2011年11月30日
現代へと続く海の道(仮題)79
白宮は影の方を目で追った。
「勇人君なのか?」
駐車場を見まわしながら声をかける。前にも、こっそり車に乗り込んでいたことがあったからであるが返事はない。事務室にもどろうとした時に、何か犬のようなものが足にふれた気がして、体が浮き仰向けに倒れ込んだ。一瞬目を閉じて開けると早川直人が立っていた。目がつりあがり、こめかみには青筋が立っている。白宮をにらんで迫ってくる。背後には黒い雲のようなものが見えた。体は金縛りにあったように動かない。魚のアザがジンジンと痛んだ。
「ゲーム機を返せ。あれはぼくのものだ。ぼくがもらったんだ」
直人は両手を前に出してにじり寄ってくる。
「あのゲームは、もう警察にわたしたんだ」
白宮が叫んでも直人には聞こえないらしい。表情一つ変えない。白宮はこの小学生に恐怖を感じた。「殺される」ほんとにそう思った。
「ええい。悪霊退散」
事務室のドアが開いて社長が出てきた。勇人に教えるために来ていたのか、弓道用の着物とハカマをつけていた。社長は右手を振り上げ、二本指を立てて斜めに振り下ろした。
「うわあ」
直人が叫び声を上げてわれに帰った。表情は普通の子どもにもどっていた。社長は不思議そうに自分の右手を見ている。
「因幡のシロヒトよ。油断しておったな。危なかったぞ」
白宮の頭の奥から声がひびいてきた。社長は倒れ込んだ直人を抱き起こし、事務室へ連れて行った。
「勇人君なのか?」
駐車場を見まわしながら声をかける。前にも、こっそり車に乗り込んでいたことがあったからであるが返事はない。事務室にもどろうとした時に、何か犬のようなものが足にふれた気がして、体が浮き仰向けに倒れ込んだ。一瞬目を閉じて開けると早川直人が立っていた。目がつりあがり、こめかみには青筋が立っている。白宮をにらんで迫ってくる。背後には黒い雲のようなものが見えた。体は金縛りにあったように動かない。魚のアザがジンジンと痛んだ。
「ゲーム機を返せ。あれはぼくのものだ。ぼくがもらったんだ」
直人は両手を前に出してにじり寄ってくる。
「あのゲームは、もう警察にわたしたんだ」
白宮が叫んでも直人には聞こえないらしい。表情一つ変えない。白宮はこの小学生に恐怖を感じた。「殺される」ほんとにそう思った。
「ええい。悪霊退散」
事務室のドアが開いて社長が出てきた。勇人に教えるために来ていたのか、弓道用の着物とハカマをつけていた。社長は右手を振り上げ、二本指を立てて斜めに振り下ろした。
「うわあ」
直人が叫び声を上げてわれに帰った。表情は普通の子どもにもどっていた。社長は不思議そうに自分の右手を見ている。
「因幡のシロヒトよ。油断しておったな。危なかったぞ」
白宮の頭の奥から声がひびいてきた。社長は倒れ込んだ直人を抱き起こし、事務室へ連れて行った。
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2011年11月29日
現代へと続く海の道(仮題)78
白宮達は、**小学校への出入りが出来なくなった。一日に二.三回は学校の近くを通って船を見ていくだけだった。勇人は朝と帰り母親が送迎し帰りには弓道の練習に行っている。白宮と荒川は夕方、弓道の師匠の会社によって勇人と話した。
三日たったが、学校ではとくに変わったことはないらしい。ただ、早川直人はあれから学校に来ていないらしく、勇人が聞いても担任は答えてくれないとのことだった。
そんな四日目の夕方、勇人の師匠の会社にいるときだった。刑事の村尾から電話がかかった。
「白宮さん。今いいですか? 例の早川とかいう子どものゲーム機をこちらで色々調べたんですが、おもしろいことが二つ分かりました。まず、一つはあのゲームには人間には見えない光で、絵がかいてあります。それを使って、早川とかいう子にイジメをさせていたんです。それと、もう一つ、あのゲームには「大津の皇子」「麻績の王」という主人公と六人の主な人物が出て来るんですが、この五人がどうも、われわれに対応しているんです。『常陸の国の荒瀬』という人物は、荒川さんの『荒』でしょうし、『因幡のシロヒト』は白宮さんの『白』でしょう。そのあとに『瀬戸内の村尾と村国』という双子の海賊が出てくるんですが、これがどうも私と弟らしい」
村尾はそこで一度言葉を切った。白宮が我慢できずにつづきを聞く。
「あとの二人は?」
「それが、鯛島の『イサミ』これは少年です。『勇』という字を使えば『勇人くん』になります。そこまではいいんですが、もう一人女が出てきます。これが『神島の香姫』というんです」
村尾はここでまた黙った。
「香姫って、あの悪い占い師ですか?」
白宮の声がひっくりかえった。電話の向こうでため息が聞こえた。白宮がもう一言言おうとしたとき、駐車場のすみの暗がりから小さなかげが現れた。白宮は村尾に告げて電話を切った。
三日たったが、学校ではとくに変わったことはないらしい。ただ、早川直人はあれから学校に来ていないらしく、勇人が聞いても担任は答えてくれないとのことだった。
そんな四日目の夕方、勇人の師匠の会社にいるときだった。刑事の村尾から電話がかかった。
「白宮さん。今いいですか? 例の早川とかいう子どものゲーム機をこちらで色々調べたんですが、おもしろいことが二つ分かりました。まず、一つはあのゲームには人間には見えない光で、絵がかいてあります。それを使って、早川とかいう子にイジメをさせていたんです。それと、もう一つ、あのゲームには「大津の皇子」「麻績の王」という主人公と六人の主な人物が出て来るんですが、この五人がどうも、われわれに対応しているんです。『常陸の国の荒瀬』という人物は、荒川さんの『荒』でしょうし、『因幡のシロヒト』は白宮さんの『白』でしょう。そのあとに『瀬戸内の村尾と村国』という双子の海賊が出てくるんですが、これがどうも私と弟らしい」
村尾はそこで一度言葉を切った。白宮が我慢できずにつづきを聞く。
「あとの二人は?」
「それが、鯛島の『イサミ』これは少年です。『勇』という字を使えば『勇人くん』になります。そこまではいいんですが、もう一人女が出てきます。これが『神島の香姫』というんです」
村尾はここでまた黙った。
「香姫って、あの悪い占い師ですか?」
白宮の声がひっくりかえった。電話の向こうでため息が聞こえた。白宮がもう一言言おうとしたとき、駐車場のすみの暗がりから小さなかげが現れた。白宮は村尾に告げて電話を切った。
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11:05
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2011年11月28日
現代へと続く海の道(仮題)77
明くる日、白宮と荒川は朝から**小学校の校長室にいた。校長と勇人の担任四人で話している。
「いやあ、昨日は本校の児童を守っていただきましてありがとうございました。担任からうかがっておりますが、ほんとにありがたいと思っております」
校長が白宮と荒川に頭を下げると、勇人の担任もいっしょに下げた。白宮と荒川は顔を見合わせた。どうも単純に感謝されているふうではない。校長が言いにくそうに続ける。
「最初は船の遊具を作っていただくお願いをしただけだったのに、指導にまでお力そえいただいて、たいへんありがたいのですが……。子ども達を事件に巻き込むことはさけたいので、」
校長はそこまで言って、白宮と荒川の顔を見た。「状況をさっして、もう来ないでほしい」と目が語っていた。
「ぼくたちが、子ども達を事件に巻き込んだとおっしゃるんですか?」
荒川が立ち上がった。声が震えている。白宮もじっと校長をそして勇人の担任を見た。担任はうつむいて唇を噛んでいる。
「いえ、先ほども申しましたように、お二人には感謝しております。ですから、今日までお願いしてきましたが、じつは今朝警察から電話が来ました。まあうまくかわしましたが、そう言うのは、学校としては困るわけです」
校長はそう言って、立ち上がり深く頭を下げた。
「校長先生。ぼくたちを悪く思うのはかまいません。でも、子ども達のことちゃんと見てくださいよ。『学校で事件を起こされなければいい』とおっしゃっているように聞こえます」
白宮は荒川を押さえて静かな口調で言った。勇人の担任はうつむいたまま肩をふるわせていた。
「分かりました。船はほとんど出来ていますから、もう引き渡しということで。もう学校へは来ません。子ども達とも関わりは持ちません」
荒川は席を立った。白宮も校長室を出た。校長と勇人の担任が玄関まで送ってきた。
「これから、どうしよう。早川とかいう子と、勇人のことも心配だし」
荒川がひとりごとのように言った。
「まあ、あそこまで言ったんだから、学校の中では、勇人は安全でしょう。これから、勇人のお母さんに連絡してしばらくは学校まで迎えにいってもらいましょう。きっとうまくいいきますよ」
