2011年06月30日
友引ツーリングくらぶ(変身)
5人は桜淵公園の駐車場についた。鬼村が先にたって吊り橋を渡っていく。下を見ると緑の水がゆったりと流れていく。風で立つ波はうろこのように見えた。康平は奈良へ旅立つ前に豊橋市役所の展望レストランから見た豊川を思いだした。
梨花にそれを言おうとしてやめた。なのに、梨花はふりむいて微笑んだ。
「あの時に見た龍だね」
康平の心に直接言葉がひびいた。そして、梨花からなにかやさしい波にようなものが来た。康平は腹に力を入れた。
「ここです」
吊り橋をわたって坂をのぼり、土産物屋の横に小さな池があって小さな噴水が出ている。噴水の前に石でできた祠があって古びた木札が立っていた。
「津守の神って書いてあるでしょう。これって、大津の皇子を守っているってことじゃないですか?」
鬼村が言った。
「たぶん。そうだろうが、そんなことより、戸が開いておるぞ」
村鬼が指さした。石でできた祠の前扉に10cmほどのすき間があった。見ると池の中にはがされたお札が落ちている。
「もう、大津の皇子が動き出したんだ」
村鬼が天をあおいだ。夏の夕陽ははるかに見える山並み半分顔をかくしていた。不気味な赤さはなにかを予感させた。
「来るなら来なさいよ。大津の皇子だかなんだか知らないけど、私たちとこの町を壊そうとするなら、私は最後の一人になって戦う」
梨花が祠に向かって青い石を振り上げた。他の4人は石と梨花を見た。青い石から電波のようなものが飛んできてみんなの目つきが鋭くなった。
「ああ。しらみやさん」
康平が指さした。さっきまでジーンズにTシャツだったしらみやが、坊さんの法衣を着ていた。金色の袈裟をつけて首には水晶玉の首飾りをしている。
「ほほう。なまぐさ坊主が、前世を思い出したか。初代三明寺住職。麻績の丘の白宮さま」
そう言った村鬼はぼる布を腰でしばった大男に姿を変えていた。頭頂からは1本角が生え、唇の左右から牙がのぞいている。
「海王丸さま」
そう叫んだ鬼村は、面長で背のひょろ高い鬼だった。鬼村は「水王丸」と名乗った。
「高市の黒人さま。会いたかった~1300年は長かったよ~」
康平に抱きついてきた梨花は、袖の広がったカーテンみたいな生地の衣を着て天女の羽衣みたいな布を巻いている。
「草砥鹿姫だね」
それだけ言った康平は古代風の黒い衣を着ていた。5人は顔を見合わせてなつかしそうに笑った。
梨花にそれを言おうとしてやめた。なのに、梨花はふりむいて微笑んだ。
「あの時に見た龍だね」
康平の心に直接言葉がひびいた。そして、梨花からなにかやさしい波にようなものが来た。康平は腹に力を入れた。
「ここです」
吊り橋をわたって坂をのぼり、土産物屋の横に小さな池があって小さな噴水が出ている。噴水の前に石でできた祠があって古びた木札が立っていた。
「津守の神って書いてあるでしょう。これって、大津の皇子を守っているってことじゃないですか?」
鬼村が言った。
「たぶん。そうだろうが、そんなことより、戸が開いておるぞ」
村鬼が指さした。石でできた祠の前扉に10cmほどのすき間があった。見ると池の中にはがされたお札が落ちている。
「もう、大津の皇子が動き出したんだ」
村鬼が天をあおいだ。夏の夕陽ははるかに見える山並み半分顔をかくしていた。不気味な赤さはなにかを予感させた。
「来るなら来なさいよ。大津の皇子だかなんだか知らないけど、私たちとこの町を壊そうとするなら、私は最後の一人になって戦う」
梨花が祠に向かって青い石を振り上げた。他の4人は石と梨花を見た。青い石から電波のようなものが飛んできてみんなの目つきが鋭くなった。
「ああ。しらみやさん」
康平が指さした。さっきまでジーンズにTシャツだったしらみやが、坊さんの法衣を着ていた。金色の袈裟をつけて首には水晶玉の首飾りをしている。
「ほほう。なまぐさ坊主が、前世を思い出したか。初代三明寺住職。麻績の丘の白宮さま」
そう言った村鬼はぼる布を腰でしばった大男に姿を変えていた。頭頂からは1本角が生え、唇の左右から牙がのぞいている。
「海王丸さま」
そう叫んだ鬼村は、面長で背のひょろ高い鬼だった。鬼村は「水王丸」と名乗った。
「高市の黒人さま。会いたかった~1300年は長かったよ~」
康平に抱きついてきた梨花は、袖の広がったカーテンみたいな生地の衣を着て天女の羽衣みたいな布を巻いている。
「草砥鹿姫だね」
それだけ言った康平は古代風の黒い衣を着ていた。5人は顔を見合わせてなつかしそうに笑った。
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09:57
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2011年06月29日
友引ツーリングくらぶ(桜淵の祠)
5人はマンション照山へと急いだ。すれ違う車は気味が悪いほど少ない。たまに会う車はハンドル操作があやういのかふらふらしている。運転手もトロンとした目で生気がない。
「村鬼さんの言ってたことが、ほんとになるのかも知れない」
康平がポツリというと梨花が一瞬ふり向いた。キッとした目だった。
マンション照山にしらみやに続いてつくと、しらみやは両手で×を作った。康平と梨花が近づいていくと入り口にロープが張って紙が下がっていた。
「都合によりこのマンションは閉鎖されました」
紙にはそう書いてあった。
「管理会社の社長が自殺してから、みんな出ていって。管理会社も倒産したそうだ」
しらみやが携帯を手に言った。刑事の鬼塚に電話して調べてもらったらしい。
「じゃあ、中に入れないんですか? 明日の朝までに間に合わなかったら……」
梨花が言った。
「破産管財人には連絡を取ってもらっている。銀行らしい」
しらみやは携帯を指さした。
「じゃあ、今できることをしましょう。大津の皇子が封印されている場所を見つければ、なにか手を打てるかも知れない」
梨花が青い石をにぎりながら他の4人を見た。
「そうだな。大津の皇子が封印されている場所だな」
村鬼は言って車から地図を持ってくると、マンションの日陰に4人を連れていった。5万分の1の地図は豊川を囲んで石巻山、本宮山、鳳来寺山をつないだ赤い線が引いてある。
「この3角形の中に祠があるのはまちがいない」
村鬼は4人の顔を見まわしながら指で3角形をなぞった。
「でも、けっこう広いですよ」
康平が言った。村鬼は首をふった。
「そうでもないんだよ。まず、光で封印する場合、光源からあまり近いと効果がない。石巻山、本宮山、鳳来寺山それぞれからある程度離れていて、古い街道から近いところで考えるとこのあたりに限られてくる」
村鬼は豊川沿いの桜淵のあたりを指さした。
「あのう。桜淵の吊り橋近くに小さな祠があったような気がします。たしか津守の社って書いてあった気がします」
鬼村が遠慮がちに言った。
「よし、桜淵だ」
村鬼がオープンカーのエンジンを響かせて走り出した。梨花と康平のバイクもあとを追った。
「村鬼さんの言ってたことが、ほんとになるのかも知れない」
康平がポツリというと梨花が一瞬ふり向いた。キッとした目だった。
マンション照山にしらみやに続いてつくと、しらみやは両手で×を作った。康平と梨花が近づいていくと入り口にロープが張って紙が下がっていた。
「都合によりこのマンションは閉鎖されました」
紙にはそう書いてあった。
「管理会社の社長が自殺してから、みんな出ていって。管理会社も倒産したそうだ」
しらみやが携帯を手に言った。刑事の鬼塚に電話して調べてもらったらしい。
「じゃあ、中に入れないんですか? 明日の朝までに間に合わなかったら……」
梨花が言った。
「破産管財人には連絡を取ってもらっている。銀行らしい」
しらみやは携帯を指さした。
「じゃあ、今できることをしましょう。大津の皇子が封印されている場所を見つければ、なにか手を打てるかも知れない」
梨花が青い石をにぎりながら他の4人を見た。
「そうだな。大津の皇子が封印されている場所だな」
村鬼は言って車から地図を持ってくると、マンションの日陰に4人を連れていった。5万分の1の地図は豊川を囲んで石巻山、本宮山、鳳来寺山をつないだ赤い線が引いてある。
「この3角形の中に祠があるのはまちがいない」
村鬼は4人の顔を見まわしながら指で3角形をなぞった。
「でも、けっこう広いですよ」
康平が言った。村鬼は首をふった。
「そうでもないんだよ。まず、光で封印する場合、光源からあまり近いと効果がない。石巻山、本宮山、鳳来寺山それぞれからある程度離れていて、古い街道から近いところで考えるとこのあたりに限られてくる」
村鬼は豊川沿いの桜淵のあたりを指さした。
