2011年09月06日

現代へと続く海の道15(仮題)香坂の部屋

 香坂の部屋である。その日も子ども達が入れ替わり立ち替わりやってきた。順番を待っている間ゲーム機から目を離さない。子どもどうしで話もしない。
「はい。お金は持ってきたわね。5000円よ」
 香坂はお金と引き替えに小さな封筒を渡すと、子どもは腹の減った犬がエサを貪るように袋を開けてソフトをゲーム機に入れた。香坂は無表情にお金を財布に入れた。
 最後の子どもが帰ると大男がやってきた。
「ほう。また伸びたなあ、売り上げ」
 大男はイスに腰掛けて札束を見るとニヤリと笑った。
「ねえ。またもうけ話があるんだけど」
 香坂が立ち上がって声をかける。大男は香坂を見あげた。
「あのねえ、うちのお客さんでねえ、夜眠れないって言う人が何人かいるの。その人達に安眠枕を作れないかしら」
 香坂の目が赤くにごった。大男を見すえたままで向かい側に座った。
「安眠枕? それ使うとよく眠れるやつか」
「そう。安物の枕を買ってきて、私がお札をつけて売ろうと思うの。その枕にあなたなにか仕組めない? ゲーム機につけたみたいなもの」
 香坂は大男の目をのぞきこんだ。大男がのけぞる。
「おれがゲームに仕込んでいるのは、不可視光線だ。人の目には見えない映像が画面に映るようにしてある。そこに血まみれの子どもの映像と、『これは明日のおまえだ。助けたければゲームを進めろ』とメッセージが入れてある」
 大男は言い訳するような言い方をした。
「不可視光線? 目に見えない映像? そんなことを大津の皇子が? 1300年前の人が教えてくれたの」
 香姫が聞くと、大男はちょっと安心した顔になった。
「そんな言い方はしなかった。『人には見えない光がある。聞こえない音がある。人は見えない物を恐れ、聞こえない声に従う』そう言ったんだ」
 大男は早口でしゃべった。香坂はゆっくりうなずいた。
「ねえ。っていうことは、聞こえない声で命令すれば、人を従わせることができるのね。じゃあ、つくって。今って電報とかでオルゴールのなるのがあるでしょう。あんな感じで、私の言うことを聞かせるメッセージを入れるのよ。それが出来たら、ゲームの売り上げは全部あなたにあげる」
 香坂は勝手なことを言って大男を送り出した。
 一人になると水晶玉を見つめた。黒い煙が中で揺れだして、中から大津の皇子が現れた。
「香姫よ。そなたの力で、私を自由にしてほしい。私は山奥の大木に中に封じ込められている。どうか私を解き放ってほしい。そうすれば、今以上にそなたを守ってやれる」
 大津の皇子はいつものように香姫を抱いてささやいた。
「山奥ってどこなの?」
「鳳来の山だ。大山の北東、沢のほとりに祠がある。その祠のうらにある大木だ」
 大津の皇子はそこまで言って消えた。香坂は倒れて眠った。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:50│Comments(0)
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