白宮が言ったところで携帯が鳴った。勇人の担任からだった。小さな声で泣きながららしい、声が震えていた。
「白宮さん。さっきはすみませんでした。それから、勇人君と早川君は私が守ります。なんとしても、それと、こんなことお願いできるわけはないんですが、どうかこれまでどおり、勇人君をお願いします」
担任の電話は一方的話して切れた。どうやら誰かきたらしい。
「いやあ、昨日は本校の児童を守っていただきましてありがとうございました。担任からうかがっておりますが、ほんとにありがたいと思っております」
校長が白宮と荒川に頭を下げると、勇人の担任もいっしょに下げた。白宮と荒川は顔を見合わせた。どうも単純に感謝されているふうではない。校長が言いにくそうに続ける。
「最初は船の遊具を作っていただくお願いをしただけだったのに、指導にまでお力そえいただいて、たいへんありがたいのですが……。子ども達を事件に巻き込むことはさけたいので、」
校長はそこまで言って、白宮と荒川の顔を見た。「状況をさっして、もう来ないでほしい」と目が語っていた。
「ぼくたちが、子ども達を事件に巻き込んだとおっしゃるんですか?」
荒川が立ち上がった。声が震えている。白宮もじっと校長をそして勇人の担任を見た。担任はうつむいて唇を噛んでいる。
「いえ、先ほども申しましたように、お二人には感謝しております。ですから、今日までお願いしてきましたが、じつは今朝警察から電話が来ました。まあうまくかわしましたが、そう言うのは、学校としては困るわけです」
校長はそう言って、立ち上がり深く頭を下げた。
「校長先生。ぼくたちを悪く思うのはかまいません。でも、子ども達のことちゃんと見てくださいよ。『学校で事件を起こされなければいい』とおっしゃっているように聞こえます」
白宮は荒川を押さえて静かな口調で言った。勇人の担任はうつむいたまま肩をふるわせていた。
「分かりました。船はほとんど出来ていますから、もう引き渡しということで。もう学校へは来ません。子ども達とも関わりは持ちません」
荒川は席を立った。白宮も校長室を出た。校長と勇人の担任が玄関まで送ってきた。
「これから、どうしよう。早川とかいう子と、勇人のことも心配だし」
荒川がひとりごとのように言った。
「まあ、あそこまで言ったんだから、学校の中では、勇人は安全でしょう。これから、勇人のお母さんに連絡してしばらくは学校まで迎えにいってもらいましょう。きっとうまくいいきますよ」
白宮が言ったところで携帯が鳴った。勇人の担任からだった。小さな声で泣きながららしい、声が震えていた。
「白宮さん。さっきはすみませんでした。それから、勇人君と早川君は私が守ります。なんとしても、それと、こんなことお願いできるわけはないんですが、どうかこれまでどおり、勇人君をお願いします」
担任の電話は一方的話して切れた。どうやら誰かきたらしい。
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2011年11月25日
現代へと続く海の道(仮題)76
香坂がネットカフェで、水晶玉を見つめていたころ白宮は弓道の師匠を車で送っていた。
「白宮さん。私はあらためて勇人君にほれました」
師匠はポツリと言った。
「ほんと、気の毒なほど、いいやつですね」
白宮は前を見ながら答えた。師匠が大げさに手を振った。
「そんなことじゃないんです。あの子は世が世なら弓の名手ですよ」
師匠はいつになくきっぱりと言った。ちょうど信号で止まった白宮は驚いて師匠をみた。ふざけているようには見えない。白宮がとまどっているのを見て、師匠が笑った。
「白宮さん。戦国時代の弓の名手はねえ。弓を二本打つんですよ。どこを狙うか分かりますか?」
師匠に問われて白宮は車を出しながら答える。
「そりゃあ、心臓じゃないですか? でもそんなら一本でいいのに、二本なんですか」
「そう思うでしょうな。でもねえ、人間、心臓を打たれてもすぐには死なんのです。のたうち回って苦しんでから死ぬんです。そうじゃなくてね、まず、着物と腕の間を射るんです。矢が飛んできて着物に当たってごらんなさい。たいていの猛者でも戦意をなくします。白旗ですよ。そうしたら、殺さなくてすむんですよ。
それでもダメなときに二本目を射るんですが、この時に相手の眉間を狙います。脳みそを貫きますから、相手は痛みさえ感じることなく事切れるわけです。これが弓の極意であり、私たちが日々精進して稽古するのはこの時に正確に的を射るためです」
白宮が見ると師匠は小さくうなずいた。
「じつは、勇人君はぼくや荒川さんといっしょになんだか、とんでもないヤツと戦っている気がします。最初、ぼくや荒川さんは勇人君を守っているつもりでしたが、逆かも知れません」
白宮が言ったところで、師匠の会社に着いた。車を降りながら師匠がつぶやいた。
「たぶんね。勇人くんは、もう一本目の矢は打っていますよ。近いうちに二本目を打つことになるでしょう」
「白宮さん。私はあらためて勇人君にほれました」
師匠はポツリと言った。
「ほんと、気の毒なほど、いいやつですね」
白宮は前を見ながら答えた。師匠が大げさに手を振った。
「そんなことじゃないんです。あの子は世が世なら弓の名手ですよ」
師匠はいつになくきっぱりと言った。ちょうど信号で止まった白宮は驚いて師匠をみた。ふざけているようには見えない。白宮がとまどっているのを見て、師匠が笑った。
「白宮さん。戦国時代の弓の名手はねえ。弓を二本打つんですよ。どこを狙うか分かりますか?」
師匠に問われて白宮は車を出しながら答える。
「そりゃあ、心臓じゃないですか? でもそんなら一本でいいのに、二本なんですか」
「そう思うでしょうな。でもねえ、人間、心臓を打たれてもすぐには死なんのです。のたうち回って苦しんでから死ぬんです。そうじゃなくてね、まず、着物と腕の間を射るんです。矢が飛んできて着物に当たってごらんなさい。たいていの猛者でも戦意をなくします。白旗ですよ。そうしたら、殺さなくてすむんですよ。
それでもダメなときに二本目を射るんですが、この時に相手の眉間を狙います。脳みそを貫きますから、相手は痛みさえ感じることなく事切れるわけです。これが弓の極意であり、私たちが日々精進して稽古するのはこの時に正確に的を射るためです」
白宮が見ると師匠は小さくうなずいた。
「じつは、勇人君はぼくや荒川さんといっしょになんだか、とんでもないヤツと戦っている気がします。最初、ぼくや荒川さんは勇人君を守っているつもりでしたが、逆かも知れません」
白宮が言ったところで、師匠の会社に着いた。車を降りながら師匠がつぶやいた。
「たぶんね。勇人くんは、もう一本目の矢は打っていますよ。近いうちに二本目を打つことになるでしょう」
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2011年11月24日
現代へと続く海の道(仮題)75 香姫
香姫は早川を解放し、駅裏のネットカフェに身をひそめていた。白宮、荒川、村尾の持っていた水晶玉を奪うことに成功したが、もういくつか罪を重ねている。刑事の村尾は自分を追いかけているし、つかまればけっこうな罪になるだろう。
「どうせ、幸せになんかなれないんだもの」
うす暗い中で、小さな水晶玉を三つ手のひらにならべた。直径一cmほどの小さなものだが、黒、白、青のやわらかい光を放っている。香坂はため息をついた。
「香姫。すまない。いやな思いをさせておるな」
三つの水晶玉から声が聞こえた。いつも聞いている大津の皇子の声とはちがう声だった。はじめて聞いた声だが、なんだかなつかしい気がして、涙がこぼれてきた。目を閉じるとどこかの海がまぶたに浮かんだ。大きな島と小さな島がある。香坂はとまどった。心臓が強く脈打った。胸を二度さすって少ない荷物の中から、占いで使っていた大きな水晶玉を出した。この玉なら自分の知りたいことを引き出すことが出来ると思った。
「あなたは誰?」
思わずつぶやいた。水晶玉の中に見慣れない男が映ったのである。きれいな澄んだ目をして、長いアゴヒゲを生やしている。
「香姫。すまないことをした」
水晶玉の中で男はくりかえした。その声は耳からでなく、胸の奥からひびいてくる。それがなぜか香坂をいらだたせた。
「あなた、だれなのよ。いい加減にして」
香坂が強く言うとアゴヒゲの男は消えた。変わりに大津の皇子が現れた。
「もうすぐだ。もうすぐ、自由になれるのだ」
その声を聞くと香坂の胸に熱いものがこみ上げてきて、もやもやが消えた。ポケットから勾玉を出して見ると中で小さな光が二つ追いかけっこするように回っていた。
「どうせ、幸せになんかなれないんだもの」
うす暗い中で、小さな水晶玉を三つ手のひらにならべた。直径一cmほどの小さなものだが、黒、白、青のやわらかい光を放っている。香坂はため息をついた。
「香姫。すまない。いやな思いをさせておるな」
