2011年12月31日

居直り天女8

 地上絵の全体が見渡せる高さまで上がると、勇一がアリのように見えた。線にそって走っているのがおもしろい。時々、ぼくたちを見あげて手をふった。ぼくも振りかえす。
「ねえ、さっきさあ、聞くともなしに耳に入ったんだけど、裕子っていう女の子ってどうなの」
 天女がふりかえって聞いた。ぼくはなぜか顔が熱くなった。
「どうって、前から友だちですけど、勇一が転校しちゃってから、なんか話しにくくなって。あっこの話、さっきしましたね」
 ぼくの言葉に天女はちょっと首をかしげた。
「あのさあ、なんかねえ、じれったいのよね。そういうの。自分で言っててさあ、おかしいなと思わない」
 天女は最初に会ったときのように、髪をかきあげた。もうすぐ切れそうだ。ぼくはちょっと身構えた。
「あのう。じれったいですか?」
 ぼくがやっと答えると、天女は顔をぼくに向けた。目がつりがっている。やばい!
「じれったいですかって? あのねえ、考えてみて。たとえば、その裕子って子が女の子じゃなくて3人とも男だったらどう? 一人が転校してしまって二人残ったって気まずくないでしょ。ねえ、そうやって気まずくなるってことは、つまりあれよ。恋なのよ」
 天女はかってにうっとりしている。ぼくは安心するはずなのに、なぜか心臓がバクバクし始めた。「恋」心の中で繰り返した。天女はそれを見逃さずにたたみかける。
「そうと決まったら、勇一君を呼んで豊川に帰りましょ」
「豊川に帰ってどうするんですか」
 ぼくの言ったことにまた、天女がいらついた顔になった。
「決まってるでしょ。あなたと勇一くんで、告白するのよ。裕子さんに! びっくりするわよ。裕子さん、とつぜん、二人から告白されてただの友達じゃなかったことに気づくの。いいわあ。早く見たい。勇一くん呼んで」
 天女は一人でかってに盛り上がると、身悶えながら勇一のいる場所へ降りていった。  


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2011年12月30日

居直り天女7

 海を見下ろして飛びながら勇一が何か言った。風が強くて聞こえない。
「勇一。なにか言った?」
 ぼくはちょっと大きな声になった。
「和夫。学校楽しいか?」
 勇一が大きな声を出したので、天女がちょっとふり向いた。
「楽しくないよ。勇一が転校してから、友だちといてもつまんない」
 ぼくは答えながら裕子のことを思いだした。勇一が転校する前、ぼくと勇一と裕子は3人で遊んでいた。授業の発表なんかもよくグループになったし、休みの日も3人で豊橋に遊びにいったりした。
 勇一がいなくなって、裕子といるのもなんか気まずくなった。そうしたら、他の友だちといるのもつまらなくなってきた。
「裕子と遊びにいったりしないのか?」
 ちょっと間をおいて、勇一が聞いた。また、天女の首がちょっと動いた気がした。
「女子と二人で遊ぶのもなんか、ちょっといやだし」
 ぼくが答えたところで大陸が下に見えてきた。だんだん飛んでいる高さが下がっていく。ジャングルを越えて、高地の砂漠に出た。
「ほら、あれ」
 天女が指さした先に、鳥の絵が見えた。今にも舞い上がって行きそうだ。
「すごい。あれを昔の人が書いたんだ」
 勇一が驚きの声を上げた。ぼくは声も出なかった。しばらく上空を飛んで、いくつかの絵を見た。
「ねえ、書いた人の気分を味わってみない?」
 天女が言って高度を下げた。2mくらい上から線をなぞるように飛んでいく。なんだか目が回るだけで、絵を書いている感じはしない。
「ねえ、感じつかめない」
 ぼくが言ったら、天女はうなずいて勇一を地面に下ろした。線の上を歩くように行って舞い上がった。  


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2011年12月28日

居直り天女6

 ぼくが前、勇一が後ろで背中に乗った。
「あなたたち、なかなかやるじゃない」
 海を見下ろしながら天女が言った。ぬけていく風が気持ち良い。
「あんなこと、出来るって思わなかった」
 勇一が言った。
「ちょっと、恐かったけど、でも天女がやってくれたんだし、勇一もともと運動神経いいじゃないか」
 ぼくが言うと、勇一が首を振っているのが分かった。
「おれ、人の前であんなピエロみたいなことできないと思ってた」
 勇一はぽつりと言った。風がまた気持ちよくふいて行った。
「ねえ、今度、どこ行きたい?」
 天女が聞いてくる。
「あのう。ナスカの地上絵がみたい」
 勇一が小さな声で言った。
「ナスカの地上絵か。よし行きましょう」
 天女が答えて、ぼくたちペルーへ向かった。  


