2011年02月23日
ああ 人間ドック
昨日、人間ドックの結果が来ました。なんと、再検査2つ。
慢性胃炎と食道炎の疑いあり。胃カメラデビュー!!さらに中性脂肪が高めのために食事指導☠!!
生活習慣病のオンパレード!!
きわめつけは、妻の勝ち誇ったような顔。
「なんちゃん。それは当たり前だわ。ぜんざいは早く食べるし、ラーメンのスープはしっかり飲み干すし、
柿の種はピーナツばかり食べるし、その結果はまあ、言うなれば神様からの手紙だね」
ああ、神様。どうか、この迷える中年男を救ってください。食事を制限されようとかまいません。ぜんざ
いはゆっくり味わって食べます。どうか、どうか、ビールと柿の種のピーナッツ10粒だけはお目こぼし
をお願いします。合掌
慢性胃炎と食道炎の疑いあり。胃カメラデビュー!!さらに中性脂肪が高めのために食事指導☠!!
生活習慣病のオンパレード!!

きわめつけは、妻の勝ち誇ったような顔。
「なんちゃん。それは当たり前だわ。ぜんざいは早く食べるし、ラーメンのスープはしっかり飲み干すし、
柿の種はピーナツばかり食べるし、その結果はまあ、言うなれば神様からの手紙だね」
ああ、神様。どうか、この迷える中年男を救ってください。食事を制限されようとかまいません。ぜんざ
いはゆっくり味わって食べます。どうか、どうか、ビールと柿の種のピーナッツ10粒だけはお目こぼし
をお願いします。合掌
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22:00
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2011年02月23日
友引ツーリングクラブ6(二見の道)
「ねえ、私たち、この三明寺の夢を見ていたのね」
梨花が石仏を眺めながら、視線を康平に向けた。
「都から天皇と来た男かあ、地元の巫女さんと恋に落ちたか」
康平は独り言を言った。
「この先が二見の道で別れの分岐点だったら、二人はこのヘンで切ない顔で見つめあったのかもね」
梨花が言って一人先に歩いていった。石仏はなくなって、先に見える姫街道に向かって草原が広がっている。康平は姫街道の姫ってもしかしたら、伝説の巫女かなとちらりと思った。
「ねえ、梨花ちゃん。姫街道って、その巫女がいた街道ってことだったりしてね」
康平のことばに振向いた梨花は目に涙をためていた。
「分かんない。なんだか分かんないんだけど、康平にもらった青い石から何か、波みたいなものが広がってきて、悲しくないに涙がでてくる」
それを見ている康平の目からも大粒の涙がこぼれだした。
「なんだか、ぼくまで泣けてきた。いいよ。いっしょに泣こう」
梨花と康平は肩を並べて姫街道を見ながら泣いた。
「私ねえ、1300年まえのこと調べてみる」
梨花は帰り際に言った。
「夢の中の話が、現実に出てきちゃったな。あと、梨花ちゃん。ヘンなこと言ってたな。水之江のサルがサムライになる? なんだそれ? サルがサムライになるって言えば、豊臣秀吉のことか?」
康平がつぶやいたところへ友引ツーリングクラブの若い坊さんがバイクで走ってきた。
「おう。この前の兄ちゃんだな。しらみやさんいる? たいへんなことが起こった。メンバーがどんどん交通事故にあってる。もう、3人入院した」
男は三明寺のまえにバイクを止めて、本堂にかけこんで行った。
梨花が石仏を眺めながら、視線を康平に向けた。
「都から天皇と来た男かあ、地元の巫女さんと恋に落ちたか」
康平は独り言を言った。
「この先が二見の道で別れの分岐点だったら、二人はこのヘンで切ない顔で見つめあったのかもね」
梨花が言って一人先に歩いていった。石仏はなくなって、先に見える姫街道に向かって草原が広がっている。康平は姫街道の姫ってもしかしたら、伝説の巫女かなとちらりと思った。
「ねえ、梨花ちゃん。姫街道って、その巫女がいた街道ってことだったりしてね」
康平のことばに振向いた梨花は目に涙をためていた。
「分かんない。なんだか分かんないんだけど、康平にもらった青い石から何か、波みたいなものが広がってきて、悲しくないに涙がでてくる」
それを見ている康平の目からも大粒の涙がこぼれだした。
「なんだか、ぼくまで泣けてきた。いいよ。いっしょに泣こう」
梨花と康平は肩を並べて姫街道を見ながら泣いた。
「私ねえ、1300年まえのこと調べてみる」
梨花は帰り際に言った。
「夢の中の話が、現実に出てきちゃったな。あと、梨花ちゃん。ヘンなこと言ってたな。水之江のサルがサムライになる? なんだそれ? サルがサムライになるって言えば、豊臣秀吉のことか?」
康平がつぶやいたところへ友引ツーリングクラブの若い坊さんがバイクで走ってきた。
「おう。この前の兄ちゃんだな。しらみやさんいる? たいへんなことが起こった。メンバーがどんどん交通事故にあってる。もう、3人入院した」
男は三明寺のまえにバイクを止めて、本堂にかけこんで行った。
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21:43
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2011年02月22日
友引ツーリングクラブ5
二人は待ち合わせして三明寺へ行った。しらみやは出かけているらしい。本堂の前を歩いた。池に出る手前に小さな石仏がならんでいる。
「あれ、お地蔵様かなあ」
康平が言った。
「こっち側にもならんでる」
梨花が言った。2mくらいの幅で左右に石仏がならんでいる。二人でたどってみると、20mくらい続いていた。
「なんかさあ、道みたいだね。ほら、東海道とか松並木があるじゃない。あの松のかわりみたいだ」
「ほんと。もし、道だったらどこまでいくのかね」
梨花が石仏の途切れた先を指さした。
「その先はねえ、豊川の河口、前芝まで続いている。二見の道をこえてね」
後から声がして、ふりむくとしらみやが立っていた。
「ああっ。しらみやさん。今、二見の道って言わなかった?」
康平がびっくりした声で言った。
「そこの先に二見の道はあったんだ。『イモモアレモ ヒトツナレカモ ミカワナル フタミノミチユ ワカレカネツル』ってなあ、万葉集にのっているんだ」
しらみやはさも得意そうに言った。ところが二人は感心するんではなく、目をむいてしらみやによってきた。
「私たち、二人とも同じ夢を見たんです。二見の道の話してください」
梨花はいつになく丁寧なことばになっていた。
「いや、くわしくは知らんけどな、なんでも1300年くらい前に、ここで若い二人の切ない別れがあったらしい。都から天皇がやってきて、おつきで来た男と、地元の巫女さんが恋に落ちてな。いっしょにいられたの約1ヶ月。男は都へ帰っていくことになる。その別れの分岐点が二見の道だ」
しらみやはそこまで言って本堂に入っていった。
「あれ、お地蔵様かなあ」
康平が言った。
「こっち側にもならんでる」
梨花が言った。2mくらいの幅で左右に石仏がならんでいる。二人でたどってみると、20mくらい続いていた。
「なんかさあ、道みたいだね。ほら、東海道とか松並木があるじゃない。あの松のかわりみたいだ」
「ほんと。もし、道だったらどこまでいくのかね」
梨花が石仏の途切れた先を指さした。
「その先はねえ、豊川の河口、前芝まで続いている。二見の道をこえてね」
後から声がして、ふりむくとしらみやが立っていた。
「ああっ。しらみやさん。今、二見の道って言わなかった?」
康平がびっくりした声で言った。
「そこの先に二見の道はあったんだ。『イモモアレモ ヒトツナレカモ ミカワナル フタミノミチユ ワカレカネツル』ってなあ、万葉集にのっているんだ」
しらみやはさも得意そうに言った。ところが二人は感心するんではなく、目をむいてしらみやによってきた。
「私たち、二人とも同じ夢を見たんです。二見の道の話してください」
梨花はいつになく丁寧なことばになっていた。
「いや、くわしくは知らんけどな、なんでも1300年くらい前に、ここで若い二人の切ない別れがあったらしい。都から天皇がやってきて、おつきで来た男と、地元の巫女さんが恋に落ちてな。いっしょにいられたの約1ヶ月。男は都へ帰っていくことになる。その別れの分岐点が二見の道だ」
しらみやはそこまで言って本堂に入っていった。
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11:14
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2011年02月19日
我が家のアイドル
ケロミンです。カエルのぬいぐるみです。で、楽器です。腹話術みたい背中から手を入れて口をぱくぱく
させると音が出ます。

今、「アメージンググレース」を練習してます。こんどどこかで演奏しますね。
させると音が出ます。
今、「アメージンググレース」を練習してます。こんどどこかで演奏しますね。
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00:42
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2011年02月18日
友引ツーリングクラブ4
しらみやと分かれて、マンションをあとにしても梨花はいつものように怒らなかった。康平はひやひやしながら自転車をこいだ。これまでなら「しらみやさん。いったいどういうつもり?」
といきりたつパターンだった。
その夜康平は中々寝付けなかった。2時までおぼえている。急に意識が薄れるように眠ったら不思議な夢を見た。
背の高い草の中に立っていた。細い道が草の中から続き自分が立っているところから登り坂になって道が続いている。緑色と赤の着物を着た女の人が立っている。
「三河なる 二見の道 …」
女の人の声はとちゅうから風の声に消された。
目がさめると窓から強い日がさしこんでいた。体中汗にぬれていてなぜだかたまらないさみしさが残っていた。ぼんやりしていると携帯がなった。梨花からだった。
「康平。私、夢を見た。ほら、昨日三明寺で見せてもらった弁財天様。緑色と赤色の着物をきたきれいな人」
梨花がそこまで言うのを聞くと、康平はさっきまで見ていた夢を思い出した。彼の夢に出て来たのも弁財天だったのが分かった。
「梨花ちゃん。ぼくも見たんだよ。弁財天の夢。二見の道とか、なんか言ってた」
康平が言うと、梨花はいっしゅん息を呑んだ。
「同じ夢見たのかなあ。私の夢でも、二見の道っていうのが出てきた」
「ねえ、それどんな夢?」
「坂の下の背の高い草の中で、弁財天さまと平安貴族風の男の人が立っていたの。男の人が『…二見の道ゆ…」とか言って急に泣き出すの。そのあと、白いひげの仙人が現れて『みずのえのサルが、サムライになる時、トラに羽が生えて、竜にかみつく」って言って消えた。
康平はしばらく黙っていたがやっと口を開いた。
「ねえ、夢の中に出てきた。ところって川べりの坂の下じゃなかった?」
梨花が電話の向こうで小さく息をするのが聞こえた。
「たぶん。同じ夢だ」
康平はやっとそれだけ言った。
といきりたつパターンだった。
その夜康平は中々寝付けなかった。2時までおぼえている。急に意識が薄れるように眠ったら不思議な夢を見た。
背の高い草の中に立っていた。細い道が草の中から続き自分が立っているところから登り坂になって道が続いている。緑色と赤の着物を着た女の人が立っている。
「三河なる 二見の道 …」
女の人の声はとちゅうから風の声に消された。
目がさめると窓から強い日がさしこんでいた。体中汗にぬれていてなぜだかたまらないさみしさが残っていた。ぼんやりしていると携帯がなった。梨花からだった。
「康平。私、夢を見た。ほら、昨日三明寺で見せてもらった弁財天様。緑色と赤色の着物をきたきれいな人」
梨花がそこまで言うのを聞くと、康平はさっきまで見ていた夢を思い出した。彼の夢に出て来たのも弁財天だったのが分かった。
「梨花ちゃん。ぼくも見たんだよ。弁財天の夢。二見の道とか、なんか言ってた」
康平が言うと、梨花はいっしゅん息を呑んだ。
「同じ夢見たのかなあ。私の夢でも、二見の道っていうのが出てきた」
「ねえ、それどんな夢?」
「坂の下の背の高い草の中で、弁財天さまと平安貴族風の男の人が立っていたの。男の人が『…二見の道ゆ…」とか言って急に泣き出すの。そのあと、白いひげの仙人が現れて『みずのえのサルが、サムライになる時、トラに羽が生えて、竜にかみつく」って言って消えた。
康平はしばらく黙っていたがやっと口を開いた。
「ねえ、夢の中に出てきた。ところって川べりの坂の下じゃなかった?」
梨花が電話の向こうで小さく息をするのが聞こえた。
「たぶん。同じ夢だ」
康平はやっとそれだけ言った。
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23:42
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2011年02月17日
友引ツーリングクラブ3
康平と梨花が本堂にあがって行くと、坊主頭のなんともまあ人相の悪い男たちが五人いた。高い天井には金色のシャンデリアみたいのが下がり、正面からはこれまたまばゆいばかりに光った仏像が上から目線で見ている。
「しらみやさん。仏さまの前でよくそんなバカなこと言えますね」
梨花がしらみやをにらんだ。
