場ではねそうになった子である。
「やっぱり、イジメがあるんですね」
白宮は小さな声で言った。荒川がうなずいたところで教頭先生が現れた。
「いやあ。おはずかしいところをお見せしました。子どもは残酷なところがありますな。ですが、心配はいりません。担任にはしっかり指導してもらうように話しましたし、本校ではいじめはありませんよ」
教頭は汗をふきながら言った。
「どうして、イジメがないって分かるんですか?」
荒川が聞いた。
「毎月、月末にアンケートをとるんです。子どもと親と。その結果をカウンセリングの専門家に見てもらっていますから、心配はいりません」
教頭先生に対して荒川はなにも答えなかった。かわりに白宮が頭を下げて職員室を出て「海賊船」に行った。荒川は「海賊船」につくまで何も言わなかった。
「あの張り紙。子どもたちの目にはついてないんですか」
海賊船の中で座りこんだ荒川に聞くと、だまったままうなずいて口を開いた。
「今朝、夜が明けるのも待ちきれなくて来たんだよ。ほんとは昨日来たかったんだけど、約束があって名古屋まで行ってた。であの張り紙を見て、すぐはがして職員室へ行ったんだよ。教頭の話だと昨日の夕方はなかったって言うから、夜遅くに貼ったんだ。誰かが」
荒川の言い方はしぼり出すようだった。自分が中学生のときを思い出したのだろう。
「いたずらにしても、やられた子は傷つきますよね」
白宮が言って、荒川がなにか答えようとしたとき、「海賊船」が小さく揺れた。
「おい。ゆうと。逃げるのか」
外で子どもの声がした。荒川と白宮が飛び出すと「海賊船」の後ろに男の子が倒れていて、5人の子どもが囲んでいた。男の子は泣きもせずに5人をにらんでいた。
「おまえら、何してんだよ」
荒川が大声を出した。5人の子どもたちはバラバラに逃げて行った。倒れていた男の子は神崎勇人だった。
「だいじょうぶかよ。ケガしてないか?」
白宮が声をかけると、神崎勇人は二人を見て何も言わずに校舎に向かって走って行った。
「おはよう。朝からすまん。これから仕事だよね。忙しいことは分かっているんだ」
荒川は言いにくそうだった。
「あのう。午前中は仕事入ってますけど、夕方からなら時間あります。昨日の夢の話でしょう。ぼくも話したいです」
「そんなのんきなことじゃないんだ。できたら、今から学校へ来てくれないかな」
荒川の声はいつになく強い調子だった。白宮は、朝一の仕事だけ済ませて学校へ向かった。職員室へ顔を出すと荒川は入り口に近いソファに座っていた。グチャグチャの紙が置いてある。
「白宮さん。おれたちの船に貼ってあったんだ。これ」
荒川は泣きそうになりながら指さした。白宮が広げていくと幅2mくらいのプレゼン用の模造紙だった。マジックで乱暴な字がいっぱいの大きさに書いてある。子どもが書いたのだろうか。
「死ね! 神崎勇人」
と書いてあった。白宮も荒川があわてているわけが分かった。そして、神崎勇人という名前も思い出した。この前学校の駐車場ではねそうになった子である。
「やっぱり、イジメがあるんですね」
白宮は小さな声で言った。荒川がうなずいたところで教頭先生が現れた。
「いやあ。おはずかしいところをお見せしました。子どもは残酷なところがありますな。ですが、心配はいりません。担任にはしっかり指導してもらうように話しましたし、本校ではいじめはありませんよ」
教頭は汗をふきながら言った。
「どうして、イジメがないって分かるんですか?」
荒川が聞いた。
「毎月、月末にアンケートをとるんです。子どもと親と。その結果をカウンセリングの専門家に見てもらっていますから、心配はいりません」
教頭先生に対して荒川はなにも答えなかった。かわりに白宮が頭を下げて職員室を出て「海賊船」に行った。荒川は「海賊船」につくまで何も言わなかった。
「あの張り紙。子どもたちの目にはついてないんですか」
海賊船の中で座りこんだ荒川に聞くと、だまったままうなずいて口を開いた。