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2011年12月27日

今だから言える 逆バンジー顛末記

 きちんと報告しておきます。逆バンジーの顛末。

 12月24日朝、6時半起床。日課になっている朝の祝詞奏上、般若心経、神棚の榊水換え後、体重計に乗る。

 66.0kg。(パンツ1枚)服を着て68kg。
      ↓
 この時点で非常事態宣言。7時、妻と息子が起きてくる。体重を発表。

 「なんちゃん。1kgならなんとかなるて。まず、トイレに行ってお腹を空にする。で朝食はぬき」
 と妻。

 「お父さん。浣腸しようか」
 と息子。

 トイレでお腹を空にして、65.5kg。なんとかあと500g。これがきつい。

 「なんちゃん。私と康平は車で行くけど、なんちゃん、マラソンで志都呂まで行ったら?」
 と妻。豊川から行くと、高速のインター3つ分。

 「そうだ。夜店とか売ってる風船ってふわふわ浮いているでしょう。あの風船呑み込んだら?」
 と息子。

 「風船なんかどうやって呑むんだよ」
 と私。

 「あのねえ、しぼんだままで風船呑んでおいて、あとから膨らませばいいよ。なんちゃん胃カメラ呑んだからホースを喉からだしても平気だよ。すごいこの発想。コペルニクスみたい」
 と妻。

 かくして、3人は志都呂へ向かった。朝食抜き、水分なし、ほとんど人間ドック。イベント会場についた。うれしいことにスタッフは全員男性だった。(計量があればパンツになる覚悟だから)

 「大人でも、いいんですよね」
 すがるような声の私。

 「はい。65kg以下ですよね」
 とスタッフ。

 「はい。」と答えてから、口の中で小さな声で(20年前は)とつぶやいてしまう小心者の私。

 「でしたら、大丈夫です」
 明るい笑顔のスタッフ。体重計も見当たらなかった。ホッ!

 めでたく逆バンジーへ!
 だけど、この1週間はなんだったんだろう。
   


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2011年12月27日

居直り天女5

 天女はぼくたちを乗せて海の上を飛んだ。いくつか島を越えてハワイの砂浜に降り立った。ビーチパラソルがならんで、大人や子どもが泳いだり砂浜を走ったりしている。乾いた風がふいてサーファーが沖合の波からせまってくる。天女の羽衣や派手な着物のすそが風になびいた。外国人達が集まってくる。
「皆様、はじまして。私たちは、日の本のやまとの国からやってまいりました。マホロバサーカス団です」
 天女は笑顔を浮かべて頭をさげると、ふわりと舞い上がった。波打ち際を飛び回ってぼくたちのところにもどった。ぼくたちは天女に押さえられて頭を下げた。集まった人たちから拍手が起こった。ちょっといい気分だ。
「次はこの少年が宙返りをご覧にいれます」
 天女が右手を伸ばしてぼくを紹介した。
「ええ? 宙返りなんかできないよ」
 ぼくは小声でささやいた。天女は小さくうなずいてウィンクした。そして、ぼくの答えも聞かずに両足をはらった。後ろにたおれそうになって、思わず上半身を前に倒すとその背中を両手でポーンと押した。ぼくの体は宙に浮いて回ったらしい。熱い空気が通りぬけて空と海がくるくる回った。遊園地の回転コースターなんか問題じゃないほど目が回ってから地上に降りた。
 すごい拍手がぼくを待っていた。
「和夫。すごいじゃないか」
 勇一が握手を求めてきた。
「さあ、続いては、空中ダンスです」
 天女が言って、勇一に両手両足を広げて立たせた。漢字の「大」の字のまま脇の下に両手を入れて舞い上がった。五mほど上がったところで、空に放り上げた。空に上がったところで天女が合図すると、それにあわせて勇一はフィギアスケートのキャメルの形をした。人々から拍手が起こる。そのあとは体を伸ばして回転しながら落ちてくる。頭から落ちる寸前に天女が舞い寄って抱き留めた。そのまま体勢をなおして空に上がっていく。
 いつの間にか数え切れないほどの人が集まっていた。天女は見物人の帽子を借りて人々の間を飛んでまわった。みんなコインを入れてくれた。集まったコインを砂浜において帽子を返すと天女は頭を下げた。今度はぼくと勇一も自分から下げた。
「これで、お昼食べられるね」
 天女が言って、海辺のレストランに入った。ぼくはハンバーガーセットを、勇一はチキンバスケットを、天女はステーキセットを食べた」
 お腹がふくれたところでぼくたちは空へ舞い上がった。  


