2011年10月05日

現代へと続く海の道(仮題)37

 次の日、白宮が学校へ行くと、校庭の船は外側がだいたい出来上がっていた。足場のパレットはほとんど見えない。
「勇人くん。君も手伝ったんだね。入院している間に、荒川と作ったんだ」
 白宮が聞くと勇人はうれしそうにうなずいた。白宮は松葉杖をついて、船のまわりを一周した。
「白宮さん。今日の帰り、弓道の先生のところ行ってもらえますか?」
 勇人がじっと白宮を見た。白宮はうなずいた。
 荒川が来たところで交代して、白宮は仕事に行った。夕方学校へもどると勇人といっしょに弓道の先生の所へ行った。
「いやあ。白宮さん。このごろ、勇人君が来るのが楽しみでね。この子はほんとうに素直でよく伸びる」
 勇人が裏に巻藁の前で練習を始めると社長は目を細めた。
「ここへ来る途中聞いたんですが、本人にとっては新しくおぼえるというより、思い出す感じだそうです」
 白宮のことばに、社長はゆっくりうなずいた。
「うらやましいですが、たぶん、天才なんですな。ところで、白宮さんに来ていただいたのは勇人君のお母さんのことなんです」
 社長はちょっと声を落とした。白宮はヒザを乗りだして社長の近くに寄った。この前の事件を知っているのかと思った。
「長いこと、こんな小さいな会社を見てるとね、不遜だが、人の心が見えるようになってくる。勇人君はいつも母親のことを心配している。どんな母親なんですか」
 白宮はじっと社長を見た。そして口を開いた。
「いい母親だと思うんですが、仕事を二つしているらしくて、寝る時間もなく、勇人君と話す時間もないらしいです」
 白宮の言葉に社長は腕を組んで考えてから言った。
「どうでしょう。もし、本人に気があれば、ここで働いていただくというのは。もちろん、小さな会社ですから大したことは出来ませんが、二つも仕事をするよりはいいようにしたいと思います」
 白宮は喜んで帰りに勇人に話す約束をした。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 07:47│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。