2011年07月16日

海の道(仮題)5

「麻績の王か。おもしろいかも知れんな」
 大津の皇子は心の中で思った。下級皇族の麻績の王は若い頃から貴族らしくないところがあり、地方に役人として派遣されても地元の民と仲良くなるのが早かった。
「すまんな。そなたにはまだ、名を名乗ってなかった。私は都の天皇の息子で大津の皇子という者。そなたも名を知らせてはくれぬか」
 急に態度のあらたまった大津の皇子に驚いた男は深く頭を下げた。
「これは、知らぬこととて、たいへん失礼をいたしました。私は、荒瀬というものです。麻を作ったり、焼き物を焼いたりして都へはおさめております」
 荒瀬は震える声で言った。大津の皇子は軽くうなずいてやさしい声をだす。
「そうか。それは知らぬところで世話になっておるな。常陸の国の麻は評判がいいぞ。さぞ苦労もあろうの。ここでそなたに相談だが、麻や米をおさめられる側にまわらんか」
 大津の皇子の言葉に、荒瀬はすぐに返事出来なかった。だまって顔をあげる荒瀬に大津の皇子は顔を近づけた。
「今、世の中は荒れておる。近いうちに天皇が代わるがこの方は体が弱い。その次の天皇に私がなろうと思う。その際には、私といっしょに世をおさめてくれ」
 ここで荒瀬の顔がほころんだ。
「私をお仲間に?」
「そうだ。ついては、力を貸してほしい。そなたの仲間を4人ほど集められるか。そなたは私といっしょに因幡へ行ってくれ。4人のうち二人はいっしょ来て欲しい。そして二人はここ常陸の国に残せ。いいか」
 大津の皇子は荒瀬から目を離さなかった。荒瀬はうなずいた。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:17│Comments(0)
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