「あのう。桜淵の吊り橋近くに小さな祠があったような気がします。たしか津守の社って書いてあった気がします」
鬼村が遠慮がちに言った。
「よし、桜淵だ」
村鬼がオープンカーのエンジンを響かせて走り出した。梨花と康平のバイクもあとを追った。
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2011年06月29日
友引ツーリングくらぶ(朝日の力)
大津の皇子の怨霊が消えると、地震もおさまり山のさわやかな風がふいた。
「そう言えば、あのマンション、去年の春に建ちましたね」
鬼村が誰にともなく言った。
「だから、去年の夏至は朝日の三角形は出来なかったんだ。それでヌエが起き出したんだ。今年もダメとなるといよいよ大津の皇子が動き出すぞ」
村鬼が小声で言った。
「大津の皇子は、もう、出てきているじゃないですか」
梨花が聞いた。
「あれはまだ、封印されている状態だぞ。地震を起こしたり、恐ろしい姿を見せるだけだろう。やつの封印がとければ、いよいよ恐ろしいことが起こるだろう」
村鬼は一人ずつ順に見た。
「どうなるんですか」
しらみやは青い顔をしている。
「ヌエがもっとたくさん出て来るだろう。それだけじゃない。おまえたち気づいてないか。街中の人たちの様子がおかしいだろう。ヌエにかまれた人間は死なない変わりに、心が壊れるんだ。なにも気力が起きない。体にはボロボロの吹き出物が現れる。それはどんどん広がっていくんだ」
「それって、奈良時代にはやった天然痘のようなものですか?」
康平が聞いた。村鬼は静かにうなずいた。
「歴史で習ったか。でもなあ、あれは病気なんかじゃない。怨霊のしわざだ。医者なんかじゃ治せん。それだけじゃない、三河だけでなく日本中に広がっていくぞ」
村鬼は言ってからほかの四人を見た。
「急いで、あのマンションへ行こう。なんとかしなければ」
4人はそれぞれ、バイクとオープンカーに乗ってマンションへ向かった。
「そう言えば、あのマンション、去年の春に建ちましたね」
鬼村が誰にともなく言った。
「だから、去年の夏至は朝日の三角形は出来なかったんだ。それでヌエが起き出したんだ。今年もダメとなるといよいよ大津の皇子が動き出すぞ」
村鬼が小声で言った。
「大津の皇子は、もう、出てきているじゃないですか」
梨花が聞いた。
「あれはまだ、封印されている状態だぞ。地震を起こしたり、恐ろしい姿を見せるだけだろう。やつの封印がとければ、いよいよ恐ろしいことが起こるだろう」
村鬼は一人ずつ順に見た。
「どうなるんですか」
しらみやは青い顔をしている。
「ヌエがもっとたくさん出て来るだろう。それだけじゃない。おまえたち気づいてないか。街中の人たちの様子がおかしいだろう。ヌエにかまれた人間は死なない変わりに、心が壊れるんだ。なにも気力が起きない。体にはボロボロの吹き出物が現れる。それはどんどん広がっていくんだ」
「それって、奈良時代にはやった天然痘のようなものですか?」
康平が聞いた。村鬼は静かにうなずいた。
「歴史で習ったか。でもなあ、あれは病気なんかじゃない。怨霊のしわざだ。医者なんかじゃ治せん。それだけじゃない、三河だけでなく日本中に広がっていくぞ」
村鬼は言ってからほかの四人を見た。
「急いで、あのマンションへ行こう。なんとかしなければ」
4人はそれぞれ、バイクとオープンカーに乗ってマンションへ向かった。
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2011年06月28日
友引ツーリングくらぶ(三河三山)
しらみやは行き先も告げずに走り出した。村鬼が目で梨花に指し示す。ついていけと言うことらしい。康平はあわてて後ろに乗ってシートに後ろにしがみついた。大きな音で体がゆれた。春に自転車を二人乗りしたときとは逆の形で、梨花を感じる。ちょっとくすぐったくて照れたたけど、気分は悪くない。
「なかなか、かっこいいぞ」
村鬼のオープンカーが追い越していく。梨花は右手を離してピースした。
四人は、国道を北に走って本宮山のスカイラインへ入った。急なカーブを曲がるたびに梨花が大声で康平に指示を出す。しっかりとシートにしがみつきながら重心を梨花にあわせてずらす。半分くらい登るころには少しなれてきて、そうするとなんだか梨花と一体になったような錯覚があった。
「いももあれも ひとつなれかも みかわなるだな」
康平はひとりごとを言った。登るにしたがって風が冷たくなってうぐいすの谷渡りも聞こえてきた。
山頂に着くと、まず砥鹿神社の奥の院にお詣りした。それから、村鬼が先頭に立って鏡岩へいった。人の背ほどもある草を分けてたどり着くと小型の車くらいの岩が現れた。
パラボラアンテナみたいに丸くへこんだ岩で、その前だけ木がなくて豊川、照山のしらみや達が誘拐されたマンションが見えた。その向こうにはるか石巻山の頭が見えた。
「やっぱり、石巻山を向いてる」
梨花が言って、康平がうなずいた。
「あそこのマンションに閉じこめられたんだよな」
しらみやがつぶやいて、村鬼は苦笑した。
スカイラインをおりると、友引ツーリングくらぶの鬼村が合流して鳳来寺山へ向かった。パークウエイの駐車場に集まって山頂をめざした。山頂には本宮山より少し大きめの鏡岩があって南に向いていた。
五人は山を下りて石巻山へ向かった。石巻山は康平の提案で下から登ることになった。
村鬼は本宮山と鳳来寺山の鏡岩は先に確認していたが、石巻山のダイダラボッチの足跡は康平が知っているということで、康平の案内だった。
「だいだらぼっちの足跡って、山頂だよね。だいぶかかるかな」
しらみやが少し疲れたのか弱った声をだした。
「いえ。あのう。山頂じゃなくて、ちゅうふくですよ」
康平は軽く答えた。
「ちょっと待って。本宮山から見えてたの石巻山の頂上だけじゃなかった?」
梨花が足を止めた。
「そう言えば、照山のマンションが間にあったなあ」
しらみやがぽつりと言った。
「おい。もしかしたら、大津の皇子の怨霊が悪社長にマンションを建てさせた目的って、三河三山の光のネットワークを遮ることじゃないのか?」
村鬼が叫んで、走るように山を登りだした。康平もあとを追って「ダイダラボッチの足跡」までついた。
「やっぱり」
村鬼がさけんだ。本宮山を指さす。間にはマンションがあって本宮山の山頂は見えなかった。顔を見あわせる村鬼と康平に梨花達が追いついてきた。そこで地震が起こった。
「おまえたち。よくそこまで気づいたな。だがここまでだ。夏至の光を遮ってから明日で二回目の夏至だ。いよいよ私が表にでるばんだ」
五人が見あげた空に血にまみれた大津の皇子が巨大にうかんだ。
「なかなか、かっこいいぞ」
村鬼のオープンカーが追い越していく。梨花は右手を離してピースした。
四人は、国道を北に走って本宮山のスカイラインへ入った。急なカーブを曲がるたびに梨花が大声で康平に指示を出す。しっかりとシートにしがみつきながら重心を梨花にあわせてずらす。半分くらい登るころには少しなれてきて、そうするとなんだか梨花と一体になったような錯覚があった。
「いももあれも ひとつなれかも みかわなるだな」
康平はひとりごとを言った。登るにしたがって風が冷たくなってうぐいすの谷渡りも聞こえてきた。
山頂に着くと、まず砥鹿神社の奥の院にお詣りした。それから、村鬼が先頭に立って鏡岩へいった。人の背ほどもある草を分けてたどり着くと小型の車くらいの岩が現れた。
パラボラアンテナみたいに丸くへこんだ岩で、その前だけ木がなくて豊川、照山のしらみや達が誘拐されたマンションが見えた。その向こうにはるか石巻山の頭が見えた。
「やっぱり、石巻山を向いてる」
梨花が言って、康平がうなずいた。
「あそこのマンションに閉じこめられたんだよな」
しらみやがつぶやいて、村鬼は苦笑した。
スカイラインをおりると、友引ツーリングくらぶの鬼村が合流して鳳来寺山へ向かった。パークウエイの駐車場に集まって山頂をめざした。山頂には本宮山より少し大きめの鏡岩があって南に向いていた。
五人は山を下りて石巻山へ向かった。石巻山は康平の提案で下から登ることになった。
村鬼は本宮山と鳳来寺山の鏡岩は先に確認していたが、石巻山のダイダラボッチの足跡は康平が知っているということで、康平の案内だった。
「だいだらぼっちの足跡って、山頂だよね。だいぶかかるかな」
しらみやが少し疲れたのか弱った声をだした。
「いえ。あのう。山頂じゃなくて、ちゅうふくですよ」
康平は軽く答えた。
「ちょっと待って。本宮山から見えてたの石巻山の頂上だけじゃなかった?」
梨花が足を止めた。