「今朝、夜が明けるのも待ちきれなくて来たんだよ。ほんとは昨日来たかったんだけど、約束があって名古屋まで行ってた。であの張り紙を見て、すぐはがして職員室へ行ったんだよ。教頭の話だと昨日の夕方はなかったって言うから、夜遅くに貼ったんだ。誰かが」
荒川の言い方はしぼり出すようだった。自分が中学生のときを思い出したのだろう。
「いたずらにしても、やられた子は傷つきますよね」
白宮が言って、荒川がなにか答えようとしたとき、「海賊船」が小さく揺れた。
「おい。ゆうと。逃げるのか」
外で子どもの声がした。荒川と白宮が飛び出すと「海賊船」の後ろに男の子が倒れていて、5人の子どもが囲んでいた。男の子は泣きもせずに5人をにらんでいた。
「おまえら、何してんだよ」
荒川が大声を出した。5人の子どもたちはバラバラに逃げて行った。倒れていた男の子は神崎勇人だった。
「だいじょうぶかよ。ケガしてないか?」
白宮が声をかけると、神崎勇人は二人を見て何も言わずに校舎に向かって走って行った。
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2011年09月09日
現代へと続く海の道(仮題)18
勾玉は白宮が持って帰った。上着のポケットに入れておいたが夜中にトイレに起きたときになんだか気になった。話し声が聞こえたように思った。手にとってからポケットにもどしてねむった。そして不思議な夢を見た。
きれいな海に島が二つ浮かんでいる。そのうちの大きい方は亀の形で小さい方には鳥居が立っている。白宮は小さい島に立っていて他に男が三人と子どもが一人いた。男の一人は荒川で子どもにはどこか見覚えがある。
「香姫は鳥になったな」
荒川が言った。
「西の空に飛んで行った。都に向かったんだな。夫が眠っている場所だ」
白宮が答えると、荒川が西の空を見あげてつぶやく。
「因幡のシロヒトよ。おれも死んだら鳥になって常陸に帰りたい」
荒川が言ったことに白宮はとくに疑問は感じなかった。もう一人の小柄な男が荒川の肩に手を置いた。
「荒瀬よ。俺たち、最後まで戦おうぜ。で最後に生き残ったやつが蓬莱へ行くんだ」
男が言うと、子どもが手を広げた。その手には勾玉が乗っている。男二人がうなずくと子どもは勾玉を握りしめた。
どのくらい時間がたっただろう。沖合の船から矢が飛んでくる。男たちが子どもをかばいながら矢を打ち返し、矢にあたって一人ずつ倒れていく、白宮も砂浜に臥て意識が薄れていく。消えゆく意識の中で子どもが倒れるのが目に入った。
「亀島のイサミ。頼むぞ」
どこかから声が聞こえて、子どもの体は白い鳥になって飛んでいった。
目が覚めると白宮は携帯で荒川に電話した。
「おい。なんだかすごい夢を見たぞ」
興奮してしゃべり出したのは荒川の方が先立った。
「ぼくもです。勾玉の夢です。島で子どもが白い鳥になって」
白宮が最後まで言い終わらないうちに荒川がさえぎって言う。
「白宮さん。たぶん、同じ夢だ」
きれいな海に島が二つ浮かんでいる。そのうちの大きい方は亀の形で小さい方には鳥居が立っている。白宮は小さい島に立っていて他に男が三人と子どもが一人いた。男の一人は荒川で子どもにはどこか見覚えがある。
「香姫は鳥になったな」
荒川が言った。
「西の空に飛んで行った。都に向かったんだな。夫が眠っている場所だ」
白宮が答えると、荒川が西の空を見あげてつぶやく。
「因幡のシロヒトよ。おれも死んだら鳥になって常陸に帰りたい」
荒川が言ったことに白宮はとくに疑問は感じなかった。もう一人の小柄な男が荒川の肩に手を置いた。
「荒瀬よ。俺たち、最後まで戦おうぜ。で最後に生き残ったやつが蓬莱へ行くんだ」
男が言うと、子どもが手を広げた。その手には勾玉が乗っている。男二人がうなずくと子どもは勾玉を握りしめた。
どのくらい時間がたっただろう。沖合の船から矢が飛んでくる。男たちが子どもをかばいながら矢を打ち返し、矢にあたって一人ずつ倒れていく、白宮も砂浜に臥て意識が薄れていく。消えゆく意識の中で子どもが倒れるのが目に入った。
「亀島のイサミ。頼むぞ」
どこかから声が聞こえて、子どもの体は白い鳥になって飛んでいった。