三つの水晶玉から声が聞こえた。いつも聞いている大津の皇子の声とはちがう声だった。はじめて聞いた声だが、なんだかなつかしい気がして、涙がこぼれてきた。目を閉じるとどこかの海がまぶたに浮かんだ。大きな島と小さな島がある。香坂はとまどった。心臓が強く脈打った。胸を二度さすって少ない荷物の中から、占いで使っていた大きな水晶玉を出した。この玉なら自分の知りたいことを引き出すことが出来ると思った。
「あなたは誰?」
思わずつぶやいた。水晶玉の中に見慣れない男が映ったのである。きれいな澄んだ目をして、長いアゴヒゲを生やしている。
「香姫。すまないことをした」
水晶玉の中で男はくりかえした。その声は耳からでなく、胸の奥からひびいてくる。それがなぜか香坂をいらだたせた。
「あなた、だれなのよ。いい加減にして」
香坂が強く言うとアゴヒゲの男は消えた。変わりに大津の皇子が現れた。
「もうすぐだ。もうすぐ、自由になれるのだ」
その声を聞くと香坂の胸に熱いものがこみ上げてきて、もやもやが消えた。ポケットから勾玉を出して見ると中で小さな光が二つ追いかけっこするように回っていた。
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07:49
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2011年11月23日
現代へと続く海の道(仮題)74
「さあ、この子の命が惜しかったら、水晶玉を出して」
香坂は早川の首にナイフをあてて白宮と荒川を見た。
「分かった。その子に手を出すな」
荒川はポケットから水晶玉を出した。真っ暗な中で青白い光を放っている。続いて白宮も水晶玉を出した。こちらは黒真珠のように黒く澄んだ光だった。勇人はたまらないような顔をしていた。
「ありがとう。みんなやさしいな。一人の命のために、一番大事なものを出して」
香坂は皮肉っぽく笑いながら、手にしていたナイフをわずかに動かした。白宮と荒川の水晶玉が発している光がブレードに当たってあやしく光った。
「もう一つあるのよね」
香坂は暗闇に向かって微笑んだ。
「やっぱり、お見通しだな」
闇の中から声がして村尾が現れた。手のひらの上にハンカチを敷き、その上に水晶玉をのせている。白い光だった。
「刑事さんには気をつけないとね。同じ失敗は繰り返さないわ。私、あの大男ほどバカじゃないもの」
香坂は意地悪く笑って村尾を見た。村尾は苦笑いした。
「あんなバカでも、自分の弟と思えば、そんな風に言われるとつらいな。あいつはワルでも、正直すぎるほどまっすぐでね。取調べでも、あんたとのことはなにも話さんよ」
村尾の言葉に香坂は少し良い気分になったらしい。表情がやわらいだ。
「ごめんね。悪くて。ちょっとだけ教えてあげる。白宮さんが持ってた勾玉があったでしょ。ほら、この船を作る時に出てきたおたまじゃくしみたいな石。あれにね。大津の皇子が封じてあるの。あの石が欲しくて
白宮さんを襲ったの。事故に見せかけてね」
そこまで聞くと、白宮がくやしそうに顔をゆがめた。
「おれたちの水晶玉は何の意味があるんだ」
荒川がしぼるような声を出した。
「五つの玉がそろうとね。ビンゴーって、大津の皇子がよみがえるんだって。楽しみね。ほっほほほ」
香坂が笑っていたのはそこまでだった。急にけわしい顔になった。
「そこに玉を置いて、駐車場まで下がって。私が安全に逃げられるようになったらこの子は離していくから」
香坂は村尾から目を離さずに言った。村尾と白宮、荒川はハンカチをおいて上に玉をのせた。弓道の師匠も勇人の担任も勇人も何も言えずに駐車場まで下がった。
「うわあ」
思わず六人は声をあげた。船のあたりで一瞬炎が上がって、早川が泣きながら走ってきた。担任が抱きとめて職員室へ向かった。弓道の師匠がつきそった。
白宮、荒川、村尾の三人は船に行ってみた。香坂の姿はなかった。
香坂は早川の首にナイフをあてて白宮と荒川を見た。
「分かった。その子に手を出すな」
荒川はポケットから水晶玉を出した。真っ暗な中で青白い光を放っている。続いて白宮も水晶玉を出した。こちらは黒真珠のように黒く澄んだ光だった。勇人はたまらないような顔をしていた。
「ありがとう。みんなやさしいな。一人の命のために、一番大事なものを出して」
香坂は皮肉っぽく笑いながら、手にしていたナイフをわずかに動かした。白宮と荒川の水晶玉が発している光がブレードに当たってあやしく光った。
「もう一つあるのよね」
香坂は暗闇に向かって微笑んだ。
「やっぱり、お見通しだな」
闇の中から声がして村尾が現れた。手のひらの上にハンカチを敷き、その上に水晶玉をのせている。白い光だった。
「刑事さんには気をつけないとね。同じ失敗は繰り返さないわ。私、あの大男ほどバカじゃないもの」
香坂は意地悪く笑って村尾を見た。村尾は苦笑いした。
「あんなバカでも、自分の弟と思えば、そんな風に言われるとつらいな。あいつはワルでも、正直すぎるほどまっすぐでね。取調べでも、あんたとのことはなにも話さんよ」
村尾の言葉に香坂は少し良い気分になったらしい。表情がやわらいだ。
「ごめんね。悪くて。ちょっとだけ教えてあげる。白宮さんが持ってた勾玉があったでしょ。ほら、この船を作る時に出てきたおたまじゃくしみたいな石。あれにね。大津の皇子が封じてあるの。あの石が欲しくて
白宮さんを襲ったの。事故に見せかけてね」
そこまで聞くと、白宮がくやしそうに顔をゆがめた。
「おれたちの水晶玉は何の意味があるんだ」
荒川がしぼるような声を出した。
「五つの玉がそろうとね。ビンゴーって、大津の皇子がよみがえるんだって。楽しみね。ほっほほほ」
香坂が笑っていたのはそこまでだった。急にけわしい顔になった。
「そこに玉を置いて、駐車場まで下がって。私が安全に逃げられるようになったらこの子は離していくから」
香坂は村尾から目を離さずに言った。村尾と白宮、荒川はハンカチをおいて上に玉をのせた。弓道の師匠も勇人の担任も勇人も何も言えずに駐車場まで下がった。
「うわあ」
思わず六人は声をあげた。船のあたりで一瞬炎が上がって、早川が泣きながら走ってきた。担任が抱きとめて職員室へ向かった。弓道の師匠がつきそった。
白宮、荒川、村尾の三人は船に行ってみた。香坂の姿はなかった。
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2011年11月22日
現代へと続く海の道(仮題)73
白宮と荒川それに、勇人の担任が駐車場に行くと二つの人影が見えた。
「白宮さん。今、ここに子どもが来ました」
遠くから弓の師匠の声が聞こえた。勇人と二人で駆け寄ってくる。白宮と荒川が近づくと勇人が口を開いた。
「直人です。髪の長い女の人といっしょでした」
「たぶん。香坂だ」
白宮は荒川に言った。勇人の担任と弓の師匠が不思議そうな顔ををした。
「学校の近くにある占い館の女です。子ども達にゲームを渡した大男の仲間で、大男は警察につかまりましたが女だけ逃げています」
荒川がかいつまんで説明した。
「それで、早川くんはどこへ行ったんだ」
「たぶん、白宮さんたちが作った船だと思います。直人、ゲームを取り返しに来たんです。白宮さんに渡したって言ったら、船の方に向かって行きました。女の人といっしょに」
勇人は校庭のすみを指さした。明かりもなく暗さが重なり合ってたまっているように見えた。荒川が車から懐中電灯を出して来て五人かたまって歩いた。五人のまわりだけ、明かりがつつんでゆっくり動いていく。ぼんやりと船が見え出すと深い海から浮かび上がってくるように見えた。
「早川くん。いるんだったら明かりをつけて」
担任が声を張り上げた。どこからも返事はない。五人はかたまったままで船の中に足を踏み入れた。自分の足音さえ不気味に聞こえた。ゆっくりと進み甲板に出た。どこにも人の気配はない。
「ほーほっほっほー。みなさんおそろいになったようね」
船のすぐ前の暗闇から女の声が上がった。明かりを向けると香坂がいやな笑いを浮かべて立っていた。片手で早川を抱えるようにして、もう片方の手でその首にナイフをつきつけている。風もないのに長い髪は空間に広がってゆらゆら揺れている。
「早川くん」
飛び出そうとする担任を白宮が止めた。
「この子の命が欲しかったら、水晶玉を出して? あなた方持っているんでしょ」
香坂が笑いを浮かべた。白宮のポケットで水晶玉が熱くなった。
「白宮さん。今、ここに子どもが来ました」
遠くから弓の師匠の声が聞こえた。勇人と二人で駆け寄ってくる。白宮と荒川が近づくと勇人が口を開いた。
「直人です。髪の長い女の人といっしょでした」
「たぶん。香坂だ」
白宮は荒川に言った。勇人の担任と弓の師匠が不思議そうな顔ををした。
「学校の近くにある占い館の女です。子ども達にゲームを渡した大男の仲間で、大男は警察につかまりましたが女だけ逃げています」
荒川がかいつまんで説明した。
「それで、早川くんはどこへ行ったんだ」