「そう言えば、照山のマンションが間にあったなあ」
しらみやがぽつりと言った。
「おい。もしかしたら、大津の皇子の怨霊が悪社長にマンションを建てさせた目的って、三河三山の光のネットワークを遮ることじゃないのか?」
村鬼が叫んで、走るように山を登りだした。康平もあとを追って「ダイダラボッチの足跡」までついた。
「やっぱり」
村鬼がさけんだ。本宮山を指さす。間にはマンションがあって本宮山の山頂は見えなかった。顔を見あわせる村鬼と康平に梨花達が追いついてきた。そこで地震が起こった。
「おまえたち。よくそこまで気づいたな。だがここまでだ。夏至の光を遮ってから明日で二回目の夏至だ。いよいよ私が表にでるばんだ」
五人が見あげた空に血にまみれた大津の皇子が巨大にうかんだ。
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2011年06月27日
友引ツーリングくらぶ(梨花デビュー)
「しらみやさん。お願いがあるんだけど、私を友引ツーリングくらぶに入れてくれない?」
梨花はいつになく神妙な声を出した。
「そう言えば、免許取ったって言ってたね」
康平が言った。村鬼はニヤニヤ笑いを浮かべている。
「いいよ。それにしても、坊さん以外の会員ははじめてだな。と言うか、事故起こして入院してるやつとか、原因不明の病気で弱ってつやつとかで、バイクに乗れるのはおれと鬼村ぐらいだもんな。バイクはもう買ったか?」
しらみやの言葉に梨花は首を振った。
「いいよ。乗れないやつのバイク預かってるから、乗ればいい。ヘルメットくらいはあるからまあ、転ばないように気をつけてればつなぎはなくてもいいだろ」
しらみやは本堂から消えたかと思うとヘルメットを二つ持って来て梨花と康平に渡した。そのあと、携帯で鬼村に電話しながら二人を本堂裏の物置に連れて行った。ハーレータイプのハンドルの高いバイクが2台置いてあった。しらみやは1台ずつ出して1台にまたがった。
「エンジンかかるかな。あとクラッチがちょっと癖があるから気をつけて」
しらみやは2,3説明して梨花にまたがせた。康平はあわててヘルメットをかぶって後ろに乗った。
「さあ、行くぞ」
しらみや、梨花と道路に出ると村鬼の車が待っていて動き出した。
梨花はいつになく神妙な声を出した。
「そう言えば、免許取ったって言ってたね」
康平が言った。村鬼はニヤニヤ笑いを浮かべている。
「いいよ。それにしても、坊さん以外の会員ははじめてだな。と言うか、事故起こして入院してるやつとか、原因不明の病気で弱ってつやつとかで、バイクに乗れるのはおれと鬼村ぐらいだもんな。バイクはもう買ったか?」
しらみやの言葉に梨花は首を振った。
「いいよ。乗れないやつのバイク預かってるから、乗ればいい。ヘルメットくらいはあるからまあ、転ばないように気をつけてればつなぎはなくてもいいだろ」
しらみやは本堂から消えたかと思うとヘルメットを二つ持って来て梨花と康平に渡した。そのあと、携帯で鬼村に電話しながら二人を本堂裏の物置に連れて行った。ハーレータイプのハンドルの高いバイクが2台置いてあった。しらみやは1台ずつ出して1台にまたがった。
「エンジンかかるかな。あとクラッチがちょっと癖があるから気をつけて」
しらみやは2,3説明して梨花にまたがせた。康平はあわててヘルメットをかぶって後ろに乗った。
「さあ、行くぞ」
しらみや、梨花と道路に出ると村鬼の車が待っていて動き出した。
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2011年06月25日
友引ツーリングくらぶ(なみだ石)
「梨花ちゃん」
思わず康平は梨花の肩をだいた。やわらかい波のようなものが伝わってくる。やっぱり携帯やスカイプとはちがう。梨花も康平の背中に手を回した。村鬼としらみやは呆れた顔で見ていた。
「梨花ちゃん。青い石はまだ持ってる?」
腕を放した康平が聞いた。梨花はポケットから石を出した。
「それ、もしかしたら、豊川のほとりに埋まってた石かも知れない。このまえ電話で話したよね。『みずのえのサルがサムライになる』って言ういつか見た夢の話。1992年になるらしい。そのときに、ここの前の土を学校へ運んだんだって」
康平がそこまで言うと梨花の目が輝いた。
「ふしぎ。石が熱くなってきた。震えているみたい」
梨花は石を持つ手のひらを広げた。
「もしかしたら、草砥鹿姫が埋めた石かも知れないね」
梨花の石をしらみやと村鬼がのぞきこんだ。
「これか」
村鬼がため息をもらした。康平がふしぎそうに顔を見ると村鬼はにやりとした。
「まちがいない。草砥鹿姫の涙石だ」
「なみだ石?」
しらみやが口の中でくりかえした。
「そう。1300年前に、都から来た使者と恋に落ちた草砥鹿姫が相手を思って流した涙が石になったのを、彼女が亡くなったときに、まわりの人が豊川沿いに埋めたんだ」
村鬼はいとおしそうに言った。
「草砥鹿? 私の苗字。私の先祖ってこと?」
梨花が聞いた。そのことばに村鬼は首をふって人差指を梨花につきだした。
「草砥鹿梨花さん。あんたの前世だ。そして、この康平とか言う青年は苗字を高市というらしいな。この青年と『二見の歌』を歌うために生まれてきたんだ」
村鬼はそう言って大きなくしゃみをした。
思わず康平は梨花の肩をだいた。やわらかい波のようなものが伝わってくる。やっぱり携帯やスカイプとはちがう。梨花も康平の背中に手を回した。村鬼としらみやは呆れた顔で見ていた。
「梨花ちゃん。青い石はまだ持ってる?」
腕を放した康平が聞いた。梨花はポケットから石を出した。
「それ、もしかしたら、豊川のほとりに埋まってた石かも知れない。このまえ電話で話したよね。『みずのえのサルがサムライになる』って言ういつか見た夢の話。1992年になるらしい。そのときに、ここの前の土を学校へ運んだんだって」
康平がそこまで言うと梨花の目が輝いた。
「ふしぎ。石が熱くなってきた。震えているみたい」
梨花は石を持つ手のひらを広げた。
「もしかしたら、草砥鹿姫が埋めた石かも知れないね」
梨花の石をしらみやと村鬼がのぞきこんだ。
「これか」
村鬼がため息をもらした。康平がふしぎそうに顔を見ると村鬼はにやりとした。
「まちがいない。草砥鹿姫の涙石だ」
「なみだ石?」
しらみやが口の中でくりかえした。
「そう。1300年前に、都から来た使者と恋に落ちた草砥鹿姫が相手を思って流した涙が石になったのを、彼女が亡くなったときに、まわりの人が豊川沿いに埋めたんだ」
村鬼はいとおしそうに言った。
「草砥鹿? 私の苗字。私の先祖ってこと?」
梨花が聞いた。そのことばに村鬼は首をふって人差指を梨花につきだした。
「草砥鹿梨花さん。あんたの前世だ。そして、この康平とか言う青年は苗字を高市というらしいな。この青年と『二見の歌』を歌うために生まれてきたんだ」
村鬼はそう言って大きなくしゃみをした。
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2011年06月24日
友引ツーリングくらぶ(対決の時2)
康平は三明寺の本堂の中をふらふらと歩いた。力寿姫の木像の前に来ると引き寄せられるように立ち止まった。あらためて梨花に似ていると思った。
「夏休みには会えるよね。それまでに、この町をなんとかする」
力寿姫に向かって小声で言うと、かすかに揺れた気がした。さっきよりまして梨花に会いたくなった。
「誰か来たかな?」
しらみやが本堂の外に目を向けた。はーくしょん。遠くからクシャミが聞こえた。だんだん近づいてくる。
「お~い。わしだ。村鬼だ。康平くんもどったんだってな」
村鬼が本堂に現れた。鼻を押さえている。
「ふしぎだなあ。この子に会うとクシャミがおさまる」
村鬼はしらみやを見て笑ってから康平を見た。
「康平君だったな。やっぱり君は中心で働く役目だ。すごい発見じゃないか。三河三山。石巻山、本宮山、鳳来寺と回って来たぞ。石巻山のダイダラボッチの岩はやはり鏡になっておった。本宮山はばっちり鏡岩だった。鳳来寺山も本堂の上の鐘突堂に油を塗ったように光った岩があった。間違いない。三つの岩で光を反射して三角形をつくっておる」
村鬼はそこまで言ってポケットから地図を出した。石巻山、本宮山、鳳来寺山と赤ペンで丸が打ってある。山と山の間はマーカーペンで結んである。本宮山を底辺にした直角三角形になっていた。
「すごい。でもこれなんですか」
しらみやが聞いた。康平が大和三山のこと、鏡岩で大和の国を護っていること、三河の国も同じように守れていることを説明した。しらみやはおおげさにうなずいた。
