2011年10月06日

現代へと続く海の道(仮題)38

 帰りの車の中で、白宮は勇人に母親の仕事のことを話した。勇人は一度驚いたように白宮を見た。
「今夜、母さんが帰って来たら話します。でも、そんなにしてもらっていいいんですか? 弓道の道具も借りっぱなしだし、ただで教えてもらって……」
 勇人はじっと白宮を見ている。うれしさは隠せないようだ。
「ぼくが頼んだんじゃないよ。社長から言い出したんだ。あの社長、君のこと、かわいい弟子というより孫みたいに思ってるんだな」
 信号待ちで、白宮は勇人を見ながら言った。勇人は一度うつむいて小声で言う。
「ぼく、今まで、大人がぼくのこと心配してくれるなんて思わなかった」
「みんな、心にはかけてるさ。明日もがんばって船をつくろうな」
 白宮は勇人を送って行った。その夜遅く、勇人の母親から白宮に電話があった。日を決めて社長のところへ行くことになった。後のことだが、母親は社長のところで事務で働くようになった。

 二週間ほどで、白宮の骨もつながって松葉杖なしでも歩けるようになった。
「勇人くん。どうした。上履きは?」
 素足で教室に現れた勇人に荒川が笑って聞いた。勇人は白宮と荒川を見て首をふった。
「だれかに隠されたのか」
 白宮が聞いた。勇人はうなずいた。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 07:17│Comments(0)
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