「たぶん、白宮さんたちが作った船だと思います。直人、ゲームを取り返しに来たんです。白宮さんに渡したって言ったら、船の方に向かって行きました。女の人といっしょに」
勇人は校庭のすみを指さした。明かりもなく暗さが重なり合ってたまっているように見えた。荒川が車から懐中電灯を出して来て五人かたまって歩いた。五人のまわりだけ、明かりがつつんでゆっくり動いていく。ぼんやりと船が見え出すと深い海から浮かび上がってくるように見えた。
「早川くん。いるんだったら明かりをつけて」
担任が声を張り上げた。どこからも返事はない。五人はかたまったままで船の中に足を踏み入れた。自分の足音さえ不気味に聞こえた。ゆっくりと進み甲板に出た。どこにも人の気配はない。
「ほーほっほっほー。みなさんおそろいになったようね」
船のすぐ前の暗闇から女の声が上がった。明かりを向けると香坂がいやな笑いを浮かべて立っていた。片手で早川を抱えるようにして、もう片方の手でその首にナイフをつきつけている。風もないのに長い髪は空間に広がってゆらゆら揺れている。
「早川くん」
飛び出そうとする担任を白宮が止めた。
「この子の命が欲しかったら、水晶玉を出して? あなた方持っているんでしょ」
香坂が笑いを浮かべた。白宮のポケットで水晶玉が熱くなった。
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2011年11月21日
現代へと続く海の道(仮題)72
白宮と荒川が職員室へ入ると、勇人の担任が一人だけだった。机の上には何ものっていないのに、一つところをじっと見ている。
「先生。なにか連絡ありましたか」
白宮が声をかけるとやっと顔を向けた。変なかげがあるようで、急に十才くらい年取ったように見える。
「白宮さん。なんか見えないか?」
荒川は職員室のすみを指さした。言われてみると、黒い大きなかげがあるような気がする。
「ほんとだ、なんだろう」
白宮が言って、勇人の担任が目を向けると消えた。そして担任が急に立ち上がった。
「たいへん。勇人くんと早川くんを探さなきゃ」
「まあ、落ちついてください。勇人くんは、今、駐車場にいます。いっしょに早川くんを探しにいくそうです。心配はいりませんよ。一人じゃありません。弓道の師匠といっしょです。これから早川くんの家によってみます」
白宮が言って、担任はやっと落ちついてイスに座った。
「じゃあ、すみませんが、先生は荒川といっしょに早川くん家に行ってくれませんか」
白宮は荒川と先生に頼んで、車にもどった。勇人と弓道の師匠を乗せて車を出した。勇人が早川の立ち寄りそうなところを案内していく。以前よく遊んだ公園や駅前の塾へも行ってみた。あと、どこへいこうかと言い合っているところで携帯が鳴った。荒川だった。
「白宮さん。学校へもどってくれ。船のところで早川君をみつけた」
白宮はあわてて学校へもどった。
「先生。なにか連絡ありましたか」
白宮が声をかけるとやっと顔を向けた。変なかげがあるようで、急に十才くらい年取ったように見える。
「白宮さん。なんか見えないか?」
荒川は職員室のすみを指さした。言われてみると、黒い大きなかげがあるような気がする。
「ほんとだ、なんだろう」
白宮が言って、勇人の担任が目を向けると消えた。そして担任が急に立ち上がった。
「たいへん。勇人くんと早川くんを探さなきゃ」
「まあ、落ちついてください。勇人くんは、今、駐車場にいます。いっしょに早川くんを探しにいくそうです。心配はいりませんよ。一人じゃありません。弓道の師匠といっしょです。これから早川くんの家によってみます」
白宮が言って、担任はやっと落ちついてイスに座った。
「じゃあ、すみませんが、先生は荒川といっしょに早川くん家に行ってくれませんか」
白宮は荒川と先生に頼んで、車にもどった。勇人と弓道の師匠を乗せて車を出した。勇人が早川の立ち寄りそうなところを案内していく。以前よく遊んだ公園や駅前の塾へも行ってみた。あと、どこへいこうかと言い合っているところで携帯が鳴った。荒川だった。
「白宮さん。学校へもどってくれ。船のところで早川君をみつけた」
白宮はあわてて学校へもどった。
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2011年11月19日
現代へと続く海の道(仮題)71
**小学校へ着くまで、勇人は黙っていた。学校の横に車を止めると、職員室の明かりが見えた。
「なあ、勇人君。早川くんのこと、もう少し話してくれないかなあ」
白宮は後部座先をふりかえった。勇人は助手席の背もたれを抱えるように話し出した。
「直人と最初に会ったのは、幼稚園の年長の時です。ぼくのお父さんが死んで、母さんと二人で引っ越してきたときに、直人のお母さんとぼくの母さんが友だちになりました。直人のお母さんはいつも家にいたから、母さんの帰りが遅い日はいつも直人の家によって待ってました。そのころは、直人のお母さんもぼくのこと直人と同じように大事にしてくれました。よく、晩ご飯までよばれてました。日曜日は、直人のお父さんにつりに連れて行ってもらったこともありました」
勇人は大事そうに思い出を語った。
「家族ぐるみのつきあいだったわけだ。それで早川君が、塾に行くようになって変わっていったのか」
白宮が口をはさんだ。
「それだけじゃありません。直人のお父さんが大変になったんです。会社の社長だったんですが、悪い人にだまされたとかで、会社がつぶれました。すぐに勤めはじめたみたいで、引っ越したりもしなかったんですが、そのころから、お父さんが直人に勉強しろと強く言うようになりました。ぼくが遊びに行くのもいい顔しなくなりました」
勇人はそこまで言うと、白宮を見て頭を下げた。
「子どもってたいへんだよな。大人の都合で傷ついても、自分で立ち直るしかないもんな」
白宮がしみじみと言ったところで、荒川の車が止まった。助手席に勇人の弓道の師匠が乗っている。
「白宮さん。社長に勇人君をまかせて、俺たちで先生と話してこようか」
荒川は白宮の車の横に立って言った。白宮は車を降り、勇人を荒川の車に乗せて職員室へ向かった。
「なあ、勇人君。早川くんのこと、もう少し話してくれないかなあ」
白宮は後部座先をふりかえった。勇人は助手席の背もたれを抱えるように話し出した。
「直人と最初に会ったのは、幼稚園の年長の時です。ぼくのお父さんが死んで、母さんと二人で引っ越してきたときに、直人のお母さんとぼくの母さんが友だちになりました。直人のお母さんはいつも家にいたから、母さんの帰りが遅い日はいつも直人の家によって待ってました。そのころは、直人のお母さんもぼくのこと直人と同じように大事にしてくれました。よく、晩ご飯までよばれてました。日曜日は、直人のお父さんにつりに連れて行ってもらったこともありました」
勇人は大事そうに思い出を語った。
「家族ぐるみのつきあいだったわけだ。それで早川君が、塾に行くようになって変わっていったのか」
白宮が口をはさんだ。
「それだけじゃありません。直人のお父さんが大変になったんです。会社の社長だったんですが、悪い人にだまされたとかで、会社がつぶれました。すぐに勤めはじめたみたいで、引っ越したりもしなかったんですが、そのころから、お父さんが直人に勉強しろと強く言うようになりました。ぼくが遊びに行くのもいい顔しなくなりました」
勇人はそこまで言うと、白宮を見て頭を下げた。
「子どもってたいへんだよな。大人の都合で傷ついても、自分で立ち直るしかないもんな」
白宮がしみじみと言ったところで、荒川の車が止まった。助手席に勇人の弓道の師匠が乗っている。
「白宮さん。社長に勇人君をまかせて、俺たちで先生と話してこようか」
荒川は白宮の車の横に立って言った。白宮は車を降り、勇人を荒川の車に乗せて職員室へ向かった。
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2011年11月18日
現代へと続く海の道(仮題)70
白宮は**小学校へ向かう道を走っていた。携帯が鳴ったので車を止めて出た。荒川だった。
「白宮さん。運転中すまない。勇人君がいなくなった。さっきから探しているんだが……」
荒川の声は震えていた。
「勇人君が? だって、ぼくが倉庫から出るときはいましたよ」
白宮が答えたときに、後部座席で気配がした。白宮はびくりとしてふりかえった。助手席の後ろに黒いものが見えた。
「誰だ」
白宮は大声を上げた。電話の向こうで荒川があわてている。白宮がおそるおそるのぞくと、勇人がいた。白宮は目をこすった。
「勇人くん」
白宮は思わず叫んだ。
「すみません。どうしてもいっしょに行きたかったんです」
勇人は頭を下げた。それから顔を上げて白宮を見た。
「だけど、どうやって車に乗ったんだ」
「倉庫の裏口から出て、駐車場まで先回りしました。すみません」
勇人は手をあわせて頭を下げた。白宮はまずうなずいた。それから電話を持った。