「あのねえ、そんなに固く考えない方がいいよ。仏様の一番大事な教えはねえ、正しさをつらぬくことじゃなくてねえ、なにものにもこだわらないことなんだよ」
しらみやはサーカスのピエロみたいに両手を広げた。梨花が立ち上がったので康平が止めた。
「ねえ。梨花ちゃん。ぼくたち、しらみやさんと、けっこう古いつきあいだけど、弁財天様見せてもらったことないよね」
康平が話をかえたので、しらみやが乗ってきた。
「特別に見せてあげようねえ。ついてきて」
しらみやは、仲間の坊主たちをほったらかしたまま仏像の裏へ二人を連れていった。薄くらい通路を通って仏像のうらまで来ると、天女のような姿の女神像があった。羽衣のようなものを身にまとっている。遠くを見るような澄んだ目はどこかさびしそうだった。
「どこかで、会ったことがある。この女神さま」
梨花が思わずつぶやいた。
「当寺。自慢の秘仏、弁財天さまだ。あんまり美しいから夢でみるよ」
しらみやが言って、今度の仲間の坊主の方に戻って行った。明日の午後、問題のマンションに出かけて行く事になった。梨花と康平も現地で合流することを約束した。
あくる日の午後、梨花と康平は豊川駅で待ち合わせした。康平が自転車で待っていると、自動車学校のマイクロバスが止まって梨花が降りてきた。
「あれ。もう自動車学校行ってんだ」
康平が声をかけると梨花はいたずらっ子みたいな笑顔になった。
「ねえ、康平。後に乗せてよ。一度やって見たかったんだ。自転車の二人乗り」
言うが早いか自転車の後に乗ってしまった。これには康平が驚いた。これまで、梨花にはいつも姉か先生のようにたしなめられることが多かった。ふりかえる康平に梨花が言った。
「オマワリさんがいたら、さっと降りてすまして歩くよ」
梨花に言われて康平は自転車をこぎ出した。坂を下りてバイパスを越えて走る。春の風はまだ冷たい。梨花は康平の背中に巻いた手に力をこめた。
「私ねえ。横浜行くのすごく楽しみだけど、ちょっといや。だって、今までみたいに康平と会えなくなるもん」
「でもさあ、電話もメールもあるんだし、夏休みとか帰ってくるんだろ」
康平は前を向いたまま答えた。
「そう言うんじゃなくて、私も康平も今のままじゃなくて、変わって行くんだろうけど、そこはきっと楽しいこともいっぱいあるんだろうけど、その世界には康平はいなくて。康平の世界には私はいなくて、そう言うのがどんどん広がって行くんだよ。そのうち、さびしいとも思わなくなるんだよ」
梨花のことばに、康平はくすぐったさを感じながらペダルをこぐ足に力を入れる。
「そんな風に思わなかったらいいよ。横浜と奈良なんて新幹線で京都まで出たらすぐだよ」
康平は梨花のことばが飲み込めなくてそんなことを言った。
「だから、そういうことじゃなくて、こんな風に体中で康平を感じたいの」
梨花は康平の背中に顔を押し付けた。康平はだまってペダルをこいだ。
東名高速の下をくぐると、低い山の中に真新しいマンションが建っている。しらみやのオンボロバイクが止まっていた。
「おそくなりました」
康平と梨花が自転車を置いて歩くと、しらみやが背広の男と出て来るところだった。
「いやあ、待ってたんだよ。この子たち、若いけどすごい霊能者なんですよ」
しらみやは、康平と梨花に目で合図しながら背広の男に二人を紹介した。いつもならここで梨花が爆発するところだが、今日の梨花はおとなしかった。二人が頭を下げると今度は背広の男を紹介した。
「この人はねえ、ここのマンションを建てた会社の社長さん。大変困っていらっしゃるからねえ、君たちに力を借りてお助けしたいんだ」
しらみやが言うと、背広の男は上目使いに見て頭を下げた。あいさつを終えると背広の男は先にたってエレベーターに乗った。しらみやと、梨花、康平もあとに続いた。
一番上の階で降りるとガラスごしに本宮山がきれいに見えた。
「いやあ。いい眺めですねえ。本宮山がこんなに近く見える」
しらみやが口を開いた。
「そうでしょう。じゃあ、こちらの部屋へどうぞ」
背広の男が鍵を開け、一つの部屋に入ると廊下越しに大きな窓が見えて、その窓いっぱいに石巻山が見えた。
「すごい。ぜいたくな部屋で人気があるんですが、毎年、夏になると化け物のうわさがたって出て行っていますんです。今もここは空き部屋になっています」
背広の男はおおげさにため息をついた。
「私たちがなんとかしますよ。任せてください」
しらみやが康平と梨花の顔を見てから背広の男に言った。
「しらみやさん。仏さまの前でよくそんなバカなこと言えますね」
梨花がしらみやをにらんだ。
「あのねえ、そんなに固く考えない方がいいよ。仏様の一番大事な教えはねえ、正しさをつらぬくことじゃなくてねえ、なにものにもこだわらないことなんだよ」
しらみやはサーカスのピエロみたいに両手を広げた。梨花が立ち上がったので康平が止めた。
「ねえ。梨花ちゃん。ぼくたち、しらみやさんと、けっこう古いつきあいだけど、弁財天様見せてもらったことないよね」
康平が話をかえたので、しらみやが乗ってきた。
「特別に見せてあげようねえ。ついてきて」
しらみやは、仲間の坊主たちをほったらかしたまま仏像の裏へ二人を連れていった。薄くらい通路を通って仏像のうらまで来ると、天女のような姿の女神像があった。羽衣のようなものを身にまとっている。遠くを見るような澄んだ目はどこかさびしそうだった。
「どこかで、会ったことがある。この女神さま」
梨花が思わずつぶやいた。
「当寺。自慢の秘仏、弁財天さまだ。あんまり美しいから夢でみるよ」
しらみやが言って、今度の仲間の坊主の方に戻って行った。明日の午後、問題のマンションに出かけて行く事になった。梨花と康平も現地で合流することを約束した。
あくる日の午後、梨花と康平は豊川駅で待ち合わせした。康平が自転車で待っていると、自動車学校のマイクロバスが止まって梨花が降りてきた。
「あれ。もう自動車学校行ってんだ」
康平が声をかけると梨花はいたずらっ子みたいな笑顔になった。
「ねえ、康平。後に乗せてよ。一度やって見たかったんだ。自転車の二人乗り」
言うが早いか自転車の後に乗ってしまった。これには康平が驚いた。これまで、梨花にはいつも姉か先生のようにたしなめられることが多かった。ふりかえる康平に梨花が言った。
「オマワリさんがいたら、さっと降りてすまして歩くよ」
梨花に言われて康平は自転車をこぎ出した。坂を下りてバイパスを越えて走る。春の風はまだ冷たい。梨花は康平の背中に巻いた手に力をこめた。
「私ねえ。横浜行くのすごく楽しみだけど、ちょっといや。だって、今までみたいに康平と会えなくなるもん」
「でもさあ、電話もメールもあるんだし、夏休みとか帰ってくるんだろ」
康平は前を向いたまま答えた。
「そう言うんじゃなくて、私も康平も今のままじゃなくて、変わって行くんだろうけど、そこはきっと楽しいこともいっぱいあるんだろうけど、その世界には康平はいなくて。康平の世界には私はいなくて、そう言うのがどんどん広がって行くんだよ。そのうち、さびしいとも思わなくなるんだよ」
梨花のことばに、康平はくすぐったさを感じながらペダルをこぐ足に力を入れる。
「そんな風に思わなかったらいいよ。横浜と奈良なんて新幹線で京都まで出たらすぐだよ」
康平は梨花のことばが飲み込めなくてそんなことを言った。
「だから、そういうことじゃなくて、こんな風に体中で康平を感じたいの」
梨花は康平の背中に顔を押し付けた。康平はだまってペダルをこいだ。
東名高速の下をくぐると、低い山の中に真新しいマンションが建っている。しらみやのオンボロバイクが止まっていた。
「おそくなりました」
康平と梨花が自転車を置いて歩くと、しらみやが背広の男と出て来るところだった。
「いやあ、待ってたんだよ。この子たち、若いけどすごい霊能者なんですよ」
しらみやは、康平と梨花に目で合図しながら背広の男に二人を紹介した。いつもならここで梨花が爆発するところだが、今日の梨花はおとなしかった。二人が頭を下げると今度は背広の男を紹介した。
「この人はねえ、ここのマンションを建てた会社の社長さん。大変困っていらっしゃるからねえ、君たちに力を借りてお助けしたいんだ」
しらみやが言うと、背広の男は上目使いに見て頭を下げた。あいさつを終えると背広の男は先にたってエレベーターに乗った。しらみやと、梨花、康平もあとに続いた。
一番上の階で降りるとガラスごしに本宮山がきれいに見えた。
「いやあ。いい眺めですねえ。本宮山がこんなに近く見える」
しらみやが口を開いた。
「そうでしょう。じゃあ、こちらの部屋へどうぞ」
背広の男が鍵を開け、一つの部屋に入ると廊下越しに大きな窓が見えて、その窓いっぱいに石巻山が見えた。
「すごい。ぜいたくな部屋で人気があるんですが、毎年、夏になると化け物のうわさがたって出て行っていますんです。今もここは空き部屋になっています」
背広の男はおおげさにため息をついた。
「私たちがなんとかしますよ。任せてください」
しらみやが康平と梨花の顔を見てから背広の男に言った。
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2011年02月15日
友引ツーリングクラブ2
康平と梨花、しらみや坊主の付き合いはもう7年になる。二人が小学校5年生の時、地域の歴史を調べることになった。このあたりで一番歴史が古い三明寺に話を聞きに行ったのが最初だった。子どもはしらみや坊主みたいな壊れた大人が大好きだ。
遠い昔、三明寺の前まで豊川の川岸があったこと、そのころの岸沿いに通っていた道の話を聞いた。
また、三明寺に伝わる弁財天を見せてもらい、鎌倉時代に戦火に遭ったとき弁財天が立ち上がった話を面白おかしく語ってくれた。中学生のころには塾の帰りに肝試しもした。康平が思い出話を始めた。
「ねえ、梨花ちゃん。憶えてる? 中学の夏休み、肝試ししたじゃない」
康平の言葉をとちゅうから梨花が取った。
「そうそう。あの時、康平がおばけの役でお墓の影に隠れていたところへ、よその人が来たのに康平ったら私とほかの友だちだと思って脅かしたのよね。お岩さんのメークで!」
康平がうなずく。
「そうだよ。でその人、腰抜かしちゃって。みんなで出て行ってあやまったけど、後で聞いたら、そいつ、仏像を盗みに来た泥棒だったことが分かったんだよね。あの時は、スゲーご馳走してもらったね」
「あの時は、ほんとどうなるかと思ったね。だけど、あのしらみやさんって、なんか危ないのよね。今度ももなにか胸騒ぎがする。ねえ、康平。大学始まるまで、まだ2週間ぐらいあるよね。ちょっと面倒見てあげようか」
梨花が言って、もちろん康平がうなずいた。
夕闇が迫ってくると、三明寺にぞくぞくとバイクが集まってきた。梨花と康平は本堂の影にかくれていた。バイクに乗ってきた男たちは、ヘルメットを取って本堂へ上がっていく。友引ツーリングクラブというくらいだから、メンバーは全員坊さんだ。ヘルメットをとってもほとんど見た目は変わらない。
「ねえ、梨花ちゃん。ヘルメットinヘルメットだね」
小声で康平が言い、梨花は必死に笑いをこらえた。
「みんな集まってくれたかな。昼間電話で言ったことだけど、ちょっといい話なんだ」
本堂からしらみやの声がもれてくる。
「昨日、ある不動産屋から電話があってねえ。悪魔払いをしたら、報酬は1000万だ」
集まって坊主たちのため息が聞こえてきた。
「ねえ。梨花ちゃん。悪魔祓いだって。しらみやさんに出来ると思う?」
康平が小声で言った。
「しー。そんなことできるわけないじゃない。あのしらみやさんに」
梨花はふき出すのを必死にこらえた。つづいてしらみやの声が聞こえてくる。
「場所は、東名に近くの新しい高層マンションなんだけど、夏至の頃朝になると大きな目玉が現れるらしい」
「だいじょうぶなのか? おまえ、そんな化け物払えるのか?」
友引ツーリングクラブのメンバーの声だった。
「だいじょうぶだって。うちの寺にある、弁財天は運が強いんだ。なんたって、あの頼朝の軍勢に火を放たれても平気だったんだぞ。その弁財天をお守りしておれが、そんな化け物に負けるわけがない」
むちゃくちゃな理屈から来る自信に笑いが起こった。そして、ついに梨花の笑いが爆発した。康平はおろおろするばかりだった。
「そこに誰かいるのか?」
しらみやが見に来て、康平と梨花は姿をあらわした。
「なんだ。愛し合う二人。まだいたの?」
しらみやは当たり前に二人を本堂にあげた。
遠い昔、三明寺の前まで豊川の川岸があったこと、そのころの岸沿いに通っていた道の話を聞いた。
また、三明寺に伝わる弁財天を見せてもらい、鎌倉時代に戦火に遭ったとき弁財天が立ち上がった話を面白おかしく語ってくれた。中学生のころには塾の帰りに肝試しもした。康平が思い出話を始めた。
「ねえ、梨花ちゃん。憶えてる? 中学の夏休み、肝試ししたじゃない」
康平の言葉をとちゅうから梨花が取った。
「そうそう。あの時、康平がおばけの役でお墓の影に隠れていたところへ、よその人が来たのに康平ったら私とほかの友だちだと思って脅かしたのよね。お岩さんのメークで!」
康平がうなずく。
「そうだよ。でその人、腰抜かしちゃって。みんなで出て行ってあやまったけど、後で聞いたら、そいつ、仏像を盗みに来た泥棒だったことが分かったんだよね。あの時は、スゲーご馳走してもらったね」
「あの時は、ほんとどうなるかと思ったね。だけど、あのしらみやさんって、なんか危ないのよね。今度ももなにか胸騒ぎがする。ねえ、康平。大学始まるまで、まだ2週間ぐらいあるよね。ちょっと面倒見てあげようか」
梨花が言って、もちろん康平がうなずいた。