「ありがたいことだなあ。わしらは知らず知らずに守られていたんだ。それにしても、守られていながら今の状況じゃなあ」
村鬼の言葉に、康平は父親と母親を思いだした。その時、力寿姫の木像ががたりとゆれた。康平と村鬼は身がまえた。なぜかしらみやだけは平然としていた。
「ごめん。来ちゃった」
梨花が立っていた。
「ごめん。おれが知らせたんだ」
しらみやが言った。
「夏休みには会えるよね。それまでに、この町をなんとかする」
力寿姫に向かって小声で言うと、かすかに揺れた気がした。さっきよりまして梨花に会いたくなった。
「誰か来たかな?」
しらみやが本堂の外に目を向けた。はーくしょん。遠くからクシャミが聞こえた。だんだん近づいてくる。
「お~い。わしだ。村鬼だ。康平くんもどったんだってな」
村鬼が本堂に現れた。鼻を押さえている。
「ふしぎだなあ。この子に会うとクシャミがおさまる」
村鬼はしらみやを見て笑ってから康平を見た。
「康平君だったな。やっぱり君は中心で働く役目だ。すごい発見じゃないか。三河三山。石巻山、本宮山、鳳来寺と回って来たぞ。石巻山のダイダラボッチの岩はやはり鏡になっておった。本宮山はばっちり鏡岩だった。鳳来寺山も本堂の上の鐘突堂に油を塗ったように光った岩があった。間違いない。三つの岩で光を反射して三角形をつくっておる」
村鬼はそこまで言ってポケットから地図を出した。石巻山、本宮山、鳳来寺山と赤ペンで丸が打ってある。山と山の間はマーカーペンで結んである。本宮山を底辺にした直角三角形になっていた。
「すごい。でもこれなんですか」
しらみやが聞いた。康平が大和三山のこと、鏡岩で大和の国を護っていること、三河の国も同じように守れていることを説明した。しらみやはおおげさにうなずいた。
「ありがたいことだなあ。わしらは知らず知らずに守られていたんだ。それにしても、守られていながら今の状況じゃなあ」
村鬼の言葉に、康平は父親と母親を思いだした。その時、力寿姫の木像ががたりとゆれた。康平と村鬼は身がまえた。なぜかしらみやだけは平然としていた。
「ごめん。来ちゃった」
梨花が立っていた。
「ごめん。おれが知らせたんだ」
しらみやが言った。
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2011年06月23日
友引ツーリングくらぶ(対決の時)
「二人ともどうしちゃったんだよ」
康平は家に帰って父と母を見てつぶやいた。二人とも土のような色をしている。家の中はどんよりとした空気が漂い、あちこちホコリがたまっている。
「なんだかいろんなことがばからしくなってな」
父親は小さな声で言った。
「でもね。父さんはまだえらいよ。それでも会社いくもの」
母親は背中を丸めてキッチンへ入っていく。テーブルには食べ残しがのりハエがたかっている。流しには汚れ物が山になっていた。康平はなんだかいたたまれなくなってきた。
「父さん。いったいなにがあったんだよ。この町に」
父親は答えなかった。首筋に1cmほどの丸いできものが二つるのに気づいた。母親の首にもある。
「1週間ぐらい前に大きな犬にかまれてな、それから、腹に力が入らないんだ」
父親はそこまで言うと、へなへなと座りこんだ。康平はそれを聞いてヌエを思った。すると、耳の奥で低い声が響いた。
「ようこそ。呪われた町へ」
前に聞いた大津の皇子の声だった。康平は家を飛び出して三明寺へ向かった。なぜか三明寺のまわりだけはへんな空気が漂っていない。いつも通りの感じだった。
「おう。康平。久しぶりだな」
しらみやの言葉に康平は安心した。
「あのう。3ヶ月ぶりに家に帰ったら、両親ともぐったりして、それであのう。犬にかまれたって言って、首筋に赤いできものが」
康平が言い終わらないうちにしらみやは目を閉じてうなずいた。
「みんなやられたんだ。ヌエに。うちのツーリングくらぶのメンバーもほとんどやられた」
「しらみやさんは、だいじょうぶなんですか?」
康平が聞くと、しらみやはうなずいた。
「ぼくと、鬼村、それと村鬼さん、あと鬼塚さんはやられないようだ。鬼のつく三人はなんとか仙人に、おれ弁才天さまに守られてんのかな」
しらみやはうつむいていった。
康平は家に帰って父と母を見てつぶやいた。二人とも土のような色をしている。家の中はどんよりとした空気が漂い、あちこちホコリがたまっている。
「なんだかいろんなことがばからしくなってな」
父親は小さな声で言った。
「でもね。父さんはまだえらいよ。それでも会社いくもの」
母親は背中を丸めてキッチンへ入っていく。テーブルには食べ残しがのりハエがたかっている。流しには汚れ物が山になっていた。康平はなんだかいたたまれなくなってきた。
「父さん。いったいなにがあったんだよ。この町に」
父親は答えなかった。首筋に1cmほどの丸いできものが二つるのに気づいた。母親の首にもある。
「1週間ぐらい前に大きな犬にかまれてな、それから、腹に力が入らないんだ」
父親はそこまで言うと、へなへなと座りこんだ。康平はそれを聞いてヌエを思った。すると、耳の奥で低い声が響いた。
「ようこそ。呪われた町へ」
前に聞いた大津の皇子の声だった。康平は家を飛び出して三明寺へ向かった。なぜか三明寺のまわりだけはへんな空気が漂っていない。いつも通りの感じだった。
「おう。康平。久しぶりだな」
しらみやの言葉に康平は安心した。
「あのう。3ヶ月ぶりに家に帰ったら、両親ともぐったりして、それであのう。犬にかまれたって言って、首筋に赤いできものが」
康平が言い終わらないうちにしらみやは目を閉じてうなずいた。
「みんなやられたんだ。ヌエに。うちのツーリングくらぶのメンバーもほとんどやられた」
「しらみやさんは、だいじょうぶなんですか?」
康平が聞くと、しらみやはうなずいた。
「ぼくと、鬼村、それと村鬼さん、あと鬼塚さんはやられないようだ。鬼のつく三人はなんとか仙人に、おれ弁才天さまに守られてんのかな」
しらみやはうつむいていった。
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10:01
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2011年06月22日
友引ツーリングくらぶ(夏至が近づいてきた)
康平は青い石のことがなんだか気になった。今も梨花が身につけているのかと思うと梨花に会いたくなった。
「おかしいな。電話でも話しているし、スカイプで顔も見ているのにな」
ひとりごとを言ってから大学に出かけた。帰りにバイトをしてアパートにもどるとカレンダーを見た。夏至が1週間後になっている。大和三山のことを思い出した。
夏至は豊川へもどろうかと思った。しらみやには電話したが梨花にはだまっていることにした。何かが起こりそうな気がする。身に危険がせまるようなことが……。
6月18日の朝、奈良をたった。夏至は22日だから4日ある。電車が豊橋に近づいてくると心なしか空が暗くなってきた気がする。晴天ではないが雨がふりそうな雲ではない。蒲郡でほとんどの乗客が降りて代わりに何人か乗ってきた人たちは、なぜか眠そうな顔に見えた。回ってきた車掌も歩き方がスローモーションみたいだった。豊橋で乗り換えるときにはっきりと感じたのはどんよりとした空気だった。わずか3ヶ月の間にすべてが変わってしまったのを感じた。
「おかしいな。電話でも話しているし、スカイプで顔も見ているのにな」
ひとりごとを言ってから大学に出かけた。帰りにバイトをしてアパートにもどるとカレンダーを見た。夏至が1週間後になっている。大和三山のことを思い出した。
夏至は豊川へもどろうかと思った。しらみやには電話したが梨花にはだまっていることにした。何かが起こりそうな気がする。身に危険がせまるようなことが……。
6月18日の朝、奈良をたった。夏至は22日だから4日ある。電車が豊橋に近づいてくると心なしか空が暗くなってきた気がする。晴天ではないが雨がふりそうな雲ではない。蒲郡でほとんどの乗客が降りて代わりに何人か乗ってきた人たちは、なぜか眠そうな顔に見えた。回ってきた車掌も歩き方がスローモーションみたいだった。豊橋で乗り換えるときにはっきりと感じたのはどんよりとした空気だった。わずか3ヶ月の間にすべてが変わってしまったのを感じた。
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07:35
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2011年06月21日
友引ツーリングくらぶ(青い石はどこから?)