「荒川さん。勇人くんいました」
そこまで言うと、電話の向こうで軽い笑いが聞こえた。
「全部聞こえたよ。ああ、お母さん、怒らないでください。社長も落ちついてください。白宮さん。勇人君のお母さんは俺が送っていく。その後、俺も学校へ行くから」
荒川は勇人の母親と社長をなだめながら話しているようで忙しい。白宮は電話を切って勇人を見た。
「勇人君。いっしょに行きたかったってどういうこと?」
白宮は穏やかに聞いた。
「直人のことが心配なんです。直人って、はい。早川くんのことです」
勇人はゆっくりしゃべり出した。
「直人とは幼稚園からいっしょです。四年生くらいまではいっしょに遊んでいました。五年生から直人は塾に行くようになっていっしょに学校終わってから遊ぶことはなくなりました。でも授業の休み時間とかいっしょにサッカーとかしていました。それが、学校の門のところで、ゲーム機をもらってから急に目つきが変わったんです。ゲームはぼくもやったんですが頭が痛くなってやめました。そのころに、白宮さんたちが学校で船をつくるようになりました。みんなゲームにあきて行きましたが、直人だけはあいかわらず夢中でした。それであのゲームって、ステージが五まであって、上がるごとに新しいソフトを買うんですが、それが五〇〇〇くらいするんです。直人も最初はお小遣いで買っていたんですが……」
勇人は一人でしゃべっていった。
「もしかして、前に学校でお金がなくなる騒ぎがあったのって、直人君か」
白宮が口をはさんだ。勇人がうなずいた。
「そうです。ぼくが見つけて止めたので、ぼくのせいにしました」
「あいつ。なんてやつなんだ」
白宮はいきり立った。勇人は続けた。
「でも、ぼく、なんか分かるんです。なんか居心地悪いんだと思います。すごく親が厳しいんです。学校でも家でもいい子でなくちゃいけないんです。直人は」
ここでまた、白宮が口をはさんだ。
「このまえ、階段のところで殴られていたとき、上にゲーム機があったよなあ。あれって、勇人君が隠したのか」
白宮の言葉に勇人がうなずいた。
「分かった。なんとかしてやる。勇人君も早川君も」
白宮は自分に言い聞かせるようにうなずいて車を出した。
「白宮さん。運転中すまない。勇人君がいなくなった。さっきから探しているんだが……」
荒川の声は震えていた。
「勇人君が? だって、ぼくが倉庫から出るときはいましたよ」
白宮が答えたときに、後部座席で気配がした。白宮はびくりとしてふりかえった。助手席の後ろに黒いものが見えた。
「誰だ」
白宮は大声を上げた。電話の向こうで荒川があわてている。白宮がおそるおそるのぞくと、勇人がいた。白宮は目をこすった。
「勇人くん」
白宮は思わず叫んだ。
「すみません。どうしてもいっしょに行きたかったんです」
勇人は頭を下げた。それから顔を上げて白宮を見た。
「だけど、どうやって車に乗ったんだ」
「倉庫の裏口から出て、駐車場まで先回りしました。すみません」
勇人は手をあわせて頭を下げた。白宮はまずうなずいた。それから電話を持った。
「荒川さん。勇人くんいました」
そこまで言うと、電話の向こうで軽い笑いが聞こえた。
「全部聞こえたよ。ああ、お母さん、怒らないでください。社長も落ちついてください。白宮さん。勇人君のお母さんは俺が送っていく。その後、俺も学校へ行くから」
荒川は勇人の母親と社長をなだめながら話しているようで忙しい。白宮は電話を切って勇人を見た。
「勇人君。いっしょに行きたかったってどういうこと?」
白宮は穏やかに聞いた。
「直人のことが心配なんです。直人って、はい。早川くんのことです」
勇人はゆっくりしゃべり出した。
「直人とは幼稚園からいっしょです。四年生くらいまではいっしょに遊んでいました。五年生から直人は塾に行くようになっていっしょに学校終わってから遊ぶことはなくなりました。でも授業の休み時間とかいっしょにサッカーとかしていました。それが、学校の門のところで、ゲーム機をもらってから急に目つきが変わったんです。ゲームはぼくもやったんですが頭が痛くなってやめました。そのころに、白宮さんたちが学校で船をつくるようになりました。みんなゲームにあきて行きましたが、直人だけはあいかわらず夢中でした。それであのゲームって、ステージが五まであって、上がるごとに新しいソフトを買うんですが、それが五〇〇〇くらいするんです。直人も最初はお小遣いで買っていたんですが……」
勇人は一人でしゃべっていった。
「もしかして、前に学校でお金がなくなる騒ぎがあったのって、直人君か」
白宮が口をはさんだ。勇人がうなずいた。
「そうです。ぼくが見つけて止めたので、ぼくのせいにしました」
「あいつ。なんてやつなんだ」
白宮はいきり立った。勇人は続けた。
「でも、ぼく、なんか分かるんです。なんか居心地悪いんだと思います。すごく親が厳しいんです。学校でも家でもいい子でなくちゃいけないんです。直人は」
ここでまた、白宮が口をはさんだ。
「このまえ、階段のところで殴られていたとき、上にゲーム機があったよなあ。あれって、勇人君が隠したのか」
白宮の言葉に勇人がうなずいた。
「分かった。なんとかしてやる。勇人君も早川君も」
白宮は自分に言い聞かせるようにうなずいて車を出した。
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2011年11月17日
現代へと続く海の道(仮題)69
白宮はまず荒川に電話して勇人のいる会社へ向かった。弓道を教えてもらっているところである。車の鍵をかけるのももどかしく入ると、事務室のソファーには荒川が一人でいた。奥の倉庫に巻藁が置いてあって、勇人と社長はそこで練習しているらしい。社長のきびしい声と勇人の返事が聞こえてくる。
「ああ、白宮さん。今、勇人君のお母さんは着がえに行ってる。もどって来たら、勇人君とお母さんはおれが送っていく。村尾さんにはおれから電話しておいた」
荒川は小声で言ってから、周囲を見まわした。白宮は胸を押さえた。大騒ぎするほどのことでもないかも知れない。相手は小学生なのだ。子ども同士のただのいさかいかも知れない。そう願いたい。ただ、今回はいろんなことが絡みすぎている。自分たちの知らないところで何かが動いている。その何かが胸騒ぎを呼んだ。
「荒川さん。ぼく、**小学校へ行ってきます。勇人君の担任もちょっと気になります」
そう言って白宮が外へ出ようとすると、倉庫からもどってくる社長とすれ違った。
「勇人君は、今、心が乱れているようです。ですが、何も言ってくれません。私に出来るのは、ぶれない弓を教えるだけです」
弓道の衣装を着た社長は、やるせない顔をしていた。
「ありがとうございます。たぶん、勇人君は弓を通して社長に相談しているんだと思います。この前『つらいことがあっても、弓道があるからがんばれる』って言ってました」
白宮の言葉に社長は顔をくしゃくしゃにしてうなずいて、そのまま事務室に入っていった。
白宮が倉庫に行くと勇人は巻藁の前で正座していた。
「白宮さん。こうして目を閉じていると海が見えます。小さな島があって、白宮さんや荒川さんといっしょです」
勇人は白宮をじっと見た。白宮のポケットで水晶玉が熱くなってきた。
「勇人くん。心配するなよ。みんなついてる」
白宮はやっとそう言った。勇人は立ち上がって白宮のそばにきた。
「今日は母さんといっしょに帰ります」
白宮を見あげて言った。
「ああ、荒川さんがいるから送ってもらいな。お母さんと」
白宮はそう言ってから、あわてて倉庫を出て車に乗った。急いでいたので後部座席でものが動いたのには気づかなかった。
「ああ、白宮さん。今、勇人君のお母さんは着がえに行ってる。もどって来たら、勇人君とお母さんはおれが送っていく。村尾さんにはおれから電話しておいた」
荒川は小声で言ってから、周囲を見まわした。白宮は胸を押さえた。大騒ぎするほどのことでもないかも知れない。相手は小学生なのだ。子ども同士のただのいさかいかも知れない。そう願いたい。ただ、今回はいろんなことが絡みすぎている。自分たちの知らないところで何かが動いている。その何かが胸騒ぎを呼んだ。
「荒川さん。ぼく、**小学校へ行ってきます。勇人君の担任もちょっと気になります」
そう言って白宮が外へ出ようとすると、倉庫からもどってくる社長とすれ違った。
「勇人君は、今、心が乱れているようです。ですが、何も言ってくれません。私に出来るのは、ぶれない弓を教えるだけです」
弓道の衣装を着た社長は、やるせない顔をしていた。
「ありがとうございます。たぶん、勇人君は弓を通して社長に相談しているんだと思います。この前『つらいことがあっても、弓道があるからがんばれる』って言ってました」
白宮の言葉に社長は顔をくしゃくしゃにしてうなずいて、そのまま事務室に入っていった。
白宮が倉庫に行くと勇人は巻藁の前で正座していた。
「白宮さん。こうして目を閉じていると海が見えます。小さな島があって、白宮さんや荒川さんといっしょです」