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2011年12月26日

居直り天女4

「だけどさあ、なんで和夫がいるの? 旅行?」
 勇一はあたりを見回した。ぼくの家族がいると思ったのだろうか。
「旅行っていうか、宇宙旅行っていうか、散歩かな」
 ぼくはしどろもどろになりながら後ろを振り返った。天女が時々顔を出して指で合図している。ぼくはなにを言われているのか分からずに電柱の方を見た。
「なあ、和夫。あそこにいる女の人誰? さっきから顔を出したり引っ込めたり忙しそうだけど」
 勇一が天女に気づいたらしい。笑いを浮かべて電柱を指差した。
「あっ。あの人はねえ」
 ぼくがどう答えていいか困っていると、電柱から天女が現れた。
「しょうがないわ。ばれちゃったか。自己紹介するわ。私ねえ。天女。空を住みかとする、自分で言うのもなんだけど、まあ、きれいな女。分かった?」
 天女は勇一の前に来て、頭をさげてから首をかしげた。勇一が一歩後ろに引いた。ぼくが最初に会ったときと同じ反応だった。でもそのあとはちょっと違った。
「ええっ? 本当に天女さんですか? すごい。ほんときれいですね」
 勇一のことばに、天女のほおがゆるんだ。
「あなた。なかなか良い子ねえ。気に入った。けっこう良い男だし。じゃあねえ、お近づきのしるしになにか食べにいこう」
 天女の勇一を見る目が変わった。
「でも、お金ないよ」
 ぼくが言った。天女がぼくと勇一を見てうなずいた。それから自分の胸をたたいた。
「ごちそうしてくれるってこと?」
 勇一が聞いて、天女が首をふった。ぼくたちが顔をのぞきこむ。
「かせぐのよ。私たち三人で」
 天女がきっぱり言った。そして、ぼくの部屋でしたみたいに両手を広げた。天女にせかされて二人背中に乗ると舞い上がって雲の上に出た。
「ねえ、今度はどこへいくの?」
 ぼくが聞いた。勇一は下に広がる景色から目が離せないらしい。
「ハワイへいきましょう。そこで私がショーをするから二人はクラウンになって」
 天女はハワイへとぼくたちを乗せた飛んだ。  


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2011年12月25日

居直り天女3

 頭の上を銀色の固まりが通っていった。
「今の見た? 宇宙ステーションよ」
 天女は首を後ろにまわした。思わずしがみついたら、手がおっぱいにあたってしまった。びっくりして手をひっこめたら、バランスをくずした。
「しっかりつかまっていてね」
 天女はぼくの気持ちに気づいたのかどうか、明るい声でいった。
 下に見える陸地が北に大きくくねって海が広がった。もう青森を越えて津軽海峡らしい。
「もうする北海道だけど、友だちの家はどのへん?」
 天女が聞いた。
「小樽っていうとこらしい港町らしい」
 ぼくが答えると、天女は右に大きく旋回して陸地に近づいていった。ぼくが細かい地名を言うと、両手を前に出してなにかやっている。小型のゲーム機みたいなものを見ている。
「それ、もしかして、ポータブルのカーナビ?」
 ぼくはおそるおそる聞いてみた。まさかとは思ったけど・・・。
「そうよ。このまえ、テレビショッピングで買ったの」
 天女が答えたところで町に降りた。レンガづくりの倉庫がならんで潮のにおいがした。天女はぼくを下ろすと物陰に隠れた。
「さっきの住所だとねえ、そこの角曲がってすぐの家みたい」
 天女は顔だけのぞかせて指差した。手にはカーナビが握られている。
 ぼくはうなずいてから角を曲がり新しい家の前にたった。表札に勇一の名前がある。思い切ってインターホンを押した。そしたらドアが開いて勇一が出てきた。
 一瞬、時間が止まった。すべてがストップした気がした。
「和夫だよなあ。幻じゃないよなあ」
 勇一は叫びながら飛び出してきて、ぼくの手をとった。
   


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2011年12月25日

天は自ら助けるものを助く!

 やりました。努力は人を裏切らない!!

 やってきました。逆バンジー。65kgの壁は越えました。
 イオン志都呂店イベント会場です。

 ちなみは大人は私だけ!  
タグ :バンジー


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2011年12月24日

居直り天女2

「でっ。どうする? なにしてほしい?」
 天女はぼくの顔をのぞきこんだ。からかうような笑いをうかべている。
「あのう。無理ならいいんだけど、北海道へ行きたい」
 そう答えたぼくは、勇一を思い出していた。
「北海道?」 
 天女は目を見開いて、一度まばたきした。
「遠いよね。ダメならいいんだ」
 ぼくは両手を広げた。天女は首をかしげて笑っている。
「遠いって? 北海道って、アンドロメダ星雲とかにあるの?」
 天女は上を指差した。宇宙のことを言っているのかどうか、ぼくの頭の中で?マークが浮かんだ。
「いえ。あの、北海道は地球です。日本です。」
 ぼくはしどろもどろになった。
「なんだ。あの、北海道よね。カニがおいしい、北海道よね。お安い御用よ。ちょっと悪いけど窓開けてくれる? そしたら背中に乗って」
 ぼくは天女の言われるままに、背中に乗った。もちろん、勇一の新住所のメモは忘れてない。

 天女はぼくを背中に乗せて窓から空へ飛び立った。見る見る間に地面が小さくなり、見慣れた町がカラーの地図みたいに見え、やがて日本地図になった。  


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2011年12月23日

新しい物語はじめます!