目が覚めると白宮は携帯で荒川に電話した。
「おい。なんだかすごい夢を見たぞ」
興奮してしゃべり出したのは荒川の方が先立った。
「ぼくもです。勾玉の夢です。島で子どもが白い鳥になって」
白宮が最後まで言い終わらないうちに荒川がさえぎって言う。
「白宮さん。たぶん、同じ夢だ」
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2011年09月08日
現代へと続く海の道(仮題)17 香坂の部屋
大男は香坂のマンション前につくとちょっと馬鹿にした目をした。
「あんた。ほんとに神様と話せるのか? もしかして、おれをからかっているんじゃないのか」
言われた香坂は視線を一度視線を泳がせてからじっと見すえた。
「どう考えるかは、あなたしだいね。確かに、思い通りに霊を呼び出せないこともあるわね。でも、あなたは私とお金をかせいだのよ。悪いことをして」
香坂はじっと大男を見た。大男はうつむいてから答えた。
「悪かったよ。あんたに従う。ああそうだ。この前あんたが言ってた。聞こえない音を出すチップな、できたぞ。聞いてみるか」
大男はごまかすようにポケットから、名刺くらいのカードを出した。スイッチを入れる。何も音は聞こえないが頭の芯が熱くなってくる。底なし沼に落ちていくように気分が沈んで行って意識が遠のいて行った。
「きくだろう」
大男の声を遠くで聞いた香坂は我に帰った。大男がスイッチを切ったらしい。気がつくと大男の顔が目の前にあった。
「超低周波で催眠のセリフが入れてある。これで知らぬ間に眠らせるんだ。完全に寝ているわけじゃない。シータ波という状態だ。ここで指示を出せば、人を自由に操れる」
大男はイヤな笑いを浮かべてうなずいた。香坂は瞬きも出来ずに大男を見送った。
部屋にもどって着替えていると、後ろに気配を感じた。ふり向いて声を上げそうになった。大津の皇子が立っていたのである。
「すまなかった。私は遠い昔、鳳来に封じられたのだ。白い鳥に運ばれて眠りについたのだ。1月ほど前、大きく体が揺れて目をさましたが、今度は私の魂がない。私はどこなのだ」
大津の皇子はすがるような目をした。香坂の胸が熱くなった。なんとかしてやりたい思いがわき上がってどうすることもできなくなった。
「あなたは、いったい、何に封じ込められているの」
「水晶の勾玉だ。あいつとの荒御霊といっしょに」
大津の皇子は少し苦しそうだった。下半身が透き通りはじめている。香坂はその肩を抱いた。
「あいつって、誰なの」
香坂が聞くと大津の皇子は口を開いた。
「お……」
その先は聞き取れないまま大津の皇子は消えた。
「あんた。ほんとに神様と話せるのか? もしかして、おれをからかっているんじゃないのか」
言われた香坂は視線を一度視線を泳がせてからじっと見すえた。
「どう考えるかは、あなたしだいね。確かに、思い通りに霊を呼び出せないこともあるわね。でも、あなたは私とお金をかせいだのよ。悪いことをして」
香坂はじっと大男を見た。大男はうつむいてから答えた。
「悪かったよ。あんたに従う。ああそうだ。この前あんたが言ってた。聞こえない音を出すチップな、できたぞ。聞いてみるか」
大男はごまかすようにポケットから、名刺くらいのカードを出した。スイッチを入れる。何も音は聞こえないが頭の芯が熱くなってくる。底なし沼に落ちていくように気分が沈んで行って意識が遠のいて行った。
「きくだろう」
大男の声を遠くで聞いた香坂は我に帰った。大男がスイッチを切ったらしい。気がつくと大男の顔が目の前にあった。
「超低周波で催眠のセリフが入れてある。これで知らぬ間に眠らせるんだ。完全に寝ているわけじゃない。シータ波という状態だ。ここで指示を出せば、人を自由に操れる」
大男はイヤな笑いを浮かべてうなずいた。香坂は瞬きも出来ずに大男を見送った。
部屋にもどって着替えていると、後ろに気配を感じた。ふり向いて声を上げそうになった。大津の皇子が立っていたのである。