勇人は白宮をじっと見た。白宮のポケットで水晶玉が熱くなってきた。
「勇人くん。心配するなよ。みんなついてる」
白宮はやっとそう言った。勇人は立ち上がって白宮のそばにきた。
「今日は母さんといっしょに帰ります」
白宮を見あげて言った。
「ああ、荒川さんがいるから送ってもらいな。お母さんと」
白宮はそう言ってから、あわてて倉庫を出て車に乗った。急いでいたので後部座席でものが動いたのには気づかなかった。
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2011年11月16日
現代へと続く海の道(仮題)68
荒川は勇人を送っていった。白宮は一度、家にもどった。早川の携帯ゲーム機を村尾に渡してしまいたかった。画面を見て気分が悪くなったこともあるし、大男がなにか細工していると聞くとなおさら気味が悪い。
車に乗ってエンジンをかけると電話が鳴った。**小学校からだった。エンジンを切って電話に出た。勇人の担任だった。職員室かららしく声をひそめて話しているのが分かった。
「白宮さん。勇人くんは、いっしょじゃないですか?」
担任の声は震えている。
「どうしたんですか?」
「さっき、早川くんが、そう、学級委員の早川くんが私のところへ来ました。それで、私の目を見て言うんです。『これから、勇人くんを殺しにいきます』って、怖い目でした。瞬きもしないんです。私、なにも言えないままで、かたまってしまいました。ほんとに動くことも出来なくて……」
電話の向こうで担任が泣いているのが分かった。白宮も心臓がバクバクしてきた。なんとか自分を落ちつかせる。昨日、勇人が子どもたちに取り囲まれていたのを思い出した。
「先生。あなた、早川くんや勇人くんといっしょに死ねますか?」
なぜかそんな言葉が口から出た。電話の向こうが静かになった。
「本気で戦わなければならない時が来たんですよ。今、勇人は弓道の先生のところにいます。ぼくはこれからそちらに向かいます。先生は早川君をさがしてください」
白宮はそこまで言うと電話を切って村尾に電話した。早川のことを話してから車を出した。
車に乗ってエンジンをかけると電話が鳴った。**小学校からだった。エンジンを切って電話に出た。勇人の担任だった。職員室かららしく声をひそめて話しているのが分かった。
「白宮さん。勇人くんは、いっしょじゃないですか?」
担任の声は震えている。
「どうしたんですか?」
「さっき、早川くんが、そう、学級委員の早川くんが私のところへ来ました。それで、私の目を見て言うんです。『これから、勇人くんを殺しにいきます』って、怖い目でした。瞬きもしないんです。私、なにも言えないままで、かたまってしまいました。ほんとに動くことも出来なくて……」
電話の向こうで担任が泣いているのが分かった。白宮も心臓がバクバクしてきた。なんとか自分を落ちつかせる。昨日、勇人が子どもたちに取り囲まれていたのを思い出した。
「先生。あなた、早川くんや勇人くんといっしょに死ねますか?」
なぜかそんな言葉が口から出た。電話の向こうが静かになった。
「本気で戦わなければならない時が来たんですよ。今、勇人は弓道の先生のところにいます。ぼくはこれからそちらに向かいます。先生は早川君をさがしてください」
白宮はそこまで言うと電話を切って村尾に電話した。早川のことを話してから車を出した。
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2011年11月15日
現代へと続く海の道(仮題)67
「まあ、落ちついてください。お店の人がびっくりしてます」
村尾が二人の肩をたたいた。荒川と白宮は座り直した。
「偶然というより、何かに引っぱられいる気がします」
そう言った時、白宮は水晶玉がビリビリ震えている気がした。荒川もポケットを上から押さえた。
「例の大男。まあ、私の弟だったわけですが、こいつの取り調べをしていて気になることが出てきました。弟は、香坂とかいう占い師に指示されてコンピュータゲームのソフトを作ったと言うのです」
そこでまた、白宮が口をはさんだ。
「それ、学校の前で配っていました。なんでも、ゲーム機をただで配っておいて、子ども達がおもしろくてやめられなくなったら、続きのバージョンを高く売るとかです。このまえ、ちょっと見たら頭が痛くなりました」
白宮の言葉に荒川もうなずいた。今度は村尾が立ち上がった。荒川がなだめて、勇人のこと、早川のことを説明してその時に見たんだと話した。
「そのゲーム。お借りできますか? じつは、弟の話ではゲームに細工がしてあると言うんです。人間の目には見えない映像が仕組んであると言うんですが、内容はどうしてもいわんのです」
村尾の言われて白宮はゲームを渡す約束をして分かれた。
村尾が二人の肩をたたいた。荒川と白宮は座り直した。
「偶然というより、何かに引っぱられいる気がします」
そう言った時、白宮は水晶玉がビリビリ震えている気がした。荒川もポケットを上から押さえた。
「例の大男。まあ、私の弟だったわけですが、こいつの取り調べをしていて気になることが出てきました。弟は、香坂とかいう占い師に指示されてコンピュータゲームのソフトを作ったと言うのです」
そこでまた、白宮が口をはさんだ。
「それ、学校の前で配っていました。なんでも、ゲーム機をただで配っておいて、子ども達がおもしろくてやめられなくなったら、続きのバージョンを高く売るとかです。このまえ、ちょっと見たら頭が痛くなりました」
白宮の言葉に荒川もうなずいた。今度は村尾が立ち上がった。荒川がなだめて、勇人のこと、早川のことを説明してその時に見たんだと話した。
「そのゲーム。お借りできますか? じつは、弟の話ではゲームに細工がしてあると言うんです。人間の目には見えない映像が仕組んであると言うんですが、内容はどうしてもいわんのです」
村尾の言われて白宮はゲームを渡す約束をして分かれた。
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2011年11月14日
現代へと続く海の道(仮題)66
そば屋の一番すみのテーブルを三人の男が囲んでいた。刑事の村尾、設計士の荒川、コピー機の修理屋をしている白宮である。
最初に話し出したのは村尾だった。
「私は、この事件に興味を持ったのは白宮さんの事件からです。さっき言いましたように、大男を逮捕しましたが、たまたま、交通課であなたの書類を見ました。なぜだか、気になってあなたに会いに行ったのです。白宮さんはまだ意識がありませんでしたが、先に医者の話など聞くうちに、『これは事故じゃない』と確信しました。で、あなたと話して帰るときに医者に聞いたんです。あなたの肩に魚の形のアザがあると。これはまちがいないと思いました」
荒川は遠慮がち口をはさむ。
「あのう。私にもあるんです。そして、私も村尾さんも白宮さんも、水晶玉が出てきました。いったいどういうことなんでしょう」
白宮も村尾に目を向けた。村尾が口を開いた。
「私は、生まれは広島のなんです。瀬戸内の小さな島なんです。大学ので名古屋に出ましてそのままこちらで就職したんです。まあ、忙しくてなかなか、実家へは帰れなかったんですが、半年ほど前に法事がありまして、まあ無理やり帰ったんです。その時に妙な話を聞きました。こんな話なんです」
村尾は話し始めた。村尾の先祖は一三〇〇年くらい前、瀬戸内海を押さえる豪族だったという。双子の兄弟が村をおさめていた。ある時兄弟になにかもめ事が起こり、兄は瀬戸内を離れ伊勢に向かったという。弟も後を追って伊勢で戦って兄が勝った。兄は白鷺になって瀬戸内にもどった。その後、村尾の家系で双子が生まれると縁起が悪いと弟を養子に出す習わしになった。なぜか子どもには魚の形のアザが出るという。
「それで、村尾さんには双子の弟がいるんですか」
白宮が聞いた。村尾が苦しそうに頭をかかえる。
「それが、法事の時に聞いたところ、私が知らされていなかっただけでいたらしい。そして、この前逮捕した、あの大男が弟だった」
荒川と白宮は立ち上がって目をむいた。そば屋の女主人が驚いて三人を見た。
最初に話し出したのは村尾だった。
「私は、この事件に興味を持ったのは白宮さんの事件からです。さっき言いましたように、大男を逮捕しましたが、たまたま、交通課であなたの書類を見ました。なぜだか、気になってあなたに会いに行ったのです。白宮さんはまだ意識がありませんでしたが、先に医者の話など聞くうちに、『これは事故じゃない』と確信しました。で、あなたと話して帰るときに医者に聞いたんです。あなたの肩に魚の形のアザがあると。これはまちがいないと思いました」
荒川は遠慮がち口をはさむ。
「あのう。私にもあるんです。そして、私も村尾さんも白宮さんも、水晶玉が出てきました。いったいどういうことなんでしょう」
白宮も村尾に目を向けた。村尾が口を開いた。
