2011年05月30日

友引ツーリングくらぶ(ふるさと)

 康平は親に電話した。
「おう。康平。こっちはなあ。びっくりするようなことがよく起きるぞ。地下水が噴き出してなあ。水道管の破裂かと思ったぞ」
 電話に出た父親はあいかわらずのんびりかまえていた。大津の皇子のことなど、知らないし利修仙人のことも興味もないだろう。康平は「一度もどろうか」と言いそうになるのをなんとか我慢した。
「まあ、そのうち、おさまるだろ。だけど、交通事故は奈良でも同じだろ。気をつけろよ」
 父親の声は明るかったし、後ろでなにか言っている母親も特にあわてている様子ではなかった。
「父さん。夏休みには帰るからな。気をつけてくれよ。あと、梨花ちゃんのお父さんも、体の調子が悪いらしい。父さんも母さんも気をつけて」
 そう言って電話を切った。そのあと、しらみやの所へ電話した。出るなりしらみやがまくしたてる。
「康平君か。よかった。電話しようと思っていたんだ。ニュースで見たかな、たいへんなんだよ。洪水にはなるし、事故は起こるし、あとねえ、おれたちをマンションに監禁していた社長が自殺したぞ」
「ええ? 警察ですか」
 康平が聞き返した。
「ああ。あの、鬼塚とかいう刑事から電話が来た。トイレに行ったすきに麻ヒモみたいなもので首をつったらしい」
「ええ? そんな首をつるようなヒモを持っていないかどうか、調べるんでしょ。警察って」
 康平が聞くと、しらみやはしばらくだまった。それから低い声で言った。
「鬼塚さんも、そこが分からないって言ってた。誰かが渡したとしか考えられないって」
 康平は背筋が冷たくなった。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:49│Comments(0)
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