「1992年ねえ。ネットで見たら、ソ連が崩壊した次の年で、日本はバブルの時代かあ。ぼくらが生まれるまえだもんね」
康平はスカイプの画面を小さくして、インターネットのページを見た。
「しらみやさんに電話したら」
梨花が言って、康平は携帯を手にした。
「しらみやさん。1992年ってなにがありました?」
「1992年か。おれが小学校に上がった年だ。よくおぼえてるよ。あの年はびっくりした」
しらみやは電話の向こうで笑っているらしい。
「なにがあったんですか?」
画面の中の梨花が乗りだしてくる。
「あの春ねえ。おれが入学式で親と学校へ出かけようとしたら池の水がなくなっていたんだ」
しらみやの声はなつかしそうだった。
「池って、境内の石橋のある池ですよね。あそこ昔は水があったんですか?」
康平の質問にしらみやが笑った。」
「康平くんたちは知らないよね。水が枯れる前はね、わき水が川になって流れていたんだ。おまけにもっと古くは、豊川が寺の前まで来ていて、そこへ流れ込んでいたんだ」
「それって、草砥鹿姫がいたころもそうでしょうか」
梨花が聞いて、しらみやが「そうだ」と言った。
「そうそう。そのころの地形を子どもたちに知ってほしいってことで、お寺のまえの土を運んで小学校にミニ豊川をつくったんだ。おれも石をならべるの手伝った」
「ミニ豊川って、ぼくたちが小学校のころもありました。たぶん。今もあると思います。雨が降ると土が校庭に流れちゃうから夏休みにみんなで直しました」
康平は言ってから、梨花に渡した青い石を思い出した。そう言えば、運動会前に大雨が降ったような気がする。もう10年以上前のことだが、なんとなく印象に残っていた。
康平はスカイプの画面を小さくして、インターネットのページを見た。
「しらみやさんに電話したら」
梨花が言って、康平は携帯を手にした。
「しらみやさん。1992年ってなにがありました?」
「1992年か。おれが小学校に上がった年だ。よくおぼえてるよ。あの年はびっくりした」
しらみやは電話の向こうで笑っているらしい。
「なにがあったんですか?」
画面の中の梨花が乗りだしてくる。
「あの春ねえ。おれが入学式で親と学校へ出かけようとしたら池の水がなくなっていたんだ」
しらみやの声はなつかしそうだった。
「池って、境内の石橋のある池ですよね。あそこ昔は水があったんですか?」
康平の質問にしらみやが笑った。」
「康平くんたちは知らないよね。水が枯れる前はね、わき水が川になって流れていたんだ。おまけにもっと古くは、豊川が寺の前まで来ていて、そこへ流れ込んでいたんだ」
「それって、草砥鹿姫がいたころもそうでしょうか」
梨花が聞いて、しらみやが「そうだ」と言った。
「そうそう。そのころの地形を子どもたちに知ってほしいってことで、お寺のまえの土を運んで小学校にミニ豊川をつくったんだ。おれも石をならべるの手伝った」
「ミニ豊川って、ぼくたちが小学校のころもありました。たぶん。今もあると思います。雨が降ると土が校庭に流れちゃうから夏休みにみんなで直しました」
康平は言ってから、梨花に渡した青い石を思い出した。そう言えば、運動会前に大雨が降ったような気がする。もう10年以上前のことだが、なんとなく印象に残っていた。
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07:55
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2011年06月20日
友引ツーリングくらぶ(たいへんなこと)
康平は親に電話した。父親が出た。
「ああ、康平か。どうだ。学校はなれたか? お金はあるか?」
父親はまず康平のことを聞いた。
「うん。バイトもはじめたし、歴史を調べる先輩もいるよ。そんなことより、豊川の知り合いと電話してたんだけど、さっき、雷が落ちた? 携帯が急に切れたんだ」
康平が切り出すと、父親はちょっと黙ってから声を出した。
「雷は最近しょっちゅうだな。携帯はときどき通じなくなるが……。母さんもあいかわらず元気だし、まあ心配するな。なんとかなってる」
父親の声は心なしか力が感じられなかった。
「あのさあ、夏休みには帰るから」
康平は言って、そのあと、日常のこまごましたことを話して電話を切った。
「夏休みかあ」
ひとりごとを言ってカレンダーを見た。6月22日のところに夏至と小さく書いてある。7月に入っていつまで講義があるんだろうと思いながら6月をめくった。7月、8月とバイトの予定を見ながら豊川へ帰れそうな日を見ていた。梨花も同じ時に帰れるだろうか。そう思って梨花の携帯に電話した。
「ええ? 雷? 携帯が通じないの? 普通の電話はだいじょうぶなんだ」
梨花もちょっと安心したらしい。
「あのさあ、今、自分の部屋? じゃあさあ、スカイプにしよ。時間気にしなくていいし」
インターネット経由のテレビ電話スカイプは無料だから、康平と梨花が長話したいときはいつもスカイプだった。
「梨花ちゃんもさあ、夏休みもどれそう? 豊川へ。 ぼくは7月あたまにまず一度帰るけど」
「うん。私はねえ、7月の終わりにになるかな。バイトを少ししてから帰るかも知れない。あのねえ、私、バイクの免許とったんだ。でお金かかったから」
「バイクの免許? すごいね。 ええっと7月終わりっていうと、7月は31日まであったね。6月だったら1日早く会えたのに」
康平はカメラに向かって笑った。
「西向くサムライだね」
梨花が言った。康平の心に「サムライ」という言葉が残った。
「サムライ? なにそれ」
康平は聞き返した。思わずカメラに顔を寄せた。
「西は2.4。向くは6.9。サムライは武士の士で十と一に分けて11。2月4月6月9月11月は、31日までないってこと」
梨花は画面の中で不思議そうな顔をしている。
「前にさあ、夢を見たんだ。「みずのえの猿がサムライになる時龍が起き出す」って、みずのえ猿は、壬申の乱の年だってことになったけど、サムライが分からなかった。サムライって11のことだったんだ。みずのえ猿の年は120年に一度くるから、それが11回起こることをサムライになるって言ったんだ。きっと」
康平が説明しても梨花は画面の中で目を白黒している。康平は電卓を取り出して計算しはじめた。
「壬申の乱が672年で、120×11で1320年。1992年だ。ぼくたちが生まれる3年前だ。この年になにがあったんだろう」
康平は言ったが二人とも、特に思い出せなかった。
「ああ、康平か。どうだ。学校はなれたか? お金はあるか?」
父親はまず康平のことを聞いた。
「うん。バイトもはじめたし、歴史を調べる先輩もいるよ。そんなことより、豊川の知り合いと電話してたんだけど、さっき、雷が落ちた? 携帯が急に切れたんだ」
康平が切り出すと、父親はちょっと黙ってから声を出した。
「雷は最近しょっちゅうだな。携帯はときどき通じなくなるが……。母さんもあいかわらず元気だし、まあ心配するな。なんとかなってる」
父親の声は心なしか力が感じられなかった。
「あのさあ、夏休みには帰るから」
康平は言って、そのあと、日常のこまごましたことを話して電話を切った。
「夏休みかあ」
ひとりごとを言ってカレンダーを見た。6月22日のところに夏至と小さく書いてある。7月に入っていつまで講義があるんだろうと思いながら6月をめくった。7月、8月とバイトの予定を見ながら豊川へ帰れそうな日を見ていた。梨花も同じ時に帰れるだろうか。そう思って梨花の携帯に電話した。
「ええ? 雷? 携帯が通じないの? 普通の電話はだいじょうぶなんだ」
梨花もちょっと安心したらしい。
「あのさあ、今、自分の部屋? じゃあさあ、スカイプにしよ。時間気にしなくていいし」
インターネット経由のテレビ電話スカイプは無料だから、康平と梨花が長話したいときはいつもスカイプだった。
「梨花ちゃんもさあ、夏休みもどれそう? 豊川へ。 ぼくは7月あたまにまず一度帰るけど」
「うん。私はねえ、7月の終わりにになるかな。バイトを少ししてから帰るかも知れない。あのねえ、私、バイクの免許とったんだ。でお金かかったから」
「バイクの免許? すごいね。 ええっと7月終わりっていうと、7月は31日まであったね。6月だったら1日早く会えたのに」
康平はカメラに向かって笑った。
「西向くサムライだね」
梨花が言った。康平の心に「サムライ」という言葉が残った。
「サムライ? なにそれ」
康平は聞き返した。思わずカメラに顔を寄せた。
「西は2.4。向くは6.9。サムライは武士の士で十と一に分けて11。2月4月6月9月11月は、31日までないってこと」
梨花は画面の中で不思議そうな顔をしている。
「前にさあ、夢を見たんだ。「みずのえの猿がサムライになる時龍が起き出す」って、みずのえ猿は、壬申の乱の年だってことになったけど、サムライが分からなかった。サムライって11のことだったんだ。みずのえ猿の年は120年に一度くるから、それが11回起こることをサムライになるって言ったんだ。きっと」
康平が説明しても梨花は画面の中で目を白黒している。康平は電卓を取り出して計算しはじめた。
「壬申の乱が672年で、120×11で1320年。1992年だ。ぼくたちが生まれる3年前だ。この年になにがあったんだろう」
康平は言ったが二人とも、特に思い出せなかった。
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08:48
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2011年06月16日
友引ツーリングくらぶ(大津の皇子出現?)