「すまなかった。私は遠い昔、鳳来に封じられたのだ。白い鳥に運ばれて眠りについたのだ。1月ほど前、大きく体が揺れて目をさましたが、今度は私の魂がない。私はどこなのだ」
大津の皇子はすがるような目をした。香坂の胸が熱くなった。なんとかしてやりたい思いがわき上がってどうすることもできなくなった。
「あなたは、いったい、何に封じ込められているの」
「水晶の勾玉だ。あいつとの荒御霊といっしょに」
大津の皇子は少し苦しそうだった。下半身が透き通りはじめている。香坂はその肩を抱いた。
「あいつって、誰なの」
香坂が聞くと大津の皇子は口を開いた。
「お……」
その先は聞き取れないまま大津の皇子は消えた。
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08:23
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2011年09月07日
現代へと続く海の道(仮題)16 香坂の部屋
香坂は深夜に目をさますと、大男を呼びだした。
「ねえ、これから、あなたと私の守り神を呼び出すわよ。そこのテーブルに地図を広げて」
香坂は大男に指示すると、自分は水晶玉を見つめながら口の中で呪文を唱えた。両手を水晶玉の少し上で回してからうなずいて、左の手を地図の上にやる。右手は水晶玉の上のままだった。
「ここなの? ここでいいの」
何度かそう言いながら左手を動かして地図の上の一点に指を止めた。
「ここ。カーナビで行ける?」
香坂が見つめると大男は指のまわりの地名を拾った。新城の山奥、鳳来寺山の南側だった。
「近くまで、車で行けると思うけど、そんなところに神様はいるのか? おれは神島で声を聞いたが」
「神様というよりは、怨霊なのよ。だからいろんなところに現れるの。でも本体は鳳来の山に封じられているの」
香坂はめんどくさそうに説明した。二人して車に乗ると大男が運転して鳳来の山へ向かった。山の中を車で走り回って、鳳来寺山の南側で小さな祠を見つけたときは、空が白みはじめていた。
「ここみたい」
手にした水晶玉をみながら香坂が言った。大男は車を止めて後についていく。獣道がなだらかな坂を登っていく。三〇分ほど登ったところで平らなところに出た。最近まで木があったらしく、直径10mほど草が短い。あたりを歩き回ると大木の切り株があった。横に小さな祠があり「白鷺塚」と書いてあった。
「ここに封じられていたんだ」
香坂は祠を抱きしめて呪文を唱えた。大男は香坂の指示で持ってきたお香をたいた。しばらくしても何も起こらない。香坂の呪文がだんだん大きくなっていった。
「ほんとにここなのか?」
大男はおそるおそる聞いた。香坂は答えない。
昼過ぎになって、獣道を誰かが登ってきた。香坂は祠から離れ、大男はお香を隠した。
「あんたたち、何してるんだ? ここの杉はもうないぞ。先月、雷が落ちてな。切り倒した。今ごろ、鳳来小学校か、豊橋の**小学校だろ」
登ってきた地元の人らしい老人はめんどくさそうに言った。香坂と大男は山を下りた。
「あんた、大津の皇子に聞いたんじゃないのか?」
車の中で大男は不満そうだった。
「呼び出せなかったのよ。それで、大津の皇子の気配をたどっていったの。でも、たぶん、あそこに封じられていたんだと思う」
香坂は言い訳がましく言った。
「ねえ、これから、あなたと私の守り神を呼び出すわよ。そこのテーブルに地図を広げて」
香坂は大男に指示すると、自分は水晶玉を見つめながら口の中で呪文を唱えた。両手を水晶玉の少し上で回してからうなずいて、左の手を地図の上にやる。右手は水晶玉の上のままだった。
「ここなの? ここでいいの」
何度かそう言いながら左手を動かして地図の上の一点に指を止めた。
「ここ。カーナビで行ける?」
香坂が見つめると大男は指のまわりの地名を拾った。新城の山奥、鳳来寺山の南側だった。
「近くまで、車で行けると思うけど、そんなところに神様はいるのか? おれは神島で声を聞いたが」
「神様というよりは、怨霊なのよ。だからいろんなところに現れるの。でも本体は鳳来の山に封じられているの」
