2011年12月23日

新しい物語はじめます!

 新しい物語を書きはじめます。これは30数年まえホントに?あった話です。

 私は子どもの頃から、豊川が大好きです。特に放水路の始まるあたりの川がくねっているところが好きです。大人になっていろんな所に旅行しましたが、あんなすばらしい眺めはちょっとありません。

 私が昭和の時代をすごしていたのは、そんな川沿いの小学校です。


「居直り天女」

 その夏、ぼくは最低の気分だった。小学校にプールが出来たのだけれどいっしょに遊びたい勇一は、北海道へ引っ越していった。名古屋とか静岡くらいなら夏休みに遊びに行くことも出来るけど・・・。夏休み前の体育の授業も楽しくなかった。
 更衣室はいっぱい、そのぐちゃぐちゃに入っていく気にもなれず、プールサイドから豊川をながめていた。
 休み時間の終わりを告げるチャイムに背中を押されて更衣室に入った。もちろん誰もいない。
「ああ。誰かがタオル間違えた~」
 思わず大声を上げてしまった。買ってもらったばかりの筋肉マンのタオルがなくなって、かわりに水色の薄い布がロッカーのすみに置いてあった。
「なんだこれ?」
 ぼくは一人ごとを言ってから、その薄い布で体を拭いて着替えると教室に走った。入り口の引き戸を開けて入ると、担任が仁王立ちで待っていた。
「なんきんくん。遅い。おまけに、タオル忘れてあったぞ」
 担任は筋肉マンのタオルを差し出した。受け取りながら心の中で思った。
「あれっ? 誰かが間違えたんじゃないんだ。じゃあ、さっきの水色の布は?」
 そんなことも、学校から帰るころには忘れていた。

 家に帰って、一人で漫画を読んでいたらいつの間にか眠ってしまったらしい。誰かに肩をゆられて目をさました。
「もし、そのお方。お願いがございます」
 目を開けると、頭に丸いリボンをつけたお姉さんが立っていた。赤と緑のふわふわした服を着ている。なんだか良いにおいがした。
「お願い?」
「そうです。私は天女です。豊川で水浴びをしようとしましたら、近くに見なれない四角の泉を見つけました。良い気持ちで水を浴びておりましたら、大勢お子様がこられましたので身をかくしましたが、もどってみますと羽衣がありません」
 お姉さんはきれいな声だった。どうも伝説に聞く天女らしい。
「ねえ。天女さん。その羽衣ってどんなもの?」
 ぼくが聞いた。
「水色の薄い布でございます。あれがないと天へ帰れません」
 天女はじっとぼくを見た。大きな目は赤く潤んでいた。ぼくはプールのバッグから水色の布を出した。
「これ?」
 天女はじっと布を見た。
「それです。なんでもお礼はしますから、どうかお返し下さい」
 天女は床に座って頭を下げた。またいいにおいがした。
「お礼なんかいらないよ。これ、お姉さんのなら返すよ」
 布を差し出すと、天女の目が点になった。その目がどんどんつりあがっていく。
「ぜんぜんだめ! わかってない。世の中も、女心も、歴史も! あんたみたいのがこの日本をダメにするのよ」
 天女の口は耳まで開いた。ぼくはたじろいだ。返すのが遅いと怒っているのだろうか。
「こういう時はねえ、意地悪な目をして、『この羽衣を返してほしければ俺の奥さんになれ。いひひ』っていうのよ。そこからお話がはじまるんじゃない」
 天女はすごい形相でせまってくる。ぼくはこわくなって一歩下がった。
「でも、ぼくまだ、小学生だし、お姉さんきれいだけど、ぼくが大人になったころには、おばさんになってるだろうし」
 ぼくは汗だくになって答えた。怒るかと思った天女の表情がやわらいだ。
「そうねえ、あなたの身になって考えれば、まあ、そういうのもあるわね。うん。でもね、私のことも考えて! 私ねえ、こう見えてもねえ血液型Aなの。だから『ものはしっかり片付ける。受けたうらみと恩はちゃんと返す』じゃないと気持ち悪いの。あっそうだ。あのね、奥さんになるかわりに願い事をかなえてあげる」
 天女の目がキラキラかがやいた。ぼくは恐くて首をたてに振るしかなかった。

つづく
 

 




Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:11│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。