夕闇が迫ってくると、三明寺にぞくぞくとバイクが集まってきた。梨花と康平は本堂の影にかくれていた。バイクに乗ってきた男たちは、ヘルメットを取って本堂へ上がっていく。友引ツーリングクラブというくらいだから、メンバーは全員坊さんだ。ヘルメットをとってもほとんど見た目は変わらない。
「ねえ、梨花ちゃん。ヘルメットinヘルメットだね」
小声で康平が言い、梨花は必死に笑いをこらえた。
「みんな集まってくれたかな。昼間電話で言ったことだけど、ちょっといい話なんだ」
本堂からしらみやの声がもれてくる。
「昨日、ある不動産屋から電話があってねえ。悪魔払いをしたら、報酬は1000万だ」
集まって坊主たちのため息が聞こえてきた。
「ねえ。梨花ちゃん。悪魔祓いだって。しらみやさんに出来ると思う?」
康平が小声で言った。
「しー。そんなことできるわけないじゃない。あのしらみやさんに」
梨花はふき出すのを必死にこらえた。つづいてしらみやの声が聞こえてくる。
「場所は、東名に近くの新しい高層マンションなんだけど、夏至の頃朝になると大きな目玉が現れるらしい」
「だいじょうぶなのか? おまえ、そんな化け物払えるのか?」
友引ツーリングクラブのメンバーの声だった。
「だいじょうぶだって。うちの寺にある、弁財天は運が強いんだ。なんたって、あの頼朝の軍勢に火を放たれても平気だったんだぞ。その弁財天をお守りしておれが、そんな化け物に負けるわけがない」
むちゃくちゃな理屈から来る自信に笑いが起こった。そして、ついに梨花の笑いが爆発した。康平はおろおろするばかりだった。
「そこに誰かいるのか?」
しらみやが見に来て、康平と梨花は姿をあらわした。
「なんだ。愛し合う二人。まだいたの?」
しらみやは当たり前に二人を本堂にあげた。
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2011年02月15日
法螺貝無料体験会
今度の土曜日、石巻山で法螺貝の体験会があります。石巻山山上社の前のへんで10時からです。
法螺貝貸し出します。
ぜひおいでください。
法螺貝貸し出します。
ぜひおいでください。
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07:56
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2011年02月14日
草砥鹿姫が現代に3 友引ツーリングクラブ
切ない目で見つめあう梨花と康平。まもなく会えなくなる二人に夕暮れが近づいてくる。まわりも見回せば誰もいない。どちらからともなく顔が近づいていく。
「バフバフバフバフ~ン」
このシチュエーションで信じられない大音響があたりを切り裂いた。ボロボロのスクーターが近づいてくる。
「やあ。愛し合ってるねえ。若い二人。ごめんね邪魔して~。人の恋路を邪魔するやつは馬にけられてしんじまえ~なんちゃって~」
黒い着物に錦の袈裟をつけた坊さんが二人の横にスクーターを止めてヘルメットをとった。
「しらみやさん。今日は法事ですか」
梨花が呆れて声をかけた。康平もしらけた顔で見た。
「法事はまあ、あったんだけどね。それはまあ、ふだんの仕事。今日はねえ、ちょっともうけ話があってねえ。ツーリングクラブのメンバーが集まるのよ」
「ツーリングクラブって、あの友引ツーリングクラブですか?」
康平が聞いた。
「そう。ぼくら、仏に仕えるものでも、やっぱり楽しみたいわけよ。みんなで、だけどねえ。人はこちらの都合なんか聞かずに死んじゃうからねえ。いっしょに行けるのは友引の日だけ」
しらみやと名のった坊さんは早口で言った。
「もうけ話って、なんか悪いことするんじゃないでしょうね」
梨花がしらみやをにらみつけた。
「失礼なこと言わないでほしいな。ぼくはいつも人助けしかしない」
しらみやの言葉に二人はしらけた顔をした。
「信じてないな。じゃあちょっとだけ教えようか。東名高速の近くに砕石場があるだろ。あそこに去年高層マンションが出来たよな。あそこの最上階に化け物が出るんだって。それをね。ぼくたち、友引ツーリングクラブの名僧たちが退治しにいくんだよ」
しらみやは、梨花と康平に顔を順に見てから本堂に消えていった。
「バフバフバフバフ~ン」
このシチュエーションで信じられない大音響があたりを切り裂いた。ボロボロのスクーターが近づいてくる。
「やあ。愛し合ってるねえ。若い二人。ごめんね邪魔して~。人の恋路を邪魔するやつは馬にけられてしんじまえ~なんちゃって~」
黒い着物に錦の袈裟をつけた坊さんが二人の横にスクーターを止めてヘルメットをとった。
「しらみやさん。今日は法事ですか」
梨花が呆れて声をかけた。康平もしらけた顔で見た。
「法事はまあ、あったんだけどね。それはまあ、ふだんの仕事。今日はねえ、ちょっともうけ話があってねえ。ツーリングクラブのメンバーが集まるのよ」
「ツーリングクラブって、あの友引ツーリングクラブですか?」
康平が聞いた。
「そう。ぼくら、仏に仕えるものでも、やっぱり楽しみたいわけよ。みんなで、だけどねえ。人はこちらの都合なんか聞かずに死んじゃうからねえ。いっしょに行けるのは友引の日だけ」
しらみやと名のった坊さんは早口で言った。
「もうけ話って、なんか悪いことするんじゃないでしょうね」
梨花がしらみやをにらみつけた。
「失礼なこと言わないでほしいな。ぼくはいつも人助けしかしない」
しらみやの言葉に二人はしらけた顔をした。
「信じてないな。じゃあちょっとだけ教えようか。東名高速の近くに砕石場があるだろ。あそこに去年高層マンションが出来たよな。あそこの最上階に化け物が出るんだって。それをね。ぼくたち、友引ツーリングクラブの名僧たちが退治しにいくんだよ」
しらみやは、梨花と康平に顔を順に見てから本堂に消えていった。
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21:58
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2011年02月14日
義理チョコの運び屋?
バレンタインでいただきました。
息子も妻もなぜか手前の大きいチョコがお気に入り。このチョコ2月になるとある方から宅急便で送ってき
ます。こんなメッセージをそえて
「しらみやさん。今年も運び屋お願いね。届け先は一つずつ書いてあります。ちゃんと届けてくれたら、ご
ほうびに一枚あげます♥」
今年は7枚ありました。ちゃんと配ってきて、1枚ゲットしましたが…。持ってかえると妻と息子が奪い合
っていました。その姿はまるで水牛に襲い掛かるピラニア☠
今年も見ました家庭内大自然の驚異
これがほんとの「ギリギリチョコっと幸せ」
おあとがよろしいようで!

息子も妻もなぜか手前の大きいチョコがお気に入り。このチョコ2月になるとある方から宅急便で送ってき
ます。こんなメッセージをそえて
「しらみやさん。今年も運び屋お願いね。届け先は一つずつ書いてあります。ちゃんと届けてくれたら、ご
ほうびに一枚あげます♥」
今年は7枚ありました。ちゃんと配ってきて、1枚ゲットしましたが…。持ってかえると妻と息子が奪い合
っていました。その姿はまるで水牛に襲い掛かるピラニア☠
今年も見ました家庭内大自然の驚異
これがほんとの「ギリギリチョコっと幸せ」
おあとがよろしいようで!
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21:13
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2011年02月14日
草砥鹿姫が現代に2
現代の三明寺のまえ、自転車に乗った高校生が石ころをけりながら待っていた。手にはなにか包みを持っている。
「ごめん。待たせた?」
坂の上からすごい勢いで自転車が下りてきた。女子高生だった。
「これ」
少年は照れくさそうに包みを出した。そういえば、今日は3月14日ホワイトデーだった。
女子高生もちょっと顔を赤くして、包みを受け取った。
「3年間、続いたね」
包みを見ながら女の子が言った。
「中学の同級生たち、みんな言ったもんね。3ヶ月で別れるって」
少年が言った。彼らは小学校からの同級生だった。中学に入っても何人かのグループで遊びに行ったりしていたが、中学卒業のときに少年が告白してつきあい出したのだ。少年は康平、豊橋の高校に通っている。少女の方は梨花、一宮町の高校に通っている。二人ともこの春卒業を迎える。
「ねえ、大学決まった?」
梨花が小さな声で聞いた。
「うん。奈良の学校。国文科に行くんだ。歴史勉強する。梨花ちゃんは?」
「私は神奈川」
二人ともちょっとだまってから、三明寺を見上げた。やわらかい風が本堂から吹いてきた気がした。
「今までみたいに会えなくなるね」
梨花が言った。これまでの3年間は、学校の帰りに駅で待ち合わせしてほとんど毎日会っていた。
「あのさあ、おぼえているかな。小学校5年生の時、運動会のとちゅうで抜け出して怒られたことがあったよね。あのとき、これ拾ったんだ」
康平はポケットから、水色の石を出した。
「ひすいじゃない」
梨花は手に取った。なにか生き物のように暖かい。
「暖かいだろ。不思議に思ってさ、その時からずっとお守りみたいに持ってたんだ。これ、梨花ちゃん持ってて」
康平は梨花の目をじっと見た。中学卒業の告白の時、どきどきする胸を押さえるために、ポケットの中で握りしめていたことはまだ秘密にしていた。
梨花はだまったままで受け取った。
「卒業しても、心はいっしょだと思うけど、おたがい、縛るのはやめようね」
梨花が小声で言った。康平は、子犬のような目で梨花を見た。手の中の水色の石がかすかにゆれたが、梨花は気づかなかった。
「ごめん。待たせた?」
坂の上からすごい勢いで自転車が下りてきた。女子高生だった。
「これ」
少年は照れくさそうに包みを出した。そういえば、今日は3月14日ホワイトデーだった。
女子高生もちょっと顔を赤くして、包みを受け取った。
「3年間、続いたね」
包みを見ながら女の子が言った。
「中学の同級生たち、みんな言ったもんね。3ヶ月で別れるって」
少年が言った。彼らは小学校からの同級生だった。中学に入っても何人かのグループで遊びに行ったりしていたが、中学卒業のときに少年が告白してつきあい出したのだ。少年は康平、豊橋の高校に通っている。少女の方は梨花、一宮町の高校に通っている。二人ともこの春卒業を迎える。
「ねえ、大学決まった?」
梨花が小さな声で聞いた。
「うん。奈良の学校。国文科に行くんだ。歴史勉強する。梨花ちゃんは?」
「私は神奈川」
二人ともちょっとだまってから、三明寺を見上げた。やわらかい風が本堂から吹いてきた気がした。
「今までみたいに会えなくなるね」
梨花が言った。これまでの3年間は、学校の帰りに駅で待ち合わせしてほとんど毎日会っていた。
「あのさあ、おぼえているかな。小学校5年生の時、運動会のとちゅうで抜け出して怒られたことがあったよね。あのとき、これ拾ったんだ」
康平はポケットから、水色の石を出した。
「ひすいじゃない」
梨花は手に取った。なにか生き物のように暖かい。
「暖かいだろ。不思議に思ってさ、その時からずっとお守りみたいに持ってたんだ。これ、梨花ちゃん持ってて」
康平は梨花の目をじっと見た。中学卒業の告白の時、どきどきする胸を押さえるために、ポケットの中で握りしめていたことはまだ秘密にしていた。
梨花はだまったままで受け取った。
「卒業しても、心はいっしょだと思うけど、おたがい、縛るのはやめようね」
梨花が小声で言った。康平は、子犬のような目で梨花を見た。手の中の水色の石がかすかにゆれたが、梨花は気づかなかった。
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09:31
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2011年02月12日
怪しい話!
今日、義父の78歳のお祝いで鳳来泉を飲みました。フルーティでうまかったです。
ところで、その時に義父に聞いた話です。真偽のほどは分かりません。
鳳来泉の中で特に有名なのは「空」ですね。あと、よく見かけるのが「美」です。あの「空」って般若心経から来ていると思っていました。で「美」色即是空の色のほうを言うんだと…。
でも、違うんだそうです。関谷酒造の社長さんが美空ひばりの大ファンでいらして、美空から「美」「空」をとったということです。
話としては面白いでしょ。真偽のほどは分かりません。ちなみに義父は私と違ってほら吹きではありません。
ところで、その時に義父に聞いた話です。真偽のほどは分かりません。
鳳来泉の中で特に有名なのは「空」ですね。あと、よく見かけるのが「美」です。あの「空」って般若心経から来ていると思っていました。で「美」色即是空の色のほうを言うんだと…。
でも、違うんだそうです。関谷酒造の社長さんが美空ひばりの大ファンでいらして、美空から「美」「空」をとったということです。
話としては面白いでしょ。真偽のほどは分かりません。ちなみに義父は私と違ってほら吹きではありません。
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22:02
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2011年02月11日
やっぱり息子は雪男!