「はーくしょん」
電話に出るなり、村鬼はクシャミをした。康平は思わず携帯を耳から離した。
「いやあ。すまんすまん。康平君だったな。奈良はどうだ。こっちはたいへんだぞ」
村鬼の声はちょっと沈んで聞こえた。
「あのう。村鬼さん。三河三山って知ってますか。こっちへ来て、大和三山の話を聞いて、なんだか、石巻山と本宮山と鳳来寺山を思い出しました」
康平は大和三山の鏡岩の話を説明した。香具山の鏡岩が石巻山のダイダラボッチの足跡に似ていることも話した。村鬼はしばらくだまっていた。
「あのなあ、本宮山の頂上には鏡岩があるぞ。おれも登ったことがあるが、たしか東の方を向いていた。鳳来寺山はよく分からん。今日、登ってみる。もし、おまえの言っていることがあたっていれば、夏至の朝、本宮山と石巻山と鳳来寺山の光の三角形が出来るわけだな。その光で結界をつくって何かを守っておるのか、あるいは封じ込めているのか」
村鬼はそこで一度だまった。
「村鬼さん。もう一つ気になることがあります。三河に大津の皇子がいたらしいんです」
康平が続けた。梨花の聞いてきた話、大津の皇子が伊勢から海を渡って三河に住んだ話を聞かせた。
「おい。間違いないのか? 草壁の皇子の伝説はたしかにあるが、草壁でなく大津の皇子か?」
村鬼がそこまで言ったところで、電話の向こうからゴロゴロと雷のような音がして、うめき声がして電話は急に切れた。かけ直しても村鬼は出ない。心配した康平はしらみやに電話した。
「たいへんだ。いっぺんに何カ所か雷が落ちて、あちこち火事になってる」
しらみやは電話に出るなり早口でしゃべった。その電話も切れてあとはつながらなくなった。
電話に出るなり、村鬼はクシャミをした。康平は思わず携帯を耳から離した。
「いやあ。すまんすまん。康平君だったな。奈良はどうだ。こっちはたいへんだぞ」
村鬼の声はちょっと沈んで聞こえた。
「あのう。村鬼さん。三河三山って知ってますか。こっちへ来て、大和三山の話を聞いて、なんだか、石巻山と本宮山と鳳来寺山を思い出しました」
康平は大和三山の鏡岩の話を説明した。香具山の鏡岩が石巻山のダイダラボッチの足跡に似ていることも話した。村鬼はしばらくだまっていた。
「あのなあ、本宮山の頂上には鏡岩があるぞ。おれも登ったことがあるが、たしか東の方を向いていた。鳳来寺山はよく分からん。今日、登ってみる。もし、おまえの言っていることがあたっていれば、夏至の朝、本宮山と石巻山と鳳来寺山の光の三角形が出来るわけだな。その光で結界をつくって何かを守っておるのか、あるいは封じ込めているのか」
村鬼はそこで一度だまった。
「村鬼さん。もう一つ気になることがあります。三河に大津の皇子がいたらしいんです」
康平が続けた。梨花の聞いてきた話、大津の皇子が伊勢から海を渡って三河に住んだ話を聞かせた。
「おい。間違いないのか? 草壁の皇子の伝説はたしかにあるが、草壁でなく大津の皇子か?」
村鬼がそこまで言ったところで、電話の向こうからゴロゴロと雷のような音がして、うめき声がして電話は急に切れた。かけ直しても村鬼は出ない。心配した康平はしらみやに電話した。
「たいへんだ。いっぺんに何カ所か雷が落ちて、あちこち火事になってる」
しらみやは電話に出るなり早口でしゃべった。その電話も切れてあとはつながらなくなった。
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11:53
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2011年06月14日
今度の土曜日は法螺貝の日!!
今度の土曜日は、石巻山で法螺貝無料体験会があります。
10時から石巻山山上社前の休憩所でやります。法螺貝無料貸し出し&指導つきです。
10時から石巻山山上社前の休憩所でやります。法螺貝無料貸し出し&指導つきです。

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21:22
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2011年06月14日
友引ツーリングくらぶ(鏡岩2)
「たたられるって、穏やかじゃないよね」
藤原は声がうわずっている。康平の方はもうなれっこになっていた。
「もう、ぼくたちの町はたたられているんです。それに怨霊は自分からたたりますなんて教えてくれません」
康平は言いながら、鏡岩のまわりを歩いた。岩の周囲2mくらい草が刈ってあるのか他より短い。
「誰かが手入れしているんですね。草も刈って。そうだ、山を下りたところに資料館があったでしょう。聞いてみます」
康平は言って山を下りはじめた。藤原があわてて後を追った。
「すみません。ちょっと教えてもらっていいですか?」
ふもとの資料館受付で、康平は鏡岩のことを聞いていみた。受付にいた男はにやりと笑って低い声を出した。
「あんたもたたれられたかね」
言いながら、幽霊のまねか両手を胸の前でだらりと見せた。
「さわっていませんよ」
後ろから藤原が言った。男は笑いながら手を広げた。
「心配いらんよ。あれは村で管理しておる岩でね。たたりなんかしない。だけど、ああして書いておけば勝手にさわる人もへるだろう」
「勝手にさわると困るんですか? あの岩。どういう岩なんです?」
康平が聞いた。
「あれはなあ、ふだんはただの岩だが、一年に一度、夏至の日だけ、当たった朝日が反射する、耳成山へ向かってな。耳成山にも同じような石があってね。ここから行った光が反射して今度は畝傍山へ行く。それがまた香具山へもどる。つまり、光の三角形が、藤原京をつつむんだ。それが大和三山の結界だ。岩の角度を変えたり、削れたりしたら光が飛ばなくなる」
男は写真を出した。三つの山の間が光の帯でむすばれている。それを見て康平が声を上げた。
「ぼくの地元で、夏至の朝見る背比べだ」
藤原がふしぎそうに康平を見た。
「三河三山の石巻山と本宮山が夏至の朝、背比べをするって伝説があるんです。山の頂上に雨どいをかけて水を流すってっていうんですが、子どものころ一度みたことがあります。こんな感じの光でした」
「そう言えば、さっき、鏡岩を見たとき康平言ってたな。石巻山によく似た岩があるって、ダイダラボッチの足跡って言われているって」
藤原が口をはさんだ。康平は豊川の村鬼に電話した。
藤原は声がうわずっている。康平の方はもうなれっこになっていた。
「もう、ぼくたちの町はたたられているんです。それに怨霊は自分からたたりますなんて教えてくれません」
康平は言いながら、鏡岩のまわりを歩いた。岩の周囲2mくらい草が刈ってあるのか他より短い。
「誰かが手入れしているんですね。草も刈って。そうだ、山を下りたところに資料館があったでしょう。聞いてみます」
康平は言って山を下りはじめた。藤原があわてて後を追った。
「すみません。ちょっと教えてもらっていいですか?」
ふもとの資料館受付で、康平は鏡岩のことを聞いていみた。受付にいた男はにやりと笑って低い声を出した。
「あんたもたたれられたかね」
言いながら、幽霊のまねか両手を胸の前でだらりと見せた。
「さわっていませんよ」
後ろから藤原が言った。男は笑いながら手を広げた。
「心配いらんよ。あれは村で管理しておる岩でね。たたりなんかしない。だけど、ああして書いておけば勝手にさわる人もへるだろう」
「勝手にさわると困るんですか? あの岩。どういう岩なんです?」
康平が聞いた。
「あれはなあ、ふだんはただの岩だが、一年に一度、夏至の日だけ、当たった朝日が反射する、耳成山へ向かってな。耳成山にも同じような石があってね。ここから行った光が反射して今度は畝傍山へ行く。それがまた香具山へもどる。つまり、光の三角形が、藤原京をつつむんだ。それが大和三山の結界だ。岩の角度を変えたり、削れたりしたら光が飛ばなくなる」
男は写真を出した。三つの山の間が光の帯でむすばれている。それを見て康平が声を上げた。
「ぼくの地元で、夏至の朝見る背比べだ」
藤原がふしぎそうに康平を見た。
「三河三山の石巻山と本宮山が夏至の朝、背比べをするって伝説があるんです。山の頂上に雨どいをかけて水を流すってっていうんですが、子どものころ一度みたことがあります。こんな感じの光でした」
「そう言えば、さっき、鏡岩を見たとき康平言ってたな。石巻山によく似た岩があるって、ダイダラボッチの足跡って言われているって」
藤原が口をはさんだ。康平は豊川の村鬼に電話した。
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2011年06月14日
友引ツーリングくらぶ(鏡岩)
次の日の夕方、講義が終わると康平と藤原は待ち合わせして飛鳥へ向かった。車の中で藤原が口をひらいた。
「三河にも三山があるって言ってたな」
「そうです。鳳来寺山、本宮山、石巻山って言います」
藤原はハンドルを握りながらときどき康平に目を向ける。
「大和の三山は、香具山、畝傍山、耳成山だ。飛鳥から案外近いんだ。香具山は藤原京のすぐうらだしな」
「そうですか。三河の三山は、全部まわろうとすると、車でも半日かかります」
康平の答えに藤原は笑った。
「守る範囲が広いんだな」
藤原が言ったところで、田畑が多くなった。レンタサイクルに乗った人が何人かすぎていく。
「ここが香具山だ」
藤原は博物館横の駐車場に車を入れた。道しるべに従って二人で畑の間の細い道を登っていく。