 新しい物語を書きはじめます。これは30数年まえホントに?あった話です。

 私は子どもの頃から、豊川が大好きです。特に放水路の始まるあたりの川がくねっているところが好きです。大人になっていろんな所に旅行しましたが、あんなすばらしい眺めはちょっとありません。

 私が昭和の時代をすごしていたのは、そんな川沿いの小学校です。


「居直り天女」

 その夏、ぼくは最低の気分だった。小学校にプールが出来たのだけれどいっしょに遊びたい勇一は、北海道へ引っ越していった。名古屋とか静岡くらいなら夏休みに遊びに行くことも出来るけど・・・。夏休み前の体育の授業も楽しくなかった。
 更衣室はいっぱい、そのぐちゃぐちゃに入っていく気にもなれず、プールサイドから豊川をながめていた。
 休み時間の終わりを告げるチャイムに背中を押されて更衣室に入った。もちろん誰もいない。
「ああ。誰かがタオル間違えた~」
 思わず大声を上げてしまった。買ってもらったばかりの筋肉マンのタオルがなくなって、かわりに水色の薄い布がロッカーのすみに置いてあった。
「なんだこれ?」
 ぼくは一人ごとを言ってから、その薄い布で体を拭いて着替えると教室に走った。入り口の引き戸を開けて入ると、担任が仁王立ちで待っていた。
「なんきんくん。遅い。おまけに、タオル忘れてあったぞ」
 担任は筋肉マンのタオルを差し出した。受け取りながら心の中で思った。
「あれっ? 誰かが間違えたんじゃないんだ。じゃあ、さっきの水色の布は?」
 そんなことも、学校から帰るころには忘れていた。

 家に帰って、一人で漫画を読んでいたらいつの間にか眠ってしまったらしい。誰かに肩をゆられて目をさました。
「もし、そのお方。お願いがございます」
 目を開けると、頭に丸いリボンをつけたお姉さんが立っていた。赤と緑のふわふわした服を着ている。なんだか良いにおいがした。
「お願い?」
「そうです。私は天女です。豊川で水浴びをしようとしましたら、近くに見なれない四角の泉を見つけました。良い気持ちで水を浴びておりましたら、大勢お子様がこられましたので身をかくしましたが、もどってみますと羽衣がありません」
 お姉さんはきれいな声だった。どうも伝説に聞く天女らしい。
「ねえ。天女さん。その羽衣ってどんなもの?」
 ぼくが聞いた。
「水色の薄い布でございます。あれがないと天へ帰れません」
 天女はじっとぼくを見た。大きな目は赤く潤んでいた。ぼくはプールのバッグから水色の布を出した。
「これ?」
 天女はじっと布を見た。
「それです。なんでもお礼はしますから、どうかお返し下さい」
 天女は床に座って頭を下げた。またいいにおいがした。
「お礼なんかいらないよ。これ、お姉さんのなら返すよ」
 布を差し出すと、天女の目が点になった。その目がどんどんつりあがっていく。
「ぜんぜんだめ! わかってない。世の中も、女心も、歴史も! あんたみたいのがこの日本をダメにするのよ」
 天女の口は耳まで開いた。ぼくはたじろいだ。返すのが遅いと怒っているのだろうか。
「こういう時はねえ、意地悪な目をして、『この羽衣を返してほしければ俺の奥さんになれ。いひひ』っていうのよ。そこからお話がはじまるんじゃない」
 天女はすごい形相でせまってくる。ぼくはこわくなって一歩下がった。
「でも、ぼくまだ、小学生だし、お姉さんきれいだけど、ぼくが大人になったころには、おばさんになってるだろうし」
 ぼくは汗だくになって答えた。怒るかと思った天女の表情がやわらいだ。
「そうねえ、あなたの身になって考えれば、まあ、そういうのもあるわね。うん。でもね、私のことも考えて! 私ねえ、こう見えてもねえ血液型Aなの。だから『ものはしっかり片付ける。受けたうらみと恩はちゃんと返す』じゃないと気持ち悪いの。あっそうだ。あのね、奥さんになるかわりに願い事をかなえてあげる」
 天女の目がキラキラかがやいた。ぼくは恐くて首をたてに振るしかなかった。

つづく
 

   


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2011年12月22日

弱気の虫をぶっ飛ばせ!

 しらみやなんきん、49歳。体重65.6kg。あいかわらずダイエットに励んでおります。目標まであと600g!! 某出版社の公募、選外!! 両方ちょっとあきらめモード! 
 息子(小4 ♂)いわく。
「お父さん。0.6kgぐらいなんとかなるよ。ぼくたち、学校の身体測定でも服を脱げば、1kgくらい下がるから、どうにもダメだったら服を脱いで測ればいい」
「でもな。息子よ。お父さんは、さすがにショッピングモールのイベント会場でパンツ一枚になる勇気はない」
 ちょっと弱気になった私。息子は続けた。
「あのね。ホントに裸にならなくてもいいの。体重測る係りの人に『脱げば、65kgになるから逆バンジーやらせて。ウソだと思うなら脱ぐよ』って言えばいい。大事なのは気持ちだよ、どうしてもやりたいっていう気持ちを見せればなんとかなる」
 息子はことばに力を込めた。

 ここで私はちょっと元気になった。そうだ、気持ちだ。公募の選外がどうした。入選を勝ち取るまで応募するだけの話だ。
 負けるな!しらみや。 うん。がんばれる。息子よありがとう! お父さんは力をもらったぞ。

 ところでさあ、そのやる気、自分の勉強にも向けろよ。たまには・・・!  