息子の雪男疑惑決定です。
今朝、6時半に出発して治部坂へ向かいました。田口をこえたところで峠を越えられず引き返しました。やっぱり息子は雪男です。
父「ああ恐かった!」
子「お父さん。スタッドレス買えよ」
でした。
今朝、6時半に出発して治部坂へ向かいました。田口をこえたところで峠を越えられず引き返しました。やっぱり息子は雪男です。
父「ああ恐かった!」
子「お父さん。スタッドレス買えよ」
でした。
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13:49
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2011年02月10日
息子は雪男?
明日(11日)治部坂までスキーに行きます。寒波が来ているというのに…。わざわざ出かけて行かなくても平野でも積もるかも知れないと言っているのに…。お父さんは寒がりなのに…。
これにはふか~いわけがあるのです。
まず、一昨年の年末息子はスポーツクラブのスキー合宿に参加しました。始めての雪国に期待に胸を膨らませ、親子で空に祈ったものです。
「雪がいっぱい降って、最高のスキーが出来ますように!」
この願いが星空に届きすぎました。記録的な寒波が来ました。それでも、彼は立派にすべりました。体中を凍らせて…。鼻水がつららになったそうです。涙がしずくの形で凍ったそうです。
で、彼は帰ってきていいました。
「ぼくはもう、雪のあるスキー場は一生行かない!」
で、去年の暮れです。妻が心配しました。
「この子、大きくなっても雪恐怖症のままだったらどうしよう」
「よし、雪でいい思い出を作らせよう。そうだ、長期予報で天気のよさそうな時を選んでツアーに申し込んでやろう」
で、息子をうまいこといい含めて、冬休み入ってすぐの26日出発、信州白樺湖行きが決まりました。今度は天下の気象庁がついています。
最高の天気で気持ちよく滑れるはずと思いきや…、大寒波襲来☠
3日目の夕方、帰りのバスを待ちながら夫婦で言いました。
「とにかく、無事帰って来たことをほめてやろうな」
「うん。本宮の湯でも連れて行こうか。もう、スキーは嫌いでいいや」
私たちはこれ以上ない笑顔で息子を迎えました。
「子なんきんよ。つらかっただろう?」
私のことばに息子は意外なことを言いました。
「すごい寒かったけど、スゲー面白かった。あのさあ、今度こそ、天気のいい日に滑りたい。ぼくねえ、雪もスキーも嫌いじゃないことが分かった。嫌いなのは吹雪だよ」
この言葉に感動をおぼえてつい約束してしまったのです。
「よ~し。じゃあ、2月11日に行こうか。建国記念日だし(関係ないか)」
で、ここ2.3日春らしい日が続いていたと思ったら、明日から寒波襲来!!
雨男とか雨女っていますよね。もしかしたら、わが子は雪男? そういえば、小3のわりにけっこう毛深いです…!
これにはふか~いわけがあるのです。
まず、一昨年の年末息子はスポーツクラブのスキー合宿に参加しました。始めての雪国に期待に胸を膨らませ、親子で空に祈ったものです。
「雪がいっぱい降って、最高のスキーが出来ますように!」
この願いが星空に届きすぎました。記録的な寒波が来ました。それでも、彼は立派にすべりました。体中を凍らせて…。鼻水がつららになったそうです。涙がしずくの形で凍ったそうです。
で、彼は帰ってきていいました。
「ぼくはもう、雪のあるスキー場は一生行かない!」
で、去年の暮れです。妻が心配しました。
「この子、大きくなっても雪恐怖症のままだったらどうしよう」
「よし、雪でいい思い出を作らせよう。そうだ、長期予報で天気のよさそうな時を選んでツアーに申し込んでやろう」
で、息子をうまいこといい含めて、冬休み入ってすぐの26日出発、信州白樺湖行きが決まりました。今度は天下の気象庁がついています。
最高の天気で気持ちよく滑れるはずと思いきや…、大寒波襲来☠
3日目の夕方、帰りのバスを待ちながら夫婦で言いました。
「とにかく、無事帰って来たことをほめてやろうな」
「うん。本宮の湯でも連れて行こうか。もう、スキーは嫌いでいいや」
私たちはこれ以上ない笑顔で息子を迎えました。
「子なんきんよ。つらかっただろう?」
私のことばに息子は意外なことを言いました。
「すごい寒かったけど、スゲー面白かった。あのさあ、今度こそ、天気のいい日に滑りたい。ぼくねえ、雪もスキーも嫌いじゃないことが分かった。嫌いなのは吹雪だよ」
この言葉に感動をおぼえてつい約束してしまったのです。
「よ~し。じゃあ、2月11日に行こうか。建国記念日だし(関係ないか)」
で、ここ2.3日春らしい日が続いていたと思ったら、明日から寒波襲来!!
雨男とか雨女っていますよね。もしかしたら、わが子は雪男? そういえば、小3のわりにけっこう毛深いです…!
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21:39
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2011年02月09日
小説 夏はいらんかね
「夏はいらんかねえ。とびっきり生きのいい夏はいらんかねえ。大きいのも百円。小さいのも百円。とれとれのピチピチだよ」
海辺のまちに、景気のいい売り声がひびいてきました。波静かな秋の水辺は、だれも歩いていません。「海の家」と書かれた小屋の前でステテコにTシャツ姿のおじさんがヨシズを巻いています。
柴犬のハッピーはねそべったままでと顔をあげると、ふっと鼻をならしました。首につながった鎖がチャリとなりました。そして、また地面に頭をあずけて目をとじました。
「夏はいらんかねえ~。アイスクリーム食べほうだいの夏はいらんかね~。夜は花火、昼は海であそべるよ~」
声はだんだん近づいてきます。ハッピーは鼻にしわをよせて頭をぶるぶるっとふりました。ハッピーに限らず、犬は夏がきらいです。ちょっと走ると、舌を出してハアハア言っちゃいます。
「夏はいらんかね~。盆踊りに、川遊び。虫取りに、海水浴。七時になっても明るいよ~」
とうとう声は犬小屋のまえまで来ました。そこでとまって、つづけます。
「夏はいらんかね~。今ならもれなくスイカと、冷やし中華がついてるよ~。思い出はできたかね~。大きいのも百円。小さいのも百円。もうすぐ売り切れだよ~。早く来ないと行っちゃうよ~」
ハッピーはゆっくり立ち上がって、一度体をぶるぶるっとふるわせると、声のする方をにらんで、う~っと低いうなり声を上げました。いつもやってくるイタズラこぞうたちは、これでわーっと逃げて行きます。ところが・・・。
「はい。いらっしゃいませ。どのような夏がおのぞみですか」
はずんだ声が近づいてきました。あちこちやぶれた麦わら帽子です。てっぺんに「とっびきりの夏」と書いた縦長の旗がたててあります。ハッピーはちょっと怖くなってきました。こんなバケモノ見たこともありません。
帽子だけが飛び跳ねてくるんです。思わず後ろ足にシッポをはさんで後ずさっていきます。一歩また一歩と下がっていくうちに、小屋のかべがおしりにあたりました。仕方なく、頭をさげたままで、「きゃう~」とうなってみました。
「お客さま。心配はいりませんよ。まずはお試しいただいて、気に入られたらお金をはらっていただきます。まずはどんなものかご賞味下さい」
帽子はそう言って、勝手に頭へのっかりました。驚いたハッピーは前足で外そうとしますが、なかなか思うようにいきません。
そのうちにどこからかハワイアンミュージックが聞こえてきました。波の音にまじって子どもたちの笑い声がひびいてきます。浜辺でバーベキューをしているんでしょうか、肉の焼けるにおいもしてきました。
「暑いばかりじゃないでしょう」
麦わら帽子に言われて、ハッピーはもうおこりません。おすわりをして、ヨダレをたらしています。その口に、よく焼けた肉が一切れ飛び込むと、飲みこむように食べました。そして、子どもたちの声にさそわれて、波打ち際まで行きました。思い切って飛び込むと犬かきで沖のブイまで泳ぎました。真っ青な空には入道雲が浮かんでいます。
ハッピーは、すっかり夏が気にいりました。それを見計らってか帽子は頭から飛び下りました。
急に現実に引きもどされたハッピーは、なんどもまばたきして首をふりました。それからふせをして、甘えるように麦わら帽子を見ました。
「いかがですか。ステキな夏でしょう。お望みでしたら、百円で十日間つづきを楽しんでいただけますよ」
麦わら帽子が言いました。ハッピーは目を半分閉じて下を向きました。お金なんかもっていません。それでも、さっきの肉の味が口の中でツバをいっぱい出させます。耳のおくには、ハワイアンミュージックと波の音が海へとさそいます。
「きゅうう~。う~。くわん。きゅん」
思いっきり甘えた声を出して見ました。それでもだめならと、犬小屋からテニスボールをくわえてきました。散歩のとちゅうでひろった宝ものです。
麦わら帽子は、ちょっと縦長の旗をゆらしてから動き出して、また、呼び声を出しました。
「夏はいらんかねえ~。とびっきり上等の夏だよ~。犬もほしがる気持ちのいい夏だよ。大きいのも百円。小さい夏も百円。百円で十日間だよ。一日あたり十円だよ。早いものがち~」
麦わら帽子は、縦長の旗をゆらしながら遠ざかって行きます。ハッピーはクサリで首をひっぱられ二本足で立って、前足でおいでおいでするみたいにして鳴いています。麦わら帽子はだんだん遠ざかっていきます。
「ハッピーどうした。ちょっと待ってくれ。もう片付くから散歩に行こう」
ステテコおじさんが頭をなでても、ハッピーはおいでおいでを続けています。
「めずらしいなあ。おまえがこんなにほえるなんて、なにが来たんだ」
おじさんがハッピーの見ている方を向くと、小さく麦わら帽子の声が聞えました。
「なんだい、今日の客はしみったれだねえ」
ステテコおじさんは、顔を上げて声のする方をながめました。
「こんなに活きのいい夏が十日間でたったの百円だよ~。気持ちよく買ったって言えないものかねえ。いやんなっちょうよ。夏はいらんかね~。とびきり上等の夏だよ。デパートで買ったら五百円はするよ~。お買い得まいちがいないよ~」
どこかで、まだ売っているようです。だんだんいらいらした声になってきました。
「夏は売り物だぞ。スーパーの食品売り場じゃないんだから、試し食いばかりじゃ商売にならねえや。もう、今日は店じまいだ」
ステテコおじさんは一度海の家に入ると、ブタの貯金箱を持って現れました。
「買ったぞ。夏を買ったぞ。あるだけ買うぞ~。おうい。もどってきてくれ。夏がほしいんだ。とびっきりいきのいい夏が」
おじさんは麦わら帽子の声に向かって大声で叫びます。それにあわせて、ハッピーがほえました。
麦わら帽子はもどってくると、おじさんの目の前でホバリングしました。
「いらっしょいませ。これはお客様、大変失礼をいたしました。お急ぎでしたらすぐにでも、商品をご用意いたしますが」
麦わら帽子は早口にしゃべりました。
「急いでるも何も、いますぐにここに夏を出してくれよ。十日で百円ってのは、安いじゃないか。この貯金箱がわしのお金ぜんぶだ。これで買えるだけ夏を分けてくれ」
おじさんは貯金箱を地面に投げつけて割りました。百円玉や十円玉がいくつも転がりました。五百円玉も混じっているようです。何枚か百円玉をひろって麦わら帽子にのせました。
「はいありがとうございます。ではさっそく、料金分の夏をお届けいたします」
空に大きな麦わら帽子があらわれて地上におりてきました。そして、海の家と近くの海をつつみました。
帽子は巨大なドームになっているようです。中は夏の日差しが照りつけ、ん入道雲がのぼっています。風はポップコーンのにおいがします。
「わああ、夏だ。夏が帰ってきたぞー」
「ねえねえ、飛び込み台まで競争しようぜ」
砂浜にはビーチパラソルがならんで、水着姿の大人や子どもの声がひびいています。
「売店ってまだやってのかなあ」
「もう、十月だもんなあ」
そんな声が聞こえると、ステテコおじさんの目がかがやきました。
「いらっしゃいませ。ようこそ、海の家へ。十月だろうと十二月だろうと、海に暑い日差しがあるかぎり。お客様がお一人でもいらっしゃるかぎり、やっておりますよ」
ステテコおじさんは大はしゃぎで焼きそばや、ホットドッグを焼き始めます。お客さんはあとからあとからやってきました。みんな海で泳いだり、浜辺で体をやいたりしています。ハッピーも特別にくさりをはずしてもらえました。