香坂はめんどくさそうに説明した。二人して車に乗ると大男が運転して鳳来の山へ向かった。山の中を車で走り回って、鳳来寺山の南側で小さな祠を見つけたときは、空が白みはじめていた。
「ここみたい」
手にした水晶玉をみながら香坂が言った。大男は車を止めて後についていく。獣道がなだらかな坂を登っていく。三〇分ほど登ったところで平らなところに出た。最近まで木があったらしく、直径10mほど草が短い。あたりを歩き回ると大木の切り株があった。横に小さな祠があり「白鷺塚」と書いてあった。
「ここに封じられていたんだ」
香坂は祠を抱きしめて呪文を唱えた。大男は香坂の指示で持ってきたお香をたいた。しばらくしても何も起こらない。香坂の呪文がだんだん大きくなっていった。
「ほんとにここなのか?」
大男はおそるおそる聞いた。香坂は答えない。
昼過ぎになって、獣道を誰かが登ってきた。香坂は祠から離れ、大男はお香を隠した。
「あんたたち、何してるんだ? ここの杉はもうないぞ。先月、雷が落ちてな。切り倒した。今ごろ、鳳来小学校か、豊橋の**小学校だろ」
登ってきた地元の人らしい老人はめんどくさそうに言った。香坂と大男は山を下りた。
「あんた、大津の皇子に聞いたんじゃないのか?」
車の中で大男は不満そうだった。
「呼び出せなかったのよ。それで、大津の皇子の気配をたどっていったの。でも、たぶん、あそこに封じられていたんだと思う」
香坂は言い訳がましく言った。
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11:11
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2011年09月06日
現代へと続く海の道15(仮題)香坂の部屋
香坂の部屋である。その日も子ども達が入れ替わり立ち替わりやってきた。順番を待っている間ゲーム機から目を離さない。子どもどうしで話もしない。
「はい。お金は持ってきたわね。5000円よ」
香坂はお金と引き替えに小さな封筒を渡すと、子どもは腹の減った犬がエサを貪るように袋を開けてソフトをゲーム機に入れた。香坂は無表情にお金を財布に入れた。
最後の子どもが帰ると大男がやってきた。
「ほう。また伸びたなあ、売り上げ」
大男はイスに腰掛けて札束を見るとニヤリと笑った。
「ねえ。またもうけ話があるんだけど」
香坂が立ち上がって声をかける。大男は香坂を見あげた。
「あのねえ、うちのお客さんでねえ、夜眠れないって言う人が何人かいるの。その人達に安眠枕を作れないかしら」
香坂の目が赤くにごった。大男を見すえたままで向かい側に座った。
「安眠枕? それ使うとよく眠れるやつか」
「そう。安物の枕を買ってきて、私がお札をつけて売ろうと思うの。その枕にあなたなにか仕組めない? ゲーム機につけたみたいなもの」
香坂は大男の目をのぞきこんだ。大男がのけぞる。
「おれがゲームに仕込んでいるのは、不可視光線だ。人の目には見えない映像が画面に映るようにしてある。そこに血まみれの子どもの映像と、『これは明日のおまえだ。助けたければゲームを進めろ』とメッセージが入れてある」
大男は言い訳するような言い方をした。
「不可視光線? 目に見えない映像? そんなことを大津の皇子が? 1300年前の人が教えてくれたの」
香姫が聞くと、大男はちょっと安心した顔になった。
「そんな言い方はしなかった。『人には見えない光がある。聞こえない音がある。人は見えない物を恐れ、聞こえない声に従う』そう言ったんだ」
大男は早口でしゃべった。香坂はゆっくりうなずいた。
「ねえ。っていうことは、聞こえない声で命令すれば、人を従わせることができるのね。じゃあ、つくって。今って電報とかでオルゴールのなるのがあるでしょう。あんな感じで、私の言うことを聞かせるメッセージを入れるのよ。それが出来たら、ゲームの売り上げは全部あなたにあげる」
香坂は勝手なことを言って大男を送り出した。