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2011年12月18日

ウッドぺッカーを見た

 今日の午後、妻と二人で袋井の可睡斉へ行きました。法螺も立てました。家康がこもった洞穴も入りました。そいでもって奥の院から下ってくる時、頭上か不思議な音が響きました。風が木を揺らしているにしては妙にはっきりとした音がしています。ザワザワと葉が擦れ合う海鳴りに似た音のに混じって「カツカツカツ」という乾いた音が混じります。
 最初は、鳴子のようなものが梢に取り付けてあるかと思いました。妻と二人で頭の上の枝を探しましたそれらしい木切れは見当たりません。
「木の実かなあ」
 私がいいましたが、枝には実どころか葉っぱも数えるほどしか残っていません。
「空耳かなあ」
 妻が言いましたが、二人で聞いています。二人で首をかしげた時、妻が枝を指差しました。
「見て。ウッドぺッカー」
 妻が指した枝には、スズメくらいの白黒の鳥が止まっています。細長いクチバシで枝をつついているのが見えます。クチバシが枝に当たるたびに乾いた音がします。さっきから聞こえていて、あやうく「空耳」にされそうになった音です。
 そうです。私たち夫婦は「啄木鳥」を見たのです。私は夢中でデジカメで撮影しました。

 ちなみに、興奮しすぎて違う枝を撮ってしまったようです。啄木鳥は残念ながら映っていません。でも、ほんとに見たんです。ほんとに見たのか、私がホラをふいているか判断はお任せします。合掌  


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2011年12月18日

法螺貝体験会

 昨日は石巻山で月1回の法螺貝体験会でした。朝10時に石巻上社へ集合して神社前の清掃をして法螺をふきならし、そのあとはみんな(総勢20名)で、パワースポットめぐりをしながら山頂をめざしました。
 頂上では富士山もきれいに見えました。


 帰りに木にとまったままの蝉を見つけました。寒さに震える中で見る”夏”でした。  


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2011年12月17日

なりふりかまわずダイエット!!

 とつぜんですが、ダイエットします。どうしても来週までにあと2kg落とします。
 

 別にボクサーになるとか、医者の友だちに脅されたとか、そういう理由ではない。
 ある若い友人からすごい情報を仕入れたのだ。逆バンジージャンプというイベントで、体にゴムのベルトをつけてトランポリンでジャンプするという。その高さ8m。

 憧れだった。空を飛ぶこと。実現できる。それが浜松の志都呂で体験できるという。行きたい!! なんとしても!!

 予定を3つキャンセルした。へそくりをかき集めて、高速代と参加費(500円也×2=1000円+昼食代)を確保した。

 行ける! 飛べる! 幸せ!と思ってイオンのページで時間を確認した。*大人もOk!! 
 がしかし、☠ 12kg~65kgまでの方(お客様の安全のため!)

 あわてて体重計に乗る。67kg!!
 完全にムンクの「叫び」状態!! 大ピンチ!!

 その時、妻はタロットカードを広げながら、録画してあった「忠臣蔵」を見ていた。折しも47志が切腹する場面。ニヤリとする妻はつぶやいた。

 「なんちゃん。切腹すればいいよ。内臓とか引っ張り出せば、2kgぐらい落とせるよ」

 それを聞いた小4の息子はヨーヨーをやっていたのをやめて話に入ってきた。

「お母さん。知っとった? 切腹ってねえ、腹を切ったあと首を落とされるでねえ。きっと頭だけで2kgぐらいあるよ」

 今度は妻が
「ああ。そうか。じゃあ、心配ないわ。私も言ってから、ハラワタだけで2kgあるか心配だったんだわ。よかった。うちはやっぱり力をあわせる良い家族だわ」
 と笑ってカードを引いた。死神のカードだった。

 やせてやる。なにがあってもやせてやる。

 49歳 174cm 67kg。ちなみに、体脂肪率はけっこう低いです。(泣き笑い)  