十二月になると、砂浜においてある巨大スピーカーから流れるラジオからはクリスマスソングが流れます。遠くからやってくるお客さんの車には雪がのっていたりします。
「なんだか変だよなあ。ダウンジャケット脱いで、水着にかえるんだもんなあ」
「でもなんだか、すごいぜいたくな感じ。ハワイかグアムに来たみたい。これで日本なんだもんねえ」
そんなお客さんたちの言葉が口から口へ伝わり、浜茶屋は地元のケーブルテレビでも取り上げられました。ステテコおじさんは、コチコチになってマイクの前でしゃべっています。
「こちら、浜茶屋のおじさんです」
女性レポーターが紹介し、マイクを向けるとおじさんは真っ赤な顔になりました。
「はじめまして、常夏ビーチのおじさんです。クリスマスも、お正月も海ですごしてみませんか」
おじさんは、前の日から用意していたセリフをメモを片手に読み上げました。
「うわあ、すてきですね。でも、ここはドームの中でもないのに、どうして冬でも暖かいのですか」
レポーターはまわりを見回して不思議そうな顔をします。おじさんはちょっと自慢げな顔をしました。
「ここには、冬も秋も来ないのです。私の力で夏をつかまえたままにしてあります」
「なんだかよく分かりませんが、いい気持ちですよ~」
リポーターがそう締めくくって、番組が終わるとまたお客がふえました。ステテコおじさんは、毎日毎日、休みなく働きました。
もともと浜茶屋は夏しか開かないので、暑い間は休まないんです。そういうくせって、なかなか抜けないものですね。
「ああかわいい」
ハッピーは水着のおねえさんに抱きしめられて、ハンバーグのかけらをもらいました。これもお客の多い夏ならではです。
ステテコおじさんは、もうかったお金で、夏を買い足していきました。十日百円なんですから、いくらでも買えます。クリスマスが来てもお正月が近づいても、カンカン照りの海です。
最初はよろこんでいたハッピーもちょっとあきてきました。いい気になって走り続けても、日が長いのでなかなか夕方になりません。やっと夕方になっても、細長い西日が犬小屋の中まで照らしていくので、昼寝もゆっくりできません。
毎日暑いばかりではからからに乾いてしまいそうです。
ステテコおじさんも疲れがたまってきました。いつもの年なら、夏が終わればゆっくり休んでから次の夏の準備をします。ここでリフレッシュしていたのですが、今年はずーっと休みなしです。それも毎日大忙しで、朝から夜まで立ちっぱなしです。
年末の大掃除は、大変でした。じっとしていても暑いのです。そんな中での大掃除ですから汗だくになりました。
「今年も一年がんばったよなあ」
おじさんは浜茶屋のまえに寝そべったハッピーの背中をなでました。大晦日でも日が落ちるのは七時ごろです。水平線を真っ赤にそめて、その年最後の夕日が落ちていきます。店の入り口にたてた門松にはセミがとまって鳴いています。
「おじさん。明日は初日の出見てから、泳ぐんだけど、シャワーは何時から使えるの」
海から上がってきたカップルが笑いながらききました。
「あっ。あのう。明日はお正月なんでお休みなんですが・・・」
おじさんは小さな声でこたえました。
「ええ? なに言ってる? ありえない~。みんな楽しみにしてくるのよ。ここの海だけが、今でも夏なのよ。冗談じゃないわよ」
カップルの女の子が大声で言うと、ほかの客たちも集まってきました。
「テレビで言ってたのはうそかよ。一年中泳げるって言うから、ここに来たのに、今さらスキー場の予約とれないぞ。どうしてくれるんだよ」
ほかの客もおこっています。
「毎年。正月はゆっくりしてテレビを見てすごすんです。それに、シャワーがなくても、泳げるでしょう」
おじさんはもう半なきです。
「いやよ。海に入って、かみも洗えない、塩も流せないなんてぜったいいや」
女の子もヒステリックです。おじさんはとうとう押し切られて、正月も店を開くことにきめました。
紅白歌合戦もいつもはこたつの中で見たのに、今年はシャツにステテコのスタイルのまま、エアコンをかけていました。ミカンの代わりにかき氷です。除夜の鐘を聞いてやっとねついたと思ったら、すぐに朝が来て朝日といっしょに大勢のお客さんです。
焼きそばとかき氷はすぐに売り切れました。それでも、あとからあとから、客はやってきます。
「ええ? 売り切れ? ひどいなあ。たくさん用意しといてよね」
買えなかった客たちは毒づいて帰っていきます。駐車場は車でいっぱい、ほこりっぽくてたまりません。
「ふ~。もういいよ。夏はもういらない。ふつうの冬がほしいよ」
お客さんが帰って行った後、ステテコおじさんがぽつりといいました。真っ赤な夕日が海を照らしています。ハッピーも「きゅう~」と鳴きました。
「なあ、ハッピー。おれはもう、がまんができん。ここから出て行くぞ」
おじさんはハッピーに言うと、小さなバッグを一つ持って自転車に乗りました。ハッピーは散歩ひもで引かれて行きます。
ステテコおじさんとハッピーの前に、茶色のかべがあらわれました。さっき海の家にいた海水浴客たちの車が何台かならんでいます。
「ハッピー。これで、やっと逃げられるぞ」
おじさんの声がはずんできました。ハッピーも顔をあげて、シッポをちぎれそうにふっています。前にならんでいた車は、一台ずつゲートを通っていきます。すぐ前の車がゲートをくぐって行くとおじさんはふぅと息をはきました。このゲートをこえれば、いつも通りの冬のはずです。
ところが、おじさんが自転車のペダルを踏もうとしたところで、ゲートが下がりました。
「なんとかしてくれー。もう夏はいらんよ~」
ステテコおじさんがさけびました。
「これはこれは、夏をお求めいただいたお客様ですね。いかがですか? とびきりの夏は」
麦わら帽子はちょっとわらっているようです。。
「あのなあ、ほんとに楽しかった。ハッピーもよろこんでおる。だがなあ、暑すぎる。それに、冬はやっぱり寒くないと、感じがでんしなあ。第一わしは、今まで冬はゆっくりしておったのに、今年は正月も休めんのだ。
もう、夏はいらんのだがなあ。すまんが、返品できんかね」
ステテコおじさんが言うと、ハッピーもきゅううんと声をあげました。
「そんなむちゃ言われても困りますよ。お客さん。ぼくはねえ、ちゃんと説明して夏を届けました。不良品なら交換しますけど、お客さんの都合で返品はできません」
麦わら帽子の声がひびきました。
最初に夏を売りに来たときとは、ぜんぜん違う冷たい言い方でした。
「いや、あのう。お金は返してくれんでもいいんだが」
ステテコおじさんはちょっと弱気になってきました。
「だめです。お金の問題じゃありません。この前お届けした夏は、あと、二年ほど続きます」
麦わら帽子の声はそれきり聞えません。
「あと二年だと、わしゃあいったいどうなるんだ」
ステテコおじさんはなみだ声です。仕方なく海の家にもどりました。ハッピーもぐったりして海をながめています。そのときです。
「冬はいらんかね~。とびきりいつもどおりの冬はいらんかね~。ギリギリ照りつける夏を飲み込んでも、まだまだ寒い、とびっきりいつもどおりの冬はいらんかね~」
空からサンタクロースがかぶっている帽子がおりてきました。でも、声は確かに麦わら帽子と同じです。海の上にホバリングしています。
「お客様がた、大変お待たせいたしました。一度お売りした季節をもどすことはできませんが、新しく冬を買っていただければ心配ありません」
「わ~。待っていたぞー。冬を冬をくれ~。とびっきりいつも通りの冬をくれ~」
ステテコおじさんは叫びました。
「まいどありがとうございます」
サンタの帽子が近づいて来ました。
「早くしてくれ~」
ステテコおじさんが大声で呼びました。
「申しわけありませんが、今回は先にお金をいただきます」
サンタの帽子は言いました。
「いくらでも出すぞ。あれからなあ、浜茶屋は大繁盛だった。毎日、すごいお客さんだったからな」
ステテコおじさんは膝ぐらいまで海に入っていきました。
「そうですか。そんなら安心して請求できます。二年の夏を消すためには、二年分冬が必要ですからねえ。十万円です」
三角帽子はさらっと答えました。ステテコおじさんはひっくり返りそうになりましたが、ぐっとこらえて財布に手をのばしました。
「高いがしょうがない。ほれ、ここに十万円ある。すぐに二年分の冬をくれ」
ステテコおじさんが泣きそうな声で言うと、三角帽子は首をふるようにゆれました。
「お客さん。かんちがいしちゃあいけません。十万円は二年分じゃありません。一日分です。二年分ですと、七千三百万円に消費税となります。すぐに払っていただけないならこの話はなかったことにしましょう。それでは、さようなら」
サンタの帽子は空をとんで沖へきえて行きました。
ハッピーがきゅーんと鳴きました。。
「ちょっと待ってくれ~」
ステテコおじさんは、やけた砂浜にどたんとたおれました。
海辺のまちに、景気のいい売り声がひびいてきました。波静かな秋の水辺は、だれも歩いていません。「海の家」と書かれた小屋の前でステテコにTシャツ姿のおじさんがヨシズを巻いています。
柴犬のハッピーはねそべったままでと顔をあげると、ふっと鼻をならしました。首につながった鎖がチャリとなりました。そして、また地面に頭をあずけて目をとじました。
「夏はいらんかねえ~。アイスクリーム食べほうだいの夏はいらんかね~。夜は花火、昼は海であそべるよ~」
声はだんだん近づいてきます。ハッピーは鼻にしわをよせて頭をぶるぶるっとふりました。ハッピーに限らず、犬は夏がきらいです。ちょっと走ると、舌を出してハアハア言っちゃいます。
「夏はいらんかね~。盆踊りに、川遊び。虫取りに、海水浴。七時になっても明るいよ~」
とうとう声は犬小屋のまえまで来ました。そこでとまって、つづけます。
「夏はいらんかね~。今ならもれなくスイカと、冷やし中華がついてるよ~。思い出はできたかね~。大きいのも百円。小さいのも百円。もうすぐ売り切れだよ~。早く来ないと行っちゃうよ~」
ハッピーはゆっくり立ち上がって、一度体をぶるぶるっとふるわせると、声のする方をにらんで、う~っと低いうなり声を上げました。いつもやってくるイタズラこぞうたちは、これでわーっと逃げて行きます。ところが・・・。
「はい。いらっしゃいませ。どのような夏がおのぞみですか」
はずんだ声が近づいてきました。あちこちやぶれた麦わら帽子です。てっぺんに「とっびきりの夏」と書いた縦長の旗がたててあります。ハッピーはちょっと怖くなってきました。こんなバケモノ見たこともありません。
帽子だけが飛び跳ねてくるんです。思わず後ろ足にシッポをはさんで後ずさっていきます。一歩また一歩と下がっていくうちに、小屋のかべがおしりにあたりました。仕方なく、頭をさげたままで、「きゃう~」とうなってみました。
「お客さま。心配はいりませんよ。まずはお試しいただいて、気に入られたらお金をはらっていただきます。まずはどんなものかご賞味下さい」
帽子はそう言って、勝手に頭へのっかりました。驚いたハッピーは前足で外そうとしますが、なかなか思うようにいきません。
そのうちにどこからかハワイアンミュージックが聞こえてきました。波の音にまじって子どもたちの笑い声がひびいてきます。浜辺でバーベキューをしているんでしょうか、肉の焼けるにおいもしてきました。
「暑いばかりじゃないでしょう」
麦わら帽子に言われて、ハッピーはもうおこりません。おすわりをして、ヨダレをたらしています。その口に、よく焼けた肉が一切れ飛び込むと、飲みこむように食べました。そして、子どもたちの声にさそわれて、波打ち際まで行きました。思い切って飛び込むと犬かきで沖のブイまで泳ぎました。真っ青な空には入道雲が浮かんでいます。
ハッピーは、すっかり夏が気にいりました。それを見計らってか帽子は頭から飛び下りました。
急に現実に引きもどされたハッピーは、なんどもまばたきして首をふりました。それからふせをして、甘えるように麦わら帽子を見ました。
「いかがですか。ステキな夏でしょう。お望みでしたら、百円で十日間つづきを楽しんでいただけますよ」
麦わら帽子が言いました。ハッピーは目を半分閉じて下を向きました。お金なんかもっていません。それでも、さっきの肉の味が口の中でツバをいっぱい出させます。耳のおくには、ハワイアンミュージックと波の音が海へとさそいます。
「きゅうう~。う~。くわん。きゅん」
思いっきり甘えた声を出して見ました。それでもだめならと、犬小屋からテニスボールをくわえてきました。散歩のとちゅうでひろった宝ものです。
麦わら帽子は、ちょっと縦長の旗をゆらしてから動き出して、また、呼び声を出しました。