「石巻山によくにています」
少しのぼりになったところで康平が言った。藤原はうなずいた。
なだらかな坂が続き、三〇分ほどで山頂についた。小さな鳥居があって神社があった。康平はお詣りしてから山の裏手にまわった。
「藤原さん。なんか大きな岩があります」
康平が大きな声をだした。小型自動車ほどもある岩があった。横向きに丸く削れて、パラボラアンテナみたいに見える。横に古びた立て札があったが、土がついて読みにくい。藤原が来るまで康平は土をはらって読み始めた。
「かがみいわに さわるべからず なんびとも たたられる」
と書いてあった。
「たたられる?」
草の中から現れた藤原がうらがえった声を出した。康平は案外冷静だった。
「この岩、石巻山にもにたのがあります。もちろん、たたりませんが、ダイダラボッチの足跡って呼ばれています」
藤原は康平の顔をじっとみた。
「三河にも三山があるって言ってたな」
「そうです。鳳来寺山、本宮山、石巻山って言います」
藤原はハンドルを握りながらときどき康平に目を向ける。
「大和の三山は、香具山、畝傍山、耳成山だ。飛鳥から案外近いんだ。香具山は藤原京のすぐうらだしな」
「そうですか。三河の三山は、全部まわろうとすると、車でも半日かかります」
康平の答えに藤原は笑った。
「守る範囲が広いんだな」
藤原が言ったところで、田畑が多くなった。レンタサイクルに乗った人が何人かすぎていく。
「ここが香具山だ」
藤原は博物館横の駐車場に車を入れた。道しるべに従って二人で畑の間の細い道を登っていく。
「石巻山によくにています」
少しのぼりになったところで康平が言った。藤原はうなずいた。
なだらかな坂が続き、三〇分ほどで山頂についた。小さな鳥居があって神社があった。康平はお詣りしてから山の裏手にまわった。
「藤原さん。なんか大きな岩があります」
康平が大きな声をだした。小型自動車ほどもある岩があった。横向きに丸く削れて、パラボラアンテナみたいに見える。横に古びた立て札があったが、土がついて読みにくい。藤原が来るまで康平は土をはらって読み始めた。
「かがみいわに さわるべからず なんびとも たたられる」
と書いてあった。
「たたられる?」
草の中から現れた藤原がうらがえった声を出した。康平は案外冷静だった。
「この岩、石巻山にもにたのがあります。もちろん、たたりませんが、ダイダラボッチの足跡って呼ばれています」
藤原は康平の顔をじっとみた。
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2011年06月13日
友引ツーリングくらぶ(飛鳥へ)
「康平。梨花さんって、すごいな」
藤原がため息をついた。画面の向こうで梨花が照れている。そこへ康平の携帯がなった。カメラに向かったままで電話に出た。しらみやだった。
「康平君か。今話していい?」
「いいですよ。しらみやさん。今大津の皇子の話してるんです」
康平は梨花に分かるように言った。
「しらみやさん。元気ですか?」
パソコンのスピーカーから出る声を携帯に拾う。
「あれっ。梨花ちゃんもいるの?」
しらみやがひっくりかえった声を出した。康平がスカイプの説明をした。しらみやはあまり驚きもせずに話をはじめた。
「今、こっち、たいへんなことになってるんだ。交通事故がとにかく多い、ちょっと出かけると、必ず事故を見るし、友引ツーリングクラブのメンバーも3人事故にあった。あと、あちこちから水が噴き出して、低い所には水がたまっている」
「事故って言えば、ぼくたちがこっちに来る前にもありましたよね」
「ああ。あれ入れると4件だ。おまけに変な病気まではやっている」
しらみやは声をおとした。
「病気って言えば、梨花ちゃんのお父さんも調子わるいみたい。ねえ、梨花ちゃん。お父さんなにか言ってた?」
康平はカメラを見た。梨花は首をふった。
「しらみやさん。夏休みには帰ります。なんとかがんばってください」
康平は言って携帯を切った。藤原はだまって腕を組んでいたが、やっと口をあけた。
「康平。明日、講義終わったら、飛鳥へ行くか」
「飛鳥ですか」
康平が藤原を見た。梨花もびっくりしたように見た。
「なんかさあ、急に思い出したんだけど、昔の天皇がさあ、国が荒れると古い都へ出かけているんだ。もちろん、それとは違うけど何かヒントがありそうな気がする」
藤原の言葉に、パソコン上の梨花もうなずいた。
藤原がため息をついた。画面の向こうで梨花が照れている。そこへ康平の携帯がなった。カメラに向かったままで電話に出た。しらみやだった。
「康平君か。今話していい?」
「いいですよ。しらみやさん。今大津の皇子の話してるんです」
康平は梨花に分かるように言った。
「しらみやさん。元気ですか?」
パソコンのスピーカーから出る声を携帯に拾う。
「あれっ。梨花ちゃんもいるの?」
しらみやがひっくりかえった声を出した。康平がスカイプの説明をした。しらみやはあまり驚きもせずに話をはじめた。
「今、こっち、たいへんなことになってるんだ。交通事故がとにかく多い、ちょっと出かけると、必ず事故を見るし、友引ツーリングクラブのメンバーも3人事故にあった。あと、あちこちから水が噴き出して、低い所には水がたまっている」
「事故って言えば、ぼくたちがこっちに来る前にもありましたよね」
「ああ。あれ入れると4件だ。おまけに変な病気まではやっている」
しらみやは声をおとした。
「病気って言えば、梨花ちゃんのお父さんも調子わるいみたい。ねえ、梨花ちゃん。お父さんなにか言ってた?」
康平はカメラを見た。梨花は首をふった。
「しらみやさん。夏休みには帰ります。なんとかがんばってください」
康平は言って携帯を切った。藤原はだまって腕を組んでいたが、やっと口をあけた。
「康平。明日、講義終わったら、飛鳥へ行くか」
「飛鳥ですか」
康平が藤原を見た。梨花もびっくりしたように見た。
「なんかさあ、急に思い出したんだけど、昔の天皇がさあ、国が荒れると古い都へ出かけているんだ。もちろん、それとは違うけど何かヒントがありそうな気がする」
藤原の言葉に、パソコン上の梨花もうなずいた。
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2011年06月09日
友引ツーリングくらぶ(大津の皇子)
「ええっ? 大津の皇子って、天武天皇のもがりの最中に都をぬけだして、伊勢に行ったんだよね。斉宮の大伯皇女にあいに。で都にもどったところをとらえられて、処刑されたんだよね。二上山に葬られているんだよね」
藤原は手振りをまじえて言った。パソコン画面にはうなずいている梨花が映る。
「それが、伊勢ですり替わったっていう伝説があるんです」
梨花はカメラに向かって、日本地図の伊勢のあたりを広げた。右端の方に渥美半島の先端が少しだけのっている。
「陸上だと、三河と伊勢はすごく離れています。名古屋まで出て、海沿いに南下して行くとかなり距離があります。でも、船で伊良湖岬まで渡ると鳥羽から伊良湖岬は20kmしかないんです」
梨花の言葉に熱がこもる。
「今でも、フェリーで行くと早いね」
康平が口をはさんだ。
「でも、泳いでいけるわけじゃないだろうし、波も荒いんでしょう?」
藤原が言った。
「でも、協力してくれる人がいればなんとかなるかも知れない」
康平がカメラに顔を近づける。
「鳥羽にねえ、九鬼水軍っていう海人族(海賊衆)がいたんです。その人達の先祖にあたる人たちが協力して、大津の皇子の影武者を用意して、三河まで落ち延びさせたと言われているんです」
梨花の顔が赤くなっていた。
「すごいじゃないですか。海人族はそこで、皇族との縁をつくって陸上進出をねらったんですね」
藤原も興奮しているのが分かった。
「じゃあ、やはり、大津の皇子は三河にいたんだ。そのせいか、三河にいたときより、へんなことが少ない気がする」
康平が言った。
藤原は手振りをまじえて言った。パソコン画面にはうなずいている梨花が映る。
「それが、伊勢ですり替わったっていう伝説があるんです」
梨花はカメラに向かって、日本地図の伊勢のあたりを広げた。右端の方に渥美半島の先端が少しだけのっている。
「陸上だと、三河と伊勢はすごく離れています。名古屋まで出て、海沿いに南下して行くとかなり距離があります。でも、船で伊良湖岬まで渡ると鳥羽から伊良湖岬は20kmしかないんです」
梨花の言葉に熱がこもる。
「今でも、フェリーで行くと早いね」
康平が口をはさんだ。
「でも、泳いでいけるわけじゃないだろうし、波も荒いんでしょう?」
藤原が言った。
「でも、協力してくれる人がいればなんとかなるかも知れない」
康平がカメラに顔を近づける。
「鳥羽にねえ、九鬼水軍っていう海人族(海賊衆)がいたんです。その人達の先祖にあたる人たちが協力して、大津の皇子の影武者を用意して、三河まで落ち延びさせたと言われているんです」
梨花の顔が赤くなっていた。
「すごいじゃないですか。海人族はそこで、皇族との縁をつくって陸上進出をねらったんですね」
藤原も興奮しているのが分かった。
「じゃあ、やはり、大津の皇子は三河にいたんだ。そのせいか、三河にいたときより、へんなことが少ない気がする」
康平が言った。
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08:55
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2011年06月09日
久々のうれしい話!