一人になると水晶玉を見つめた。黒い煙が中で揺れだして、中から大津の皇子が現れた。
「香姫よ。そなたの力で、私を自由にしてほしい。私は山奥の大木に中に封じ込められている。どうか私を解き放ってほしい。そうすれば、今以上にそなたを守ってやれる」
大津の皇子はいつものように香姫を抱いてささやいた。
「山奥ってどこなの?」
「鳳来の山だ。大山の北東、沢のほとりに祠がある。その祠のうらにある大木だ」
大津の皇子はそこまで言って消えた。香坂は倒れて眠った。
「はい。お金は持ってきたわね。5000円よ」
香坂はお金と引き替えに小さな封筒を渡すと、子どもは腹の減った犬がエサを貪るように袋を開けてソフトをゲーム機に入れた。香坂は無表情にお金を財布に入れた。
最後の子どもが帰ると大男がやってきた。
「ほう。また伸びたなあ、売り上げ」
大男はイスに腰掛けて札束を見るとニヤリと笑った。
「ねえ。またもうけ話があるんだけど」
香坂が立ち上がって声をかける。大男は香坂を見あげた。
「あのねえ、うちのお客さんでねえ、夜眠れないって言う人が何人かいるの。その人達に安眠枕を作れないかしら」
香坂の目が赤くにごった。大男を見すえたままで向かい側に座った。
「安眠枕? それ使うとよく眠れるやつか」
「そう。安物の枕を買ってきて、私がお札をつけて売ろうと思うの。その枕にあなたなにか仕組めない? ゲーム機につけたみたいなもの」
香坂は大男の目をのぞきこんだ。大男がのけぞる。
「おれがゲームに仕込んでいるのは、不可視光線だ。人の目には見えない映像が画面に映るようにしてある。そこに血まみれの子どもの映像と、『これは明日のおまえだ。助けたければゲームを進めろ』とメッセージが入れてある」
大男は言い訳するような言い方をした。
「不可視光線? 目に見えない映像? そんなことを大津の皇子が? 1300年前の人が教えてくれたの」
香姫が聞くと、大男はちょっと安心した顔になった。
「そんな言い方はしなかった。『人には見えない光がある。聞こえない音がある。人は見えない物を恐れ、聞こえない声に従う』そう言ったんだ」
大男は早口でしゃべった。香坂はゆっくりうなずいた。
「ねえ。っていうことは、聞こえない声で命令すれば、人を従わせることができるのね。じゃあ、つくって。今って電報とかでオルゴールのなるのがあるでしょう。あんな感じで、私の言うことを聞かせるメッセージを入れるのよ。それが出来たら、ゲームの売り上げは全部あなたにあげる」
香坂は勝手なことを言って大男を送り出した。
一人になると水晶玉を見つめた。黒い煙が中で揺れだして、中から大津の皇子が現れた。
「香姫よ。そなたの力で、私を自由にしてほしい。私は山奥の大木に中に封じ込められている。どうか私を解き放ってほしい。そうすれば、今以上にそなたを守ってやれる」
大津の皇子はいつものように香姫を抱いてささやいた。
「山奥ってどこなの?」
「鳳来の山だ。大山の北東、沢のほとりに祠がある。その祠のうらにある大木だ」
大津の皇子はそこまで言って消えた。香坂は倒れて眠った。
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08:50
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2011年09月05日
現代へと続く海の道(仮題)14
白宮と荒川はパレットを組んである上に乗って上へとのばしてく。幅は8mくらいで高さ3mくらい、ベニヤ板を貼ると壁ができた。
「これで、裏にも板を貼れば小屋ができるな」
荒川は出来上がったようにうれしそうだった。
「あのう、子どものころやった秘密基地を思い出しました」
白宮も自然に笑いが浮かんできた。
「これじゃあ、全然秘密にならないけどな」
荒川は、全面に貼った板を指さした。8m×3mのモニュメントである。学校の外からでも見えるだろう。
「じゃあ、せめて、中に秘密の小部屋をつくりませんか」
「それは、子ども達が自分でつくった方がいい」