「夏はいらんかねえ~。とびっきり上等の夏だよ~。犬もほしがる気持ちのいい夏だよ。大きいのも百円。小さい夏も百円。百円で十日間だよ。一日あたり十円だよ。早いものがち~」
麦わら帽子は、縦長の旗をゆらしながら遠ざかって行きます。ハッピーはクサリで首をひっぱられ二本足で立って、前足でおいでおいでするみたいにして鳴いています。麦わら帽子はだんだん遠ざかっていきます。
「ハッピーどうした。ちょっと待ってくれ。もう片付くから散歩に行こう」
ステテコおじさんが頭をなでても、ハッピーはおいでおいでを続けています。
「めずらしいなあ。おまえがこんなにほえるなんて、なにが来たんだ」
おじさんがハッピーの見ている方を向くと、小さく麦わら帽子の声が聞えました。
「なんだい、今日の客はしみったれだねえ」
ステテコおじさんは、顔を上げて声のする方をながめました。
「こんなに活きのいい夏が十日間でたったの百円だよ~。気持ちよく買ったって言えないものかねえ。いやんなっちょうよ。夏はいらんかね~。とびきり上等の夏だよ。デパートで買ったら五百円はするよ~。お買い得まいちがいないよ~」
どこかで、まだ売っているようです。だんだんいらいらした声になってきました。
「夏は売り物だぞ。スーパーの食品売り場じゃないんだから、試し食いばかりじゃ商売にならねえや。もう、今日は店じまいだ」
ステテコおじさんは一度海の家に入ると、ブタの貯金箱を持って現れました。
「買ったぞ。夏を買ったぞ。あるだけ買うぞ~。おうい。もどってきてくれ。夏がほしいんだ。とびっきりいきのいい夏が」
おじさんは麦わら帽子の声に向かって大声で叫びます。それにあわせて、ハッピーがほえました。
麦わら帽子はもどってくると、おじさんの目の前でホバリングしました。
「いらっしょいませ。これはお客様、大変失礼をいたしました。お急ぎでしたらすぐにでも、商品をご用意いたしますが」
麦わら帽子は早口にしゃべりました。
「急いでるも何も、いますぐにここに夏を出してくれよ。十日で百円ってのは、安いじゃないか。この貯金箱がわしのお金ぜんぶだ。これで買えるだけ夏を分けてくれ」
おじさんは貯金箱を地面に投げつけて割りました。百円玉や十円玉がいくつも転がりました。五百円玉も混じっているようです。何枚か百円玉をひろって麦わら帽子にのせました。
「はいありがとうございます。ではさっそく、料金分の夏をお届けいたします」
空に大きな麦わら帽子があらわれて地上におりてきました。そして、海の家と近くの海をつつみました。
帽子は巨大なドームになっているようです。中は夏の日差しが照りつけ、ん入道雲がのぼっています。風はポップコーンのにおいがします。
「わああ、夏だ。夏が帰ってきたぞー」
「ねえねえ、飛び込み台まで競争しようぜ」
砂浜にはビーチパラソルがならんで、水着姿の大人や子どもの声がひびいています。
「売店ってまだやってのかなあ」
「もう、十月だもんなあ」
そんな声が聞こえると、ステテコおじさんの目がかがやきました。
「いらっしゃいませ。ようこそ、海の家へ。十月だろうと十二月だろうと、海に暑い日差しがあるかぎり。お客様がお一人でもいらっしゃるかぎり、やっておりますよ」
ステテコおじさんは大はしゃぎで焼きそばや、ホットドッグを焼き始めます。お客さんはあとからあとからやってきました。みんな海で泳いだり、浜辺で体をやいたりしています。ハッピーも特別にくさりをはずしてもらえました。
十二月になると、砂浜においてある巨大スピーカーから流れるラジオからはクリスマスソングが流れます。遠くからやってくるお客さんの車には雪がのっていたりします。
「なんだか変だよなあ。ダウンジャケット脱いで、水着にかえるんだもんなあ」
「でもなんだか、すごいぜいたくな感じ。ハワイかグアムに来たみたい。これで日本なんだもんねえ」
そんなお客さんたちの言葉が口から口へ伝わり、浜茶屋は地元のケーブルテレビでも取り上げられました。ステテコおじさんは、コチコチになってマイクの前でしゃべっています。
「こちら、浜茶屋のおじさんです」
女性レポーターが紹介し、マイクを向けるとおじさんは真っ赤な顔になりました。
「はじめまして、常夏ビーチのおじさんです。クリスマスも、お正月も海ですごしてみませんか」
おじさんは、前の日から用意していたセリフをメモを片手に読み上げました。
「うわあ、すてきですね。でも、ここはドームの中でもないのに、どうして冬でも暖かいのですか」
レポーターはまわりを見回して不思議そうな顔をします。おじさんはちょっと自慢げな顔をしました。
「ここには、冬も秋も来ないのです。私の力で夏をつかまえたままにしてあります」
「なんだかよく分かりませんが、いい気持ちですよ~」
リポーターがそう締めくくって、番組が終わるとまたお客がふえました。ステテコおじさんは、毎日毎日、休みなく働きました。
もともと浜茶屋は夏しか開かないので、暑い間は休まないんです。そういうくせって、なかなか抜けないものですね。
「ああかわいい」
ハッピーは水着のおねえさんに抱きしめられて、ハンバーグのかけらをもらいました。これもお客の多い夏ならではです。
ステテコおじさんは、もうかったお金で、夏を買い足していきました。十日百円なんですから、いくらでも買えます。クリスマスが来てもお正月が近づいても、カンカン照りの海です。
最初はよろこんでいたハッピーもちょっとあきてきました。いい気になって走り続けても、日が長いのでなかなか夕方になりません。やっと夕方になっても、細長い西日が犬小屋の中まで照らしていくので、昼寝もゆっくりできません。
毎日暑いばかりではからからに乾いてしまいそうです。
ステテコおじさんも疲れがたまってきました。いつもの年なら、夏が終わればゆっくり休んでから次の夏の準備をします。ここでリフレッシュしていたのですが、今年はずーっと休みなしです。それも毎日大忙しで、朝から夜まで立ちっぱなしです。
年末の大掃除は、大変でした。じっとしていても暑いのです。そんな中での大掃除ですから汗だくになりました。
「今年も一年がんばったよなあ」
おじさんは浜茶屋のまえに寝そべったハッピーの背中をなでました。大晦日でも日が落ちるのは七時ごろです。水平線を真っ赤にそめて、その年最後の夕日が落ちていきます。店の入り口にたてた門松にはセミがとまって鳴いています。
「おじさん。明日は初日の出見てから、泳ぐんだけど、シャワーは何時から使えるの」
海から上がってきたカップルが笑いながらききました。
「あっ。あのう。明日はお正月なんでお休みなんですが・・・」
おじさんは小さな声でこたえました。
「ええ? なに言ってる? ありえない~。みんな楽しみにしてくるのよ。ここの海だけが、今でも夏なのよ。冗談じゃないわよ」
カップルの女の子が大声で言うと、ほかの客たちも集まってきました。
「テレビで言ってたのはうそかよ。一年中泳げるって言うから、ここに来たのに、今さらスキー場の予約とれないぞ。どうしてくれるんだよ」
ほかの客もおこっています。
「毎年。正月はゆっくりしてテレビを見てすごすんです。それに、シャワーがなくても、泳げるでしょう」
おじさんはもう半なきです。
「いやよ。海に入って、かみも洗えない、塩も流せないなんてぜったいいや」
女の子もヒステリックです。おじさんはとうとう押し切られて、正月も店を開くことにきめました。
紅白歌合戦もいつもはこたつの中で見たのに、今年はシャツにステテコのスタイルのまま、エアコンをかけていました。ミカンの代わりにかき氷です。除夜の鐘を聞いてやっとねついたと思ったら、すぐに朝が来て朝日といっしょに大勢のお客さんです。
焼きそばとかき氷はすぐに売り切れました。それでも、あとからあとから、客はやってきます。
「ええ? 売り切れ? ひどいなあ。たくさん用意しといてよね」
買えなかった客たちは毒づいて帰っていきます。駐車場は車でいっぱい、ほこりっぽくてたまりません。
「ふ~。もういいよ。夏はもういらない。ふつうの冬がほしいよ」
お客さんが帰って行った後、ステテコおじさんがぽつりといいました。真っ赤な夕日が海を照らしています。ハッピーも「きゅう~」と鳴きました。
「なあ、ハッピー。おれはもう、がまんができん。ここから出て行くぞ」
おじさんはハッピーに言うと、小さなバッグを一つ持って自転車に乗りました。ハッピーは散歩ひもで引かれて行きます。
ステテコおじさんとハッピーの前に、茶色のかべがあらわれました。さっき海の家にいた海水浴客たちの車が何台かならんでいます。
「ハッピー。これで、やっと逃げられるぞ」
おじさんの声がはずんできました。ハッピーも顔をあげて、シッポをちぎれそうにふっています。前にならんでいた車は、一台ずつゲートを通っていきます。すぐ前の車がゲートをくぐって行くとおじさんはふぅと息をはきました。このゲートをこえれば、いつも通りの冬のはずです。
ところが、おじさんが自転車のペダルを踏もうとしたところで、ゲートが下がりました。
「なんとかしてくれー。もう夏はいらんよ~」
ステテコおじさんがさけびました。
「これはこれは、夏をお求めいただいたお客様ですね。いかがですか? とびきりの夏は」
麦わら帽子はちょっとわらっているようです。。
「あのなあ、ほんとに楽しかった。ハッピーもよろこんでおる。だがなあ、暑すぎる。それに、冬はやっぱり寒くないと、感じがでんしなあ。第一わしは、今まで冬はゆっくりしておったのに、今年は正月も休めんのだ。
もう、夏はいらんのだがなあ。すまんが、返品できんかね」
ステテコおじさんが言うと、ハッピーもきゅううんと声をあげました。
「そんなむちゃ言われても困りますよ。お客さん。ぼくはねえ、ちゃんと説明して夏を届けました。不良品なら交換しますけど、お客さんの都合で返品はできません」
麦わら帽子の声がひびきました。
最初に夏を売りに来たときとは、ぜんぜん違う冷たい言い方でした。
「いや、あのう。お金は返してくれんでもいいんだが」
ステテコおじさんはちょっと弱気になってきました。
「だめです。お金の問題じゃありません。この前お届けした夏は、あと、二年ほど続きます」
麦わら帽子の声はそれきり聞えません。
「あと二年だと、わしゃあいったいどうなるんだ」
ステテコおじさんはなみだ声です。仕方なく海の家にもどりました。ハッピーもぐったりして海をながめています。そのときです。
「冬はいらんかね~。とびきりいつもどおりの冬はいらんかね~。ギリギリ照りつける夏を飲み込んでも、まだまだ寒い、とびっきりいつもどおりの冬はいらんかね~」
空からサンタクロースがかぶっている帽子がおりてきました。でも、声は確かに麦わら帽子と同じです。海の上にホバリングしています。
「お客様がた、大変お待たせいたしました。一度お売りした季節をもどすことはできませんが、新しく冬を買っていただければ心配ありません」
「わ~。待っていたぞー。冬を冬をくれ~。とびっきりいつも通りの冬をくれ~」
ステテコおじさんは叫びました。
「まいどありがとうございます」
サンタの帽子が近づいて来ました。
「早くしてくれ~」
ステテコおじさんが大声で呼びました。
「申しわけありませんが、今回は先にお金をいただきます」
サンタの帽子は言いました。
「いくらでも出すぞ。あれからなあ、浜茶屋は大繁盛だった。毎日、すごいお客さんだったからな」
ステテコおじさんは膝ぐらいまで海に入っていきました。
「そうですか。そんなら安心して請求できます。二年の夏を消すためには、二年分冬が必要ですからねえ。十万円です」
三角帽子はさらっと答えました。ステテコおじさんはひっくり返りそうになりましたが、ぐっとこらえて財布に手をのばしました。
「高いがしょうがない。ほれ、ここに十万円ある。すぐに二年分の冬をくれ」
ステテコおじさんが泣きそうな声で言うと、三角帽子は首をふるようにゆれました。
「お客さん。かんちがいしちゃあいけません。十万円は二年分じゃありません。一日分です。二年分ですと、七千三百万円に消費税となります。すぐに払っていただけないならこの話はなかったことにしましょう。それでは、さようなら」
サンタの帽子は空をとんで沖へきえて行きました。
ハッピーがきゅーんと鳴きました。。
「ちょっと待ってくれ~」
ステテコおじさんは、やけた砂浜にどたんとたおれました。
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07:50
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2011年02月08日
ひまじんでごめんね!