「私は、生まれは広島のなんです。瀬戸内の小さな島なんです。大学ので名古屋に出ましてそのままこちらで就職したんです。まあ、忙しくてなかなか、実家へは帰れなかったんですが、半年ほど前に法事がありまして、まあ無理やり帰ったんです。その時に妙な話を聞きました。こんな話なんです」
村尾は話し始めた。村尾の先祖は一三〇〇年くらい前、瀬戸内海を押さえる豪族だったという。双子の兄弟が村をおさめていた。ある時兄弟になにかもめ事が起こり、兄は瀬戸内を離れ伊勢に向かったという。弟も後を追って伊勢で戦って兄が勝った。兄は白鷺になって瀬戸内にもどった。その後、村尾の家系で双子が生まれると縁起が悪いと弟を養子に出す習わしになった。なぜか子どもには魚の形のアザが出るという。
「それで、村尾さんには双子の弟がいるんですか」
白宮が聞いた。村尾が苦しそうに頭をかかえる。
「それが、法事の時に聞いたところ、私が知らされていなかっただけでいたらしい。そして、この前逮捕した、あの大男が弟だった」
荒川と白宮は立ち上がって目をむいた。そば屋の女主人が驚いて三人を見た。
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2011年11月10日
現代へと続く海の道(仮題)65
仕事中の白宮の携帯が鳴った。刑事の村尾だった。
「白宮さん。私も仲間になれたようです」
村尾は笑いをこえらながら話している。そう言えば、最初に会った時、赤いアザがあったような気がする。
「もしかして、水晶玉が出ましたか」
白宮が言うと、電話の向こうでちょっと笑いがもれた。
「それだけじゃありません。あなたをケガさせた男をつかまえましたよ。電話ではちょっと具合が悪いんで、今日時間とれますか?」
村尾はゆっくりとしゃべった。
「はい。あのう。夕方なら、荒川さんも大丈夫だと思います」
「じゃあ、あのう。**小学校の近くにあるそばやはご存じですか?」
村尾が言ったのは、白宮が最初に荒川にあったそばやだった。白宮は行く約束をして荒川に電話した。
「いやあ。すみません。お忙しいところを」
夕方、白宮がそば屋に着くと、村尾と荒川はいちばん奥の席にいた。白宮はあいさつをすませてからそばを頼んだ。
「じつは、小学校の前に、マンションがありますな。あそこの一階で占いの館があったんです」
村尾がそこまで言ったところで、白宮が口をはさんだ。
「そこ、知ってますよ。香坂さんていう女性の占い師でしょう。なんどかカラーコピーの修理に行ってます」
白宮の言葉に、村尾を荒川も驚いて顔をみあわせた。村尾は気を取りなおして続ける。
「知ってるンなら話は早い。あの占い師が、相撲取りみたいな大男に白宮さんや、荒川さんを襲わせたらしいんです」
村尾は「香姫の館」に聞き込みに行って、逆に襲われ殺されそうになったこと、危ないところで水晶玉に救われ大男を逮捕したことを説明した。
「でも、なんでまた俺たちを? 襲ったってメリットなんかないでしょ」
今度は荒川が口をはさんだ。村尾は回りも見まわしてから小さな声で話し出した。
「白宮さん。私も仲間になれたようです」
村尾は笑いをこえらながら話している。そう言えば、最初に会った時、赤いアザがあったような気がする。
「もしかして、水晶玉が出ましたか」
白宮が言うと、電話の向こうでちょっと笑いがもれた。
「それだけじゃありません。あなたをケガさせた男をつかまえましたよ。電話ではちょっと具合が悪いんで、今日時間とれますか?」
村尾はゆっくりとしゃべった。
「はい。あのう。夕方なら、荒川さんも大丈夫だと思います」
「じゃあ、あのう。**小学校の近くにあるそばやはご存じですか?」
村尾が言ったのは、白宮が最初に荒川にあったそばやだった。白宮は行く約束をして荒川に電話した。
「いやあ。すみません。お忙しいところを」
夕方、白宮がそば屋に着くと、村尾と荒川はいちばん奥の席にいた。白宮はあいさつをすませてからそばを頼んだ。
「じつは、小学校の前に、マンションがありますな。あそこの一階で占いの館があったんです」
村尾がそこまで言ったところで、白宮が口をはさんだ。
「そこ、知ってますよ。香坂さんていう女性の占い師でしょう。なんどかカラーコピーの修理に行ってます」
白宮の言葉に、村尾を荒川も驚いて顔をみあわせた。村尾は気を取りなおして続ける。
「知ってるンなら話は早い。あの占い師が、相撲取りみたいな大男に白宮さんや、荒川さんを襲わせたらしいんです」
村尾は「香姫の館」に聞き込みに行って、逆に襲われ殺されそうになったこと、危ないところで水晶玉に救われ大男を逮捕したことを説明した。
「でも、なんでまた俺たちを? 襲ったってメリットなんかないでしょ」
今度は荒川が口をはさんだ。村尾は回りも見まわしてから小さな声で話し出した。
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2011年11月08日
現代へと続く海の道(仮題)64
「あなたの運が強いかどうか占いましょうか? 私、これでも占い師なんです」
香坂は薄笑いを浮かべて村尾に顔を寄せた。村尾が首のつけねに視線を向けているのが分かった。村尾はふしぎそうな顔をした。香坂はかまわず続けた。
「水晶玉がいいかいしら。それともタロット?」
香坂は村尾の顔の前でタロットカードをひらひらさせた。ガイコツが黒い衣装を着て柄の長いカマを持っている。死に神のカードである。
「このカードってことは、あの二人みたいに強い運ではないみたいね」
香坂はにやりとして大男をふりかえった。大男は部屋のすみで震えている。
「なにしているの? 刑事さんのネクタイをはずして、絞め殺しなさい」
香坂は平べったい口調で言った。大男は震えながら立ち上がり、村尾のそばに立った。村尾のネクタイをゆるめてから村尾の首にまきつけた。香坂の顔をうかがうと香坂は「早く」というようにアゴを動かした。大男は両手に力を込めた。村尾の顔が苦しそうにゆがんでいく。不自由な体でもがきながらせき込みはじめた。大男が手をゆるめると村尾のセキはどんどん強くなった。前に倒れて大男を押し返していく形になった。大きくセキこみながら村尾は大きく目をひらいた。村尾の口から水晶玉が飛びだして大男の顔にあたった。大男は倒れ意識を失った。水晶玉ははね返って天井にあたってはねかえり、矢のように飛んで村尾の背中の電気コードを切った。村尾が足のコードをほどいている間に香坂は逃げ出した。近くの建物のかげに隠れながら大男が村尾に連れて行かれるのをみていた。
香坂は薄笑いを浮かべて村尾に顔を寄せた。村尾が首のつけねに視線を向けているのが分かった。村尾はふしぎそうな顔をした。香坂はかまわず続けた。
「水晶玉がいいかいしら。それともタロット?」
香坂は村尾の顔の前でタロットカードをひらひらさせた。ガイコツが黒い衣装を着て柄の長いカマを持っている。死に神のカードである。
「このカードってことは、あの二人みたいに強い運ではないみたいね」
香坂はにやりとして大男をふりかえった。大男は部屋のすみで震えている。
「なにしているの? 刑事さんのネクタイをはずして、絞め殺しなさい」
香坂は平べったい口調で言った。大男は震えながら立ち上がり、村尾のそばに立った。村尾のネクタイをゆるめてから村尾の首にまきつけた。香坂の顔をうかがうと香坂は「早く」というようにアゴを動かした。大男は両手に力を込めた。村尾の顔が苦しそうにゆがんでいく。不自由な体でもがきながらせき込みはじめた。大男が手をゆるめると村尾のセキはどんどん強くなった。前に倒れて大男を押し返していく形になった。大きくセキこみながら村尾は大きく目をひらいた。村尾の口から水晶玉が飛びだして大男の顔にあたった。大男は倒れ意識を失った。水晶玉ははね返って天井にあたってはねかえり、矢のように飛んで村尾の背中の電気コードを切った。村尾が足のコードをほどいている間に香坂は逃げ出した。近くの建物のかげに隠れながら大男が村尾に連れて行かれるのをみていた。
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2011年11月07日
現代へと続く海の道(仮題)63 香坂の部屋
村尾は部屋を見まわした。そして、部屋のすみにあった上着に目をやった。大男がさきほど脱いだまま奥に入ったのである。
「ずいぶん。大きな上着ですな。あなたのものとは思えませんが」
村尾は香坂をじろりと見た。香坂は視線をそらしてちょっと後ろに下がった。
「まあ、体の大きな方は多いですから、あれですが、さっき言っていた事件、石巻の火事ですがその前に、見慣れない男が目撃されておりましてね。これがまあ、相撲取りのような大男だったと聞いたもんですから」
村尾は香坂をじっとみた。そこから逃がさないという視線だった。香坂は部屋の奥の方へ歩いた。村尾が間合いをつめてくる。
「ねえ。出てきて。ばれちゃったみたい」
香坂は奥の部屋へ声をかけると、奥から大男が出てきた。肩をすぼめて頭をさげている。