「材料と道具を残しておけばいいですね」
白宮が言って、荒川がうなずいたところで教頭先生がのぞきに来た。
「お世話になります。予算が少ないんで大変でしょう。足しになるかどうか分かりませんが、これも使えますのでお願いします」
直径15cmくらいの皮付き杉の丸太を出した。
「杉のいいにおいがしますね。使わせていただきます」
荒川は手にとって頭を下げた。
「まだたくさんあります。体育館のうらにおいてありますが、1本だけね、すごい大木があるんですよ」
教頭先生は両手で大木を抱く真似をした。白宮が医王寺で聞いたご神木のことらしい。白宮と荒川は見に行くことにした。教頭先生について行くと丸太の山と、直径2mもあるような大木の輪切りが横にしてあった。長さは7mくらいだろうか。ロングボディのトラックの荷台にあわせて切ったという。
教頭先生が帰って行くと、白宮は大木に耳を近づけた。なにか太古の記憶を持っていそうな気がする。医王寺の住職に聞いた話では樹齢1400年とか言っていた。
「おい。これ、なんだ?」
荒川が白宮を呼んだ。荒川が指さす先に木の皮の裂け目があって、光るものがのぞいている。動物の目玉のようにも見える。
「削ってみましょうか」
白宮はつめで皮をはがしていった。最初、直径1cmほどの玉が出てきた。透き通っていて真ん中に穴が開けてある。続けて皮をめくるとオタマジャクシのシッポのようになっている。
「これ、勾玉じゃないか。水晶だな」
荒川が言った。白宮の胸になにかなつかしい思いが浮かんだ。そしてアザがジンジンした。
「荒川さん。アザが」
白宮が言うと、荒川もアザをおさえてうなずいた。
「これで、裏にも板を貼れば小屋ができるな」
荒川は出来上がったようにうれしそうだった。
「あのう、子どものころやった秘密基地を思い出しました」
白宮も自然に笑いが浮かんできた。
「これじゃあ、全然秘密にならないけどな」
荒川は、全面に貼った板を指さした。8m×3mのモニュメントである。学校の外からでも見えるだろう。
「じゃあ、せめて、中に秘密の小部屋をつくりませんか」
「それは、子ども達が自分でつくった方がいい」
「材料と道具を残しておけばいいですね」
白宮が言って、荒川がうなずいたところで教頭先生がのぞきに来た。
「お世話になります。予算が少ないんで大変でしょう。足しになるかどうか分かりませんが、これも使えますのでお願いします」
直径15cmくらいの皮付き杉の丸太を出した。
「杉のいいにおいがしますね。使わせていただきます」
荒川は手にとって頭を下げた。
「まだたくさんあります。体育館のうらにおいてありますが、1本だけね、すごい大木があるんですよ」
教頭先生は両手で大木を抱く真似をした。白宮が医王寺で聞いたご神木のことらしい。白宮と荒川は見に行くことにした。教頭先生について行くと丸太の山と、直径2mもあるような大木の輪切りが横にしてあった。長さは7mくらいだろうか。ロングボディのトラックの荷台にあわせて切ったという。
教頭先生が帰って行くと、白宮は大木に耳を近づけた。なにか太古の記憶を持っていそうな気がする。医王寺の住職に聞いた話では樹齢1400年とか言っていた。
「おい。これ、なんだ?」
荒川が白宮を呼んだ。荒川が指さす先に木の皮の裂け目があって、光るものがのぞいている。動物の目玉のようにも見える。
「削ってみましょうか」
白宮はつめで皮をはがしていった。最初、直径1cmほどの玉が出てきた。透き通っていて真ん中に穴が開けてある。続けて皮をめくるとオタマジャクシのシッポのようになっている。
「これ、勾玉じゃないか。水晶だな」
荒川が言った。白宮の胸になにかなつかしい思いが浮かんだ。そしてアザがジンジンした。
「荒川さん。アザが」
白宮が言うと、荒川もアザをおさえてうなずいた。
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08:35
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