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2011年12月16日

現代へと続く海の道(仮題)完結

 四人が島に上がって朝日が船を照らした。波のない海に浮かんだ船は小さく揺れている。四人の背中からやさしい風がふいた。小さな島にはこんもりした小山があって木で出来た鳥居がたっていた。
「香姫は、水晶玉を五つとも持ったまま海に入ったのか?」
 シロヒトが船を眺めながら一人ごとを言うと、村雄があわてて声をあげた。
「あっ。すまん。忘れていた。船が転覆しそうになったときに預かったんだ。香姫から」
 言いながら、村雄が五つの水晶玉と勾玉を懐から出した。勾玉はきれいに透き通って点のようなものは見当たらない。シロヒトから順に自分の水晶玉を取っていった。最後に村雄が自分の玉をとって懐へもどしたので、最後に香姫の玉と勾玉が残った。村雄がイサミに目で促した。
「うん。ぼくがもらう」
 イサミが手を伸ばして玉と勾玉を取った。四人は顔を見合ってから船に目をやった。
「さあ、帰ろうかな。千三百年まえに」
 村雄が言って、空を見あげると首を上に伸ばした。白い光が空からおりて白い鳥に姿を変えた。続いて荒瀬が、シロヒトが、そして最後にイサミが鳥になった。四羽はいっせいに舞い上がり東西南北に一羽ずつ飛び去った。誰もいない海では静かに船がゆれていたが、やがて揺れはとまって、島が消え、水が消えた。小学校の建物が現れ、校庭の木が現れた。
 校庭にすみに、船だけが唯一残った。
「おおい。こんなところで寝たら風邪ひくぞ」
 船の中から白宮の声がした。
「おい。香坂はいるか?」
 刑事の村尾の声がした。荒川と勇人が村尾を見た。白宮が呆れたように村尾を見る。
「香姫は海に入っただろ」
 白宮の声が消えないうちに、香坂の声が船の外から聞こえた。
「私なら、ここにいる。逃げも隠れもしないわ」
 四人は船を出た。香坂が両手を前に揃えて村尾の前に現れた。村尾は一瞬つらそうに顔をそむけたが、思い直したようにポケットから手錠を出した。香坂に近づいていく。香坂の前に立って一つ大きな息をした。そして言った。
「おれ。刑事やーめた」
 他の四人が呆れる中、手錠を空に投げた。手錠は空でねじれたまま村尾の前に落ちた。
「そんなら、おれは、建築士やーめた。船作ってたら、図面書いてるよりうんと面白かった。大工に弟子入りするんだ」
 荒川は子どもみたいな笑顔になった。続いて白宮が声を出す。
「ぼくは、教員免許とって先生になる。勇人の担任の先生にさあ、『あなた、子どもといっしょに死ねますか?』なんて偉そうなこと言っちゃったし、ほんとに出来るかどうかためしてみたい」
 白宮は言いながら勇人を見た。勇人は顔をくしゃくしゃにして笑った。少し間をおいて香坂が口を開いた。
「村尾さんが逮捕してくれなくても、私は警察に自首します。罪を償ったら、今度はちゃんとした占い師になります。人の運命を見通すだけじゃなくて、その中で最高の生き方が出来るようにアドバイスしたい」
 香坂の言葉に、勇人がうなずいた。それからみんなを見回して口をとがらせた。
「みんないいな。ずるいよ。ぼくだけ、まだ小学生のままじゃないか」
 これには、白宮、荒川、村尾と大笑いした。香坂だけは笑わずに勇人を抱きしめた。
「あなたは、あなたでいて。鯛島のイサミ」
 香坂が言ったところで、始業のチャイムが校庭に響いた。校門からは列になった子どもたちがやってくる。学校近くのみそ工場のにおいもする。今日もまた、いつもと変わらない学校の朝がやってきた。

  


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2011年12月15日

現代へと続く海の道(仮題)90 次で完結!

 麻績の王は海の上をすべるように移動し船に乗った。波は収まり辺りはすっかり明るくなった。ぼんやりとかすむ空気の向こうに小さな島が見えてきた。でも、イサミ以外の三人の目は麻績の王から離れない。イサミ一人は香姫が沈んで行った海をのぞきこんでいる。
「麻績の王さま」
 シロヒトが震える声で言った。
「あのときの、千三百年前のままのお姿でいらっしゃる」
 村雄は涙声だった。荒瀬は目をこすっていて何も言えないらしい。
「麻績の王さま。母さんを、香姫を助けて」
 イサミがすがるような目をした。麻績の王はじっとイサミを見てから口を開いた。
「香姫はなあ、ああすることで、千三百年の時を埋めているんだ。大津の皇子を天界に導けるのは香姫だけなんだよ」
 麻績の王はやさしく言った。それでもイサミは納得しない。
「大津の皇子なんか、天界へ昇らなくていいんだ。父さんをだまして死なせたやつじゃないか」
 イサミがいきりたって、村雄が止めた。麻績の王はゆったり笑っている。
「イサミ。おぼえているか。大津の皇子がおまえの父さんとそっくりだったことを。香姫まで間違えるほどそっくりだった。あれはなあ、偶然ではないのだ。魂の双子だったのだ。そして、おまえの父親は都で処刑されて先に天界へ行ったが、大津の皇子は強い恨みと執着で地を離れることが出来なかった。それゆえ、私が抑えて、いっしょに勾玉に入ったのだ」
 麻績の王はイサミの手を引いて船べりに行き海面を指差した。イサミは海を見た。
「この船を作った杉の木が、勾玉をつつんでいた木だったな」
 荒瀬がぽつりと言った。
「千三百年かあ。長いような短いような」
 村雄が苦笑いを浮かべた。
「だがな、それも幻。おまえたちは、千三百年すぎた今を生きよ。それぞれ自分らしくな」
 麻績の王は羽の生えたトラに姿をかえて空に舞い上がった。村雄が、荒瀬が、シロヒトが海に飛び込んで泳ぎだした。イサミもあわてて後をおって四人は島に泳ぎ着いた。
 朝日がさっきまで乗っていた船にあたった。  