今日は出勤前に豊川稲荷の近くの小学校で語りの講師をやった。子どもたちが冬休みに調べてきた地元の民話を落語風に語るお手伝い?(じゃま)をする。
大きく分けて、ネタは3つ。一つは弘法大師が水の枯れない井戸を掘った話。二つ目は、歌のうまい馬方さんに弁財天が金のなくならない財布をくれる話。最後は薄暗い道を通ると着物の袖を切られるので、つかまえてみたらキツネのいたずらだったって言う話。
子どもたち(3年生)に
「紙を見ずに話しできる人はいる?」と質問すると、三人ぐらい手が上がった。
「じゃあ、憶えるのが大変だと思う人」
大半が手をあげる。
「そうだよね。じゃあさあ、あらすじなら言える人」
また、大半が手をあげる。自信なさそうな子を指名して前に出てもらう。前には白木に畳をはめた高座が作ってあって、紫の座布団が敷いてある。そこに座ってもらう。彼は弁財天の話をするらしい。
「じゃあねえ、目を閉じて、きれいな女の人を想像して。お母さんでもいいし、先生でも、AKB48のお姉さんでもいいよ。出来たかな、そしたらねえ、その女の人はお寺の中から外を見ているよ。どんな人が通るかなぁって見ているよ。馬を連れたお兄さんが通っていく。かっこいい人だね。さあ、お寺にいたお姉さんがお兄さんに声をかけるよ。なんていうんだろう。お姉さんになったつもりで言ってみて。」
って感じに誘導していく。そして、自分の言葉でセリフを言ってもらい、説明はできるだけ少なくしてセリフで語ったもらう。お金の無くならない財布のくだりでは、子どもに今欲しいものを言ってもらう。
こんな感じでやると、おもしろいことに彼なりのお話がその場で出来てしまう。そして、その話は忘れない。それをみんなの前で一人で語ってもらう。同級生たち大笑いして語り手もどんどん乗ってくる。
「じゃあ、他にやりたい人いる?」
と声をかけると、ほとんどの子どもが立ち上がって手をあげる。おもしろいことに、今度は別の話でも誘導なしで語っていける。
最後に1つだけ注意をする。どんなに面白くても、たとえ百人が笑っても誰か一人が悲しくなるのはダメ。あとは面白ければなんでもいい。視線は一番後ろの人の頭の上10cmに持っていくと、みんなから見やすい。
あっと言う間の1時間だった。こちらも楽しかったのです。そのあと、スピード違反ぎりぎりで出勤した。
大きく分けて、ネタは3つ。一つは弘法大師が水の枯れない井戸を掘った話。二つ目は、歌のうまい馬方さんに弁財天が金のなくならない財布をくれる話。最後は薄暗い道を通ると着物の袖を切られるので、つかまえてみたらキツネのいたずらだったって言う話。
子どもたち(3年生)に
「紙を見ずに話しできる人はいる?」と質問すると、三人ぐらい手が上がった。
「じゃあ、憶えるのが大変だと思う人」
大半が手をあげる。
「そうだよね。じゃあさあ、あらすじなら言える人」
また、大半が手をあげる。自信なさそうな子を指名して前に出てもらう。前には白木に畳をはめた高座が作ってあって、紫の座布団が敷いてある。そこに座ってもらう。彼は弁財天の話をするらしい。
「じゃあねえ、目を閉じて、きれいな女の人を想像して。お母さんでもいいし、先生でも、AKB48のお姉さんでもいいよ。出来たかな、そしたらねえ、その女の人はお寺の中から外を見ているよ。どんな人が通るかなぁって見ているよ。馬を連れたお兄さんが通っていく。かっこいい人だね。さあ、お寺にいたお姉さんがお兄さんに声をかけるよ。なんていうんだろう。お姉さんになったつもりで言ってみて。」
って感じに誘導していく。そして、自分の言葉でセリフを言ってもらい、説明はできるだけ少なくしてセリフで語ったもらう。お金の無くならない財布のくだりでは、子どもに今欲しいものを言ってもらう。
こんな感じでやると、おもしろいことに彼なりのお話がその場で出来てしまう。そして、その話は忘れない。それをみんなの前で一人で語ってもらう。同級生たち大笑いして語り手もどんどん乗ってくる。
「じゃあ、他にやりたい人いる?」
と声をかけると、ほとんどの子どもが立ち上がって手をあげる。おもしろいことに、今度は別の話でも誘導なしで語っていける。
最後に1つだけ注意をする。どんなに面白くても、たとえ百人が笑っても誰か一人が悲しくなるのはダメ。あとは面白ければなんでもいい。視線は一番後ろの人の頭の上10cmに持っていくと、みんなから見やすい。
あっと言う間の1時間だった。こちらも楽しかったのです。そのあと、スピード違反ぎりぎりで出勤した。
Posted by ひらひらヒーラーズ at
21:14
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2011年02月07日
田峯観音のカラスの話
もうすぐ、鬼祭りがやってくる。この季節になると思い出す切ない思い出がある。あれは、もう10年のも前になろうか…。
さる友人に渓流づりに誘われた。2月の半ば、午前4時雪のちらつく中豊川を出発。途中コンビ二へより弁当を買うことになった。
「おい。しらみや。渓流づりはむつかしいぞ。まちがっても魚の顔を拝めるなんて甘い事考えるなよ。楽しみはいい景色と昼飯だ。しっかり選んでうまい弁当買えよ」
友人は笑いながら私の肩をたたいた。くやしいけど言われるまでもなく、そのつもりだ。私は手に取ろうとしていたシャケ弁当をおいて、750円もするデカとんかつ弁当を買って「楽しみは弁当だ。」と自分に言い聞かせた。
車は山道を走りトンネルをぬけて寒狭川の上流、田峯の水神が淵についた。
河原に弁当をおいて友人に教えられるまま胴長靴をはいた。腰まで水につかりさおを振った。なにかの視線を感じながら…。
川に入って2時間。水の流れる音にまじって、がさがさと乾いた音がする。何気なくふりかえると川岸の私の弁当(750円)前に大きなカラスがいた。じっと私の方を見ている。私は腰まで水につかっているしなれない釣竿4,5mを持っていてすぐには岸までもどれない。
カラスと目が合う。カラスが一声「か~」と鳴いた。「おまえ、これないだろ」といっているようだった。
私のあきらめが視線に現れたのをヤツは見逃さなかった。袋に首をつっこむとゆっくりトンカツからくわえだした。頭がくらくらした。怒りと言うより悲しみだった。
とんかつが食われてしまえば、ご飯と漬物とサラダだ、おまけにカラスの食べ残しだ。
「もういい。好きなだけ喰ってくれ。ゴミはおれが片付ける」
思わず、カラスに向かって叫んだのが分かったのか、カラスはしっかり食べ散らかして舞い上がった。
空腹と悲しみで倒れそうになりながら岸にたどりつくと、茂みから一人の老人が現れた。白いあごひげでコシミノを巻き、背中のかごからは山菜らしきものがのぞいている。
「あなたもやられましたか。ダミネ太郎に」
老人は静かに口を開いた。
「ダミネたろう?」
「はい。あいつは、このあたりでは有名な悪いカラスなんです。いつも電線の上からねらっていて、釣り人の弁当のうまいところから盗むんです。もし、よかったら、いっしょにヤツを退治しようじゃありませんか」
かくして、私たちは被害者の会を設立した。
その名は「愛知県ダミネ太郎に弁当を取られた釣り人の会」(次からはダミツリ会という)
次の週末、私は一人で田峯観音の歌舞伎稽古場に向かった。ここがダミツリ会の第1回会合の場だった。そこへ行ってみて驚いた。10人ほどの人が集まっていた。さすがにつりのメッカで名古屋の人も何人かいたし、女の人もいた。さっそく作戦会議が始まった。
名古屋のドラッグストア社長という中年の紳士が立ち上がった。
「あのう。みなさん。ゴキブリほいほいって知ってますか? あのでかいのを作ってきました。これで捕獲しましょう」
紳士は持っていた大きなかばんから、座布団ほどもあるネバネバつきダンボールを出した。
「この真ん中に、やつの大好きな肉やたまごをおいて。やつがはりついたらつかまえましょう」
みんな感心して、河原へ出た。ゴキブリほいほいをおき、ダミツリ会のメンバーは草原に身を隠した。10分も待たずして、ダミネ太郎は舞い降りてクチバシから胸のへんまではりついた。それっとばかりにメンバーたちは草むらから飛び出した。やはり人間は万物の霊長だ。えらいのだ。誰のあたまにもこの思いが浮かんだことだろう。が、しかし…!ダミネ太郎は大きなゴキブリほいほいをつけたまま、ゆっくりと舞い上がった。大きな座布団が左右に揺れながらだんだん小さくなっていく。
「そら飛ぶじゅうたんみたい」
女の人が言った。後で聞いたら小学校の先生だという。しばらくして、ダミネ太郎からはずれた巨大ゴキブリほいほいが、糸の切れたタコみたいに田峯の山に飛んで行くのが見えた。
次の集、今度は農家のおじいさんが大きな篭をもって前に出た。
「わしら子どもの頃にねえ、すずめを捕まえるに、篭につっかい棒をして棒にひもをつけたで、それの大きいのを作っただけど」
直径1mもあるような野菜出荷用の篭に、つっかい棒は、子どもの野球バット。そこへひもをつけて河原へおく。篭の下には肉をおいて、ダミツリ会のメンバーはまた草むらに隠れた。やはり、10分もしないうちにダミネ太郎はやってきた。でも、今回は篭の前で首をかしげている。と思ったら、バットについたひもをゆっくりと目で追っていく。その先には…。われわれダミツリ会のメンバーの潜んでいる草むらがある。
われわれの視線とダミネ太郎の視線がぶつかる。
ダミネ太郎は大きな口を開けて「カア~」と一声鳴いた。誰の耳にも「あほ~」と聞こえた。
3度目の正直を運んでくれたのはお寺の住職さんだった。次の週の会合の席だった。
「うちの寺にハトがおるんですが、近所の子どもたちがいたずらでとるんです。どうやると思います? 砂で小さな山をつくりましてな、輪ゴムをうめておくんですがここに釣り糸がつけてありましてな。その上に米をまくとハトが来て、知らずに輪ゴムに足を入れるんです。そこを引っ張ると足にしっかりゴムがかかります。それを糸を引っ張ってとるんです」
住職さんは身振りを入れて説明したけど、ダミツリ会のメンバーは半信半疑といった顔をしていた。カラスの足は大きいので、荷造り用の大きな輪ゴムにワイヤーを結んだ。
意外や意外、これでダミネ太郎捕獲に成功した。
使い古しの犬小屋に網を張った「カラス小屋」の前でダミツリ会のメンバーは祝杯をあげた。
「さあ、ダミネ太郎をどうしよう。焼き鳥にするか」
最初にゴキブリほいほいを持ってきた。ドラッグストアの社長が言った。
「いやあ、あのう、憎いのは分かりますが、殺生はいかんでしょう」
寺の住職が言った。
「でも、このまま逃がしたら、また悪さしますよ」
農家のおじいさんが言った。みんな黙ってしまった。
「あのう。いいですか?」
小学校の先生という女の人が遠慮がちに手を上げた。
「私、学校で、子どもたちに、いつも言い聞かせて来ました。どんな悪い子でも、何度もなんどもちゃんと話せばわかってくれました。だから、ダミネ太郎にもちゃんと話せばわかってもらえると思うんです」
女の人の真剣な顔に、誰もが目が点になった。いったいどうやってカラスに説教をするのだろう。
「分かった。なんとかしよう」
そういったのは、ドラッグストアの社長だった。
「今の先生の言葉で目が覚めた。力で解決するのは20世紀の方法だ。21世紀は悪にも愛で向かわねば、解決の糸口は見えてこんぞ」
社長の目はうるんでいた。
「だけど、どうやって」
私は思わず口をはさんだ。
「わしの家に、九官鳥がいるんだ。九官鳥も黒いし、ちょっとカラスににているじゃないか。九官鳥に通訳させればいい」
社長は言うが早いか、車を飛ばして九官鳥を取りに行った。名古屋まで往復2時間愛のスピード違反というところだ。
社長の持ってきた九官鳥をダミネ太郎の「鳥小屋」の前におき通訳させる。
世間話から入って少しづつカラスの心の奥にせまっていく。
そして、ダミネ太郎が「落ちた」。
うなだれて、両の目にうっすらと涙を浮かべた語りだした。
「こう見えても、昔はこのへんじゃあ名の知れた。いいカラスでした。7つの子も生まれて、恐いものといえば、幸せすぎる人生(鳥生)ぐらいでした。ところが3年前、妻が急に病気になりまして。医者に見せようにも、獣医は遠い。小さな子どもたちぁ「カカア。カカア」と鳴くばかり。右も左も真っ暗闇じゃあござんせんか。
せめてうまい物でもくわせて精をつけてやりたいと思っても、大して蓄えがあるわけじゃなし。あたしゃあねえ、自分のかいしょがないのを、どんな悔やんだことか。そんな時ですよ。釣り人の皆さん方、おいしそうな物を河原に置いておおきなさる。いいにおいがしてくりゃあ、あれを食わしてやったらカカアはどんなに喜ぶだろう。そう思ったらもう、自分はどうなってもいい。気がついたら皆さんの大事なお弁当に手をつけておりました。
でも、悪いことはできません。田峯の観音様が『もう悪いことはするな』とこうしてお縄になる運命を下さったんでしょう。さあ、どうぞ、煮るなと焼くなよ好きにしておくんなさい~」
最後は芝居がかって、ダミツリ会の涙を誘った。
「ダミネ太郎。お前も一生懸命なんだな。誰がおまえを殺せようか。だけどなあ、考えてみろ。そんな盗んだトンカツやたまごを食わしたって、おかみさんや、かわいい子どもたちは喜ばねえだろう。なあ、おまえの細い腕じゃねえや、羽根で稼いだ金で魚肉ソーセージの1本でも買ってやりな。そのほうがどれだけうまいか分からねえぞ。貧乏のつらさは俺も良く知ってるんだ」