ひさびさのうれしい話だ!
しらみやの一番若い友人? である「たーくん」さんの妹さんが自転車に乗れるようになった。こんなうれしいことがあろうか。
かく言う私も、子どものころ自転車では苦しい思いをした。今だから言えるが、小3まで乗れなかった。小3の時友だち5人に支えられ、近所のおじさんに励まされ、学校の先生におどかされ(笑)てクリアーしたのだ。
それまで、大嫌いだった自転車が宝物に代わった。風を切って走る感動は違う星に来たように感じた。映画のETじゃあないが、そのまま空へ飛んでいきそうだった。(もしかしたら、スピルバーグも自転車で苦労したくちか?)
自分では言い出さないが、意外と自転車に乗れない大人は多い。知り合いの児童文学作家は立派な大人で酒も強いし本もたくさん書いているが、自転車は乗れない。大人になってからチャレンジしてもダメだった。悔しさのあまり彼女はバイクの免許を取った。今では400ccのバイクを乗り回している。(それでも、自転車は乗れないらしい)
すばらしいエネルギーをもらったから、今日からがんばるぞ~。ありがとう! たーくんの妹さん! おじさんもがんばるぞ!
しらみやの一番若い友人? である「たーくん」さんの妹さんが自転車に乗れるようになった。こんなうれしいことがあろうか。
かく言う私も、子どものころ自転車では苦しい思いをした。今だから言えるが、小3まで乗れなかった。小3の時友だち5人に支えられ、近所のおじさんに励まされ、学校の先生におどかされ(笑)てクリアーしたのだ。
それまで、大嫌いだった自転車が宝物に代わった。風を切って走る感動は違う星に来たように感じた。映画のETじゃあないが、そのまま空へ飛んでいきそうだった。(もしかしたら、スピルバーグも自転車で苦労したくちか?)
自分では言い出さないが、意外と自転車に乗れない大人は多い。知り合いの児童文学作家は立派な大人で酒も強いし本もたくさん書いているが、自転車は乗れない。大人になってからチャレンジしてもダメだった。悔しさのあまり彼女はバイクの免許を取った。今では400ccのバイクを乗り回している。(それでも、自転車は乗れないらしい)
すばらしいエネルギーをもらったから、今日からがんばるぞ~。ありがとう! たーくんの妹さん! おじさんもがんばるぞ!
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07:36
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2011年06月08日
友引ツーリングくらぶ(海の力)
康平は藤原に手伝ってもらい、カメラとマイクをセットした。パソコンを立ち上げてWEb上のマニュアルを見ながら設定していく。自分の顔を映し、マイクのテストをすると入れたばかりのリストから梨花を選びクリックした。
「康平? あっほんとに康平映ってる」
画面の中で梨花が手をふっている。思ったよりきれいに映っている。後ろ見える部屋は康平の部屋よりきれいに片づいている。
「後ろに映っているのが藤原さん? はじめまして」
画面上で梨花が頭を下げると、藤原は照れて笑いながら会釈した。
「ねえ、これ見て」
梨花は後ろから船の模型を出して見せた。古い形で布の帆が張ってある。
「これねえ、菱垣回船って言うんだって、江戸時代に大阪と江戸を回って、お酒や米を運んでたんだって」
「それ、梨花さんが作ったんですか?」
藤原が驚きの声を上げた。
「キットなんだけどね。私、海洋学の学校に入りました。学校の図書館に展示室と売店があって、ミニ博物館になっているんです」
「いいなあ、学校の中にあるのか」
康平が笑うと、梨花はちょっとむくれた。
「それはいいの。そこでねえ、おもしろい話を聞いたの。いつも出てくる化け物、『大津の皇子』って、あの大津の皇子が三河にいたって言う伝説があるの。伊勢の海から船で渡ったんだって」
「康平? あっほんとに康平映ってる」
画面の中で梨花が手をふっている。思ったよりきれいに映っている。後ろ見える部屋は康平の部屋よりきれいに片づいている。
「後ろに映っているのが藤原さん? はじめまして」
画面上で梨花が頭を下げると、藤原は照れて笑いながら会釈した。
「ねえ、これ見て」
梨花は後ろから船の模型を出して見せた。古い形で布の帆が張ってある。
「これねえ、菱垣回船って言うんだって、江戸時代に大阪と江戸を回って、お酒や米を運んでたんだって」
「それ、梨花さんが作ったんですか?」
藤原が驚きの声を上げた。
「キットなんだけどね。私、海洋学の学校に入りました。学校の図書館に展示室と売店があって、ミニ博物館になっているんです」
「いいなあ、学校の中にあるのか」
康平が笑うと、梨花はちょっとむくれた。
「それはいいの。そこでねえ、おもしろい話を聞いたの。いつも出てくる化け物、『大津の皇子』って、あの大津の皇子が三河にいたって言う伝説があるの。伊勢の海から船で渡ったんだって」
Posted by ひらひらヒーラーズ at
06:50
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2011年06月07日
友引ツーリングくらぶ(スカイプ会議)
次の日、梨花からメールが来た。彼女にはめずらしくハートの絵文字がおどっている。
「おもしろいことがあるから、時間が空いたら電話して」
と書いてあった。昼休みに電話した。
「あのねえ。康平。豊川にいた時みたいに顔見ながら話せるんだ。もう、アパートにインターネットの接続できた? あのね、スカイプっていうシステムでテレビ電話ができるの。3000円くらいでカメラとマイクのセットして」
梨花は興奮していっきにしゃべった。
「すごいじゃん。インターネットの準備は昨日できたから、すぐ買いにいく。ところで、お父さんはどう?」
康平が言うと、梨花はちょっと声を落とした。
「今はだいぶいいみたい。一宮の駅の近くにおもしろいお医者さんがいて、毎日行ってるって言ってた。眼科が専門なんだけど、針を打ったり、お灸をしたりしてくれるみたい」
康平はなんと答えていいのか分からなかった。よかったと言っていいのかどうか。
「分かった。スカイプの用意が出来たら電話する」
康平は電話を切るとパソコンショップによってスカイプのセットを買った。アパートに帰ってさっそく準備した。
「おもしろいことがあるから、時間が空いたら電話して」
と書いてあった。昼休みに電話した。
「あのねえ。康平。豊川にいた時みたいに顔見ながら話せるんだ。もう、アパートにインターネットの接続できた? あのね、スカイプっていうシステムでテレビ電話ができるの。3000円くらいでカメラとマイクのセットして」
梨花は興奮していっきにしゃべった。
「すごいじゃん。インターネットの準備は昨日できたから、すぐ買いにいく。ところで、お父さんはどう?」
康平が言うと、梨花はちょっと声を落とした。
「今はだいぶいいみたい。一宮の駅の近くにおもしろいお医者さんがいて、毎日行ってるって言ってた。眼科が専門なんだけど、針を打ったり、お灸をしたりしてくれるみたい」
康平はなんと答えていいのか分からなかった。よかったと言っていいのかどうか。
「分かった。スカイプの用意が出来たら電話する」
康平は電話を切るとパソコンショップによってスカイプのセットを買った。アパートに帰ってさっそく準備した。
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06:53
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