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2011年12月14日

現代へと続く海の道(仮題)89

 シロヒトは激しく揺れる船の中央に倒れこんだ。時々飛び込んでくる波しぶきが傷口にあたるたびに、転げまわって痛がった。
「今度は俺の番だな」
 荒瀬が包みを持って立ち上がった。船尾の方へすすむと、甲板の板を一枚はずした。中から大きな筒が出てきた。人が一人入れそうだ。荒瀬は筒に火薬を詰め込んでから自分が入った。そし村雄の持つ篝火で木屑の固まりに火をつけると足の下に投げ込んだ。火薬の燃えるにおいがして、煙が出たと思うと筒の中から火が噴出して荒瀬を飛ばした。荒瀬は両手を広げて竜の背中まで飛んでいった。そのまま背中を這い登り角をけった。竜が狂ったように顔を動かして、振り落とそうとするが荒瀬はしっかり角の周りの毛にしがみついている。
 竜が首を後ろにそらせた時、トラが首に噛み付いた。竜の首から大量の血が噴出した。前に首を回そうとして、シロヒトたちの船の正面を向いたところで動かなくなった。
「今だ。弓を射れ」
 村雄がイサミに向かって叫んだ。イサミはゆっくりと弓を引いた。竜の目と目の間をねらって静かに矢を放った。スロービデオのようにゆっくりと矢が飛んでいく。竜は目をむいて飛んでくる矢をにらんでいる。そのまま吸い込まれるように、竜の眉間に命中した。一度驚いた顔をした竜は、静かに目を閉じた。まるで山が崩れるように海に向かって落ちてきた。ものすごいしぶきが立って、山のような波が船をおそった。
「ふう。こんな波は初めてだ」
 村雄は必死の形相で船首を波頭に向け転覆を免れた。波がおさまると、空は白くなりあたりが明るくなってきた。人間の姿になった大津の皇子が波間に浮かんでいた。眉間にはイサミの放った矢が刺さっている。
「千三百年前と同じだな」
 荒瀬がポツリと言った。村雄はだまったままで棒を伸ばした。大津の皇子の遺体を船に引き上げるつもりだろうか。ところが大津の皇子はゆっくりと沈みはじめた。
「私がいっしょに行きます」
黙って見ていた香り姫が、船べりから身を乗り出した。
「まだ、目がさめないのか。香姫。だまされていたんだぞ」
 荒瀬が大声をはりあげた。シロヒトや、村雄も冷たい視線を向けている。
「違います。千三百年もの間、麻績の王様が封じ込めていたことはすごいことです。でも、封じるだけじゃダメなんです。何かがあって封印が解ければ、また暴れだします。だから、抱きしめなきゃだめなんです。私がいっしょに海に沈んで、大津の皇子を抱きしめます」
 そういって、着物のまま海に飛び込むと大津の皇子を追って沈んでいく。
「待て、香姫」
 シロヒトが、イサミが、荒瀬が、村雄が海に飛び込もうとした。
「行かせてやりなさい」
 どこかから声がして、海の中にあごひげの男が立っていた。粗末な麻の布を体に巻いて荒縄で腰を縛っている。やせ細ってはいるが目はきれいに澄んでいた。
「麻績の王さま」
 四人は声そろえた。
 
   


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2011年12月13日

現代へと続く海の道(仮題)88

 竜は体をひねり、シロヒトを振り落とそうとする。前足でつかもうとする。シロヒトはそれをかわして首まで登った。前足のつけねに一枚大きなウロコがある。そのウロコだけ上を向いて突き出している。そこに両手をかけると懸垂するようにぶら下がった。竜は大きく目を開いて雄たけびをあげた。全身をはげしく揺らして、回転しながら空へ昇った。星のない夜空をところせましと飛び回った。
「ああ、シロヒト振り落とされた」
 見守っていた村雄たちの船から悲鳴が上がった。はるか上空の竜から小さな点が落ちてくる。だんだん大きくなって海に落ちた。
「シロヒト~。大丈夫か?」
 荒瀬が暗い海に向かって叫んだが、シロヒトが浮いてきそうな気配もない。波は荒さをましている。
「シロヒト~」
 イサミが船首から大声で叫んだ。竜は舞い降りてきて水面近くを飛び、もてあそぶように船を揺らした。
 香姫は五つの水晶玉と勾玉を見つめていた。水晶玉はなんどか光り、勾玉の中で小さな青い光が走った。
 香坂が勾玉に息を吹きかけると、青い光が勾玉を飛び出し海に消えた。