私が言うと、ダミネ太郎はじっと私たちを見て深く頭を下げた。
「許してもらえるんですか。こんなわたしを。もしお情けをいただけるなら、田峯の観音様に誓います。山へ帰っていいカラスになります」
私たちは、カラス小屋を開けてダミネ太郎を出した。きょろきょろしながら出てくるダミネ太郎。そこへ、ドラッグストアの社長が声をかけた。
「ちょいと待ちねえ。今の気持ちをこっちも忘れたくねえよ。これ持ってきな」
そういって500円玉を出すと、ダミツリ会のメンバーも1枚ずつ500円玉を出した。誰かがレジ袋の500円玉10数枚を入れてダミネ太郎の首ににかけてやる。ダミネ太郎は何度も振りかえりながら空へ上がって行った。
小学校の先生が「コンドルは飛んでいく」をハミングするとみんなで合唱した。
……と。感動はたった1週間でさめるもの。次の週に集まったダミツリ会のメンバーはダミネ太郎率いる「悪いカラス軍団」にしっかり弁当を取られるのであった。やはり、大自然は恐い…。
FIN
さる友人に渓流づりに誘われた。2月の半ば、午前4時雪のちらつく中豊川を出発。途中コンビ二へより弁当を買うことになった。
「おい。しらみや。渓流づりはむつかしいぞ。まちがっても魚の顔を拝めるなんて甘い事考えるなよ。楽しみはいい景色と昼飯だ。しっかり選んでうまい弁当買えよ」
友人は笑いながら私の肩をたたいた。くやしいけど言われるまでもなく、そのつもりだ。私は手に取ろうとしていたシャケ弁当をおいて、750円もするデカとんかつ弁当を買って「楽しみは弁当だ。」と自分に言い聞かせた。
車は山道を走りトンネルをぬけて寒狭川の上流、田峯の水神が淵についた。
河原に弁当をおいて友人に教えられるまま胴長靴をはいた。腰まで水につかりさおを振った。なにかの視線を感じながら…。
川に入って2時間。水の流れる音にまじって、がさがさと乾いた音がする。何気なくふりかえると川岸の私の弁当(750円)前に大きなカラスがいた。じっと私の方を見ている。私は腰まで水につかっているしなれない釣竿4,5mを持っていてすぐには岸までもどれない。
カラスと目が合う。カラスが一声「か~」と鳴いた。「おまえ、これないだろ」といっているようだった。
私のあきらめが視線に現れたのをヤツは見逃さなかった。袋に首をつっこむとゆっくりトンカツからくわえだした。頭がくらくらした。怒りと言うより悲しみだった。
とんかつが食われてしまえば、ご飯と漬物とサラダだ、おまけにカラスの食べ残しだ。
「もういい。好きなだけ喰ってくれ。ゴミはおれが片付ける」
思わず、カラスに向かって叫んだのが分かったのか、カラスはしっかり食べ散らかして舞い上がった。
空腹と悲しみで倒れそうになりながら岸にたどりつくと、茂みから一人の老人が現れた。白いあごひげでコシミノを巻き、背中のかごからは山菜らしきものがのぞいている。
「あなたもやられましたか。ダミネ太郎に」
老人は静かに口を開いた。
「ダミネたろう?」
「はい。あいつは、このあたりでは有名な悪いカラスなんです。いつも電線の上からねらっていて、釣り人の弁当のうまいところから盗むんです。もし、よかったら、いっしょにヤツを退治しようじゃありませんか」
かくして、私たちは被害者の会を設立した。
その名は「愛知県ダミネ太郎に弁当を取られた釣り人の会」(次からはダミツリ会という)
次の週末、私は一人で田峯観音の歌舞伎稽古場に向かった。ここがダミツリ会の第1回会合の場だった。そこへ行ってみて驚いた。10人ほどの人が集まっていた。さすがにつりのメッカで名古屋の人も何人かいたし、女の人もいた。さっそく作戦会議が始まった。
名古屋のドラッグストア社長という中年の紳士が立ち上がった。
「あのう。みなさん。ゴキブリほいほいって知ってますか? あのでかいのを作ってきました。これで捕獲しましょう」
紳士は持っていた大きなかばんから、座布団ほどもあるネバネバつきダンボールを出した。
「この真ん中に、やつの大好きな肉やたまごをおいて。やつがはりついたらつかまえましょう」
みんな感心して、河原へ出た。ゴキブリほいほいをおき、ダミツリ会のメンバーは草原に身を隠した。10分も待たずして、ダミネ太郎は舞い降りてクチバシから胸のへんまではりついた。それっとばかりにメンバーたちは草むらから飛び出した。やはり人間は万物の霊長だ。えらいのだ。誰のあたまにもこの思いが浮かんだことだろう。が、しかし…!ダミネ太郎は大きなゴキブリほいほいをつけたまま、ゆっくりと舞い上がった。大きな座布団が左右に揺れながらだんだん小さくなっていく。
「そら飛ぶじゅうたんみたい」
女の人が言った。後で聞いたら小学校の先生だという。しばらくして、ダミネ太郎からはずれた巨大ゴキブリほいほいが、糸の切れたタコみたいに田峯の山に飛んで行くのが見えた。
次の集、今度は農家のおじいさんが大きな篭をもって前に出た。
「わしら子どもの頃にねえ、すずめを捕まえるに、篭につっかい棒をして棒にひもをつけたで、それの大きいのを作っただけど」
直径1mもあるような野菜出荷用の篭に、つっかい棒は、子どもの野球バット。そこへひもをつけて河原へおく。篭の下には肉をおいて、ダミツリ会のメンバーはまた草むらに隠れた。やはり、10分もしないうちにダミネ太郎はやってきた。でも、今回は篭の前で首をかしげている。と思ったら、バットについたひもをゆっくりと目で追っていく。その先には…。われわれダミツリ会のメンバーの潜んでいる草むらがある。
われわれの視線とダミネ太郎の視線がぶつかる。
ダミネ太郎は大きな口を開けて「カア~」と一声鳴いた。誰の耳にも「あほ~」と聞こえた。
3度目の正直を運んでくれたのはお寺の住職さんだった。次の週の会合の席だった。
「うちの寺にハトがおるんですが、近所の子どもたちがいたずらでとるんです。どうやると思います? 砂で小さな山をつくりましてな、輪ゴムをうめておくんですがここに釣り糸がつけてありましてな。その上に米をまくとハトが来て、知らずに輪ゴムに足を入れるんです。そこを引っ張ると足にしっかりゴムがかかります。それを糸を引っ張ってとるんです」
住職さんは身振りを入れて説明したけど、ダミツリ会のメンバーは半信半疑といった顔をしていた。カラスの足は大きいので、荷造り用の大きな輪ゴムにワイヤーを結んだ。
意外や意外、これでダミネ太郎捕獲に成功した。
使い古しの犬小屋に網を張った「カラス小屋」の前でダミツリ会のメンバーは祝杯をあげた。
「さあ、ダミネ太郎をどうしよう。焼き鳥にするか」
最初にゴキブリほいほいを持ってきた。ドラッグストアの社長が言った。
「いやあ、あのう、憎いのは分かりますが、殺生はいかんでしょう」
寺の住職が言った。
「でも、このまま逃がしたら、また悪さしますよ」
農家のおじいさんが言った。みんな黙ってしまった。
「あのう。いいですか?」
小学校の先生という女の人が遠慮がちに手を上げた。
「私、学校で、子どもたちに、いつも言い聞かせて来ました。どんな悪い子でも、何度もなんどもちゃんと話せばわかってくれました。だから、ダミネ太郎にもちゃんと話せばわかってもらえると思うんです」
女の人の真剣な顔に、誰もが目が点になった。いったいどうやってカラスに説教をするのだろう。
「分かった。なんとかしよう」
そういったのは、ドラッグストアの社長だった。
「今の先生の言葉で目が覚めた。力で解決するのは20世紀の方法だ。21世紀は悪にも愛で向かわねば、解決の糸口は見えてこんぞ」
社長の目はうるんでいた。
「だけど、どうやって」
私は思わず口をはさんだ。
「わしの家に、九官鳥がいるんだ。九官鳥も黒いし、ちょっとカラスににているじゃないか。九官鳥に通訳させればいい」
社長は言うが早いか、車を飛ばして九官鳥を取りに行った。名古屋まで往復2時間愛のスピード違反というところだ。
社長の持ってきた九官鳥をダミネ太郎の「鳥小屋」の前におき通訳させる。
世間話から入って少しづつカラスの心の奥にせまっていく。
そして、ダミネ太郎が「落ちた」。
うなだれて、両の目にうっすらと涙を浮かべた語りだした。
「こう見えても、昔はこのへんじゃあ名の知れた。いいカラスでした。7つの子も生まれて、恐いものといえば、幸せすぎる人生(鳥生)ぐらいでした。ところが3年前、妻が急に病気になりまして。医者に見せようにも、獣医は遠い。小さな子どもたちぁ「カカア。カカア」と鳴くばかり。右も左も真っ暗闇じゃあござんせんか。
せめてうまい物でもくわせて精をつけてやりたいと思っても、大して蓄えがあるわけじゃなし。あたしゃあねえ、自分のかいしょがないのを、どんな悔やんだことか。そんな時ですよ。釣り人の皆さん方、おいしそうな物を河原に置いておおきなさる。いいにおいがしてくりゃあ、あれを食わしてやったらカカアはどんなに喜ぶだろう。そう思ったらもう、自分はどうなってもいい。気がついたら皆さんの大事なお弁当に手をつけておりました。
でも、悪いことはできません。田峯の観音様が『もう悪いことはするな』とこうしてお縄になる運命を下さったんでしょう。さあ、どうぞ、煮るなと焼くなよ好きにしておくんなさい~」
最後は芝居がかって、ダミツリ会の涙を誘った。
「ダミネ太郎。お前も一生懸命なんだな。誰がおまえを殺せようか。だけどなあ、考えてみろ。そんな盗んだトンカツやたまごを食わしたって、おかみさんや、かわいい子どもたちは喜ばねえだろう。なあ、おまえの細い腕じゃねえや、羽根で稼いだ金で魚肉ソーセージの1本でも買ってやりな。そのほうがどれだけうまいか分からねえぞ。貧乏のつらさは俺も良く知ってるんだ」
私が言うと、ダミネ太郎はじっと私たちを見て深く頭を下げた。
「許してもらえるんですか。こんなわたしを。もしお情けをいただけるなら、田峯の観音様に誓います。山へ帰っていいカラスになります」
私たちは、カラス小屋を開けてダミネ太郎を出した。きょろきょろしながら出てくるダミネ太郎。そこへ、ドラッグストアの社長が声をかけた。
「ちょいと待ちねえ。今の気持ちをこっちも忘れたくねえよ。これ持ってきな」
そういって500円玉を出すと、ダミツリ会のメンバーも1枚ずつ500円玉を出した。誰かがレジ袋の500円玉10数枚を入れてダミネ太郎の首ににかけてやる。ダミネ太郎は何度も振りかえりながら空へ上がって行った。
小学校の先生が「コンドルは飛んでいく」をハミングするとみんなで合唱した。
……と。感動はたった1週間でさめるもの。次の週に集まったダミツリ会のメンバーはダミネ太郎率いる「悪いカラス軍団」にしっかり弁当を取られるのであった。やはり、大自然は恐い…。
FIN
Posted by ひらひらヒーラーズ at
23:32
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2011年02月07日
人間ドックへ行ってきた
午前中人間ドックへ行って来ました。午後から職場に戻ります。
毎年思うけど、胃のレントゲンがいやです。ベッドに寝かされたまま上下逆に右向けでされて、左向けと言われだんだん右も左も、分からんようになってきます。仰向けもうつぶせも分からんようになってくるし。バリウム飲まされ胃が気持ち悪いのまがまたいやになります。あっ、バリウム流しの下剤が効いてきたのでこれで失礼します…。
毎年思うけど、胃のレントゲンがいやです。ベッドに寝かされたまま上下逆に右向けでされて、左向けと言われだんだん右も左も、分からんようになってきます。仰向けもうつぶせも分からんようになってくるし。バリウム飲まされ胃が気持ち悪いのまがまたいやになります。あっ、バリウム流しの下剤が効いてきたのでこれで失礼します…。
Posted by ひらひらヒーラーズ at
11:32
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2011年02月06日
アリジゴク写真アップします
これが巣です。直径3cmくらいのすり鉢状です。
Posted by ひらひらヒーラーズ at
15:50
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2011年02月06日
豊川300円フィッシング!
今日は、朝から妻が名古屋でタロットの勉強会。我が家の男組(小3の息子と私)は仲良く?豊川へつりにいくことになった。寒いこの時期、二ゴイが三上橋上流に集まってくる。エサは現地調達。長靴はいて川に入りクロカワ虫をとります。
午前中でみごと56cm、50cmと2匹ゲット。大人は入漁料300円が必要だけど、小中学生は無料なので私の分だけ、300円でしっかり遊びました。面白かった。
午前中でみごと56cm、50cmと2匹ゲット。大人は入漁料300円が必要だけど、小中学生は無料なので私の分だけ、300円でしっかり遊びました。面白かった。
Posted by ひらひらヒーラーズ at
13:20
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