2011年08月31日

現代へと続く海の道(仮題)11

 白宮はたまった仕事を片づけるべく急いでいた。ここのところ、荒川に呼び出され何度か小学校へ行っている。新城をすぎたあたりで「穂の川 小学校交流」と幟をあげたトラックとすれちがった。後ろに1本だけ直径2mもあるような大木が飛び出している。白宮はちょっと目をやっただけで先を急いだ。長篠合戦場あとに近いJAのショッピングセンターに寄って医王寺という古寺に寄った。「片葉の葦」の伝説が残っている。長篠の合戦のおり武田方の武将が祈りをこめて葦を斬ったのだという。
 住職にあいさつしてコピーのメンテナンスをはじめると、原稿台に書類が残っていた。「穂の川 小学校交流事業」と書いてある。白宮はさっき道ですれちがったトラックを思い出した。住職に渡すと苦笑いして受け取りながら説明してくれた。
「知り合いに頼まれてねえ。断りきなれなかったんだよね。穂の川の上流の小学校と河口の小学校が交流するんだけど、いろいろたいへんでね。鳳来寺山のふもとにある鳳来小学校と豊橋の**小学校で交流するんだ。今回はねえ、鳳来小学校の裏山で間伐した木を運んで行った。**小学校の子ども達に遊んでもらおうと思ってね」
「そのトラックさっきすれ違いました。それに**小学校? そこ、ぼく昨日もいったんです。知り合いが校庭に船をつくるって言い出して」
 白宮は荒川のことを説明した。住職は微笑んでうなずいた。
「船かあ。穂の川は昔から、イカダによる木材の輸送が盛んでねえ。穂の川の河口まで運んで、そこから船でひいて江戸まで運んだらしいね」
「へえ。だったら、間伐の材木で船を造れたらいいのに」
 白宮はひとりごとを言った。住職はゆったり首をふった。
「そんな立派な木じゃないよ。木っ端だ」
「そうですか? さっきすれ違ったトラックにはこんな大きな木が載ってましたよ」
 白宮は両手を広げて見せた。住職は一度首をかしげてから目をとじて何度かたてに首を動かした。
「1本だけね。ご神木のお裾分けがあったなあ」
「ご神木? お裾分け?」
 白宮は口の中でくりかえした。住職は声をひそめて語り出した。
「先週ねえ。鳳来寺山のふもとで1本の大木が倒れたんだよ。それが、1300年以上まえからある大木でね。なんでも、このへんの言い伝えじゃあ、南の方から神の使いの白鷺が種を運んで来たっていうんだよ」
 それを聞いたとき、白宮の赤いアザがジンジン熱くなった。住職は続けた。
「みんなで、その大木をどうしようか相談して小学校の校舎を改装するときに使うことしたんだけど、それがものすごい大木だからねえ、使い切れなくて**小学校にお裾分けしたってわけだ」
 白宮のアザはどんどん熱くなって軽い目眩さえ感じた。なんとか仕事を終えた白宮は車にもどって荒川に電話した。
 




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:55│Comments(0)
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