「ちょっと、いっしょに来ていただけますか」
村尾の声が低くひびいた。大男は目を見ひらいて村尾と香坂を見た。その瞬間、村尾の意識が大男に集中した。そこを、香坂は見逃さなかった。テーブルにあった水晶玉で村尾の頭をなぐった。
「きゅうう」
村尾は犬のすねるような声を出して倒れてしまった。
「早く、縛って。そこに電気のコードがあるでしょう」
香坂に言われて大男は村尾の手首を後ろで縛った。
「なにをする」
気がついた村尾は身をもみながら叫んだ。
「ふん。刑事さん。あなたが推理した通りよ。あの二人は、私たちがやりました。殺そうとしたんだけど、あの人達、運が強いみたい。あなたはどうかしら」
香坂は村尾に顔をよせた。
「ずいぶん。大きな上着ですな。あなたのものとは思えませんが」
村尾は香坂をじろりと見た。香坂は視線をそらしてちょっと後ろに下がった。
「まあ、体の大きな方は多いですから、あれですが、さっき言っていた事件、石巻の火事ですがその前に、見慣れない男が目撃されておりましてね。これがまあ、相撲取りのような大男だったと聞いたもんですから」
村尾は香坂をじっとみた。そこから逃がさないという視線だった。香坂は部屋の奥の方へ歩いた。村尾が間合いをつめてくる。
「ねえ。出てきて。ばれちゃったみたい」
香坂は奥の部屋へ声をかけると、奥から大男が出てきた。肩をすぼめて頭をさげている。
「ちょっと、いっしょに来ていただけますか」
村尾の声が低くひびいた。大男は目を見ひらいて村尾と香坂を見た。その瞬間、村尾の意識が大男に集中した。そこを、香坂は見逃さなかった。テーブルにあった水晶玉で村尾の頭をなぐった。
「きゅうう」
村尾は犬のすねるような声を出して倒れてしまった。
「早く、縛って。そこに電気のコードがあるでしょう」
香坂に言われて大男は村尾の手首を後ろで縛った。
「なにをする」
気がついた村尾は身をもみながら叫んだ。
「ふん。刑事さん。あなたが推理した通りよ。あの二人は、私たちがやりました。殺そうとしたんだけど、あの人達、運が強いみたい。あなたはどうかしら」
香坂は村尾に顔をよせた。
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2011年11月06日
2011年11月06日
現代へと続く海の道(仮題)62 香坂の部屋
**小学校近くの占い館「香姫の部屋」である。大男と香坂がテーブルをはさんで話している。
「最近、ゲームの方はさっぱり売れなくなったな」
大男はテーブルに両肘をついて首筋をかいた。
「ストーリーはおもしろいのにね」
香坂はぞくりとするような目をした。
「香坂さん。毎週、あんたが考えているんだよな」
「そう。一人でいるとねえ、大津の皇子が現れて『おれの恨みの記憶を箱に閉じこめろ』って言いながら話していくことを、私が書き留めるの」
言いながら、香坂は大男を見た。誘うような目だった。うろたえる大男の肩に手を伸ばす。大男はここではじめて笑いを浮かべて香坂に体を寄せた。香坂が大男を引き寄せた。おたがい息がかかるくらい近づいたところで、ドアがノックされた。
「はい。どなた」
香坂は体を離して、背筋をのばした。大男は奥へひっこんだ。香坂がドアを開けると背広の男が立っていた。
「はじめまして、**署の村尾といいます。まあ、ひらたく言えば刑事です」
男は名刺を出した。
「なにか、ありました?」
香坂は平然と答えた。
「いや、まあ、事件といいますか。はっきりしていないんですが、まあ、参考までに聞きたいことがありましてねえ。このあたりの家は一軒ずつ回っておるわけです」
言いながら、視線は香坂から離さない。これは明らか疑っていると香坂は感じた。
「まあ。どんな事件ですの?」
香坂はじっと村尾を見かえした。
「じつは、先月、一人の男が交通事故にあいまして入院しました。コピーの修理屋なんですが、どうも不思議な事故でしてね。見通しの悪いところでもないし、お酒を飲んでいたのでもない。もう一件は石巻の設計士なんですが放火をされました。こちらもそう人に恨まれていたのでもなし、おかしいなあと思ったわけです。まあ、私が個人的にですがね」
村尾はここではじめて視線をはずして、部屋の中を見まわした。香坂は平然としている。
「でも、なんでこのあたりの家を回るんですか?」
「それが、この二人の被害者、二人とも**小学校へ出入りしているんです。なんでも船をつくっているらしいんですが……」
村尾が言いながら部屋の奥の方へ目を向けた。
「誰かいるんですか?」
村尾の目が光った。香坂はここではじめて視線を泳がせた。
「最近、ゲームの方はさっぱり売れなくなったな」
大男はテーブルに両肘をついて首筋をかいた。
「ストーリーはおもしろいのにね」
香坂はぞくりとするような目をした。
「香坂さん。毎週、あんたが考えているんだよな」
「そう。一人でいるとねえ、大津の皇子が現れて『おれの恨みの記憶を箱に閉じこめろ』って言いながら話していくことを、私が書き留めるの」
言いながら、香坂は大男を見た。誘うような目だった。うろたえる大男の肩に手を伸ばす。大男はここではじめて笑いを浮かべて香坂に体を寄せた。香坂が大男を引き寄せた。おたがい息がかかるくらい近づいたところで、ドアがノックされた。
「はい。どなた」
香坂は体を離して、背筋をのばした。大男は奥へひっこんだ。香坂がドアを開けると背広の男が立っていた。
「はじめまして、**署の村尾といいます。まあ、ひらたく言えば刑事です」
男は名刺を出した。
「なにか、ありました?」
香坂は平然と答えた。
「いや、まあ、事件といいますか。はっきりしていないんですが、まあ、参考までに聞きたいことがありましてねえ。このあたりの家は一軒ずつ回っておるわけです」
言いながら、視線は香坂から離さない。これは明らか疑っていると香坂は感じた。
「まあ。どんな事件ですの?」
香坂はじっと村尾を見かえした。
「じつは、先月、一人の男が交通事故にあいまして入院しました。コピーの修理屋なんですが、どうも不思議な事故でしてね。見通しの悪いところでもないし、お酒を飲んでいたのでもない。もう一件は石巻の設計士なんですが放火をされました。こちらもそう人に恨まれていたのでもなし、おかしいなあと思ったわけです。まあ、私が個人的にですがね」
村尾はここではじめて視線をはずして、部屋の中を見まわした。香坂は平然としている。
「でも、なんでこのあたりの家を回るんですか?」
「それが、この二人の被害者、二人とも**小学校へ出入りしているんです。なんでも船をつくっているらしいんですが……」
村尾が言いながら部屋の奥の方へ目を向けた。
「誰かいるんですか?」
村尾の目が光った。香坂はここではじめて視線を泳がせた。
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2011年11月06日
なんでこ~なるの?
昨日、テレビで古畑任三郎のドラマをやっていた。犯人役は松島菜々子だったが、古畑が渋い顔でつぶやく。
古畑「なんで……なんでしょうね」
犯人「……」
で事件は解決していくんだけど、いつも、自分の生活を思って首をかしげてしまう。あんなふうに行動に理由なんかないぞ。べつにコンプレックスなんかなくたって人をキズつけるし、理由なくどこへでも行く。
「それはドラマだからでしょう」
と人は言うけど、時々息苦しくなる時がある。何か買おうとして時、「これ、ほんとにいるんだろうか?」「どんな時に使うんだろう」と思っているうちに欲しくなくなってくる。
まあ、無駄遣いしなくていいし、部屋は散らからなくていいけど。時々さみしくなる。
「ほんとに欲しくなかったんだろうか?」
「ほんとに使わなかったんだろうか?」
深夜2時半、目覚めて眠れなくなる。
「人は、選ばなかった人生を夢の中で楽しむ」
と人は言うけれど、やっぱり夢の中で反省するぐらいに生きたいと思う。
古畑「なんで……なんでしょうね」
犯人「……」
で事件は解決していくんだけど、いつも、自分の生活を思って首をかしげてしまう。あんなふうに行動に理由なんかないぞ。べつにコンプレックスなんかなくたって人をキズつけるし、理由なくどこへでも行く。
「それはドラマだからでしょう」
と人は言うけど、時々息苦しくなる時がある。何か買おうとして時、「これ、ほんとにいるんだろうか?」「どんな時に使うんだろう」と思っているうちに欲しくなくなってくる。
まあ、無駄遣いしなくていいし、部屋は散らからなくていいけど。時々さみしくなる。
「ほんとに欲しくなかったんだろうか?」
「ほんとに使わなかったんだろうか?」
深夜2時半、目覚めて眠れなくなる。
「人は、選ばなかった人生を夢の中で楽しむ」
と人は言うけれど、やっぱり夢の中で反省するぐらいに生きたいと思う。
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