2011年02月22日

 友引ツーリングクラブ5

 二人は待ち合わせして三明寺へ行った。しらみやは出かけているらしい。本堂の前を歩いた。池に出る手前に小さな石仏がならんでいる。
「あれ、お地蔵様かなあ」
 康平が言った。
「こっち側にもならんでる」
 梨花が言った。2mくらいの幅で左右に石仏がならんでいる。二人でたどってみると、20mくらい続いていた。
「なんかさあ、道みたいだね。ほら、東海道とか松並木があるじゃない。あの松のかわりみたいだ」
「ほんと。もし、道だったらどこまでいくのかね」
 梨花が石仏の途切れた先を指さした。
「その先はねえ、豊川の河口、前芝まで続いている。二見の道をこえてね」
 後から声がして、ふりむくとしらみやが立っていた。
「ああっ。しらみやさん。今、二見の道って言わなかった?」
 康平がびっくりした声で言った。
「そこの先に二見の道はあったんだ。『イモモアレモ ヒトツナレカモ ミカワナル フタミノミチユ ワカレカネツル』ってなあ、万葉集にのっているんだ」
 しらみやはさも得意そうに言った。ところが二人は感心するんではなく、目をむいてしらみやによってきた。
「私たち、二人とも同じ夢を見たんです。二見の道の話してください」
 梨花はいつになく丁寧なことばになっていた。
「いや、くわしくは知らんけどな、なんでも1300年くらい前に、ここで若い二人の切ない別れがあったらしい。都から天皇がやってきて、おつきで来た男と、地元の巫女さんが恋に落ちてな。いっしょにいられたの約1ヶ月。男は都へ帰っていくことになる。その別れの分岐点が二見の道だ」
 しらみやはそこまで言って本堂に入っていった。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 11:14│Comments(0)
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