 一息ほどすぎただろうか。海面が急に静かになり船の揺れも収まったと思いきや水面が割れて、竜に負けないほど大きなトラが躍り出た。背中には大きな白い羽が生え、耳のところにシロヒトがしがみついている。
「おお。シロヒト。生きていたか」
 荒瀬が叫んだ。竜はトラの前に来て大きくほえた。トラはぐっとにらみをきかせてから、竜につかみかかった。竜はあやうくかわし空へ逃げる。トラは羽ばたいて追いつき、竜の尻尾をかんで首を振った。竜がトラの背中に噛み付いた。トラは竜の首をかんだ。シロヒトは竜の背中に刀を刺してから海に逃れた。
 竜とトラは海の上に出たりもぐったりしながら、もつれあった。
 シロヒトは船にもどった。体中傷を負っていて血が流れていた。村雄が舵から片手を離してシロヒトに親指をだした。
「やったな」
 とでも言いたかったのだろうか。  


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2011年12月10日

現代へと続く海の道(仮題)87

「そろそろ、おれの出番かな」
 船のまん中あたりにいた荒瀬が立ち上がり、ふところから団子を取り出した。にぎりこぶしくらいある。それを両手でなでてから体を後ろにひねって放り投げた。砲丸投げの感じだった。団子は暗い海の上を飛んで敵船の手前に落ちた。一瞬間をおいて水柱が上がり、敵船がひっくり返った。大声を上げて水主や兵士たちが海に落ちた。もちろん大津の皇子も海に消えた。大きな波が白宮たちの乗った船にとどいた。転覆した船は波にもまれて崩れていった。兵士たちも海に消えていく。
 一度静かになった水面がゆっくりと盛りあがってきた。小さな島のようなものが顔を出したと思うと大きな角、真っ赤な目玉が現れて黒い柱が空へ昇っていく。まっ黒な竜だった。大波が来て白宮たちの船も転覆しそうになる。
「みんな心配するな」
 船尾にいた村雄が良く通る声で言った。みんな甲板にへばりついている。いつのまにか船室から出てきた香姫が甲板に座りこんだまま竜に手をあわせている。
「大津の皇子よ。なんと悲しい王子よ」
 香姫はつぶやいた。
「大津の皇子のやつ。竜に化身したか」
 荒瀬がはき出すように言った。竜は空へと昇り、にぶい光を放ちながら山へと飛んでもどってくる。風はくるくると吹く方向を変えて嵐のようにふいた。波が船の何倍もある。
 とまどうシロヒトたちをあざ笑うかのように、竜が体を半分水面から出して止まった。
「おおい。瀬戸内の村雄船を頼んだぞ。みんな船から落ちるなよ」
 そう声をかけると、シロヒトは荒海に飛び込んだ。抜き手を切って竜に泳ぎよると、胸のうろこにつかまって登りだした。竜は目をむいてにらみ、体をひねりながら空へ昇っていく。シロヒトはロッククライマーのように竜に登っていく。
「あいかわらず、気が短いな。シロヒト」
 村雄はかるく笑って船をあやつり竜を追った。  


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2011年12月08日

現代へと続く海の道(仮題)86

 大津の皇子が乗り込んだ船は、前と後ろに大きな篝火が焚いてある。大きな帆を張ってあり、船尾では二人の水主が舵をきっている。大津の皇子は船尾で指揮をとり、船縁にならんだ男達が弓を引いていた。次々に矢が飛び込んでくる。
「久しぶりだが、まだまだいけるぞ」
 瀬戸内の村雄にもどった村尾は、船尾で舵をきって相手の船に船首を向ける。飛んでくる矢は大半が海に消えた。何本かは船に飛び込んで来たが、シロヒトと荒瀬が竹竿ではたき落とした。敵船の弓手が弓をつがえる一瞬の隙を狙って、村雄は船の右舷を敵船に向けた。待っていたとばかりにシロヒトと荒瀬がカブラ矢を放つ。暗い海の中から音を立てて船に矢が飛び込んでいくと、敵船の弓手は驚いて何人か海に落ちた。船尾の水主も飛んでくる矢に気を取られて舵取りが雑になって来るのが分かった。
「イサミ。一本いったらどうだ」
 船尾で舵を取っていた。村雄がイサミを見て笑みを浮かべたのが篝火にはえた。イサミはうなずいて弓を取ると矢をつがえた。揺れる船のまん中に立って、大きく息をした。敵船の船尾にいる水主に狙いを定めて矢を放った。矢はきれいな放物線を描いて一度暗い夜空に吸いこまれたが、また闇から姿を現し水主の着物をつらぬいたのが見えた。水主は二人とも飛びあがって海に落ちた。敵船が大きく揺れた。村雄がイサミをふりかえる。
「イサミ。あいかわらず、いい腕だな。着物に刺さっただけだろ。その方が大騒ぎするから、敵全体には響くんだな」
 村雄が言うと、イサミがうなずいた。敵船は二度ほど大きく揺れながら体勢を立て直し、なんとか転覆はさけた。
「うわあ」
 船首から荒瀬の大声が聞こえた。どうやら海を泳いで来た敵が船に上ってきたらしい。荒瀬は刀を抜いてその着物を斬った。敵は逃げて海に消えた。次々にやって来る敵をシロヒトと荒瀬で追い払った。  


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